2008年12月21日
勝負に波乱はつきものであり、トーナメント戦では何がおきても不思議ではありません。
そして今日の天皇・皇后杯を見ていて、改めて初戦の入り方の難しさについていろいろと考えることがありました。
対戦相手によっては、リーグのメンバーと大きく異なった布陣を敷いたチームは少なくありません。
嘉悦大学と対戦したNECは若手メンバーで臨み、3-1で敗れました。もちろんここにもさまざまな思惑があり、敗因、勝因が存在します。若手を使ったから負けた、というような単純な理由ではありません。
ただ、男子の場合。全日本を制した日体大と対戦したサントリー、関東秋季リーグの覇者である東海大と対したパナソニック、どちらもスタートは外国人選手を含むリーグと変わらぬメンバーでした。
今日はベンチ外だったある男子選手と話していた際、こんなことを言っていました。
「高校生や大学生と対戦するトーナメントの最初は、やっぱりベストの布陣で行くべきだと思う。連戦だと、先を考えてしまうし、確かに疲れは残るけれど、最初にガツンと叩いて『やっぱり強いな』と思わせることが大事だと思うんだよね」
私も、同じ意見です。
考え方はさまざまですが、こういう機会での「かなわない」という対戦経験から、さらに向上へとつながっていくのではないかと思っています。
こんな例もあります。
今から数年前、「壁の乗り越え方」という特集で、柔道の鈴木桂治選手の取材をしました。
鈴木選手の「壁」は、「ライバル」と評された井上康生選手でした。
アテネオリンピック出場をかけた体重別選手権で、鈴木選手は井上選手と対戦する前に準決勝で敗退しました。
相手は、井上選手のお兄さん、井上智和選手でした。
当時のことを振り返りながら、鈴木選手が発した言葉がとても印象的でした。
「トーナメントを初めて見たときから、決勝だけを見ていた。だから、足元をすくわれた」
体重別での敗戦以来、鈴木選手の意識は変わったそうです。
「一番強い人、金メダリストの康生さんに勝てばそれが世界一だと思っていました。でもそうじゃない。世界中の柔道家に勝って、初めて世界一なんだと思う」
どんな大会でも、どんな競技でもこれはきっと同じこと。
すべてのチームに勝てるチーム、すべての選手に勝てるチームが強い。
トーナメントへの入り方についていろいろ考えていたら、そんなことを思い出しました。
明日からは準々決勝。プレミアリーグ同士の対戦が続きますが、素晴らしいブロックを連発していた嘉悦大学の戦いぶりも、引き続き注目です。
posted by tanaka yuko |01:03 |
バレーボール |
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2008年12月15日
選手の話を聞くと、「エペが一番シンプルで、わかりやすいですよ」と言われることが多くありました。
これまで、太田雄貴選手の取材を中心にしてきたため、どうしてもフルーレの試合や練習を見る機会が多かったのですが、今回の日本選手権でエペもじっくり見る機会を得て、改めて「シンプルでわかりやすい」の意味を知るとともに、エペの面白さに気づきました。
有効面が限られているフルーレ、サーブルと違い、エペは唯一からだのどの面に触れてもよい種目です。
上を狙ってそちらに意識を持っていかせたかと思えば、次は足元を突く。繰り広げられる駆け引きも、非常にわかりやすく明快です。
男子エペ、女子エペとも今回優勝した西田祥吾選手、池端志津香選手はともに初優勝。なかでも西田選手は、オリンピック前から少し話を聞かせてもらっていたので、今回の大会では少し注目していました。
予選リーグは相手の出方に合わせて攻撃に転じるように見えたのですが、一変したのは決勝トーナメントの初戦でした。
「何度も勝ったり、負けたり、拮抗している」という坂本圭右選手との対戦を先行されながら追いつき、サドンデスで勝ち切ると、そこからは相手を寄せ付けず、自ら仕掛け、攻めに行く。危なげない勝ちぶりで、準々決勝、準決勝、決勝を鮮やかに勝利で飾りました。
西田選手曰く、苦しい試合で勝ちきれたこと、1つの試合を機に吹っ切れ、ギアチェンジできたことはオリンピックの経験があったからこそだそうです。「あれだけ厳しいなかで戦った経験があったから、気持ちが最後まで切れなかった」と言う姿は自信で満ち溢れていました。
そんな西田選手ですが、現在は鹿児島県でご実家の仕事を手伝いながら、高校生たちと練習をしているそうです。
新聞配達所を営むご実家で、朝6時から電話の前に待機し、クレームに対処し、届いていないご家庭があればすぐに新聞を届けに行って謝罪する。折込のチラシを入れることも西田選手の仕事です。
高校生たちはフルーレの選手ばかりなので、日本選手権前もエペの練習はできず不安もあったなかで得た今回の初優勝。
北京オリンピックまではフルーレが重点的に強化されてきましたが、今後はエペ、サーブルもジュニアやカデット層まで含めた広いピラミッドでの強化を実践していくと報告されています。
オリンピックの経験が生かされること、太田選手のメダル獲得効果が幅広い意味で生かされていくことを今後も取材を通して見続けていきたいと思います。
posted by tanaka yuko |15:58 |
フェンシング |
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2008年12月08日
駅から遠い、少し不便な場所に会場がある場合、タクシーを利用することも少なくありません。無言のまま会場に着くこともありますが、たいてい、運転手さんから同じことを聞かれます。
「今日、体育館で何があるんですか?」
こちらも決まって同じように、「男子(女子)バレーの試合です。Vリーグという社会人の大会なんですが、ご存知ないですか?」と答えます。
たいていその後は「あぁ実業団ね」か、「へぇそうなんだ」。春日井でも、同様のやり取りが繰り広げられました。ただ、その後で少し残念な言葉が続きました。
「男子バレーねぇ。最近はわからないなぁ。オリンピックにも出ていないから」
先日、全日本男女の監督就任に伴う会見に出席しました。
その際、会長から監督の選考理由として、男子は「16年ぶりのオリンピック出場に導いた手腕を買って」という言葉が繰り返されていました。
もしかしたらタクシーの運転手さんが、たまたまバレーには疎い方だったのかもしれませんが、これも現状です。
客席も空席が目立ち、会場係のスタッフの方も、「オリンピックに出ても、これが現実なんだね」と淋しそうに話していました。
このような声は、どこに届くのでしょうか。
男子はこの週末で1レグが終了しました。
個人的に、テーマとしてちょっとこだわりながら見ている点もあるのですが、それはもう少しリーグが進んでから記すとして、ここまでの時点で、1つ気になったことをここで書こうと思います。
審判のジャッジに対するクレーム、選手やスタッフでなくても「間違っている」と言ってしまいたくなるようなジャッジの多さです。
もちろんそれは審判だけが悪いわけではありませんし、選手も明らかにワンタッチしていても「触っていない」と言うこともあります。私たちが高校時代には、ブロックが真下に落ちても、とりあえず喜んでおけ、という学校もありました。これは別に悪いことではなく、喜んでしまえば、審判も「あれ、相手コートに落ちたと思うけれど、相手が喜んでいるということは吸いこみか?」と思うかもしれないと考えたからです。
もちろんそれが通用するほど甘くはありませんでしたが、その程度の騙しあいはいくらでもあります。
そして、もちろん、人間である以上はミスもあります。
ジャッジの確認は主審、副審だけでなく、ボールの位置によっては4人の線審も行うことです。私の後輩である友人もある都道府県協会で線審をしていますので、その大変さもわかっています。技術やレベルが拮抗し、試合の熱が増していくほど1つのジャッジに選手は必死になる。そこであくまで審判は冷静に、ミスも許されない状況であることも多少なりとは理解しているつもりです。
それでも今日、試合後の会見上の席で、ある監督はジャッジについて「ミスが多すぎる」と言及しています。そしてそれは、線審に対して向けられた言葉でもありました。
主審、副審は試合前に名前と所属協会を紹介されます。
線審はそうではありません。
試合が始まれば位置につき、それぞれの仕事に励む。車の運転と同じで、アルコールが残っていないかの検査もあり、試合中は手洗いに抜けることもできません。
少しでも微妙な判定があれば一様にクレームが寄せられる。過酷な立場です。
サッカー協会では、資格認定とは別に、審判に対してメンタル講習会を実施しています。どのような状況下であっても、冷静にジャッジする精神力、クレームにも屈さず、常に同等の目線で堂々とジャッジできる心を鍛えるための場です。
バレーボールとサッカーでは異なることも多くあるかもしれませんが、このような機会がバレーの審判員の方々にも設けられていいのではないかと思いました。
そうすれば、きっともっとお互いがお互いを尊重し合ったうえでの試合がなされるのではないか。もっと、線審の方々もプロ意識を抱くのではないか。ただ一方的に「間違っている」と言われることもなくなるのではないか。そんなことを思いました。
女子は来週も試合がありますが、男子のリーグはここで一時休戦。
次は天皇杯です。
オリンピックイヤーの最後を勝利で締めくくるのはどのチームか。トーナメントゆえの波乱が起こるのか。個人的には、星城高校と東海大の深津兄弟、日体大の梅野選手という3セッターがプレミアリーグのチームに対しどんなトスワークを展開するかに注目しています。野球のピッチャーが1球目に何を投じるかワクワクするように、まず1本目をどこにあげるのか。今から楽しみです。
posted by tanaka yuko |01:17 |
バレーボール |
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