2009年12月04日
インカレの興奮と、成長を感じた3年ぶりの言葉
先週末に女子のVリーグが開幕し、火曜日からはインカレがスタート。 明日からは男子のVリーグも始まります。 いよいよ本格的なバレーシーズンの到来です。 昨日はインカレを見に、東京体育館へ行ってきました。 4面で同時に試合が開催されるため、全ての試合を見ることができず、こっちにいながらあっちも気になる、そんな状態で試合を見ていたのですが、第3試合の中央大学と日本体育大学の試合は、始まりから終わりまで、すっかり釘付けになってしまいました。 夏の合宿シーズンに、あるきっかけから「速さ」を重視し始めた中央大。直後の秋リーグでは、それがなかなか機能せず、入れ替え戦に回る屈辱を味わいました。 リベンジをかけての、全日本インカレ。 同じ関東一部に所属する日本体育大学との試合は、絶対に負けられない試合。第1セットの序盤から、サーブ、ブロック、レシーブ、スパイク、全てのプレーが非常に泥臭く、まさに、ボールに食らいつくという表現がピッタリはまるような姿勢を打ち出し、1、2セットを連取しました。 中でも、要所要所で攻撃面の活躍が光ったのが2年生の千々木選手です。 まだ細身ですが、193cmと高さがあり、中学、高校時代から各世代の代表選手として活躍してきました。 初めて千々木選手を取材したのは、岡山・金光学園2年生で出場した、兵庫国体のときでした。 岡山選抜として出場し、高い打点から軽やかにスパイクを打ち、ノーマークの中を勝ち進み、準決勝へ進出。残念ながら4位に終わりましたが、試合後に話を聞きに行くと、目を輝かせながら「もっともっと、うまくなりたいんです」と嬉しそうに言う姿が、とても印象的でした。 その後も春高、インターハイと出場しましたが、高校時代は高いトスを打つばかりで、速さに対応できる選手という印象は全くありませんでした。中央大に入り、1年生から試合に出場する機会を得られたことで、速さや、より複雑なコンビに対応できるようになり、高校時代は「もっと得点を取りたい」「うまくなりたい」と話していた今後の目標が、「もう少し速さのある攻撃に対して、どうやって入ればいいかとか、コースを狙うかとか、考えてプレーをしなければならないと思うんです」と、具体的な言葉に変わるようになりました。 インカレでも、今年1年特に課題として取り組んできたというバックアタックや、レフトへの平行トスに合わせた速い攻撃など、いい場面で得点を重ね、ベスト8進出まであと1歩というところまで迫りました。 なかなか勝負は簡単ではありません。 ややオーバーペースだった前半のツケが来たところに、追い込まれてから冷静さと粘り、地力を発揮し始めた日体大が盛り返し、2-2のままフルセットへ。 トスを挙げるのは、同学年の高橋選手。5セット目が始まる前、千々木選手は、高橋選手に一言、こう言ったそうです。 「全部、トスは俺に上げていいから。俺に持ってこい。絶対決めるから」 3-6と日体大が3点のリードを得てから、高橋選手はトスを千々木選手に集めました。たとえ前衛でも、後衛でも、とにかくトスをあげる。そして千々木選手も2枚、3枚のブロックを打ち破り、破竹の勢いで得点を加算し、1点、また1点と日体大に詰め寄ります。 時折、セッターの高橋選手はセンターの内藤選手、長山選手のクイックをうまく織り交ぜて日体大のブロックを拡散させ、要所は、千々木選手へ。14-14を超えても決着はつきません。 次の試合を待つ早稲田大学の選手たちも、1球1球の行方に固唾をのみ、「あそこから打つ?」「あいつ、まだ決めるの?」と感嘆の声を上げるなか、決着がついたのは、22-21、日体大の9回目のマッチポイントでした。 サーブカットからのボールを、高橋選手はレフトの千々木選手へ。放ったストレートスパイクがサイドラインを割り、23-21、日体大のベスト8進出が決定しました。 代表戦やVリーグの試合を見るときは、1本のスパイクを見て「どうしてあそこで無理に勝負をしたんだろう?」と思うことは少なくありません。 もちろんインカレでも、「そこで無理やり勝負をしなくてもいいのに」と思う場面が、代表やVリーグの何倍もありました。 とにかく力任せに打つばかりが美談ではなく、もっと冷静に、戦術に基づいたクレバーなバレーをすれば、レシーブでも足が動かなくなるまで全力を出し切ってボロボロになることはないかもしれません。 どうして勝ったのか。どうして負けたのか。 両者の間に生じた差を、もっと冷静に見るべきなのかもしれません。 ただ、高校野球のひたむきさに心打たれるように、インカレでのひたむきな一生懸命さと真っすぐさに、見ているこちらも感動を超えて、ちょっと興奮してしまいました。 その結果、気づけばこれだけの長文を書いてしまいました。 試合後、約20分もの間、体育館のドアの裏で泣いていた千々木選手でしたが、少し落ちついた後に、 「あそこで決めるのがエースなんですよね。足が動かなくなるようじゃ、まだまだ。高さとか、速さとか、いろいろやってみて、この試合のものすごい悔しさも加わって、また初心に戻れた気がします。負けたのはすごく悔しいけど、バレーってやっぱり楽しい。もっとうまくなりたいです」 と少し笑いながら新たな決意を語りました。 3年ぶりに聞いた「もっとうまくなりたい」が、何だかとても新鮮でした。
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posted by tanaka yuko |17:00 |
バレーボール |
コメント(5) |
この記事に対するコメント一覧
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インカレの興奮と、成長を感じた3年ぶりの言葉
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初めてコメントいたします。
主に大学バレーを中心に試合観戦をしている者です。
インカレは現在も続いていて、今日からいよいよ準決勝、という局面ですが、どうしてもこの試合から頭が離れずにいます。
あとから思い起こしたときにこの試合がひとつの大きなポイントだった、千々木選手にとって、そういう試合になることを、今は願うよりほかありません。
今日からいよいよV・プレミア男子開幕ですね。お体お気をつけてご活躍ください。
#1点だけすみません。
国体は岡山選抜だったのでは…
posted by dhalmel | 2009-12-05 06:49
インカレの興奮と、成長を感じた3年ぶりの言葉
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6月のアジア太平洋カップでも古田選手を越える活躍を魅せた千々木選手。
強化の方向性によっては全日本招聘の日も近い。
posted by こにゃとんパパ | 2009-12-05 12:21
インカレの興奮と、成長を感じた3年ぶりの言葉
コメント投稿者ID :
>dhalmel さん
コメントありがとうございます。
Vリーグ会場でも、インカレの結果を気にする人たちは多く、とくに中大×日体大の試合について、いろいろと聞かれる機会がありました。
それだけの経験をした千々木選手にとって、これからに向けた大きなきっかけになることを私も願っています。
お気遣い含め、ありがとうございました。
>こにゃとんパパ さん
アジア太平洋カップは私も現地で見ていたのですが、古田選手の高さに対応されたところで、千々木選手が出てきて速さのバレーにスイッチした。セッターの菅選手も全く違う個性のチームになれた、と利点を話していました。
これからがとても楽しみな選手です。
ありがとうございました。
posted by 田中夕子 | 2009-12-09 16:50
インカレの興奮と、成長を感じた3年ぶりの言葉
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田中さん、こんばんは。
NECブルーロケッツの公式でも、田中さんの記事を楽しみに読んでいました。
ブログもいつも読ませていただいていますが、今日は思い切ってコメントさせて頂きました!
私もアジア太平洋カップを観に行きました。
大学バレーは見る機会がほとんどないんですが、初めて大学生のプレーを観た中、大学バレーに興味を持たせてくれたのが、韓国戦で古田選手に代わってコートに立った千々木選手のプレーでした。
これからも注目していきたいです。日本を支えるプレーヤーになってくれるような。勝手に期待しています。
Vプレミア男子も開幕し、田中さんも取材にお忙しいと思いますが、記事を楽しみにしています。
熊本大会、元NEC選手も多数集結し、私的に好カードです。ぜひいらして下さい!
posted by まっつん | 2009-12-09 20:07
インカレの興奮と、成長を感じた3年ぶりの言葉
コメント投稿者ID :
>まっつん さん
コメントありがとうございます。
NECの記事も拝読いただいていたとのこと、重ねてありがとうございます。
アジア太平洋カップの千々木選手、菅選手のトスに対してうまく入っていい起爆剤になっていましたね。
これからも、NECに所属していた選手たちとともに、千々木選手もぜひ注目してほしい選手です。
ありがとうございました。
posted by 田中夕子 | 2009-12-12 20:55
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