2008年11月10日

今季の大分、侮れず

 女子に続いて男子Vプレミアリーグの開幕を迎えました。どの試合も面白そうなカードばかりなのですが、今週は福島・須賀川の試合を観戦しました。

 まず、一番驚かされたのは大分三好の完成度です。
 昨年までの2シーズンはそれぞれ2勝、計4勝であり、力の差も歴然としていました。
 ところが、今季はまるで違う。少なくとも開幕のパナソニック戦を見た限り「今年の三好は侮れない」と強く印象づけたのは事実であり、開幕2戦目のNEC戦で早々に今季初勝利を挙げました。
 ミドルの南選手、リベロの井上選手、サイドの国近選手と昨年の主力を欠き、誰もが戦力ダウンを予想したなかで、何がそれほどまでに違うのか。まず私が感じたのは完全分業制のもとで、それぞれが「何をすべきか」が明確化されていて、そのうえでチームとしての戦略が為されているということです。
 昨年終盤からオポジットに入っていたデニス選手が今季は最初からオポジットとして起用され、同じくオポジットであった神田選手が今季はサイドに転向しています。神田選手の攻撃力は昨年までのリーグでも示されていましたが、それに加え、サイドになればレシーブ力も求められ守備での負担も増加します。神田選手本人は「練習や試合をするごとに課題が生まれる」と言っていましたが、開幕戦のプレーを見ている限りでは十分な合格点と言えるのではないでしょうか。
 また、神田選手にはもう1つの変化を感じました。サーブです。
 昨シーズンはワンポイントでのピンチサーバーとしての出場が多く、本人も「思い切って打つことだけを意識していた」ため、決まれば得点につながることも多いとはいえ、ミスの多さも否めませんでした。
 それが今季は、黒葛原監督から「スパイクを打つとき、何を考えてどう打ちたいのか。それはサーブを打つときも同じ。自分のなかに答えがなければいいサーブなど打てない」と言われたことを契機に、ボールを捕らえる点やコース打ちを意識するようになった結果、トスに安定感を増し、初戦は23本打ってミスは4本で効果率は12%、第2戦では25本打ってエース4本、効果率は25%と非常に高い数字を残しています。サーブやサーブカットは一見するとシンプルなプレーですが、だからこそ課題の克服は難しく、そう容易いものではありません。今後、各チームにデータが蓄積されてからは、今以上に厳しくなるかもしれませんが、これまで確実な変貌を遂げている神田選手の今シーズンの活躍が、非常に楽しみです。

 大分三好、豊田合成と対し、どちらもフルセットで勝利したパナソニック。昨シーズンの覇者であり「追われる立場で戦う難しさがわかった」と山本選手。今季からはキャプテンに就任し、昨年以上に賭けるものもあると話している通り、得点源としてだけでなく、若手選手にも積極的に声をかける姿が目立ちました。
 なかでも、開幕で初スタメンの大竹選手に対しては「速ささえ一定にしてくれれば何とかするから、迷わず(トスを)上げて来い」と声をかけていました。宇佐美選手、岩田選手、大竹選手、3選手とも日本代表選手として国際大会を積んでいますが、それだけチーム練習をする時間は限られます。オリンピック代表で長くコンビを合わせてきた宇佐美選手、岩田選手は問題がないにしろ、南部監督もAVCで抜けていた大竹選手と、オリンピック後に合流した山本選手がコンビを合わせる時間が少なかったことを危惧していたのですが、山本選手曰く「あれだけ高いところからトスが出ると、(トスの)軌道自体が高くなるから打ちやすい」。途中交代の宇佐美選手も、やはりネット際での球捌きは他に追随するモノがいないほどの巧みさは健在。パナソニックのセッター争いも今後は注目です。
 余談ですが、シーズン開幕前にパナソニックの取材に伺った際、とても印象的だったことがあります。
 限られた時間のなかで複数選手の取材をしなければならず、こちらもどう仕切るか、どうやって組み立てれば一番効率的か考えながら取材に臨むのですが、その際「最初にコレ、次はこっち」と的確な仕切りをしてくれたのが山本選手でした。そして、撮影や取材を終え、次々選手が引き上げていくなか、自分の取材を一番後回しにして、最後に体育館を引き上げていく。そんな山本選手の姿を見て、キャプテンとしての山本選手の活躍が個人的にますます楽しみになりました。

 今季のテーマに「サーブの強化」を掲げた豊田合成も、松田監督が「8~9割は完成しつつある」というように、とくに2戦目ではサーブ&ブロックがいい形で展開されていました。
 もともと豊田合成は日本でも屈指のブロック力を持つ北川選手、高さのある川浦選手というセンターを擁していますので、狙ったコースにサーブを打ち、相手の攻撃幅を絞ればそれだけブロックで得点する確率、ワンタッチから切り返しのチャンスを得る確率が高くなります。ジャンプフローターで確実に狙いを絞ることも策の1つではありますが、今季の豊田合成は「攻め」の姿勢をより強く打ち出すために、ジャンプサーブで相手の守備陣を崩すことがより重視されています。
 なかでもこの2戦で活躍が目立ったのが、今季で2年目を迎えた高橋和人選手。外から内へ、内から外へ、バックからのパイプも含めたスピードある攻撃もそうですが、この2戦では高橋選手のサーブにNEC、パナソニックとも非常に苦しめられていました。横から見ていると、高橋選手のジャンプサーブは一連のスパイク動作と非常に近い、頭頂部から体幹、股関節を軸にきれいな回転とともに放たれるサーブ。2試合とも効果率は2桁を超えました。開幕戦を終えた時点で本人の自己採点は「60~70点」と厳しいものでしたが、マイナス部分はサーブカットに課題があるから、と高橋選手は話していました。「高橋みゆき選手の弟」として注目されるのではなく、小柄ながら技のあるサイドアタッカーとして、今季はより飛躍のシーズンにしてほしいものです。

 プレミアリーグ8チームのなかで、唯一黒星のみのスタートとなったのがNEC。昨年の黒鷲旗後、大村選手、細川選手、浅倉選手、脇戸選手といったこれまでNECバレーの顔であり、象徴であり続けた選手たちがチームを離れ、竹内監督のもとで新体制がスタート。「粘りのレシーブ」を第一に、2メン、3メンなどレシーブ練習に時間を割き、“つなぎ”への意識を徹底させた夏でした。
 その成果は着実に表れ、昨年までであれば簡単に落ちてしまったボールを拾い、つなぎ、とにかく何とかしようという姿勢はこの2戦のなかでも確実に見て取ることができました。とくにリベロの古賀選手のレシーブ、存在感は圧倒的で、サーブカット、チャンスボールの返球といった基本プレーはもちろん、会場で見ていた観客や、他の選手ですら「落ちた」と思うスパイクボールを何本もレシーブで古賀選手がつなぎ、そのたび歓声が沸き起こり、記者席の後ろからも「あのリベロ、すごいよ」という声が何度も聞こえました。会場を出る際、NECの選手で子どもからサインを頼まれるのも実は古賀選手が一番多い。照れくさそうに、でも誠実に応じる古賀選手の姿はどこか微笑ましいものです。
 この2シーズン、外国人選手の決定力に泣かされてきたNECですが、今季新加入のデジデリオ選手も爆発的な攻撃力というよりは、すべてのプレーを器用に、ソツなくこなせるタイプの選手なので、彼の活躍がイコールで決定力不足の解消につながるかと言えばそうではない。そのなかでどう点を取るか。苦しい点も多くあると思いますが、目指すバレー、やりたいバレーはここ2年と比べればかなり伝わってきますので、今後の奮起、切り替え、建て直しに注目です。

 あくまで見た印象を、連ねさせていただきました。
 ただ、この2試合を観戦するなかで最も残念だったことがあります。
 取材者の数です。
 開幕戦の数時間前に体育館に到着し、報道担当者の方と話をしている際「どのぐらい(取材が)来るでしょう?」と聞かれたので、女子の大阪大会での様子を話したところ、担当の方も「たくさんいらしてほしいし、至らぬことがあればどんどん言って下さい」ととても好意的に、接して下さいました。
 ところが、幕を開けたら須賀川会場に訪れた取材の数は3名。カメラを入れても2日間で7名でした。土日はさまざまなスポーツが開催されていて、取材者を派遣することも容易でないでしょう。ただ、それでもこの数は非常に残念。2日間で開催された4試合はどれも白熱したものであり、報道側である私たちも見ていてワクワクしました。でもその素晴らしさは、会場に来られない方にはなかなか伝わりません。
  昨年の覇者であるパナソニックの初戦、新監督のもとで新たなシーズンを迎えたNEC、大分三好の船出、昨年わずか1勝差で四強入りを逃した豊田合成の戦いぶり、バレーに携わっていると興味深いことは多々あり、上記のように特筆すべき選手も多くいただけにとても残念でしたが、同時に、自分がすべきことの責任の重さを噛み締めた週末でした。
 だいぶ長くなりました。また来週、V・プレミアリーグの会場に行って参ります。


posted by tanaka yuko |00:38 | バレーボール | コメント(2) |
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今季の大分、侮れず

コメント投稿者ID :

初めまして。

田中さんのように 取材していただく方々のお陰で
我々ファンは バレーを楽しめます。
有り難うございます。

今後も 記事を 楽しみにしております! 

posted by riki | 2008-11-13 23:34

今季の大分、侮れず

コメント投稿者ID :

>rikiさん

コメントありがとうございます。
もっとバレーボールの面白さがきちんと伝えられるよう精進します。

ありがとうございました。

posted by たなかゆうこ | 2008-11-17 01:06

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