2008年06月28日

EURO2008 Act17 『トルコ劇場閉幕』

■ トルコ劇場閉幕

【 ドイツ 3-2 トルコ 】
    0-1  22' ウーゴ(トルコ)
    1-1  26' シュヴァインシュタイガー(ドイツ)
    2-1  79' クローゼ(ドイツ)
    2-2  86' セミフ(トルコ)
    3-2  90' ラーム(ドイツ)


 「またやった!!」

 リードされていたトルコが同点に追いついた!
 86分、右サイドのコーナー付近、個人技でフィリップ・ラームを抜き去ったサブリ・サリュオールが、グラウンダーでニアサイドに送ったクロスにセミフ・シェンテュルクが反応する。キャッチを試みるイェンス・レーマンの鼻先に飛び込んだセミフがコースを変えると、角度が変わったボールはレーマンの脇を抜けGOALに吸い込まれていった。。。
 トルコ劇場はまだまだ終わらない!!

 それにしても!トルコのこの粘りはいったい何なのだろう??
 『言葉では説明が付かない不思議な神通力のようなものが宿っているとしか思えない』と、対クロアチア戦の項で述べたが、その不思議な力が、この準決勝の土壇場でまたもや発揮されたのだ。


 恐らく、大会前にこの顔合わせの準決勝を想像した者は、ほとんどいないだろう。優勝候補筆頭のドイツの勝ち上がりは順当といえるが、トルコのGroupリーグ突破とここまでの進出は、その勝ちっぷりも含めて奇跡的な旋風といってもいい。Group緒戦のポルトガル戦を落として以降、3試合連続で終了間際やロスタイムに同点、或いは逆転GOALが生まれるという離れ業。
 従って、下馬評で圧倒的にドイツ有利と見られるこの対戦も、実際やってみるまでは何が起こるか分からない。
 とはいえ、トルコのほうが不安要素を抱えているのは確かだった。

 何しろ、負傷、累積警告による出場停止で、登録メンバー23人中9人が準決勝出場不可能だという。先発でピッチに立つのが11人、控えの一人がGKであると踏まえると、実質交代要員が2人しかいないという非常事態。交代枠すら埋まらない状況なのだ。当然、スタメンを選ぶ余地もない。

 半面、ドイツはGroupリーグこそクロアチアの後塵を拝し2位通過となったが、準々決勝のポルトガル戦では、大会初スタメンを飾ったバスティアン・シュヴァインシュタイガーの活躍もあり、今大会最高ともいえる出来で準決勝に駒を進めてきた。決勝Tに入って調子を上げるあたり、いかにも力の入れ処を心得た大国らしい。幾度も大きな大会を制している経験を生かし、いよいよドイツが本領を発揮してきたように感じられた。


 第二次世界大戦後、復興を目指す当時の西ドイツに大量の移民が流入するなど、トルコとドイツは浅からぬ関わりを持つ間柄だ。現在のトルコ代表にも、エムレ・ベロゾールやハミト・アルティントップなど、ドイツ生まれドイツ育ちの二世選手が存在する。ちなみに、一世を風靡したイルハン・マンスズ、或いは日韓W杯で活躍したイェルディライ・バシュトゥルクやユミト・ダヴァラも同ルーツだ。

 1980年代、まだトルコ・サッカーが低迷していた時代に、ユップ・デアバル(元西ドイツ代表監督)がガラタサライの監督を務めるなど、その後のトルコ・サッカーの躍進に繋がる礎を築き、大きく寄与したのも有名なところだ。現ドイツ代表監督のヨアヒム・レーヴもフェルバフチェの監督を務めていたことがあるという。


 そんな様々な角度から注目を集める一戦は、立ち上がりから予想に反して?トルコのペースで推移していった。準々決勝では延長PKまでもつれる激戦を経て、休養日もドイツより1日少ないことが懸念されたトルコだが、思った以上に動きが軽く運動量も豊富だ。逆にドイツは相手の様子を窺っている。というよりも油断しているのだろうか!?ドイツらしいアグレッシヴな動きが見られず気の抜けたMISSが頻発する。

 13分過ぎにはトルコが立て続けにチャンスをつかむ。
 GOAL前の競り合いからセミフがHEADで落としたボールに、ライン際でアイハン・アクマンが追いつき、マイナスに戻したパスを、エリア外から走り込んできたカズム・リチャーズがSHOOT!ボールはクロスバーを強烈に叩いた。
 その跳ね返りを拾ったハカン・バルタが、今度は左サイドからクロスを上げると、上手く身体を入れてDFの前に出たセミフがスライディングSHOOT!これは惜しくも右ポストの脇へ逸れた。
 その後も立て続けにCKを得るなど、全くドイツに付けいる隙を与えない。

 そんな勢いのままトルコに先制GOALが生まれる。スローインを受けたサブリが右から入れたクロスに、カリムがダイレクトでコンタクト。緩やかに山なりの弧を描いたボールがバーを叩き、跳ね返ったところを詰めていたウーゴ・ボラルが左足で押しこんだのだ。
 トルコが先制しドイツが追いかける。。。試合の展開としては、これ以上にない興味深い展開になった。

 しかし、そんな想いも束の間…。その4分後、間髪入れずにドイツが試合を振り出しに戻す。左のオープンスペースにトーマス・ヒッツルスベルガーが出したパスにルーカス・ポドルスキが追いつき、ワンフェイントでコースを作ると素速くクロスを供給。ニアへの動きでDFを外したシュヴァインシュタイガーが、右アウトで自らの右後方へ角度を変え流し込んでのGOAL。
 全体に動きが重いドイツのプレイヤーのなかにあって、唯一精力的な動きが目立っていたシュヴァインシュタイガーが決めるあたり、やはりドイツの勝負強さを感じる。
 前半はそのままタイスコアで終了した。

 迎えた後半、交代で入ったトルステン・フリンクスがドイツの中盤を活性化させると、それに伴ってようやくTEAMに動きが出てくる。逆にトルコは連続した激戦の影響か、立ち上がりのような動きの鋭さが徐々に見られなくなってきた。次第に中盤にはスペースが空くようになり、膠着した時間帯に突入していく。

 はたして、その均衡を先に破ったのはドイツだった。79分、左のラームが低い位置から早めに右足で入れたクロスに、DF2人と飛び出したGKに競り勝ったミロスラフ・クローゼがHEAD一発!!
 滞空時間が長く、打点の高い見事な一撃だった。この大会、精彩を欠くようにも見受けられた“不動のエース”だが、準々決勝のポルトガル戦といい、大事な試合で貴重なGOALをきっちり決めるあたりは、まさにエースの名に恥じない働きぶり。
 残り時間を考えると、これでドイツの決勝進出はほぼ決まったと思われた。

 しかし、ここで諦めないのが今大会のトルコだ。冒頭で触れた通り、残り4分でセミフが同点GOALをGET!「夢よ再び」といったところか。トルコ劇場はまだまだ終わらない!!

 そのまま試合は延長に突入しそうな気配が漂い始めていた。

 ところがロスタイム寸前、決勝点があっけなく生まれる。セミフのGOALが生まれた際、自陣左サイドでサブリに抜かれる失態を演じたラームが、内へドリブルでスルスルと切れ込むとヒッツルスベルガーとパス交換。縦へ抜けてリターンを受けると、右足でGKの右脇を抜いてネットに突き刺した!

 ドイツ3-2トルコ

 さすがにここからのドイツは同じ過ちを二度犯さない。タイムアップのホイッスルが鳴り、遂にトルコ劇場の幕が下りる時がきた。
 最後は、今大会のトルコのお家芸“ロスタイムの劇弾”のお株を奪う形でドイツが勝利を収めた。

 ドイツにとっては決して芳しい内容ではなかった。
 正直、ポルトガルを破った試合以外は、内容的にはもう一つといった試合が多い。が!それでも勝利をきっちり収めるところが、ドイツのドイツたる由縁といったところか!?逆にいえば、本調子でなくとも決勝まで進むあたりが、このTEAMの地力を物語っているともいえる。勝負強さは健在だ。

 不振を囲っていたクローゼがGOALをあげた点、ポドルスキ&シュヴァインシュタイガーといった若手が相変わらず元気なことは明るい材料だ。DF面の修正が計れれば、大会前の評判通り覇権を手にする可能性はかなり大きくなる。最後の1試合までの3日間でどう立て直してくるか!?

 今大会を大いに盛り上げたトルコの快進撃は賞賛に値する。最後は矢も尽きたような状態に陥りながら、それでもドイツを大いに苦しめた。個々の能力の高さは存分に示したといえる。
 ただし!毎試合失点を重ねたことからも分かるように、戦前からいわれていたDF面の不安は、多数の負傷者を抱えていたとはいえ改善されていたとは言い難い。

 劇的な勝利を積み重ねた『トルコ劇場』も、裏を返せば、安定した戦いができなかったことの表れでもある。今後も続けて好成績を残せるかには疑問が残る。この大会を経て選手の経験値は上がった↑はず。今大会での躍進が勢いだけではないことを示すには、その経験を確実に生かしていくことが重要になる。

posted by JIN18 |00:01 | ☆アルプスの麓で目指すアンリドロネーの頂! | コメント(2) | トラックバック(0)
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EURO2008 Act17 『トルコ劇場閉幕』

トルコの戦いっぷりはとても勇ましく、見ているものの胸を熱くさせるものがありましたね。チームはいい意味でも悪い意味でも少し若い部分がありましたが、最後まであきらめない姿勢は今大会のベストチームといってもふさわしいのではないかと思います。

ドイツ戦も最後までわからない展開でおもしろかったです。
この敗戦が幕切れではなく、これからがトルコにとっての幕開けなのではないかと私は思います。少なくともここ日本でのトルコファンは増えたのではないでしょうか。これからも注目したいです。

posted by かくいう私もその一人 | 2008-06-28 01:22

EURO2008 Act17 『トルコ劇場閉幕』

■ かくいう私もその一人さん
 感動値というモノがあるならば、間違いなくトルコが今大会No.1でしょう。
 これだけ劇的な試合を続けたTEAMというのも、ちょっと記憶にはありません(すぐには出てきませんね)。

 ただ、それだけに、「たら」「れば」は禁物ですが、「せめてレギュラーがあと3人ぐらいいたらなぁ…」などと思ったりもします。

 もちろん!2010年に向けても期待したいです。
 状況としては日韓W杯後と少し似ているでしょうか。あの時も黄金時代がくることを予見させながら、その後、なかなか思うような結果が残せず。。。といったことがあったので、今大会後のトルコに少し懐疑的になったりしているのですが(笑)。

 今大会に限らず、結構、勢いで戦うTEAMだと思うので、波に乗ってるときは良いけど、そこが上手くいかないと全然…みたいなIMAGEはありますね。まぁ、そこで安定感身に付けてしまうと、トルコらしくなくなるのかもしれませんが!?

 今大会、登録されていませんが、バシュトゥルクとか“次世代エース(候補)”ヌリ・シャヒンは結構好きなので、個人的に今後もかなり注目することは間違いアリマセン。

posted by JIN18 | 2008-06-28 10:57

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