2007年07月19日

未だ忘れ難き“あの船木誠勝”ふたたびの記

 
 真摯に多くの方々が私の“船木復活檄”とも言うべき論稿にコメントを手向けてくださる。そしてまた多くの自身宛メールも頂く。誠に有難うございます。今回の記述にあたり、その旨、表記させていただきます。本来ならこれまでの自身の慣例通り、おひとりずつコメント返しさせていただくところ、ただ、中には心無い、論稿とはあきらかにかけ離れたかのようなコメントもまま見受けられるが為、今回はコメント返しの意も込めまして、再び記述させていただきたく思いました。是非、ご理解くださいませ。

 
 反対派の総意は年齢的な限界説を説かれ、そこからいくつかの私論へと繋がっており、中には技術論に根ざしたものや深い思索のもとお送りくださっているなと思わせる、非常に意義あるコメント等もございます。それらを逐一拝見させていただいておりますが、私自身、あの“船木誠勝”かつて選手が7年ものブランクを経て選手として現役カムバックする経緯を思うとき、応援せざるをえないと申しましょうか、その“意思”を私なりに推察する段に及んで、まったく感慨強く、唸るかのような思いにさえ至ってしまいました。あの氏がヒクソン戦のちスキルのあまりにもアップした現行のMMAなる世界というものを甘く見ているというか、見下げた思いの元、復帰しようなどという考えに至ったとはとても思い難く、「新しい世代の礎になれば・・・」という思いは心底から発せられた思いであると私は従えております。私も無論、大いに危惧している、それはいわば格闘家としてよりもひととしての“道理”でもあろうかと思え、年老えば力は衰える、技術も落ちてくることは明白であり、なのに「当時よりも進化した部分はある」と敢えて明言するあたりにも何がしか“覚悟”みたいなものも感じられ、鬼気迫る一己の人間としての“執念”すら伝わってまいりました。氏がこれから再び挑もうとしている世界は引退後に氏が「戦争をしているようなもの。殺し合いをしているようなものです。」とある種、ひとによっては氏の意識が非常に冷めかけてしまったかのようにさえ映った、冷徹に第三者的目で従えた居所であるかのように覗えた場所であり、プロレス回帰の場所ではないのかもしれません。だが、私はそれでも今回の“復帰”に関しては是である方に回らせていただきとうございます。

 重々、氏は私なんぞが申すまでもなく現行の格闘技を取り巻く状況を慮(おもんぱか)りつつ“復帰”の判断をなされたと思われます。そんな氏を思うとき、私達、少なくとも私に関しては、かつて氏に夢馳せた者として、あらん限り微力ながらも“声援”を送りたい、送らせていただく、この思い意外、ございません。

 私は少なからず見知ってきました。船木誠勝の現役時代を目の当たりにしていない論者が、氏の葛藤、その一片も見知らぬものが何をとやかく言う無かれ!!という思い、憤りさえございます。

 彼は10代の頃に既にプロレスの在り様に疑問を呈し、「もっと世間に誇れる。他の格闘技と同格に扱われる。」プロレスの存在を夢見、まして私なんぞのようにただ眺めたり論じたりする以前に、プロレスのリングにきちんと上がりつつ、そうして世間と向き合ってきた、言わば体現者“選ばれしひと”その一群なのです。つまり、若くして世間とプロレスをしていた類い稀な一部の人間ということになります。いまの誠に堕落したプロレスラーとは名ばかりの“矜持”など持たぬ、紛(まが)いの人間とは根底から違うのだと考えてもおります。

 「プロレスは八百長!!」この蔑視の只中をぐらぐらと揺れつつも、氏は氏なりに時の骨法のスタイルををリング上で実践してみたり(のちに総師範にとやかく批難されたりしたことはともかくとしても)、とにかくその“必死さ”は当時、同世代の私達にははっきりと伝わってきました。

 私は世間とプロレスしていた“全盛時の猪木プロレス”を引き継ぐ男は、船木誠勝、氏しか居ないとさえ思っていました。実際、そういう時期が私にはあったのですね。

 世間としかと向き合う、反骨心。
 リング上での佇まい、華。
 貪欲になんでも取り入れてやろうという、精神。
 己の言葉を持ち対極的な見地さえ覗えるほどの
 人間としての資質を有した、者。

 どれが欠けても、これからのプロレスには(当時)不可欠なものだと私は思っておりました。プロレスラーは世間の蔑視の目に対する抗弁をしかと持って、それはそのプロレスラーとしての哲学をしかと有している、それこそがプロレスラー足る、まずは第一条件だろうくらいに、少なくとも私は思っておりました。

 上記、そのどれらを掲げても船木誠勝は(当時、既に)持っていた、いる人間だと私は考えた次第です。大袈裟でもなんでもなく私にはそう、思える“逸材”だと感じさせる、氏には深い思索があったと推察致します。

 だがだが然しながら、
 儚く、
 私の願いは
 潰えました。

 彼はUWFに去ったのです。猪木プロレスを否定したのか?新日本イズムを肯定出来なくなったのか?論者によってそこは明らかに分かれる論点ですが、様々な見方はあれど、当時の現行プロレスを否定しつつ、氏がUWFに期待していた思いとは、やはり“真剣勝負”としての舞台。すぐさまそれが不可能でも、そういうものをやりたいという意識があったことは、氏のその後の歴史を見知る者にはよく解せる、“事実”だと思えます。

 つまり既存のプロレス自体を踏襲せず“真剣”の舞台をプロレスだとする新しい理屈構築、それを実際に実践していこうという気運、考えをもとに動いたはずです(当時、それをUWF信者はもともとのプロレスなるものへの回帰だと論じておりましたが)。そういうシフト的思索、状況に身を置いてしまったのです。

 私は当時、この氏の行動にやはり愕然と致しました。踏みとどまって内外、力の衰えた猪木氏に代わって新日本プロレスの牽引車足りえてほしいと思っていただけに落胆は多大なものがございました。がっかりし、失望し、されど興奮し、ああでもないこうでもないと自身、行きつ戻りつ、妄念を暗中、繰り返したものでした。

 氏のファンならば、その後の氏の行動もよくご存知の筈です。藤原組を経てパンクラスを創設。私はその“旗上げ戦”も、のちのパンクラスの「聖地」と言っても過言ではないかのような、あの“東京ベイNK”での幾つもの試合もほとんど実際に見に行きました。

 私は幼い時分から有り難いことに多くのプロレスラーの方々と交流を得ましたが、未だに氏とは恒にリング上と観客席の一ファン、或いは格闘技解説者と格闘技関係者ではないという立場でしか過ぎませぬが、氏に対する思いは若き時分から他に比するものは無いだろうと思うほどに、氏に対する拘りもまた深い者のひとりです。大迎な物言いをお許し願えるならば、それは氏の中に潜む、まさに“世間とプロレスすることが出来る”“ただ短に八百長だと蔑視する世間に対し、昂然と向き合えるほどの思想を有した考え方を持っている”それらをリング上でしかとプロレス絵巻として構築しうるほどの力量をも存している、そんなまさに“全盛時の猪木プロレス”を引き継ぐことが出来るほどの素養を、当時の私が氏に“見出した”からに相違ございません。

 そんな氏が、“復帰”すると明言したのです。氏、自らの“意思”で。私は喜んで声援を送りたいと思います。

 一ファンの誠に身勝手?勝気?愚痴?復帰反対派に対する批難?どのように取れえられようとも私は思うさまをきちんとここに表記させていただこうと思いました。人気取りに走っても、それはつまり世間の総じた意思に自身の意思を曲げてまでコラムにものしたいなどとは露も思いませんから。一ファンの一時の“話題”に乗った戯言、そういう従え方だけはされたくありません。無論、これまで私の記述したものを少しでも読了くださった方々ならば私の“真意”をきっとご理解してくださると信じてもおります。

 最後になりますが、多くの心ある良識のコメントを頂いた方々に心より御礼申しあげます。誠に嬉しき限りでした。有難うございます。今後とも“こんな”(苦笑)男ですがお見知りおきくださって、ご支持賜ればこれ以上の幸せはございません。拙文、最後まで読了くださり深く感謝致します。有難うございます。未だ船木誠勝氏の“復帰宣言”にちょっと高揚している自身がおります。乱文、ごめんなさい。

                           美城丈二
 

 
 ☆長谷川亮氏のコラム『船木が明かす現役復帰の真意』より
 ――身の周りの方は復帰に関してなんと言ってらっしゃいますか?

 身内とかには大会の始まる30分前に、一括してメールで出して。それで大会が終わってから確認したんですけど、あんまりいい返事はないですよね(苦笑)。反対みたいのだったり、「どうしてもやらなきゃいけないことなのか?」みたいのとか。だから、「どうしてもやってみたいんです」っていうのをまた今日返して。そういうのが何日間か続くんでしょうけど、でも言ったんですからやるしかないんで。あとは1回試合を見てもらって、それで納得してもらいたいですよね。

 これまで「もう試合しないの?」とか「復帰してください」っていう風に声をかけてこない人っていうのは、引退をひとつの終わり、完結として見てくれてた人ですよね。それはそれで、“格闘家の美学”みたいな感じで思ってくれてた人だと思うんです。ただ今回リングに上がるっていうことは、その美学をぶち壊してしまうってことになってしまいますので、壊すのはもう仕方がない。壊さなきゃまたリングに上がれない訳ですから。

 その代わり、「それ以上の戦いを見せなければ」っていう覚悟で戦わなきゃいけないですよね。今でなければできない戦いってやっぱりあると思うので。引退して7年経った今でなければ。

posted by 美城丈二 |09:55 | 魂暴風Personal【格闘技の在り処】 |
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