2007年07月09日
“地獄の墓掘り人”ローラン・ボック「“魅せる”というジャンルの奇特性に背を向けたとされるボックの精神世界」
ボック(Roland Bock)の神秘性が俄かに台頭、猪木との再度の対戦が囁かれ始めた最中、私はボックが以前、アンドレをスープレックスで投げ放ったと聞き及んだことに想いを巡らし、 あれはプロレス特有の“魅せる”が為に果敢に挑みかかっていったのか?或いは自身の“意気地” の為に放ったのか?
そこを是非にも知りたいと思ったものである。ましてあの“大巨人”アンドレ・ザ・ジャイアントである。アンドレの同意があったとしてもそうそう持ち上げる所業は容易いものではない。更にこの投げ放したことにより頚椎を痛め、長く床に臥せっていたとも聞き及ぶ段において尚更、その“意思”を知りたいと思った。 一ファンでしか過ぎぬが、私にとってはとにかく重要な知りたいそのボック自身の“意思”であった。 “意気地”の為に放ったとすればそこに私はボックのプロとしての矜持を悟ることになるし、“魅せる”為に放ったとすれば、私は私のまさしく“ボック評”を改めねばならない。 私は、ボックが時の週刊ファイト紙上を筆頭に俄かに人気が沸騰し始めたときでさえ既にボックが好きでは無かった。先年、無論、あの『シュトゥットガルト(Stuttgart)の惨劇』は行なわれていたが、そこを基点としたボックはセメントに強いという風聞を、当時の私は今から思えばフフンと小馬鹿にさえしていたような気がするのだ。 確かに身震いするほど強いとは思ったが華を感じなかった。ひとによってはお読みくださる方々の中にも同意をよせてくださる方もおられるかも知れない。何か、人間的な嫌味さ、意地悪さをその顔立ちから感じてしまったという、はなはだ、嗤われてしまいかねない思いに私は陥ってしまっていたのだ。 嗅覚だから仕方が無い。好みという奴だから頑是無い。 果たして、後年、ボックの人間性を疑う“鬼畜性”なるものが一部マスコミから漏れ出したとき、私はひとりそれ見たことか!!とほくそ笑んだものだ。 様々なレストラン、バー、賭博場すら経営し成功を収めている実業家。プロモーター業もこなし、その自身、リング登場は、“合法的に人間をなぶりいたぶれる場所”との、特にこの平然とそう語ったとされるボックのインタビュー記事のくだりには辟易感すら、抱いた(自身を、そう思わす語りなら、さもありなん・・・)。 あの“狂虎”シンのギミックは(実は大の字がつく大金持ちで、プロレスはおふざけでやっている)プロレスのその範疇、ギミックを超えぬものではあったが、さてさて、ボックはいかようか?実際、“合法的に人間をなぶりいたぶれる場所”だとして自身の身体能力を誇る場所だとしたならば、これは私の好む、敢えて信頼関係のもと相手の技を受けて成り立つ、レスラー独特の“矜持”からは逸脱しかねない、まさしく野蛮無礼な奴ということになってしまう。 リング上と下は違う。どんなにその精神性汚い男でもリング上で強ければ良いではないか?というご意見は、誠に真っ当そうに見えてこれほど危険な思想は無いと思う。どんな格闘技であれ、闘う相手に信義の思いが無ければ格闘家以前にひととして失格であろうと思うのだ。故意に相手を貶める。ただたんに“公開処刑ショー”であれば、この国でもあんなに“総合”は栄えまい。時代と共にルールが整備されつつある為、人々はそこに己の“強さ”を信じ、鍛錬に明け暮れる格闘家の影を慕って声援を贈り続けるのだと思う。 ボックはプロレス黄金期の1982年1月1日、後楽園ホール元日興行にて再び猪木と相まみえた。あの精神性はどうであれ鍛え上げたかのような強靭な体躯と研ぎ澄まされたかのようなフットワークは既に無く、私の興味もそこで潰えた。 ハンセン全日本流失を受け、ストロングスタイルをまさに標榜する新日本には試金石と成り得る一戦ではあった。だが、ファンの期待は脆くも崩れたのである。 一概にこうだとばかりは論じきれまいが、ボックは新日本の“過激なプロレス”を超越した怖さを有したレスラーであった。後年、猪木の最強の異人プロレスラー選出に際し、多くの信者たちがボックの名を挙げている。 『シュトゥットガルト(Stuttgart)の惨劇』は作り物か、否か!?果たしてボックは“意気地”の為にアンドレを投げたのか、否か!?私もこれまで散々、ボックについてもそこかしこで語ってはきたが(当サイト過去コラムにても語っております)、その点に関しては未だに解し難い想いでいっぱいである。 (敬称略)
posted by 美城丈二 |09:41 |
美城丈二の「僕らは格闘探偵団」 |
この記事に対するコメント一覧
Re:“地獄の墓掘り人”ローラン・ボック「“魅せる”というジャンルの奇特性に背を向けたとされるボックの精神世界」
ボックですか。 来日時は相当体調悪かったとか・・・ I 編集長が書いていた覚えありますね。 アントニオ猪木を語る上では欠かせないレスラーですね。 ただ、あの佇まい、あのルックス 死臭漂うレスラーじゃなかったでしょうか?リングの墓堀人とはよく言ったもんです。
なにをリング上でアピールするわけでなく、スープレックス1つで観客を、震撼させる つまらない中途半端なアピールだらけの現状の今こそ、レスラーが手本にするレスラーじゃないかと思いますが・・(ハッスルは除きます)
posted by 123どえ~ | 2007-07-09 11:43
Re:“地獄の墓掘り人”ローラン・ボック「“魅せる”というジャンルの奇特性に背を向けたとされるボックの精神世界」
なぜか高校生だった私はボックのことが好きだったのです。彼のスープレックスの凄まじさに、対戦相手の痛みを想像しながら、ただただテレビの前でうなっておりました。いまでも猪木との試合のDVDを見るたびに、ここまでやるか!と身震いしてしまいます。相手をいたぶることにのみ価値観をおいているようなボックの試合も、それはそれでプロレスの奥深い暗さを示しているようで、いまだに惹かれるのも、私のなかにある病的なものとひきあうなにかがあるのかもしれません。
posted by senorjapones | 2007-07-09 11:50
Re:“地獄の墓掘り人”ローラン・ボック「“魅せる”というジャンルの奇特性に背を向けたとされるボックの精神世界」
123どえ~さん、お久しぶりです。
自分がどんどん古臭い部類の人間に成りつつあるのか?武道精神なる世界観にますます惹かれてしまう傾向にあるようです(けっして武道家を忌ましめる発言というわけではなく、真逆の意において)。
僭越なる物言いながら、ボック自身を指すかどうかはともかくとしまして、
“なにをリング上でアピールするわけでなく、スープレックス1つで観客を、震撼させる つまらない中途半端なアピールだらけの現状の今こそ、レスラーが手本にするレスラーじゃないかと思いますが・・”
まったくこのご意見には同意致します。
senorjaponesさん、お久しぶりです。
“相手をいたぶることにのみ価値観をおいているようなボックの試合も、それはそれでプロレスの奥深い暗さを示しているようで、いまだに惹かれるのも、私のなかにある病的なものとひきあうなにかがあるのかもしれません。”
僭越なる物言いではございましょうが、確かにボックの魅力を語るとき、上記の想いは否定出来ぬものでしょうね。強さでは無く、怖さを有したプロレスラー、ボックはそういう位置に存するレスラーなのでしょうから。
御二方、誠にコメント、嬉しき限りです。今後とも宜しくお見知りおきくだされば幸いに存じます。有り難うございます。丈
posted by 美城丈二 | 2007-07-09 12:13
Re:“地獄の墓掘り人”ローラン・ボック「“魅せる”というジャンルの奇特性に背を向けたとされるボックの精神世界」
ボックといえば、週刊ファイトが特集号を出してましたねえ。
掲載されていたインタビューや、好敵手に対する彼自身のコメントからは、傲慢で陰惨な性格を窺い知ることができましたが、そんなに忌避する感情は湧きませんでした。
むしろ猪木ワールドを彩る多彩な登場人物の一人として歓迎してましたね。
ファイトの特集号には件のアンドレ戦の写真も使用されてましたが、TV画面を撮影したものなのか、非常に不鮮明でタイミングもずれていました。
アンドレにジャーマン、というよりグレコローマン式バックドロップを仕掛けた直後の映像でしたが、投げ切ってはおらず、無様に崩れているように見えました。
ファイトの紙面ではアンドレを投げた時の負担が、ボックの膝にかかり彼の故障に繋がったとも書かれていました。
そのことはアンドレはボックに自分を投げることを許していなかったことを物語ってる気はします。
相手の攻撃をあえて受けて立つという、プロレス特有の構造というか、矜持を逸脱した攻撃によって東洋の国で局地的な人気を博し自らの地元で幾許かの名声を得たボックですが、逆にその攻撃が自らのキャリアの墓穴を掘る役目を果たしたのだとしたら、なんとも皮肉なことです。
アンドレを投げた意図は余人には計り知れないところですし、あるいは本人ですら分ってないのかもしれませんが私は男の見栄がそうさせたと勝手に思っています。
posted by KAKI | 2007-07-09 22:47
Re:“地獄の墓掘り人”ローラン・ボック「“魅せる”というジャンルの奇特性に背を向けたとされるボックの精神世界」
KAKIさん、いつもながらコメントを有り難うございます。週刊ファイトの“ボック”特集号、読みごたえありましたね。Mr.アンドレを投げている写真、確かに不鮮明でしたが、果敢にトライしたことは事実のようです。投げきっていたか、大きく崩れてしまったのか、諸説有りますが、私が着目したのは、その“想い”何故に投げようと思ったのか、そこでした。こんにちに至るまでに様々な検証本は出ておりますが、私がもっとも敬愛してやまぬ、故・井上義啓氏は、 『シュトゥットガルト(Stuttgart)の惨劇』に異を唱えた方でもありました。素直に私は嬉しかったですね。「本調子の猪木なら、ああいう展開にはならないし、させない」と言い切ってもおられた記憶がございます。私なりに“ボック”は今後も追及するに値する“凄玉”レスラーであったことは言うまでもありますまい。嫌悪すべき人物ではありましたが、それだけ私の中では大いなる人物と申せましょう。
コメント、ほんに毎回、嬉しき限りです。今後ともどうぞお見知りおきくだされば幸いに存じます。丈
posted by 美城丈二 | 2007-07-10 06:06
Re:“地獄の墓掘り人”ローラン・ボック「“魅せる”というジャンルの奇特性に背を向けたとされるボックの精神世界」
紳士の美城さまゆえ、言いにくいかったと思いますが、ボックが同居している「美少年」とお互い全裸でプールでたわむれている衝撃的な写真もファイトに載っておりましたですね(苦笑)
posted by ブラックマン | 2007-07-10 21:26
Re:“地獄の墓掘り人”ローラン・ボック「“魅せる”というジャンルの奇特性に背を向けたとされるボックの精神世界」
ブラックマンさん、コメント、誠に有り難うございます。
紳士であるかどうかはともかくとして(笑)、ボックにはそういう真しやかな噂がございますね。思慮範疇外の論ではございますが、案外、あの己の格闘技に関する窮屈過ぎる観念とどこかで通じる観念なのかもしれません。私は無論、そういう趣味はございませぬので(笑)そこまでの了見に行き着けません。ご了承くださいませ。
今後ともお見知りおきくだされば幸いに存じます。丈
posted by 美城丈二 | 2007-07-11 07:44


