美城丈二@魂暴風;Soul storm *a martial art side

『爆弾貴公子』ダイナマイト・キッド“思わず、私は誰彼となく問いかけてしまいそうになる。「誰が為の・・・・」”

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 初出:2007・6

 世に出回るプロフィールでは、180cm 、98kg、けっして大型のファイターでは無い。コーナーポスト上から繰り出す、誠にスピーディーなダイビング・ヘッド・バットに代表される、空間を広く扱った、後方の観客にもそれと判らしめるダイナミック且つ華麗なる技、そういった飛び技を駆使し、氏は名を成した。

20080413-00.jpg
 言わずと知れた、初代タイガーマスク、最初にして最上最高の仇敵手。マーク・ロコ扮す“暗闇の虎”ブラック・タイガー、そして“虎ハンター”と称された小林邦明、プロレス界最大のスーパーヒーローゆえに、ライバルもひしめきあっていた。 




 
 キッドは佐山タイガー引退後、全日本に従兄弟のデイビーボーイ・スミスと共に電撃移籍し「ブリティッシュ・ブルドッグス」として活躍、時のWWF(のちのWWE)にても勇躍参戦し、その名は全米に轟くほどの躍進ぶりを見せた。のち全日本に再び参戦したが、引退を表明。翻して復帰したが、あの“爆弾小僧”としての異彩ぶりもここまでだった。


 私は、氏を糾弾しようなどという不遜じみた思いは露も無い。だが、そのレスラー生活晩年、とあるインディー団体に参戦してきた氏を見に行ったという友人が、暗澹たる面持ちで私に語って聞かせた、あのひとことは今でも忘れられないでいる。

 「あれは、もう、俺の知るキッドじゃ、無いな・・・」

 あにはからん、その後、専門誌で実際にひと目見た瞬間の驚愕。もはや、その氏の佇まいは、あの初代タイガーマスクと歴戦のつわものとして、絶賛されていた頃の氏とはとても思えぬほどの変わりようであった。

 「何が、あそこまで追い込んだんだろうね?」

 友人はそののち、期せずして氏の話題になった席で、自身が既にあらかじめ用意している答えを反芻してほしいかのような顔つきで、私にそう、問いかけてきた。私は私らしくなく、珍しく口ごもったはずだ。幾様だって、その答えを私なりに述べることは出来た。だが、何がしか私の中であらぬ憂いが翳ってきて、その時の私にはすぐさま返す答えを吐き出せずじまいであった。口ごもらせた、何かとはもはや改めて言うまでもないことであろう。

 海の向こうからは、折りからのTV視聴率戦争、ショーアップされ、試合自体よりもパホォーマンスの方が顕著化している、その“まずは演出ありき”なるスタイルに、有識者からプロレス界そのものの行く末を危惧する向きがぽつぽつとコラムとして提出され始めた時期でもあった(どこ吹く風、その後、海の向こうではそれらが一大主流と化したが・・・)。それと並行するかのような、マッチョスタイルの、レスラーの顕在化・・・。

 「あの上背だからねぇ・・・」

 私は、そう言ったか、どうか。

 その後、氏は『PURE DYNAMITE』なる自伝にて、赤裸々に氏のそれまでの有り様を述べられ、本国でもマニアを中心に大変な話題になったことは、ご存知の通りである。その一部は悪意とまでは言わないが、他者の批難に満ちたものであり、読了後、あまり気持ちの良い感慨を持ち得なかった。ふと、読まない方が良かったかな?・・・、
 そんな心持ちさえ抱かせる、氏の著作でもあった(一部では、実際に本人が書いてはいないと真しやかな流布があったが)。

 ステロイド、それは一体、なんの為に必要なのであろう。使用するものは無論、この情報化社会と呼ばれて久しい時代にあって、その凄まじき副作用の成す結果がどのように自身に振り返り、至るものなのか、知らずに使用する者など今では皆無かと思われる。

 なのに、氏の例に漏れず、まさに氷山の一角に過ぎぬ、薬物乱用はもはや留まることを知らぬものなのであろうか。誰が為のステロイド?私の中で、ジュニア屈指の名勝負と謳われた佐山タイガーvsキッド戦が、あらぬ思いで翳ってしまう?。

 いまはただ気休めだ、偽善だと嗤われても良い。その余生が穏やかなるものであれ、と思わずにはおれない。“高速ブレーン・バスター”あの時、味わった高揚感は未だに忘れ難い、けれどまたそれも“いにしえの代物”というものなのであろうか?。

 “爆弾小僧”ダイナマイト・キッド、その“勇姿”は未だに多くの往年、そのファンひとりひとりの胸に澄む。

 
 ☆宜しかったらこちらの方もお読みください。
  ⇒『追憶のジャングルファイト』美城丈二・書評の頁“読み手研鑽”

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記事カテゴリ:
美城流追憶稿“あの忘れがたき、漢(おとこ)”
タグ:
ダイナマイト・キッド
初代タイガーマスク
デイビーボーイ・スミス
PURE DYNAMITE
ステロイド
爆弾小僧

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Re:『爆弾貴公子』ダイナマイト・キッド“思わず、私は誰彼となく問いかけてしまいそうになる。「誰が為の・・・・」”

  けんしろうさん、ようこそ。
 そうです、初代タイガーのデビュー戦の相手がキッドであり、キッドは初来日は国際プロレスのリングです。初代タイガーマスクデュー戦ではジャーマンでフォールを奪われています。キッドは初代タイガーにとって欠くことの出来ないほどのライバルとなりました。ジュニア戦士にも目の行き届いた外交、当時の営業部長であられた新間寿氏の手腕が大きいと思われます。初代タイガーが舞い、藤波‐長州・名勝負数え歌があり、猪木が国際軍団と抗争を続けていた・・・まさにプロレス黄金時代においても欠くことの出来ないレスラーであったろうと思考致してもおります。あんな華やいだ時代はもう二度と来ないのかな・・・ふとキッドの試合も未だ見やるときに思う感慨です。コメント、誠に有り難うございました。丈

Re:『爆弾貴公子』ダイナマイト・キッド“思わず、私は誰彼となく問いかけてしまいそうになる。「誰が為の・・・・」”

子供の頃の記憶なんで間違っていたらすいません。
タイガーのデビュー戦の相手でしたよね。
ジャーマン?で3カウント負けだったと記憶しています。
キッドって藤波戦などですでに新日に参戦していませんでしたか?
僕はタイガーマスクとキッドの試合で確かキッドを応援したと思うんですよね。
あの体とダイビングヘッドが好きやった記憶があってタイガーをはじめてみた時に「えっ??漫画とちゃう」って思いまして、キッドがんばれ!って応援したと記憶しています。
全日でのキッドよりタイガーと闘っていたキッドの印象が強いです。
ステロイドは怖いけど、あの体に憧れを感じていた子供でしたし鍛えたらあんなかっこいい体になると思ってましたね。
キッドって、きおつけができひんやろなーって話題になってたなーと懐かしく思い出しました。



Re:『爆弾貴公子』ダイナマイト・キッド“思わず、私は誰彼となく問いかけてしまいそうになる。「誰が為の・・・・」”

キッドですか・・・ キッドの高速ブレンバスターは猪木のアントニオドライバーから来ているのかな とずーと思っていました。国プロが確か初来日だったと記憶してます。

Re:『爆弾貴公子』ダイナマイト・キッド“思わず、私は誰彼となく問いかけてしまいそうになる。「誰が為の・・・・」”

  m.mさん、

 “思えば力道山に声援を送った人も、キッドのように小さい体で大きな選手を倒すのに熱狂したんですかね。”

 私もさすがに力動山世代ではないのですが(苦笑)、国民感情が猛々しいと申しましょうか、戦後復興に多大な影響力を有した方であった、ひいてはプロレスなるジャンルもTV時代勃興にあってうまくその勢いに乗ったということも側面に見てとれようかと思われます。

 キッドはけして大きい体躯ではありませんでしたが、プロとしてのプライドは大きな体躯のレスラーに比して劣らぬものがあったと思います。休まず動き回るスタイルに彼のプライドを感じておりましたね。

 メールボーイさん、
 
 “人間、輝ける時代にいかにどれくらい輝くかが生きた証だと
いう事を身を持って教えてくれました。”

 つとめて考えさせられる、お言葉ですね。或いは幸せなプロ生活でもあったのかな?ふと、そんな思いがよぎりました。

 この世の果て・・・さん、

 “確かにキッドとルードは私が見た中で、もっとも筋肉の発達した選手だったと思う。
そしてそれは同時に、プロレスが見世物ショーに過ぎない事を突きつけられたように感じた。
是非とも、今の選手たちは、薬物に手を染める事だけはやめて欲しい。例え、プロレスがリアルファイトの方向に向かったとしても・・・”

 痛みを和らげる為に、試合前に抑制剤を飲んだり、弛緩剤を併用したり・・・、私がマーク・ケアーに感じていた怖さ・・・はからずも彼はのち、告発し、本国でもそのシーン等の映像は大変な反響を起こしました。彼に限らず・・・。一ファンとして憂うばかりなのですが、もうそろそろ、公的機関を設けるなり、善後策を真剣に模索し、結果を打ち出しても良い頃とは思うのですが・・・。

  鈴木敏朗さん、

 “猛烈なエネルギーとパワーで駆け抜けて行ったレスラー人生。晩年は”薬”でボロボロになり見る影も無くなってしまいましたが、常識的にまたアスリートとしてもドーピングは許されるべきではありませんが、プロレスに”命”を張った彼。リングネームの如く”爆弾貴公子”でしたね。”

 あのスタイルこそ、キッドの真骨頂であり、名実共に“爆弾貴公子”足りえた、プロとしての姿勢だったのでしょうね。僭越ごとながら、この後、穏やかなるときであれ!!と氏の猛爆ファイトにのめりこんだ者としては思いますね。忘れがたき、異人プロレスラー、いまがどうということではなく、“プロの塊”とも評すべきレスラーのひとりでしたね。

 皆様、誠にコメント、有り難うございました。丈

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美城丈二
〔よしきじょうじ〕
1966年3月、
宮崎県生まれ。
文筆家。
美城丈二の筆名は
筆者が文筆分野、
主に格闘技関連コラム
執筆の際に用いる通称名。
他筆名にて
詩文・小説・戯曲・脚本等
文筆分野、
多岐に渡り多くの執筆発表を
経る。
著作多数。

☆YAHOO! JAPAN認証サイト

☆尽きぬ、日々一縷、
温かいご声援メールに
心より深謝致します。
孤軍執筆の糧に致しております。
有難うございます。

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