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プロレスラーとしての誇り、意地!!“原爆頭突き”大木金太郎、師を偲ぶ、荒ぶる野心

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 *(この稿は、故・大木金太郎さんの逝去の報に接し、HPに書き綴ったものの、改訂稿です。初出2006・10)
  
 思い出すことなど。
 敬称略にて。
 
 国際空手道連盟極真会館の創始者で名誉総裁、初代館長でもあった、あの故・大山倍達存命の折り、果敢にも喧嘩を売った、日本人プロレスラーが居た。ひとりは云わずと知れた“燃える闘魂”アントニオ猪木。そうしてもうひとりが、あの本名・金一“キム・イル”こと大木金太郎である。

 総合格闘技界がまだ世間的には“総合”と呼ばれていなかった、1975年(昭和50年)、日本プロレス崩壊後に、フリーとなった大木は、6月17日に記者会見を開き、
 「力道山先生の名誉にかけても、空手家の大山倍達に挑戦する!!」と居並ぶ記者を前に突如、ぶちまけた。
 ことの発端は、こう、である。
 同6月8日付けのさる新聞の地方版に、大山の手記が掲載され、そこにこんな記述が踊った。
 「日本プロレス界の王者、力道山さえも勝てなかったタム・ライスに私は勝った」
 この文章を人伝えに聞いた大木は激怒。「俺の挑戦を受けるか?もしくは謝罪しろ!!」
 その剣幕は、尋常では無かったと聞く。

 もともと大木は、往年のプロレスファンの方々ならご存知のように、師・力道山と同じく、多国籍出身のプロレスラーである。韓国相撲の横綱格であった大木は、1958年(昭和33年)、力道山に憧れ、日本へと密入国、入国管理法違反で逮捕され、収容所から、力道山に嘆願書を出し、力道山の肝いりで、1959年(昭和34年)、日本プロレスに入門している。鬼のしごきと恐れられた力道山の課す特訓をそののち、若手三羽烏と謳われた故・ジャイアント馬場、アントニオ猪木らと共に耐え抜き、そんな地獄の特訓の最中でも時折、慈愛の目を手向けたという力道山の優しさが逝去のちも忘れられず、「我こそは力道山門下最強の男である」との普段からの自認と共に、師の「プロレスこそ、格闘技界最強である」という主義を誠、実証すべく、大山に喧嘩を売った。

 大木には、目算もあったとされる。勝てぬとも相打ちには持ち込める。大木はデビュー5年目にして、あの“鉄人”ルー・テーズにシュートを仕掛け(渡米時のこと。時の日本プロレス社長の豊登から、もし世界と名のつくタイトルを取ったら、力道山襲名を許すとの言質に小躍りして喜んだ大木はNWA王座に挑戦の際、暗黙の了解を度外視、壮絶な果し合いの末、テーズのナックル、顔面連打によって破れているが)腕には相当の自負心を抱いていた。
 こういった喧嘩まがいの試合スタイルから、当時の外国人レスラーからは「セメント・ボーイ」などとあだ名されたほどの実力者だった大木としては、その命を賭してでも、大山を潰すという、師を侮辱した者に対する敬虔なる思いの成せる業だったとしても、この果たし状を軽く受けてしまうほど、時の大山も子供では無かった。

 当時、極真会館は全国各県に県本部を持つ傍ら世界各国に55の本部を持ち、大木が挑戦の狼煙をあげた、その年の11月には待望の『第1回オープン・トーナメント全世界空手道選手権大会』を開催すべく、大山は雑事に忙殺されており、いくら相手が著名なプロレスラーだとしても、「殺し合いである前に武道たれ」という、健全なる青少年育成の精神においても、他流試合を禁止していた見地から、やすやすと大木の挑戦を受けるわけにはいかなかった。

 大山は、7月1日に記者会見を開き、
 「昔は、メシを喰う為に、プロレスラーも名乗った。ライスに勝ったのはその頃で(昭和26年)力道山がアメリカでライスに負けても、日本では完勝(昭和31年)したことも知っている。私は力道山の友人で、彼を侮辱した覚えはなく、大木君がどうしてもというなら受けざるをえないが、出来れば争いは避けたい」と語り、手記を掲載した記者への配慮ともとれる言葉をも口にした為、それを諒として、大木は自身の挑戦を取り下げ、この問題はそれにて収束した。

 あの猪木が、“柔道世界一”のルスカと(昭和51年・2月)“ボクシング世界チャンプ”のアリと(同年・6月)闘う、まだ、世間的には“異種格闘技戦”なる定義すら浸透していない以前のお話しだが、大木の師・力道山を偲ぶエピソードのひとつとして、ここに改めて筆記した次第である。

 大木氏のご冥福を心よりお祈り致します。

 *筆者注:この稿、菊池孝・章題「リング上でも私生活でもガチンコに徹した大木金太郎のセメント一代記」に改めて拠った。
 (株)桃園書房刊『プロレス&格闘技 その時、現場記者は見た!』



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Re:プロレスラーとしての誇り、意地!!“原爆頭突き”大木金太郎、師を偲ぶ、荒ぶる野心

  KAKIさん、誠にコメント、嬉しき限り、美城です。
 野武士というのでしょうか?時代と言ってしまえばそれまでですが、プロレスラーとしての意気地を感じるエピソードは数知れないですね。そういう気骨のあるプロレスラーが本当に少なくなりました。
 大木金太郎、私なりの哀悼稿です。勝っても負けても頭突き、そこに氏なりの気骨を感じたものでした。
 コメント、有り難うございました。今後ともお見知りおきくださり、末永いお付き合いが出来ますれば幸いです。丈

Re:プロレスラーとしての誇り、意地!!“原爆頭突き”大木金太郎、師を偲ぶ、荒ぶる野心

掲示板の方に1度書き込ませていただきましたが、此方の方では初めてコメントさせて頂きます。
力道山没後の日本プロレスの内情を記したプロレス記者の著書を読んだことがあります。
、大木の一本足頭突きを嫌がった外人レスラーの苦情を、ある役員がレフェリーのユセフトルコに伝えたところ、「やつは頭突きの衝撃で、目の網膜が剥離しかねない危険をおかしてあの技を出してるんだ。そんなやつに頭突きを使うな!なんて言えるか」(大意)とつっぱねたとか。
ユセフ氏自身、喧嘩っ早く腕っ節にも自信があった人のようで、後に警察沙汰になったことまであるようですが、強者は強者を知るとまでは言いませんが、当時のレスラー気質を窺わせるいい話ではあります。

Re:プロレスラーとしての誇り、意地!!“原爆頭突き”大木金太郎、師を偲ぶ、荒ぶる野心

  鈴木敏朗さん、のりさん、いつもながら、コメント、恐縮です。大木選手の武勇伝もこれはもう、ここには載せられないものも含め、凄まじいものがありますよね(笑)仰られるように、私も力道山をもっともこよなく愛した弟子とはあるいは大木氏ではなかったのかなという思いもございます。VS猪木戦、VS馬場戦、日本プロレスに対する拘り、往時を鑑みると、まさに『昭和のプロレスラー』そのものという威風を感じられる名レスラーだったと思いますね。コメント、誠に有り難うございます。丈

Re:プロレスラーとしての誇り、意地!!“原爆頭突き”大木金太郎、師を偲ぶ、荒ぶる野心

大木金太郎って名前でもう勝ってますよね。

強そうだし、覚えやすいし。

こういった解りやすいインパクトって必要です。

かっこいい名前やニックネームも良いですが、覚えられないと何にもなりませんし。

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