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17.1.21 おめでとう、稀勢の里

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 「それ」を手に入れるまでにかかった時間は、予想外に長かった。ここ二年近く、もはやファンや解説者、挙句の果てにはNHKの実況アナウンサーまでも、彼に「それ」を期待しても、という雰囲気が出始め、そしてそれが口に出されることが多くなってきた。

 貴乃花に続く速さで幕内昇進を果たした彼に、師匠は「稀な勢いを持つ」ということで「稀勢の里」と四股名をつけたが、ここからが長かった。負け越すにしてもそこまで大きな負け越しはしないものの、そこまで大きな勝ち越しもできず、いつの間にか小結と前頭上位を行ったり来たりする存在に。そんな稀勢の里を全国区に押し上げたのが2010年九州場所、スピード出世からちょうど7年目を迎えたこの場所で、当時63連勝という双葉山以来の記録を作っていた大横綱・白鵬を破って大金星を挙げたのである。  翌11年は色々なことがあり、春場所は中止、夏場所は技量審査場所として取り行われたが、名古屋場所から10勝、12勝、10勝と星を重ね、九州場所後にようやく大関昇進。琴欧洲、日馬富士、把瑠都、琴奨菊に続く五人目の大関となった。  ところが、ここからも長かった。優勝争いはする、白鵬への相性は日馬富士に次ぐ良さ、なのに勝ちきれない。何度と「それ」に近づいても、手は届かなかった。「稀勢の里ルール」とも一部からは揶揄された横綱昇進条件の緩和を、後から大関昇進した鶴竜が「漁夫の利」と言えば言葉は悪いが、そんな感じで横綱に昇進、把瑠都と琴欧洲はそれぞれケガから大関陥落、引退となった。

 何度と「13勝で綱とり」や「優勝次点で綱とり」など、緩い昇進条件のもとで綱取り場所を迎えるのだが、何度も何度も逸してしまう、中日勝ち越しを決めることも多くなるのだが、結局どこで不覚をとったり、あるいは白鵬相手に完敗したりと「それ」が近くて遠い存在になってしまった。そのうち、豪栄道が大関昇進し、新鋭・照ノ富士はまだ日本出身力士が9年間も掴んでいなかったものを引っ提げて大関に上がってきた。  栃東以来の「それ」、その最右翼は間違いなく稀勢の里だったのだが、2016年初場所で琴奨菊が、秋場所は豪栄道が全勝で「それ」を掴み、気づけば大関以上で「それ」を掴んだことのない力士は稀勢の里ただ一人になってしまった。

 ところがこの力士、安定感は抜群も抜群で、大関昇進後負け越しはただの一度、8勝7敗に至っては一度もないという超が付くほどの優良大関。それ故に、ファンは「それ」を期待し、解説者、具体的に言えば北の富士さんも「それ」を期待し、協会も「それ」を期待した。だが、いつも5日目までに平幕に不覚を取り、1敗で白鵬や日馬富士を追走するものの、10日目ぐらいにもう一つ土がついて、白鵬や日馬富士が敗れてラインが下がってきたところでその横綱に土をつけられて絶望的-。何度とこの光景を見せられ、「綱取り」が浮かんでは消え、浮かんでは消えた。それを象徴するのが史上初・優勝無しでの年間最多勝ということである。

 迎えた今場所、日馬富士、鶴竜、琴奨菊、照ノ富士といった上位陣が軒並み不調で横綱二人が休場という展開。白鵬も二日連続で不覚を食らう展開で、気づけばトップには稀勢の里がいた。九日目に同じ大関とはいえ、琴奨菊から「不覚」と言って差し支えない黒星を喫して「ああ、またか」というようなムードが漂ったのだが、白鵬がどうしたものか追走がやっとで並べなかった。  新聞が騒ぐ。スポーツ紙が騒ぐ。ワイドショーで特集される。相撲中継でも稀勢の里がメインに語られる。NHK7時のニュースでは連日、トピックスの中から何度も伝えられる。何度も見たこの光景。決していい方向には考えが廻らないものである。稀勢の里と「それ」を結び付けた瞬間、稀勢の里は負けるとすら思っていた。

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稀勢の里

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