2007年05月05日

トリプル世界戦観戦記~WBAスーパーフライ級編~

セレス小林との世界戦でアレクサンデル・ムニョスをはじめて目にしてからもう5年。当時ムニョスは現在のエドウィン・バレロのような破竹の勢いでKOの山を築いており、その頃がピークであったと思っていた。
その後、暴漢に脚を銃撃されたことなどもあって私の中でムニョスは「終わったボクサー」だった。その認識が間違いであったことを名城信男へ挑戦したWBAスーパーフライ級タイトルマッチで思い知らされた。

久々に見るムニョスに以前のスタイルとのギャップを覚えた。かつての荒々しいイメージは薄れ、力の抜けたナチュラルで伸びのあるパンチを放つ。それでいながらジャブは「ドスッ」と重厚感のある音を響かせ、名城の前進を止める威力がある。
連続KOの頃の爆発力はなさそうだが、それでも迫力充分。スムーズに連打が利きそうで厄介にも見える。右のボディーストレートを有効に織り交ぜ、バランスの良いオフェンスが出来るようイメージチェンジに成功しているような印象を受けた。

試合序盤、ムニョスはジャブとボディーストレートを有効に使い名城の接近を封じる。3ラウンドに名城が飛び込み際の左ボディーをきっかけにポイントを取ったと見るや、4ラウンド、5ラウンドとバックステップを多用し距離を取り絶妙にいなす。
もちろんただ下がるのではなく、重いジャブで名城にダメージを与えることも忘れていない。

中盤以降は名城がロープを背負う場面が増えてくる。徐々に名城にダメージが蓄積されたと見たのかムニョスはプレッシャーを強める。しかし、距離を取られていた展開よりは名城にもチャンスは増えた。
フック、特に左ボディーフックから顔面へのダブルが有効にヒットする。ただ、名城のパンチがヒットする際、必ずといっていいほどムニョスは手を出してくる。

ムニョスペースで進んでいた展開に変化が訪れたのは10ラウンドだった。左のボディーフックで突破口をひらくと顔面へのショートストレートで名城がクリーンヒットを取る。11ラウンド以降ムニョスが失速しただけに、明らかにダメージを負わせることに成功していた。
しかしムニョスはダメージをかかえながらも手を出し続け、正面で立ち止まることなく名城にとって嫌なポジションを取り続けた。試合序盤からボディーストレートを幾度もヒットさせ、スタミナを消耗させたことも名城の追撃を許さなかった要因だろう。

3-0の判定の結果、王座は移動することとなった。名城としてはムニョスの欠点でもあるボディーをもう少し有効に攻めて行きたかった。特に左ボディーから顔面へのコンビネーションが冴えていただけに惜しまれる。
名城のフックをダッキングでかわしつづけたディフェンス面を含め、バランスよく洗練された巧いボクサーとして私の目にムニョスは映った。「終わった」なんてとんでもない、迫力は影を潜めたものの今こそがムニョスのピークなのかもしれない。

posted by yanoshi |06:45 | ボクシング | コメント(0) | トラックバック(0)
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2007年05月04日

トリプル世界戦観戦記~WBAスーパーフェザー級編~

この試合に僕が願うことは、ただひとつだった。
挑戦者、本望信人選手の瞼の傷が開きませんように…

有明コロシアムで行われたトリプル世界戦の中でも、個人的に最も期待していたカード。WBAスーパーフェザー級タイトルマッチ、エドウィン・バレロ対本望信人。

王者バレロの強さを十分に認識したその上で、それでも本望の善戦を予感していた。ハイレベルな技術戦の応酬の末、6ラウンドから10ラウンドのKO決着を予想。
大いなる願望を込めて。

立ち上がりこそバレロのプレッシャーに押し込まれた本望であるが、クリーン・ヒットは許さず丁寧にブロックすることに成功しているように客席からは見えた。中盤以降は本望がリズムをつかみつつあるようにも見えた。
2ラウンドから毎回左目の上、右目の上、左目の下、右目の上とバレロのヒッティングによるカットという不安因子と引き換えに、ではあるが。

8ラウンド、ついにTKOの判断が下された。がっくりと膝を折り号泣する本望の姿が場内の大型ビジョンに映し出される。胸を締め付けられるような光景。
リズムをつかみつつあり、スタミナと手数に秀でる本望とすればここからが勝負どころだっただけに悔やまれるストップである。

試合終了後、有明コロシアムをあとにしようとした僕たちは、人垣のできている一角に気付いた。
近づくと試合のダメージの刻まれた痛々しい顔ながら真摯にファンに応対している本望の姿があった。

熱戦を労う者、写真撮影を求める者。どこかさっぱりした表情でそれらに快く応じる本望。
本望の日本タイトルを数戦観戦し、世界戦を熱望していた僕たちは本望がどんな思いでこの試合に臨み、どんな決断を下すであろうか想像できるだけに声をかけられずにいた。

多分人垣に囲まれた本望には聞こえなかっただろうが、僕たちはこの興行を観戦した素直な感想を口にした。

「MVPは本望だよ」

目線より高く上げたガート、きびきびしたフットワークのヒットアンドアウェイ、ヘッドスリップでバレロの強打をかわし、瞼をカットしてのTKO…
ストロング・ポイントもウイーク・ポイントもすべてひっくるめて本望信人というボクサーを世界戦の舞台でしっかり表現できていたのだから。

posted by yanoshi |05:53 | ボクシング | コメント(5) | トラックバック(0)
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2007年03月15日

ビッグマッチ決定!その影で残念なニュースも……

ビッグマッチ決定!
5月3日有明コロシアムにて「ワールド・プレミアム・ボクシング4~3大世界戦~」の開催が決定した。

WBC世界バンタム級タイトルマッチ
王者長谷川穂積(千里馬神戸) 対 同級5位シンピウェ・ベチュカ(南アフリカ)

WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
王者エドウィン・バレロ(帝拳) 対 同級2位本望信人(角海老宝石)

WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ
王者名城信男(六島) 対 同級1位アレクサンドル・ムニョス(ベネズエラ)

の3大世界戦。一般販売のチケットの最高額もリングサイド・アリーナ席およびスタンド席の3万円。各々個別の興行を開催してもこれくらいの価格が妥当と思われ、ノンタイトルでも5万円の興行が行われていることを考えてもお得感の強い価格設定だ。

中でも個人的に一番の注目カードはWBAスーパーフェザー級タイトルマッチ、バレロ対本望。1ラウンドでのKO記録で有名なバレロであるが技巧派でもあり、いわゆる一発屋ではない。本望のガードも目線まで上げる基本に忠実なスタイルであり、簡単には有効打は貰わないだろう。期待と願望も込めて手数の多いスピーディーかつハイレベルな技術戦になると予想する。
唯一心配な点を挙げるとすれば、本望の古傷である瞼をカットすることによるレフェリー・ストップだ。早いラウンドでのバッティングだけは是非とも避けて欲しい。

非常に楽しみなビッグマッチの陰で残念なニュースも伝えられている。王座を返上していた元WBCスーパーフライ級王者徳山昌守(金沢)の引退が正式に発表された。熱望していた長谷川との対戦が実現しなかったため引退を決意したようだが、この興行の長谷川の挑戦者が徳山であればこれ以上ないドリーム・マッチだったのだが……
そして何より徳山のボクシングがもう見られない。この事実だけでも純粋に残念である。

posted by yanoshi |12:17 | ボクシング | コメント(4) | トラックバック(1)
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2007年03月06日

粟生隆寛、より高みを目指すために

東の粟生、西の亀田
そう評されてから久しい。時を同じくして現れた東西の新鋭。
西方はメディアを追い風に一気に世界の頂点に駆け上がったのに対し、東方のホープは高校6冠の肩書きからすれば若干の遠回りを余儀なくされた感がある。

粟生隆寛(帝拳)にとってプロ14戦目にして訪れた初めてのタイトル挑戦。30歳のベテラン王者、難敵梅津宏治(ワタナベ)に挑んだ日本フェザー級タイトルマッチでその遠回りとも思えるキャリアが決して無駄ではなかったことを証明した。

序盤はガードを固め体勢を極端に低くし、クロスレンジでのラフ・ファイトを望む王者の土俵で応戦。有効打では粟生が上回っているように見えるが、梅津も急所に被弾しないよう細心の注意を払っている。粟生の左カウンターが的確にヒットするものの致命傷にまでは至らない。
ポイントをリードしているのは粟生であるが試合は梅津の望んだ展開。そんな試合の序盤から中盤だった。特に中盤に入ると粟生の足が止まりリング中央でのインファイトの占める比率が増していった。

だが後半7R、試合に動きがあった。粟生がヒットアンドアウェイに重心を置き、中間距離での展開にシフトしていく。7Rそして8Rと明確に粟生優勢のラウンドだったように見えた。ステップワークでいなしつつも鋭いカウンターで的確にポイントを奪っていく。
アマチュアでの実績、そしてプロでの13戦のキャリア。
とりわけ10回戦での判定勝ちを3試合経験していることも粟生の試合展開を柔軟に、そして冷静にしていたのではないか。

ただ残念だったのはあまりにも粟生の選択がクレバーすぎたことだ。粟生がポイントをリードしていたのは明らかであり、クロスレンジ以外で梅津に突破口がなかったようにも見えた。確実にベルトを腰に巻くためにはヒットアンドアウェイでいなすことがベストであり、事実その選択は功を奏し初挑戦にして日本タイトル奪取に成功した。
その選択の背景には名門帝拳ジムのホープとして負けられない、という精神的なプレッシャーも粟生にはあったのかもしれない。だが、粟生に期待されているのは日本タイトルの防衛を重ねることではなく更なる高みなのではないだろうか。戦前、ダウン経験のない梅津に対しKO宣言したように22歳らしい、そして挑戦者らしい野心を実践して欲しかった。

雑草の如く逞しく

この日も後楽園ホールに掲げられていたメッセージ。粟生の座右の銘でもあるこの言葉のように、さらなる高みを目指して逞しく成長して欲しい。

posted by yanoshi |06:17 | ボクシング | コメント(7) | トラックバック(0)
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