2009年01月31日
「バスケットボールが下手でもいい」 山梨学院大・梅嵜監督
(今回は山梨学院大学女子バスケットボール・監督の梅嵜英毅(うめざきえいき)氏のインタビューを紹介します。2008年11月、山梨学院大学にて。プロフィールに関しては、こちらの公式HPを参照ください⇒『http://www.ygu.ac.jp/sports/basketball/member_manager.html』)PHOTO BY YANAHI- ――現在、日本代表女子の不動のビックセンター・山田選手(現・JOMOサンフラワーズ)を育てられたそうですが、本当ですか ちょうど日立(日立ハイテクノロジーズ)が2部から1部に昇格したときですね。戦力外通告を受けていた山田は走力面が弱点でした。どこのチームからも声がかからない状態で、私のところに話が来ました。私は本当に(日立に)来てくれるのであればとりますよと言いました。日本人にない武器(身体の大きさやパワー)を持っているわけだから、そういう子は大事にしていきたい。それで本人に、ラストチャンスのつもりでがんばれるかと聞いたら、やりますと言ってくれました。 日立のとき、常に言っていたことがあります。ディフェンスは(山田を)カバーしてやれ。でもオフェンスはあいつがリバウンドを取ってくれる。得点を取ってくれるから。だったらお互い50/50(フィフティー・フィフティー)だろと。あいつが抜かれるから駄目だ。そういうことは(チームメイトに)絶対に言わせないようにしていました。出す以上は(ディフェンスで抜かれる)リスクは背負わなければいけない。 女の子で190cmあったら目立ちますよね。それで、最初は全く話せない子でした。なかなかしゃべらないし、すぐ我慢してしまう。東京で電車に乗るときも、身体を小さくして自信がなさそうにしていました。でもあの子は本当にがんばったと思います。練習もさせたし、コミュニケーションをしっかり取りあったし。怒るときも本気で怒った。彼女が心の扉を開いて話せるようになったのは何年目ぐらいかな……。3年ぐらい経ってからかな。本当にハートの良い子だったから。 今年(2008年)の春の選手権大会(関東大学選手権大会)に山田は応援に来てくれました。試合後、一緒にご飯を食べに行ったんです。帰り際、今までだったら身体を丸めて(目立たないように)下を向いて歩いていたのに、それが堂々と自信を持って歩く姿を見て、成長したなと感じました。涙が出るほど、嬉しかったです。 ――バスケットボールの監督を始めたきっかけを教えてください 大学の3年ぐらいのときから、もう自分がプレイヤーとしては駄目だなと感じていました。下から(下級生も)どんどん入ってくるし、その時点から指導者になろうという意識を持ち始めました。 ――なぜアメリカへ留学しようと思ったのですか いきなり、ただレールの敷かれた教師や指導者になるのもどうかなと思いました。だったらバスケットの本場ということを意識して、アメリカへ勉強しに行きました。日本人が過去よく行っているケンタッキー大学を選びました。 ――留学ということは英語に自信があったのですか いや、英語は全く話せませんでした。今はどうにか、会話は問題ないレベルになったと思いますが、最初は辞書がお友達でした(笑)今までの中で一番勉強したかもしれない。「習うより慣れろ」と現地の人にも言われたので。できるかぎり選手やスタッフと行動を共にしていました。それで、自然と覚えたのかな。 ――これまで女子の監督しかされていないようですが、男子の監督になってみたい気持ちは 留学から戻ってきて、最初は大学の男子でも見たいなと思っていました。ですが、なかなか条件に合う大学はなかった。当時、日立那珂(日立製作所那珂工場バスケットボール部)がコーチを捜しているという話があって、誘いを受けました。そのときは、女子か……と思ったんですが、夢であるコーチの第一歩なのでお受けしました。そこからずっと女子を見ていますが、良いお話があれば受けますよ。男子を教えるのも大好きなので。 ――野球少年だったという梅嵜さんですが、どうしてバスケットボールをやり始めたのですか 中2のときに野球部が廃部になってしまって、それからしばらくブラブラしていました。父親が柔道をやっていたので、柔道部は入らないかという誘いもあったんですけど。小学校の頃、柔道の寒稽古に参加したとき、その寒さにもう苦痛で(苦笑)そうしたら、バスケット部の先生から誘われました。一度、練習に来てほしいと。そこで練習に参加してみたんです。 当時、自分はそれなりに身長もパワーもあったので、リバウンドは取れるし、ゴール下シュートもある程度決められました。でも、フリースローがどうしても届かなかったんです。(自分より)身長の低い奴らが片手で軽々届いているのに。それがくやしくてくやしくて。それでバスケット部に入ることを決めました ――日体大の1軍にいたそうですが、どんなプレーヤーだったのですか 1・2年はベンチにいましたが、3年からはベンチに入れないことも多かったですね。合宿所長とかやりながらチームをまとめていました。 活躍はできなかったですね。自分は運動能力が高いわけではなかったから、ミスしたら次の出番はない。そういう環境でやっていました。基本は2番ポジションで、ポイントガードが不調なときは1番もやっていました。どちらかというと、得点を取る方が好きでした。やっぱりシューターは憧れでしたね。 ――どんなチームが理想ですか やっぱり、1対1の強い選手が育った方が良いと思う。その中に、走りであったり、チームプレイが加われば絶対強くなる。形(チームのやり方)は今の女子にはある程度必要だと思うけど、それだけでは勝てない。選手の良いところは見つけてあげたいですね。 ――今の山梨学院の選手は梅嵜さんが集められたそうですが、どんな選手に声をかけたのですか 1年間準備期間があったので、地区大会からずっと見に行きました。1年目の立ち上げはすごく重要だから、バスケットボールが下手でもいい。とにかく性格が良くて、バスケットが好きな子を集めたい。性格というのは気が強いとか、そういうことではなくて。心の奥底の部分で、とにかくハートの良い子という意味です。 こんなに伝統もない、何もないところに、声をかけて集まってきてくれたわけだから。大事にしなきゃいけないし、絶対に勝たせてあげなきゃならない。 ――学生と実業団を教えるにあたり、何か違いはありますか 特にありません。強いて言えば、練習量と食事が違うかな。学生は練習したいときに、いつも体育館が使えるわけではないし。やっぱり専用の体育館があるチームは強くなると思います。でもそれを言い訳にしてはいけない。今ある環境の中で、最大限の努力をするだけです。 ――監督をするにあたって大切にしていることは 指導に愛情がないと駄目だと思います。愛情を持ってしっかり接する。自分は大学の先生をしているけれど、常にプロという意識を持ってやっています。チームを教えていく中で、コーチと選手の信頼関係はとても大事です。いい加減な教え方は絶対しない。 ――3年でインカレ優勝、つまり日本一という目標を掲げている山梨学院。「そんなの無理に決まってる」という世間の声もあるようですが 目標や夢を持つのは自由です。そのぐらいの気持ちでやってるっていうことだから。逆にその気持ちがなくなったらやっている意味がないと思う。 ――監督をしていて、うれしかったこと 自分が教えた選手たちが何かしらバスケットボールに携わっている状況があることかな。会場で会ったりすると、「今ミニバスやってるから来てくださいよ」と声をかけてくれる。挨拶に来てくれて、ふつうにバスケットの会話ができることがすごくうれしい。人間的なことも含め、どんな勝利よりも、逆にそういう子たちが増えることがうれしいです。自分が教えてきたことが間違いじゃなかったなと自分で考えられるから。 ――逆に、つらいことを教えてください バスケットが嫌になって選手が辞めていくことかな。自分の教え方が足らなかったのかなと考えてしまう。たとえその選手に原因があったとして、自分が駄目だったのかなと。そういうときが一番つらいかな。 ――最後に、監督として必要不可欠なことは さきほどもお話しましたが、愛情を持って選手と信頼関係を築くことです。あとは、良い上司を見つけるってことかな。私の場合、留学のときも日立に入るときも上の方に助けられました。 <山梨学院大学女子 2008年の軌跡> 日時 試合 結果 勝敗 関東大学女子バスケットボール選手権 2008/5/10 VS川村女子大(4部) 予選リーグ 192-12 ○ 2008/5/11 VS県立医療大(4部) 予選リーグ 115-20 ○ 2008/5/18 VS慶應義塾大(3部) 予選リーグ 115-60 ○ 2008/5/20 VS青山学院大(2部) 決勝トーナメント70-58 ○ 2008/5/21 VS日本大(2部) 決勝トーナメント50-67 × 関東大学女子バスケットボールリーグ(4部) 2008/8/30 VS駒澤女子大(4部) 196-17 ○ 2008/8/31 VS清泉女子大(4部) 不戦勝 ○ 2008/9/6 VS明治学院大(4部) 102-26 ○ 2008/9/7 VS首都大学東京(4部) 120-32 ○ 2008/9/13 VS東京家政大(4部) 123-25 ○ 2008/9/14 VS十文字学園女子大(4部) 230-15 ○ 2008/9/20 VS共立女子大(4部) 163-12 ○ 2008/9/27 VS関東学院大(4部) 106-65 ○ 入れ替えトーナメント 2008/10/11 VS流通経済大(4部)準決勝 97-55 ○ ↓ VS桐蔭横浜大(4部) 決勝 91-52 ○ 3・4部入れ替え戦 2008/10/26 VS聖徳大(3部) 104-35 ○ 関東総合選手権大会 山梨県予選 2008/10/26 VS吉田クラブ 107-50 ○ 関東総合選手権大会山梨県予選決勝 VS都留文化大学(4部) 107-57 ○ 関東総合選手権大会 初戦 2008/11/29 VS千葉教員 68-76 × <過去の山梨学院の記事> ●大胆不敵な決断⇒http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yanahi-/article/87 ●思わぬ苦戦⇒http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yanahi-/article/82 ●3部は目標ではない⇒http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yanahi-/article/77 ●ベスト16止まり⇒http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yanahi-/article/67 ●4番不在の影響は…⇒http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yanahi-/article/66 ●大爆発 山梨学院の初戦⇒http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yanahi-/article/61 ●新生 山梨学院⇒http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yanahi-/article/59 <取材協力> 山梨学院大学女子バスケットボール部・監督 梅嵜英毅氏 <お願い> ここに掲載している写真・その他の無断、転用・複写は堅くお断りさせていただきます。
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posted by yanahi- |02:40 |
大学女子バスケ |
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