2006年07月29日
アガシが敗れてしまった。
Countrywide Classic3回戦。相手はフェルナンド・ゴンザレス。
試合開始は1時。現在気温は31度だが、コートレベルではもっとあったと思われる。月曜日は、コートレベルでは華氏110度、摂氏で43度(!?)もあったそうだ。
第一セットは6-4で落としたが、第二セットは6-3で取り返す。特に第二セットの中盤あたりからは、ゴンザレスのキックサーブ対策としてベースラインかなり後方で構えるようにしたが、これが奏功した。
今大会、第一セットで苦戦しながらもその中で攻略の糸口を掴み、続くセットは比較的楽に取るというのがアガシの必勝パターン。今日の試合でも、そのような見事な逆転劇が見られるように思えた。
第三セット、4-4で迎えたゴンザレスのサービスゲームでアガシが15-40とリードしたとき、コートのテンションは最高潮を迎える。特に15-30からのポイントは、コードボールが真上に跳ね、そして相手コートのネット際にポトリと落ちるというラッキーショット。6千を越える観衆の悲鳴に近い歓声と願いが、ボールを数ミリ押し込んだという感じだった。
だが、この圧倒的不利な状況に追い込まれ、ゴンザレスが吹っ切れた。コートを覆う敵意を切り裂くように鋭く叫びながら、逞しい腕をブンブン振り回してボールをひっぱ叩く。2本あったブレークポイントを凌ぐと、続くアガシのサービスゲームで0-40とトリプルマッチポイントを握る。ここから、渾身の強打の諸刃の剣であるところのミスショットが続いてこのゲームは取り損ねるが、第12ゲームでも勢いは衰えず40-15とリード。今度は、最初のチャンスで試合を決めた。
アガシの敗退が決まると、一度は落胆と哀切の交わった巨大なため息がコートに落ちたが、すぐにみんな立ち上がり、拍手と歓声に「感謝」「敬意」「愛情」「惜別」「懐旧」――あらん限りの思いを込めた。わたしの前で見ていた男性二人のうち片方は、落胆のあまりに両手を前の席にかけ、立ち上がらずにいた。するともう一人が、彼の手を引っ張り「おい! ちゃんと立って、挨拶をするんだ」と立ち上がらせた。
それら暖かいファンの思いに包まれながらアガシは、コートの四方に向け投げキッス+お辞儀の挨拶を終えると、スタンドに手を振ながら、そのまま通路へと消えていった。<続く>
posted by writing3 |07:58 |
テニス |
コメント(0) |
トラックバック(0)
2006年07月27日
を聞いて、やはり残念に思いました。
もちろん、年齢的なことなどを考えると仕方ないとも思いますが、テニス界全体で見てもかなり異質な経歴を持つ選手なだけに、そして何より日本を代表する選手の一人なのですから、寂しくなっちゃいますよね。
といいながら、わたしは別に浅越選手と個人的な面識はなく、今年のウィンブルドンのプレスカンファレンスが生の声を聞く初めての機会でした。
緒戦でキリレンコを破ったときはコート上で大粒のうれし涙をこぼした浅越選手ですが、会見場では破顔一笑。全仏後にリフレッシュも含めて伊豆で山篭り(?)したことや、「伊豆はハネムーンに取っておきたい場所だったんだけれど」などという秘話も披露してくれました。
今年のなかなか勝てない時期には「選ぶ職業を間違ったかと思った」というほどに落ち込み引退も考えたそうですが、その後高校の先輩でもある伊達さんに「アンタ、このまま辞めてええの!」と説教……もとい、激励されて再度奮起。みごとその成果をウィンブルドンの緒戦で出したのでした。
それでも、最近のテニス界の傾向については、
「もう5年前とは全くテニスの質が違う。とにかく(球が)速いんですよ! そして、みんなどこからでもエースを狙ってくる。力いっぱい叩いて“ボールの行方は、ボールに聞いて~”みたいな。“ちょっとは組み立てとかもしてよ!”って思いますもの。みんなも一度コートに立って実感してみるといいですよ!」
と、ベテラン選手としてのなまなましい声を聞かせてくれました。口調はチャメッケたっぷりですが、超加速するテニス界の奔流にもまれ、自身はキャリアの終わりに近づきつつあることを実感しながら戦うのが心身ともにいかにキツいか……ちょっとこちらの想像を絶するものがあるように思います。
「お疲れ様」を言うのは、まだ早いですよね。「プロテニスプレイヤー・浅越しのぶ」として残された時間を、存分に満喫して欲しいです。
posted by writing3 |07:23 |
テニス |
コメント(0) |
トラックバック(0)
2006年07月21日
先週発売の『Sports Illustrated』にアガシの特集がありました。
「アガシが、如何にしてパンクロッカースタイルの寵児からテニス界きっての人格者へと変容を遂げたか」という点に主眼を起き、その探求の旅に読者を誘う……というような形式で書かれています。
ただ内容自体は、彼の幼少期から現在に至るまでの挿話集といった感じで、特に新しくインタビューをとったということは無いようでした。
わたし的に新情報だったのが、アガシとグラフのラブロマンス譚。
要約すると、以下のような感じです。
2001年に結婚した両者だが、なんとアガシは、初めてグラフを見たときから彼女の存在が気になっていたとのこと。同世代にして早くも絶対的なチャンピオンになっていた彼女に対し、畏敬の念も抱いていたらしい。
そこで92年(アガシが22歳のとき)の全仏OPの直前に、彼はマネージャーを通してグラフと話がしたいと申し出た。
グラフのマネージャーは、当時“プレイボーイの異端児”というイメージが強かったアガシに対して難色を示したが、アガシのマネージャーは「彼は、実際にはすごく良いコだし、敬謙な信者でもあるんだ」と説得。そこでマネージャーは、グラフに伝言をすることを了承したらしい。
ところが何を考えたかそのマネージャー、グラフに「アガシが、宗教の話をしたがっている」と伝えたそうな!?
対するグラフの答えは「No, thanks」(そりゃそうだわな)。
その返答がアガシの元に届いたのが、ウィンブルドンの直前のこと。けんもほろろの拒絶にショックを受けたアガシだが、ウィンブルドンの男女の優勝者はパーティで一緒にダンスを踊る慣わしであることを思い出し、このチャンスにかけることに。
果たしてアガシの願いどおり、両者はそろってこの年のウィンブルドンで優勝(アガシの唯一のウィンブルドンタイトルには、なんとそんな裏話が隠されていたのだった)。
ところが、慣例に固執するはずのウィンブルドンが、なぜかこの年ダンスの伝統を廃止にしてしまったらしい。それを聞かされたアガシは、「おい! ウィンブルドンの伝統とやらはどうしたんだよ!」と、心の内で絶叫したんだとか。
ブルック・シールズとの結婚生活は上手くいかずわずか2年で終わりを告げたが、傷心のアガシの脳裏に浮かんだのは、かつて自分を拒絶したグラフの存在だった。アガシは再び勇気を振り絞り、グラフがトーナメントのために滞在していたフロリダの家のすぐそばにコンドを借りたそうな。しかもグラフと偶然会った風をよそおうため、彼女の練習スケジュールをもチェックしていたんだとか。もはや純愛というよりストーカーですがな、アガシ。
当時グラフには7年間連れ添った彼がいたが、アガシは彼女の家にバラの花束を送るなどの猛アプローチ。その熱意にグラフが根負けしたか、なんとか食事に誘うところまでこぎつける。だがそこで両者は、意外なまでに意気投合。中でも大きかったのが、両者の父親の存在。アガシもグラフも、それぞれ自分の子供を世界一のテニスプレイヤーに仕立てることに妄執した父親を持っていた。そんな親を持った者にしか共有し得ない感情が、両者をつないだのかもしれない。
その後の結末は、皆さんも知っての通り。
いや~、純愛だったんですな、アンドレくん! でも確かウィンブルドン優勝時って、アガシはガールフレンドをファミリーボックスに呼んでたと思うんだけれどね。
あと興味深かったのが、グラフの「あなたの直感を信じなさいよ」というアドバイスに対し、アガシが「僕の直感は、僕のことを信じてないんだ」というやり取りがあったというくだり。というのも、ウィンブルドンで最後の試合を終えた後の会見で、記者から「グラフは、引退に関して何かアドバイスをしてくれたか?」と聞かれたアガシは、
「僕たちは、すごく違うんだ。そこが、結婚生活がうまくいっている秘訣なんだけれどね。彼女は、自分が何をすべきか、どこに向かうべきかを知っていて、一度決断したら迷わず進んでいく。
僕は違うんだ。ためらうし、回り道をするし、何をするにも時間がかかる」
と答えていたのです。今回の『Sports Illustrated』の記事を読んで、「なるほど、こういうことか」と、ちょっとニヤリとしてしまいました。
posted by writing3 |19:03 |
テニス |
コメント(0) |
トラックバック(0)
2006年07月19日
テニスを取材してつくづく思うのが、
「テニスって、かなり割の合わないスポーツなのでは」
ということ。
今年のウィンブルドンでは、アメリカ勢が一人も二週目に残らないというほぼ史上初の珍事に見舞われたが、その事態を受けてジョン・マッケンローやジミー・コナーズは、
「テニスは、上手くなるのがとても難しい競技。ピアノの練習と一緒で、あらゆる技術を個別に反復練習しなくてはならないから、辛いことも多い。友達と遊びながら上手くなる、という類の競技ではないし、犠牲も多い」
とコメントしていた。
まったくもって、その通りだと思う。選手や「選手予備生」の多くは4~5歳くらいからテニスをはじめ、10代前半からすでに世界中を転戦しはじめている。学校も普通には通えないので、通信教育を受けている人が多い。親元を離れ、海外の有名コーチの元に移る例も少なくないし、コートを借りたりコーチを雇ったりで金もかかる。「家を売り払ってコーチ代を捻出した」という話もよく聞く。テニス選手、特に女子テニス選手の親には、相手選手を罵倒したり、自分の子供を公衆の面前で殴ったりし協会サイドから出入り禁止になったりするケースも多いが、このような背景と無縁ではないはずだ。
もちろんそれだけ多くの犠牲を払っても、プロになれるのは本当に一握り。しかも、仮に才能があったとしても怪我でそれまでになるかもしれない。そうなったとき、親は財産をなげうち、自身は学校にも通っていなかった選手に、いったい何が残るのだろう? あらゆるリスクが、常につきまとう。かなりハイリスク・ローリターンなはずだ。そんなことを考えていると、ふと「このままではプロテニスなんて競技、滅びてしまうのではないか」と不安になる。
でも、そんな様々な要因こそが、観る競技としてのテニスの魅力であるのは間違いない、と思う。これだけの艱難辛苦を乗り越え一流になる人たちは、ある意味、普通ではない。そんな“普通ではない人たち”の戦いを見られるのが、テニスという競技の魅力だろう。
テニスは一人で戦い、試合中にコーチの支持を受けることも固く禁じられている。タイムも基本的には取れず、定められたルールに則り淡々と進行していく試合の中で、戦術が見つからないときも精神的に乱れたときも、自分ひとりの力で乗り切らなくてはならない。そんな競技、たしかにある種異常な人間でなければ、やっていけない。
そんなわけで、テニスに興味がある人は、可能なかぎり会場に足を運んで見てみましょう(チケット代高いの知ってますが)
あんまり興味ない人は、まずテレビで大きな大会を見ることからはじめてみましょう。団体スポーツにはない、人間対人間の戦いがみられるはずです。
posted by WritingSun |13:19 |
テニス |
コメント(5) |
トラックバック(0)
2006年07月18日
今回からスポナビさんのブログを始めてみました。内田暁といいます。
先週までロンドンで開催されていたテニスのウィンブルドンを取材に行っていました。なので、一発目はそのあたりの話題を……と思って考えていたとき、やっぱシャラポワについて書こうかな、と。「テニス」って言って、みんなが一番知りたいのはシャラポワかと思ったんで、彼女のことを書けばみなさん読んでくれるかなと思った次第。
ハイ、こびってます。
シャラポワは、今回準決勝で敗れました。昨年と同様、ファイナルセットまでいっての惜敗。しかも相手のモーレスモは最終的に優勝し、「優勝者に敗れる」というのも昨年と一緒。一昨年のウィンブルドンでセンセーショナルな優勝を遂げて以来、ここ2年間4大大会での決勝進出はナシと、“ベスト4の壁”に苦しんでいます。
そんな状況だけに、シャラポワをとりまくウィンブルドンの状況も、2年前ほどは彼女に優しくはありません。何しろウィンブルドンは、伝統と格式、品位を重んじる大会。イチャモンをつける要因は、そこら中に転がっています。
たとえば大会放映権を持つBBCは、視聴者からのメールや電話で「シャラポワの叫び声をどう思うか?」というアンケート調査を行ったり、彼女のモデル活動に代表される芸能人的側面を取り上げ「テニスに集中できてない。このままでは第二のクルニコワになる」と眉をひそめます。
またロンドンは、タブロイド誌とゴシップの街、という側面も持っています。こちらは彼女の私生活やらを暴こうとしたり、シャラポワと他のロシア人選手の確執をやたらと取り上げようとします。
例えば準々決勝、対ディメンティエワ戦後の会見場で、こんなことがありました。試合はシャラポワの快勝でしたが、ある記者が「アナタの叫び声に対し、ディメンティエワが“うるさ過ぎ”と言っていたが、どう思うか?」と聞いてくる。一度は「気にしてない」と流そうとするが、それでも執拗に食い下がってくるその記者に対し、
「ちょっと、どこの新聞社? 『Daily Mail』? てっきり『The Sun』かと思ったわ。そんなことを聞かれるのって、この大会でだけ。いっつもあなた達よね」
と反撃。かなり辟易している様子でした。
しかも、この記者の質問には裏があります。ディメンティエワから前述の発言を引き出したのはこの記者で、しかも彼は「シャラポワの声はうるさすぎると思わないか? 審判は何か対応すべきではないか?」と、誘導尋問のごとくディメンディエワから否定的な言葉を引き出そうとしていたのです。対してディメンティエワは、「確かにうるさいとは思うけれど」と認めながらも、「彼女はジュニアのころからずっとああだし、今後変えるとも思えない。わたしが彼女に勝てば、そのときは何か発言するかもしれないけれど、負けているうちは言い訳にしか聞こえないから」と言っていたのです。
それをさも、「ディメンティエワが自主的に文句を言っていた」とし、対立を煽ろうとするタブロイド誌。コワイですわ。
ちなみに、BBCの解説者であるジョン・マッケンロー誌はこの「シャラポワ絶叫問題」について振られた際に、
「こんなことが議題になるのは、やはりウィンブルドンだからだろうね。ここはお客さんもみんな静かだし行儀がいいから。全米OP(NY)ならこうは行かない。みんな常にガヤガヤうるさいし、飛行機が上空を飛んでるから叫んだって聞こえやしないよ。
あと、ウィンブルドンは雨で中断になることが多いため、こうやっていろいろ話しをする時間が多いからだろうね」
と、ずばりその本質(?)を斬っていました。さすがです。
そんなこんなで、わたしは今テニスモードに入っているため、今後もテニスの話題が増えるかと思うのですが、いろんなところをチョコチョコつまみ食いしながら書いていきたいと思っています。
今後も、よろしくです。
posted by WritingSun |02:20 |
テニス |
コメント(0) |
トラックバック(0)