2007年03月19日
ナ・リーと、テニス“ツアー選手”について思うこと
ナ・リーは、昨年のウィンブルドンでベスト8に入った際、突如として 世界中のメディアの注視を集めてしまった。 彼女がグズネツォワを破った際、さらにはキムに敗れた後の プレスカンファレンスでは世界中のメディアが会見場に殺到し、 試合の内容のみならず、中国の政策や文化に関する 偏見と先入観に満ちた奇問を集中砲火。 あまりに突然の出来事に、面食らったような戸惑ったような ナ・リーの表情が印象に残った。 そしてこの出来事に関して、もう一つわたしの心に引っかかったことがあった。 それは、ウィンブルドンを取材に来ていた日本のベテラン記者の方の、 「このナ・リーの騒動、全豪でベスト4に入った際の伊達の騒動を 想起させるな」という一言。 ここからはわたしの想像もかなり入ってしまうのだが、 伊達公子は、メディアとの折り合いの悪い選手として有名だった。 “日本のメディア嫌い”とされていただけでなく、 海外のメディアも苦手としていたという。特に彼女を煩わせていたのが、 英語での会見やスピーチ。また、常に会見を要請されるような トッププレイヤーでありながら通訳を付けている選手というのは珍しく、 そのことについては、海外のメディアから揶揄に近い詰問をされることも あったという。同じように昨年のウィンブルドンでも、ナ・リーに対し、 「いつ、通訳なしで会見ができるんだい?」という、やや意地の悪い 質問も飛んでいたのだ。 テニスはインターナショナルなスポーツであり、 開催地や参戦選手の国籍も年々多様化している。 だが依然として、競技の中心地は欧州であり、北米である。 アジアの選手は、言語・文化・立地など、どの点をとっても やや不利な立場にあるのだ。例えばモーレスモなどは、アメリカの 若い文化と深みにかけるワインの風味に耐えられないのか、 アメリカの大会にはほとんど参戦していない。だがそれでも、 地元の欧州を中心に回っていけば、なんとかなるのだ。 アジアの選手は、そうはいかない。 杉山選手は恐らく大きな例外として、この部分は日本人選手をはじめとする、 多くの東アジア圏の選手を悩ませている。 話は戻って、昨年のウィンブルドンでわたしが思ったことは、 ナ・リーという才能あるアジア人選手が(やはりわたしは、日本に 限らず東アジア人選手には感情移入してしまう)、異文化への適応という 競技以外の部分で疲弊し、能力が磨耗されるようなことになりはしまいか、 という危惧であった。 だが今回のPacific life open、彼女は自ら、大きな一歩を踏み出した。 壁を築き異文化を遮断するのではなく、自分の方から壁を取り除き、 記者などの外の世界へと対峙したのだ。 具体的には、通訳を廃して自分で記者会見を行う、という行為である。 「なんだ、そんなことか」と思われる方も多いかもしれない。 だが、大きなことだ。間違いなく。 通訳ナシの最初の会見では、「通訳はどこにいったの?」 「英語を勉強するのとテニスをプレイするの、どちらが難しい?」 などと通訳や英語絡みの質問も多く聞かれたが、 その後の2日間、そのような人をやや小ばかにしたような質問は皆無だった。 また彼女自身も慣れてきたのか、最後の方は英語でジョークや 見事な切り返しなどを見せて、笑いを誘う場面も幾度も見られた。 人はやはり、自分の言葉が相手に直接届いていないとなると、 攻撃的にも、やや無礼にもなる。だが、相手が自分の言葉を理解し、 自らの言葉で返してくるとなると、聞く方の真剣味にも 必然的に違いが生じてくるものだ。 ナ・リーが今後、どのような歩みを見せていくかは解らない。 だが、今後の彼女の動静を注意深く見ていきたいし、 機会を見つけて、彼女の精神的な葛藤や周囲の環境の変化への 適応についても聞いてみたいと思っている。
- 共通ジャンル:
posted by writing3 |16:38 |
テニス |
コメント(1) |
トラックバック(0)
トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/writing3/tb_ping/44
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
テニス好きな者です
コメント投稿者ID :
僕はとても悔やんでいます。パシフィックライフオープンに取材で行っている日本人記者がいたなんて・・・知らなかった!!!僕も将来テニスをはじめいろいろな世界基準のスポーツを取材してみたいと思っています。そこで質問ですがどのようにして取材できるような仕事に携わるようになったのですか?教えていただければ光栄です。 P.S NASDAQ100オープンには行きますか?
posted by とり | 2007-03-19 18:10
コメントする
「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。
- Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
- mixiアカウントでコメント投稿
- Googleアカウントでコメント投稿
- Hatena IDでコメント投稿
- Biglobeアカウントでコメント投稿
- ログインしてコメント投稿
- メールアドレスでコメント投稿
※新規のメールアドレスによる投稿IDご利用は停止しました。
※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。
詳しくは以下2ページをご覧下さい
・【仕様変更】PCからのコメント投稿について
・ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」
※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。
詳しくは以下2ページをご覧下さい
・【仕様変更】PCからのコメント投稿について
・ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」


