山本尚子のスポーツ・ウォッチング

全日本フィギュア2日目:男子フリー

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女子SPの熱気がおさまる間もなく、15分後、男子のフリースケーティングが始まりました。

第2グループの先陣を切ったのは、最近、いろんな意味で注目されることの多いジュニアの本田太一選手。
あるテレビ番組で「僕はだれだれのお兄ちゃんとしてではなく、本田太一として認められたい」と言っていましたが、そのとおりの演技となりました。
全日本ジュニアのときよりずっと素晴らしい出来。
ジュニアは、シニアの大会に出場するにあたり、演技時間が30秒長くなっていることを考えると、100点満点以上の出来といってもいいかもしれません。

続く吉田行宏選手は、かなりの人気選手。
応援バナーがたくさん貼り出され、「ゆっち!」の声援も飛んでいました。
冒頭、3アクセルを成功させ、終盤ややスタミナ切れの様子も見せましたが、踏ん張っていました。

郡山智之選手も、声援が大きく聞こえました。
リバーダンスの終盤のステップでは、会場が盛り上がっていました。

磯崎大介選手は、なんと振り付けのところに「磯崎大介」の名前が。
自分の特徴を知り抜いているからこそ、演技の途中で手拍子や笑いがわき起こる楽しいプログラムに仕上がっているのでしょう。



第3グループは、世界ジュニアの出場権2枠を争う日野龍樹選手、宇野昌磨選手、田中刑事が顔をそろえました。
第1滑走の宇野選手は小柄なので、フェンス際を滑走していると、ときどき前から4列目に座っていた私の視界から消えてしまうことがありました。
でもそれ以外は、むしろ大人びて見えるくらい、訴えかけてくるものがありました。
3フリップで尻餅をついた以外は満足のいく出来だったと思います。

木原龍一選手も、渾身の演技でした。
冒頭の3アクセルをこらえながら降りると、あとは次々と技が決まっていきます。
満足そうな表情でした。

グランプリファイナルにも出場し、世界選手権への出場も期待されていた町田樹選手はSPでまさかの出遅れ。
この日のフリーでも、バランスを崩すことが多く、得点は伸びず、トータルで9位に終わりました。

田中刑事選手は、世界フィギュアの出場権争いでは、一番不利な立場にいました。
しかし宇野選手の好演技に刺激を受けたのか、3アクセルのコンビネーションの予定のところをミスした以外は、完璧でした。
ハードなイメージのある田中選手ですが、スローなパートでも「見せる」ようになってきましたね。
終了後、精も根も尽き果てたかのように膝に手を当て、苦しそうにしていましたが、トータルでは7位に食い込みました。

明暗分けたといっていいのか、日野選手は細かいミスが出ました。
納得のいかない表情で、キスクラではもしかしたら涙も見せていたでしょうか。
田中選手にはかわされましたが、宇野選手をわずかに上回り、10位。
世界ジュニアは、田中選手と日野選手のジュニアグランプリファイナルコンビの出場が有力となりました。

佐々木彰生選手は、以前見られた「荒削り」な部分が、いい意味で大分消えましたね。
個性あふれる演技をする佐々木選手は、ミスが減って8位に入りました。


さて、いよいよ最終グループです。
男子の最終グループは、栄冠をめぐる争いというよりは、二つの緊迫した戦いが交差していたように思います。
ひとつは、優勝をめぐる羽生選手と高橋選手の争い。
もう一つは、世界選手権の出場枠をめぐる3位争いです。
6分間練習では、4回転ジャンプと3アクセルジャンプの競演となっていました。

第1滑走の高橋選手は、SPでの10点差を追いかけるために、一つのミスも許されません。
彼がジャンプを一つ決めるたびに、会場は真っ黄色に。
これは、黄色い「DAISUKEタオル」のせいばかりでなく、黄色い歓声が飛び交っていたから。
ファンの期待に軽く応えてしまうのが高橋選手のすごいところ。
今季最高と思える演技で、なんと192.36の高得点。
続く5選手に大きなプレッシャーをかけました。

リンクが花束だらけで、集中しづらかったかもしれない中村健人選手のメンタルを心配しましたが、問題ありませんでした。
ひとつ目の3アクセルで転倒した以外は、ミスのない演技。
ジュニアからシニアに上がった当時はなかなか実力を発揮できずに苦労していたようですが、すっかり逞しくなりました。
コーチの樋口豊さんともども、笑顔のキスクラでした。

5位と出遅れていた織田選手は、4回転は1回のみ。
ノーミス以外は3位浮上の道はないという追い詰められた状況でスタート。
SPでは転倒した4トーループはクリアに決め、好調かと思われましたが、3アクセルに落とし穴が。。。
2回とも転倒という信じられないことに。。。
それでも一つ順位を上げて4位となりました。

無良崇人選手は、4トーループはお手つきのミスにとどめ、ひとつ目の3アクセルも決めました。
これは小塚選手をかわして3位浮上かと思われた瞬間、2度目の3アクセルがすっぽ抜け。
すっぽ抜けは転倒よりも痛い。。。
この時点では、すっぽ抜けの差で、無良選手は表彰台を逃したか、と思っていました。

しかし続く小塚崇彦選手は、6分間練習からどうもおかしい。
多少不安定でも、彼には美しいスケーティングがありますが、それにしてもミスが多すぎました。
これほど乱れるとはだれが予想したでしょうか。
織田選手にも抜かれ、5位に転落。
3位争いの勝利者は、無良選手となりました。
織田選手とは僅差ですが、世界選手権の代表はどうなるでしょうか。
ソチオリンピックの出場枠がかかるだけに、悩ましい面もありますが、今年の成長ぶりを買って、無良選手に期待したいところです。

トリは、高橋選手と優勝を争っている羽生結弦選手です。
しかし、ここまでの展開があまりに予想外で濃すぎて、素晴らしい羽生選手の演技になかなか集中することができませんでした。
6分間練習の間、羽生選手は4回転サルコウに苦労していました。
転倒しても転倒しても、挑み続ける羽生選手。
3回転サルコウに変える手もあったと思いますが、やはり彼は挑戦してきました。
冒頭の4回転トーループ、そして4回転サルコウ、クリーンではありませんでしたが、両方ともなんとかこらえて着氷しました。
それ以外はノーミスで、圧巻の安定感です。
SPでの点差があったので、フリーの得点が出る前に、私は羽生選手の初優勝を確信していました。

SP、フリーともに最終滑走の重圧をはね除けた羽生選手は「天才」と言っていいのかもしれません。
「努力する天才」という言葉はときどき聞きますが、彼の場合は「努力し、かつ自分で考えることのできる天才」なのだと思います。
アスリートは、ついついコーチの言いなりになるケースが多くあります。
指導者に任せっきりのほうが楽な場合が多いですからね。
でも、羽生選手の場合は、飽くなき探求心で、自分を磨き上げていっています。
どこまで伸びるのか、楽しみでなりません。

羽生選手は、5回目の出場で初優勝だそうです。
18歳で5回目の出場ということは、14歳から出ているということになります。
それは昨年の宇野昌磨選手、今年なら本田太一選手にあたります。
彼らがどう成長していくのかも楽しみです。

表彰式の直前、羽生選手と高橋選手がハグをしていました。
26歳と18歳、年齢差はあれど、国内に強力なライバルがいるというのはいい状況ですね。

男子のフリーの結果はこちら男子の総合結果はこちら

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全日本フィギュア2日目:男子フリー

初めてコメントさせていただきます。
今回の全日本男子シングルはとてもレベルの高い戦いが繰り広げられ、観ているこちらも手に汗握りました。
高橋選手の会心の演技のあとの、一種独特の雰囲気漂う中、最終滑走のプレッシャーに耐えて、丁寧に難易度の高いプログラムを滑り切った羽生選手の能力の高さと精神力に大きな拍手を贈りたい。今シーズンの成長には目を見張るものがあるのに加え、まだ伸びしろがあるという恐ろしさ。
彼が登場したことで、周りの選手も刺激を受け、男子シングルが面白くなりました。これからシーズン後半がますます楽しみです。

全日本フィギュア2日目:男子フリー

私は高橋選手優勝かと思ってしまいましたが、ショートの点差があまりにもありすぎましたね…でも、高橋選手のフリーの圧巻の演技は会場を飲み込みました。
また、織田選手は復帰して間もないですがクワドをクリーンに決めてきました。彼の努力の賜物だと思います。また、無良選手は素晴らしい4回転を持っているので次世代を背負う選手になるのではないでしょうか?今日は成長が見られて良かったと思います。
また、小塚選手は本調子ではなかったような気がしますが体調がわるかったのでしょうか。彼は実力を出しきれていないと思いましたね。
町田選手も本当の実力が出しきれず残念でしたが、彼は次世代のエースに相応しい品格を兼ね備えていると思いますので未来が楽しみな選手です!
男子フィギュアは本当に楽しみです。

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ブロガープロフィール

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山本尚子/Naoko Yamamoto 
スポーツビジネス・シンクタンク勤務を経て、スポーツ系ライター&テープリライター&パソコン要約筆記者(要約筆記とは、聴覚障害者の方に文字によってその場の情報を伝えるいわば同時通訳的役割)。
東京生まれの札幌、仙台育ち。スポーツを「わかりやすく伝えたい」がモットーです。
パーソナルコーチでもあり、「コーチング」の視点からスポーツやアスリートを見つめると、また新たな発見があります。
2010年2月、バンクーバー冬季オリンピック大会では、日本代表選手団の本部員として派遣されるという機会を得ました。バンクーバーの選手村で選手たちとともに過ごし、ともに戦った3週間強という日々は、ハードワークながらも、非常に貴重で充実した毎日でした。その経験を、今後のライター生活に活かしていくと同時に、微力ながらも、オリンピック・ムーブメント、スポーツ・ムーブメントに貢献できるよう努めていきます。
 
好きなもの:人物取材 
個人的には北海道日本ハムファイターズ、鹿島アントラーズ、浅田真央ちゃんのファンです。
 

・NPO法人日本オリンピック・アカデミー理事
・NPO法人日本スポーツ芸術協会会員
・財団法人生涯学習開発財団認定コーチ
・社団法人日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー
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