八九余談

最終意見陳述 ーセイバーメトリクスは面白い。そしてたまには役に立つ。

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 このブログもあと1週間ほどで記事の投稿ができなくなるとのことなので、最後に一つ記事を書いて終わろうと思う。

このブログではセイバーメトリクスを扱う記事が多かった。始めた頃から比べるとセイバーメトリクスの認知度は少しずつ増えてきてるように思う(セイバーメトリクス的な考え方はあまり広まっていないように思うが。)。 とはいえ、野球のデータを使って野球の分析をするファンというのは、まだまだ少ないように思う。このブログでも、半ばあたりから「同じような趣味の人が増えないかな」と思って、普及活動めいたこともやってみた(結果は惨憺たるものだったが……)。 そんなわけで、最後はセイバーメトリクスの魅力みたいなものをそれに取りつかれた人間が語ることで、セイバリストを増やせないかと思い、書いてみる。 やはりやってる人間が楽しそうにやっていないものは、魅力的には写らないだろう。

セイバーメトリクスの魅力は何と言っても、野球について自分がわからなかったことがわかるようになることだろう。特に誰かから頼まれた場合を別にして、自分が気になるテーマを好きなように検証できる。 それは、今年のひいきチームがどれくらい勝てるかとか、新たに入団した選手がどれだけ活躍できるかとか、そういったチームの勝敗に関わることでも、最もうまくチーム編成ができている球団はどこかとか、ある球団のドラフトから二軍での育成、一軍での起用をどうすべきかとか、そういったGM・編成目線で見たテーマでも、野球中継を聞きながら解説のしゃべったセオリーが本当に正しいのかとか、そういった野球の戦術全般に関するテーマでも、東京ドームでは空調操作が行われてるという都市伝説の真偽とか、そういったネタ的なテーマでも何でもいい。 そうしたテーマに対して、知的好奇心を満たせる、印象や他人の話でわかったつもりになるのではなく、自分自身の手と頭と目で確かめられるということにセイバーメトリクスの楽しさはあるように思う。

ある意味で不幸なのが、日本では草の根でセイバーメトリクスが普及するよりも、球団がそれらの研究成果を編成等に活かすことが早く進んだため、「セイバーメトリクス=最新のデータ収集機材により集められたデータを統計学の手法で分析し野球の戦術や選手の評価をするもの(使えるもの)」というイメージが広まってしまったのではないかと思われることだ。 もちろん、草の根で広がるのに任せたら何十年経っても荒野のままだっただろうことも否定できない。日本におけるセイバーメトリクスの普及にあたって球団が果たしたあるいは果たしていく役割は大きいだろう。 しかし、セイバーメトリクスとして紹介されるものは、どうもその研究そのものでなく、その成果物(指標だったり理論だったり)である傾向が強い。もちろん、そうした「使える」部分で興味を持ってもらえるのであれば、それにこしたことはないが、それが自分でデータを弄ろうと思い立つ上でハードルになっているようにも思うのである。

トラッキングデータなど詳細なデータが現れたことで敷居が高くなったとの意見もあるが私はそうは思わない。情けないことにトラッキングデータの分析には手が出せないが、10年前のNPBにおけるデータ収集が困難だったときからすらば、今は天国だ。 とにかく分析のために必要なデータが手に入らなかったのだ。 一例をあげると、守備力を少しでも正確に測ろうと、関与できた試合あたりの関与できたアウトの数をもとに評価するレンジファクターという指標を既知の問題点を解決するために様々な補正を加えていく場合に、最大の障壁が正確な守備イニング数がわからないというものだったという笑えない笑い話などがある(そこで守備イニング数を推定する手法が提案されたりしたのだが、割愛)。 そこからすれば、根気をつけてスキルさえ磨けば、前はわからなかった範囲がわかるようになる可能性が広がる新たなデータは宝の山に見える。 トラッキングデータなんかは技術論を語りたいファンからしても、自身の理論を支える根拠になりうるからか、セイバーメトリクスの裾野の拡大にもつながるだろうし。 したがって、入手できるデータが増えたことで敷居が高くなったとは考えがたい。それにデータが増えてもこれまでの先人たちの研究成果や理論を根底から覆すような発見はそうは生まれない。

私はセイバーメトリクスの普及に今のところ必要なものは、研究成果を発表できて、それに対する批判的なものも含めた意見が集まる場だろうと思う。ここ10年で見てもデータの収集はともかくとして、研究手法の理解を助けるサイトや書籍は増えた(英語で読まなくても良くなった部分が増えた)。今足りないのはそうした場ではないかと思う。 スポナビブログは私にとってそういう場だった(欲を言えばもっともっと意見をもらいたかった)。

 思えば、ここでブログを書き始めたのも当初はコメントを書いて質問をするためにアカウントを取得したこと、そこから思いつきで記事を書き始めたという、さしたる理由はなかった。それが前回の記事のURLの末尾からすると(消したりしたものが重複して加算されてなければ)334本もの記事を書くことになるとは、始めた当初は全く思っていなかった。  ここまでの記事を書くことになったのは、記事の大半を占める記録関連の「研究成果」の発表の場として、ここが使いやすかったというのが大きい。実際に記録を整理し、加工し、わかったことを文章にする中で、より理解は深まったし、もらえたコメントから学ぶこともあったし、野球ファンとしての自分自身の立ち位置が、一般的なファン(もちろん、ファンは一人一人違うのでこのような言葉でまとめてしまうのは適切でないかもしれないが)の多数派とどれぐらい近く、どれぐらい遠いのかということを自覚することにもつながった。

 これまで記事を読んでくださった方々、コメントをいただけた方々には本当に感謝です。

このブログの記事を読んで、少しでもセイバーメトリクスに、野球に、興味を持っていただけたら幸いです。

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趣味は野球観戦です。主にプロ野球(NPB)中心に思いつくままに書いていこうと思います。
気がついたらデータ関係の記事ばかりになってしまいました。
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(01月15日現在)

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