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ロンドン五輪 女子バレーボール「私的」スカウティングリポート Part6

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はじめに

 これまでは,全日本が目指した「速いトスによる攻撃」の効果を見るために,Running Sets(ブロックがつかなかった(1枚または0)のトスの本数)というデータに着目して分析をしてきました。

 今回は少し目先を変えて,アタックのデータを見ていきたいと思います。アタックのデータといっても,誰が何本決めたかという決定率ではなく,誰が何本打ったかというセットの配分を見ていきたいと思います。

 いくら速いトスを上げたとしても,誰にトスが上がるか予想できれば,相手のブロッカーは対応が可能です。これをさせないためには,他のアタッカーにも注意を分散させる必要があり,適切なトスの配分が求められます。

 当たり前の約束事ではありますが,それでは日本のトスの配分はどんなものだったかといわれると,随分と木村選手に集まっていたような印象があります。

 まぁこれは印象で,人間の記憶は案外いい加減なものなので,実際のところどんなものかを,他の国との比較をしながら見ていこうというのが今回の目的になります。


例として準決勝の日本対ブラジル戦

 まずは例として,準決勝の日本対ブラジル戦のデータを見てみたいと思います。データを以下の表1-1に示します。

表1-1
 FIVBの帳票のデータではEff%の順番で並んでいますが,ここではTotal Attempt(打数)の順番に並べています。  今回着目するのは,この個人の打数のデータで,チーム全体の打数に対して,どれくらいの割合を占めているかというデータを新たに計算してしめしています(打数/総打数)。このパーセンテージを見れば,誰にどれくらいのトスが配分されたのかがわかります。 ※レシーブが乱れたときなどのアタックもこの中には含まれていますが,そうしたアタックが意図したトスの配分かといわれるとそうではないと思います。しかし,意図したトスとそうでないものを分けることはできないので,これを誤差とみなします。今回のデータはそこまで数は多くは無いかもしれませんが,そうした誤差を含んだものであることは注意してください。  このデータについて,対戦相手のブラジルのものを以下の表1-2に示します。
表1-2
 ブラジルのデータでもトスの配分を示しています。このトスの配分のデータについて,配分の多い選手から1位,2位と順位をつけて,この順位ごとのデータを日本とブラジルで比較したものを以下の図1に示します。
図1
 このような形にすると,チーム間でのトスの配分の違いがよく見えてくると思います。日本の場合は,1位の木村選手にトスが集中しているのに対し,ブラジルの場合は,上位3名の割合がほぼ同程度であることがわかります。どちらが上手くトスを散らしているかといわれれば,やっぱりブラジルのほうではないでしょうか。 ロンドン五輪での日本のトスの配分  こんな感じで,ロンドン五輪での各試合のデータを見ていきたいと思います。以下に各試合でトスが配分された順位ごとに打数/総打数のデータを示します。
表2-1


 この方法でデータをまとめると,選手個人は見えなくなりますが,試合ごとのトスの配分を比較するのには向いています。このデータをグラフ化したものを,以下の図2-1と図2-2に示します。

図2-1
図2-2
 データが多いので,ごちゃごちゃしてわかりにくいですが,試合によってそこまで大きく変わるものではないといえると思います。  比較のために,ブラジルについても試合ごとのトスの配分のデータを求めました。以下の表2-2に示します。
表2-2


 このデータより,大会平均のデータを日本とブラジルで比較したものが,以下の図3になります。

図3
 日本の場合は,1位と2位の選手への配分がブラジルよりも高いのに対し,ブラジルは4~6位の選手への配分が日本より高くなっています。大会を通じたデータを見ても,やはりブラジルのほうがトスを散らしているといって良さそうです。 アメリカも追加  日本とブラジルの比較だけでは心許ないので,せっかくなのでもうひとつの上位チームであるアメリカのデータも見てみたいと思います。  日本とアメリカには対戦がなかったので,ブラジルとアメリカの試合結果を比較してみたいと思います。データを以下の図4に示します。
図4
 両チームは,予選と決勝で2回の対戦があり1勝1敗なのですが,それぞれ負けた試合のデータは青くしています。  日本の場合でもそうでしたが,勝敗によってトスの配分が大きく変わるといったことはこのデータからはなさそうです。  それでは,アメリカの試合ごとのトスの配分のデータを以下の表3に示します。
表3


 このデータより,アメリカの大会平均のデータを,日本とブラジルとあわせて比較したものを以下の図5に示します。

図5
 この3カ国を比較すると,トスを散らすことは大切といっても,30%前後のアタックを打つ中心選手というのは存在するということがわかります。  3カ国の違いは2番手以降に顕著で,日本の場合はブラジルとアメリカと比較して,2番手の配分が高くなっています。一方,ブラジルとアメリカは3番手以降が日本より配分が高くなっています。  これは日本の場合,いわゆる前衛レフトにトスが集中する傾向にあることを示しているのではないでしょうか。  せっかく速いトスをあげても,これでは相手ブロッカーはスタートのタイミングを早くするか,あらかじめ1歩2歩と寄っておけば対応が可能です。  こういう対応をされると,より速いトスを上げる必要が出てきますが,トス自体のスピードには限界があります。そうなると,次に削るのはトスの滞空時間ということで,どんどんトスが低くなってしまい,いくら速いトスをあげてもアタッカーが打ち切れなくなってしまいます。  先日スポーツナビに掲載された,中道選手へのインタビュー記事はこのあたりのジレンマが語られていたと思います。  こうしたデータを見ると,結局は「もっと他の選手にもトスを散らしていこう」という極めて当たり前な結論へと落ち着いてしまいます。でも,当たり前のことを当たり前に遂行するチームはやっぱり強いです。  中道選手のインタビューを読んでもトスの速さと高さについては,かなり悩んでいる様子が伝わってきました。こういうに詰まったときは,一度落ち着いて原点へと戻って,「いかにして相手のブロックを減らすか」というテーマを練り直したほうが良いのかもしれません。 おまけ  おまけとして,日本の試合別のアタックのデータを示しておきます(既に示したブラジル戦を除く)。今回は順位に着目したので,誰が打ったのかが不明確になっていますが,このおまけのデータで確認していただければと思います。
表4-1
表4-2
表4-3
表4-4
表4-5
表4-6
表4-7




おわりに

 以上,アタックの配分を分析してみました。日本・アメリカ・ブラジルと3カ国のデータではありますが,それなりに特徴を浮き彫りにできたのではないかと思います。

 正直なところ,速さを追求するあまり,トスを散らすという基本が疎かになっている印象を受けました。しかしながら,現段階でこのように課題が明確であるということは,先々を見越せば非常にプラスな材料だと思います。

 こうした課題をひとつひとつクリアしていけば,金メダルも少しずつ近づいてきてくれるのではないでしょうか。

 それでは,今回はこのあたりで


引用データ

 ・FIVB公式サイト

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データ分析
タグ:
バレーボール
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