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グラチャン2013“私的”スカウティングリポート Part. 2

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はじめに

 前回はアタックの分析をしましたので、次はセットの配分を分析しようと思っていたのですが、もう少しアタックのデータを分析してみたいと思います。

 というのも、以下の図1に示すアタックのデータをどう評価したものかよくわからないからです。

図1
 これは、前回にも示したものですが、問題はこのデータの迫田選手の成績です。MBのポジションに入った迫田選手ですが、ブラジルやアメリカのMBほど効果率が高いわけではありませんが、アタックの打数は他のMBにないほど多いのが特徴です。それでは、  迫田選手とブラジル・アメリカのMBを比較した場合、どちらのほうが勝利への貢献度が高かったのでしょうか?  残念ながら、現段階でバレーボールにおける「勝利への貢献度」を数値化したようなデータはありません。「こうしたら?」というアイデアはあるのですが、今ある帳票のデータでは数値化することができません。  という現状ではありますが、できることはやってみようというのが今回の分析になります。  今回注目するのは、各選手がアタックによってもたらした1セットあたりの得失点です。実際にどれくらいの得点をチームにもたらしたかというデータなのですが、効果率で計算することで見えなくなってしまうデータでもあるので、今回は効果率を合わせてみてみたいと思います。 分析データ  今回の分析に使用したデータは、グラチャン2013の女子の試合より、ブラジル・日本・アメリカのデータです。  この3チームに所属する選手のアタック効果率に着目し、データを比較してみたいと思います。アタック効果率は、以下のような方法で計算される成績です。  アタック効果率 = (得点-失点)÷ 打数  アタック決定率 = 得点 ÷ 打数  アタック決定率の計算方法を比較すると違いが良くわかると思います。効果率では、得点だけではなく、失点も含めた評価をしていきます。 アタック効果率と1セット当たりの得失点  今回は、迫田選手の成績を中心に見ていきたいと思います。前回の分析対象者の成績から、アタック効果率と、1セットあたりの得失点「(得点-失点)÷ 出場セット」のデータを以下の表1に示します。
表1
 比較対象として、ブラジルとアメリカのMBの選手のデータも載せています。  このデータより、まずは全日本チームの各選手の効果率と得失点をグラフ化したデータを以下の図2-1に示します。
図2-1
 迫田選手はMBのポジションでありながら、チームの中でも得失点が高いことがわかります。次に、全日本のMB3人のデータをブラジル・アメリカのデータと比較したものを以下の図2-2に示します。
図2-2
 迫田選手の場合、アタック効果率をみればブラジル・アメリカのMBには及びませんが、1セットあたりの得失点は、打数が多いこともありブラジル・アメリカのMBよりも高くなっています。したがって、得失点という観点から見れば、迫田選手のほうがMBとして多くの貢献をしているといえます。 チームとしてのMBの成績  迫田選手のアタックが、得失点において貢献度が高いことが確認できましたが、それではチーム全体のMBとしてどれくらいの貢献度をもたらしたかということで、チームのアタック成績をMBとOS(WS)・OPでそれぞれ合計したものを、日本・ブラジル・アメリカで比較したデータを以下の表2に示します。
表2
 MB得失点のデータを見ると、ブラジル・アメリカと比較しても遜色ないことがわかります。このデータより、以下のことが言えると思います。  1. 迫田選手以外のMBの得失点における貢献度が小さい  2. MBの得失点の貢献度は同程度であっても、この2チームには勝てなかった  1つめは、迫田選手の貢献度はブラジル・アメリカのMBよりも高かったのに、総合すると追いつかれているわけですから、迫田選手以外のMBの貢献度が低いために追いつかれたということです。MBを1人減らした新戦術ではありますが、まさか”MB0”にするわけにもいかないので、残る1人のMBのスキルアップが必要であるということではないかと思います。  ただし、MBのスキルが不足しているのか、それとも日本のシステムがMBのスキルを活かしにくいのか、ということからもう一度よく考えたほうが良いかもしれません。  2つめですが、日本の得失点の貢献度を見れば、MBもOS(WS)・OPもブラジル・アメリカと比較して遜色ない結果だったのに、なぜこの2チームに勝てなかったのかということです。  短期決戦なので、たまたま負けてしまったとも考えられますが、それならば通算成績はもっと拮抗してくるはずです。  “得失点”という貢献度が、勝敗とあまり関連しない可能性も考えられます。この件については、いずれゆっくり考察しようと思います。何しろデータが足りません。  というわけで、最後に全日本チームのアタック効果率と、得失点のデータを対戦カード別に見てみたいと思います。データを以下の表3に示します。
表3
 このデータを、グラフ化したものを以下の図3-1(MB)と図3-2(OS(WS)・OP)に示します。
図3-1
図3-2
 凡例をなんとなく国旗にしてみました。図3-2のデータは、OS(WS)・OPのデータですが、勝利したロシア戦も、負けたアメリカ戦も成績には大差がありません。一方、図3-1のMBのほうは、ブラジル・アメリカ戦での貢献度が極めて低くなっています。  したがって、大会通算成績では、日本のMBの得失点での貢献度はブラジル・アメリカと同程度ですが、ブラジル・アメリカ戦では十分な貢献をすることができなかったということがわかります。  ブラジル・アメリカといった強いチームに対して、以下にこの戦術を機能させるかというところが今後の課題となるのではないかと思います。 まとめ  以上、前回のアタックのデータの補足的な内容でした。迫田選手の得失点での貢献度の高さが確認できたことと、強いチームに対してはあまり機能していなかったことがわかったことが収穫ではないかと思います。




おわりに
 このレポートの目的ですが、現状の把握に加えて、今後の変化を見ていく上でのフォーマットを作り上げることもありまので、データをいろいろな角度から見ていくことが重要です。

 こんな感じでデータを見てはどうかなどの提案などいただけると助かりますし、帳票データではありますが、Part.0でも言ったように、必要とされる方にはデータを差し上げるので、自分でもやってみようという方も歓迎しております。

 今回は寄り道的な内容になりましたが、次回は予定通りセットの配分を見ていこうかと思います。


 それでは今回はこのあたりで

 余談ですが、野球の分析ではありますが、以下の電子書籍にちょっと参加しています。アマゾンのKindleストアで発売開始しましたので、興味のある方はどうぞ

「セイバーメトリクス・マガジン2」


引用データ

・FIVBオフィシャルサイト

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記事カテゴリ:
データ分析
タグ:
グラチャン
スポーツ統計
バレーボール

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この記事へのコメントコメント一覧

追加の分析ありがとうございます。

図3-1,2を見ると、MBが機能していた試合は勝ち、機能していなかった試合は負けたと言えそうです。たまたまかもしれませんが、それが勝敗を分けた可能性もあると考えられます。

迫田MB(あえてそう書きます)は、有効な試合が多かったが、事前に練習ゲームをやっていたアメリカや、十分対応されたブラジルには機能しなかったと考えれば、相手に対応されたらお終いの単なる奇策だったのかもしれませんね。

私としては、迫田の攻撃を他の攻撃とどのように組み合わせていくべきなのか、それを見つけていくのはこれからなので、アメリカ、ブラジルに対してもちゃんと機能するようになっていくのではないかと思っています(思いたいです)。

コメント返信

aaさんへ

コメントありがとうございます。

>これはサーブレシーブからトスという流れの精度や選択の関係もありますから、評価条件としてはイコールになりにくいですよね。

 バレーボールにおける個人評価を考えた場合、こうした背景がどのように影響しているのか、その中で個人をどう評価するのかというのは大きな課題ですね。
 CPVという雑誌で連載をしているのですが、次号はそんな話です。


>MBのスキルだけでなく、サーブレシーブの精度、セッターの選択と難しいパスの時のトスアップのスキルすべての面で考えなければいけないと思います

 これはその通りですね。しかし、全てをそのまま考慮して理解しようとすると、要因が絡まりすぎてしまいますので、一つ一つ紐解いて、最後に総合するという方法がベターかと思います。

 帳票のデータではできることに限りはありますが、できる範囲でやってみたいと思います。 

グラチャン2013“私的”スカウティングリポート Part. 2

いつも見させてもらってます。
得点数で貢献度を判断するか、効果率で貢献度を判断するかで印象は変わると思いますが、得点スポーツですから得点数で判断することが一番だと思います。ただ、個人個人を比べるとなると、打数の問題も出てきますが、これはサーブレシーブからトスという流れの精度や選択の関係もありますから、評価条件としてはイコールになりにくいですよね。

MBの貢献度を考える時に、スキルの部分を判断するのであれば、MBのスキルだけでなく、サーブレシーブの精度、セッターの選択と難しいパスの時のトスアップのスキルとかすべての面で考えなければいけないと思いますけど、MBのスキルのみに向いてるサイトやブログが多く見受けられます。こちらのブログは、いろいろなデータを元に分析されているようですから、そういう面も含めて分析してこの記事を補完した記事がアップされることを期待します。

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