舞浜宣言

- 浦和レッズ(天皇杯2回戦)

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浦和 8-2 浦安(7/12 18:04 浦和駒場スタジアム)

 16時の開門を1時間後に控えたころ、会場周辺のあちこちが明らかにざわめいた。波乱。番狂わせ。ジャイアントキリング。要するに弱者による巨人狩り。仙台のユアテックスタジアムで13時から行われていたJ1のベガルタ仙台と関西リーグ1部の奈良クラブの一戦で、格下の立場に当たる奈良が仙台を破ったとの一報は、遠く離れたここさいたま市の浦和駒場スタジアムにかけつけた観客も驚かせた。上から数えれば奈良と同じカテゴリーに位置する浦安SCとしては、J1で首位をゆく浦和レッズとの一戦に向けてこれ以上ない勇気を与えられたはず。

 天皇杯1回戦でJ3のグルージャ盛岡を撃破した浦安は、2回戦でこのビッグクラブと対戦することになった。浦安に関わる誰もが望んだ運命であろうけれど、いざ当日が近づけば緊張感も膨れ上がったに違いない。それもそのはず、例年であればJリーグ勢の初戦となる2回戦では格上となるプロ集団が控え選手にチャンスを与える形で戦力を落としてくるのが常であろうが、今回は別。ワールドカップにより中断されていたリーグ戦の再開を翌週に控えることもあり、実戦に備えてか浦和も限りなく最良な顔ぶれを揃えた。

 対する浦安もリーグ戦の半分を無敗で折り返した不動のメンバーが先発。今も浦和のサポーターから“聖地”と呼ばれるここ駒場のオーロラビジョンには、浦和が誇るスター軍団と浦安の選手の名が並んだ。こんな一戦、この先に訪れるとしたら何年後になるだろうか。

 早々から浦安は積極的に攻めた。開始1分にMF清水のミドルシュートが浦和ゴール脇をかすめる。いきなりのビッグチャンスにどよめく会場。夢の持てる始まりはしかし、10分後に厳しさを痛感させられる。浦和の右コーナーキックから主将のMF阿部勇樹がマークを逃れ、フリーの状態から難なく頭を合わせて先制点。千葉県市川市出身、東京学館浦安高を卒業した地元を知る人間に現実を突き付けられた格好だ。

 押される浦安も数少ない好機を生かそうとする。その姿勢が実ったのが37分。左サイドのDF山崎がゴール前にクロスを送ると、これに右MF上松が反応。右の膝付近に当たり損なったボールはワンバウンドして浦和の日本代表GK西川のタイミングをずらし、頭上を超えてネットを揺らした。浦安、J1首位の浦和を相手に同点弾。

 これで相手に火を付けたか。41分。この試合のここまでの出来に不満があったことを試合後のコメントで明かした浦和MF柏木が中盤で清水からボールを奪うと、左サイドに開いたMF李へ。ここから中央に送られたクロスをゴール前でFW興梠がワントラップから左足で決めて勝ち越し。失点の原因となってしまった清水が肩を落として膝をつき、チームメイトに抱え起こされる。普段は引っ張る立場の精神的支柱もうなだれる展開。

 浦和の攻撃は止まらず、前半アディショナルタイムには右サイドから送られたMF梅崎のクロスをゴール前で興梠がスルーし、後方から走り込んだ左MF宇賀神がカーブをかけた鋭いシュートで追加点。浦安は2点のビハインドを背負って後半へ。
 後半の立ち上がりに1点を返せば、まだ分からない。とコメントを出して挑んだ後半、浦安は早々の4分に左サイドでパスを受けたFW田中が対面する浦和DF森脇を振り切りシュート。わずかにポスト脇を逸れたものの、得点への気迫を見せる。
 しかしながら、ここから浦和の猛攻が始まる。7分に左サイドのFKを柏木がゴール前へ。一度は跳ね返すものの、こぼれ球を梅崎にダイレクトボレーで叩きこまれてしまう。打った本人も驚いた様子のファインゴール。以降、公式戦のはずが、まるでシュート練習のような展開に。
   13分。ゴールまで40メートルはあろうかという位置から森脇のロングシュートが決まる。不規則な軌道にGK永井も抑えきれなかった。22分には中央でボールを持った興梠が浦安の守備を背負い、態勢を崩しながらも左の李へ。李がクロスを送ると柏木が落とし、最後は興梠が押し込む。38分。興梠がパスカットしたボールをドリブルで運び、後方から飛び出したMF鈴木啓太へ。パスを受けた鈴木は、ペナルティエリアの外からワンタッチで永井の頭上を超えるループシュートを綺麗に放り込んだ。
 アディショナルタイム1分が経過しても浦和の攻撃は止まらない。右サイドを走るMF関根へ、中盤から李がオーバーヘッドでロングパスを正確に通す。いつだか『キャプテン翼』で見たようなプレーが現実に起きている。右サイドを疾走した関根はゴール前で浦安DFをドリブルでかわし、一度は永井にシュートを防がれるも、弾かれたボールを再び押し込んで8-1。残り時間はわずか。もはや勝利など非現実的。どのような形で意地を見せるのか。
 48分、コーナーキックを獲得。フィールドの角へ向かい、キッカーの村田が全力で走る。時間を考えてもラストプレー。浦和にクリアされたならば、主審が即終了の笛を鳴らすだろう。村田のキックでボールはゴール前へ。ここで合わせたのがエースであり主将であり関東リーグの得点ランクも首位をゆく清水。一矢を報いる形で頭で押し込み浦安に2点目。直後にタイムアップ。大敗に悔しさを見せる選手たち。力関係を見れば当然の結末とはいえ、負けるつもりで挑んだわけではなかろう。やるからには勝ちたい。ひと泡吹かせたい。その結果がこのゴールショー。盛大に散った。
 試合後、浦和の選手らがヒーローインタビューを受ける一方、浦安の選手らは浦和のベンチへ。Jリーグではあまり見られないが、アマチュアの試合では試合後に相手側へ挨拶へ向かうのも珍しくない光景。メーンスタンドの浦和サポーターから拍手が送られる中、浦和のペトロビッチ監督が浦安の選手一人ひとりと握手をするために出向かう。腰の引けた守備的な戦いではなく、真っ向からぶつかった姿勢が評価されたのか。かつてJリーグの試合で快勝したにも関わらず、「こんなサッカーを見せるために観客から金を取っているのか」と相手チームの戦いぶりに怒りをぶちまけたこともある敵将による最大限のねぎらいだ。
 入場者数は7275人。日本で最も敵地の雰囲気を味わえる浦和の会場としてはかなり少ない数字だが、普段は2000人も入れば大観衆と表現できる関東リーグで試合をする浦安にとっては貴重な体験だったはず。比例して取材に来るメディアも多かろう。ある媒体には「絶対に昇格してレッズと戦えるように」との力強い浦安の選手の言葉も掲載された。来週からはリーグ戦の残り半分が再開される。まだまだ浦安の挑戦は始まったばかりだ。

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