2006年09月30日
ドラフト外伝 球界の宝を苦しめた男達
東洋大姫路・林崎、青森山田・野田。 この二人には二つの共通点がある。 一つは楽天にドラフト一位指名を受けた田中投手を擁し、今年の夏準優勝という成績を残した駒大苫小牧高を追いつめたこと。 同校を応援した人にとって、この二人は決して忘れられない名前だろう。 そしてもう一つは、プロ志願書を提出しながら指名に洩れたことだ。 林崎は今年の夏、甲子園ベスト8の実績を残したチームの主軸選手。 173センチ74キロという決して大きくない体で、夏の甲子園優勝経験のある名門校の、3番遊撃手を勤め高校通算24本の本塁打を放った。 その24本目が準々決勝で田中から放ったもの。(実は今年の甲子園で田中から本塁打を放ったのも、1試合3安打猛打賞を打ったのも彼だけなのだ。) その試合チームは彼の本塁打など序盤で4点をリードするが、中盤6回に同点とされ7回に決勝点を入れられ敗れ去った。 しかし十分過ぎるほどの存在感を残した。 彼は7年前に母を亡くしている。 子供の頃から母に「毎日バットを振りなさい!」と教えられてきた。 それが彼の野球の原点だ。その誓いを守り、父とバッティングセンターに通いつめるなど誰よりもバットを振ってきた。 その成果は甲子園3試合、打率5割2本塁打という結果として現れた。「おかんが見てくれている。」というコメントも、甲子園での1打席1打席で、天国の母に恩返しをするという気持ちを忘れなかったから出たものだろう。 そんな彼は甲子園後の日本高校選抜の一員としてアメリカに渡った。 そこで「自分は野球が好きなんだ」と実感し、プロ志願書を提出した。今回その夢は叶わなかったが、次の目標はプロと決まったことだろう。近い将来どこかのチームのユニホームを着て、甲子園球場で本塁打を放つ彼の姿を見られるかもしれない。 野田は今年の夏、甲子園3回戦でエースとして駒大苫小牧と相対した。186センチの長身から繰り出す、140キロ台の速球とカーブ、スライダーを駆使した投球が彼の持ち味。 1回戦は春夏連続出場の延岡学園を完封している。 その勢いを持って臨んだ駒大との試合。チームは4回表まで6点のリードを奪う。しかしエースである彼が終盤捕まり、9回逆転サヨナラ負けを許す。 だが16安打を打たれながら最後まで淡々と投げ続けた姿は、多くの高校野球ファンの心に深く残るものだった。 そんな彼の投球は粘り強さが持ち味。 1回戦の完封勝ちも9回中1回しか三者凡退が無かった。 それを支えるのは回の先頭打者を抑える投球、それが出来ているからだ。 事実彼は2試合18回で3回しか先頭打者を出していない。 なぜ彼がそういう投球が出来るのか? 彼は1年の秋から多くの試合に登板し続けている。 だが柳田(現・千葉ロッテ)という大黒柱が先輩にいた為、第二投手としての投球であった。 しかし東北大会でほぼ全試合先発するなど、第二投手というよりダブルエースとして考えられていた。 昨春の甲子園で登板したこともいい経験になっているはずだ。 そして新チームになり、重要な大会・試合の多くに先発し完投してきた。 その経験から、勝つためには先頭打者を抑えるという考えに繋がったのかもしれない。 「昔からプロでやるのが目標」と語る彼もプロ志願書を提出。指名を受けることは無かったが、彼の経験に基づいた投球に魅力を感じている大学・社会人のチームは多いだろう。数年後、一回りスケールアップした彼を是非プロのマウンドで見たいものである。 高校時代活躍しながらプロに行けなかった、または行かなかった選手は過去に多くいる。 元巨人の江川のように、高校でプロに行かずスケールダウンしてプロに入った選手もいる。 しかしヤクルトの石川、ソフトバンクの和田のようにアマチュアを経験し大化けした選手もいる。 ロッテの久保のように遠回りしながらも、プロで結果を残している選手もいる。 今指名を受けなかったことは、決してネガティブな意味だけではない。球団スカウトが彼らを今が旬ではないと、判断したからかもしれない。 3年または4年という月日が彼らをどのように進化させるのだろうか?彼らが次に指名を受けるドラフトを楽しみに待ちたい。
posted by コフィー |01:29 |
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2006年09月27日
ヒールスターの最後
昨日の夕刊、衝撃的なニュースが飛び込んできた。 元ウルグアイ代表FWダリオ・シルバ右足切断。 同国で交通事故を起こし、手術で右膝下を切断したということだ。 現在33歳で、クラブチームを探していた(昨年イングランドのポーツマス所属。現在無所属。)彼の選手生命は、残念ながら思わぬ形で断ち切られてしまった。 この選手は175センチ73キロと小さいが、スピード・得点能力・ポジショニングに優れた名FW。そして南米の選手特有のずる賢さを持っていた。代表として49試合で14得点。02年日韓W杯出場に大きく貢献した。 彼について印象深いのが同W杯のフランス戦。 韓国で行われたこの試合、スタジアムは優勝候補フランスを応援するサポーターで溢れかえっていた。試合は有利と思われていたフランスが点を取れずに苦戦。エース・アンリが前半で退場したのも響いた。ウルグアイも守ってからのカウンターという、自分達のサッカーを展開し善戦していた。 そんな中彼はフランスの攻守の要、ビエラに対し後から危険なタックルを仕掛けた。レッドカードをもらわないように、クールにそして巧妙に。結果彼はイエローカードで済み、ビエラは足を痛めた。 後半15分で交代し、ピッチを去る時にはスタジアム全体からと言ってもいいほどの大ブーイングを受ける。しかし彼はまるで臆することなく、ニコリと不敵な笑みを浮かべながらピッチを去った。まるで「どうだアマちゃんども。これが俺達のサッカーだ!」と言わんばかりに。その姿はまさに極上のヒールスターであった。 そんな彼ももうピッチに立つことは無いだろう。 世界にはこんな悪い奴がいると教えてくれた選手。それだけに彼が、こういう形でいなくなることは実に寂しい。
posted by vantan_career_school_kohiyama |03:03 |
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2006年09月22日
高校生ドラフト 「甲斐の心優しき豪腕」
今年は夏の甲子園大会が例年に比べ盛り上がり、 その時活躍した選手の去就に注目が集まった。 だが甲子園に出られなかった選手にも実力者が多い。 静岡・島田商高の仁藤拓馬投手もその一人だ。 もし彼がドラフトで選ばれたとしたら、静岡の高校生として21世紀初となる。 99年の近鉄・高木投手(静岡高)、横浜・鈴木投手(掛川西高)以来だ。 では最近同県はレベルが低くなったのか? しかし夏の甲子園、21世紀7大会で初戦敗退が1度しかない。 決して弱い県とはいえないだろう。 だがその反面好投手・強打者を擁して強烈な印象を残すことも無い。 レベルの高いチームは多いが、突き抜けた存在がいない。 それが21世紀の静岡県の野球だった。 そこに久しぶりに登場したのが、仁藤投手という訳だ。 では彼はどのような投手なのか? 182/80という大きくがっちりした体から、MAX145キロの威力のある速球を投げ込む本格派右腕。春の県大会では投球回数以上の三振を奪い、10試合登板して5試合が無四球試合と制球力もある。その高い実力と素質を「東海ナンバーワン」と評価するスカウトもいる。 そして性格は、さながら心優しい田舎の野球少年みたいだ。 今年の夏の予選では、優勝候補チームの好投手と注目を浴びたが「実感が無い。」とあまり意に返さない。それよりも「みんなで甲子園に行きたい。」と言い続けた。また夏の大会中も正捕手が怪我した時も、「あいつが戻ってくるまで絶対に負けない!」と力強く語っている。そんな彼についてチームメイトは「エラーしても怒らなくて、むしろ自分のせいにして謝るような奴。」という。 自分のことよりも、仲間と楽しく野球をすることの方に喜びを見出すようだ。 そんな彼の性格。個人的には大好きなので、是非頑張って欲しい。しかし弱肉強食のプロの世界でいけるのか?そんな不安はある。 そんなことを考えながら、彼が静岡県高校生として21世紀初のプロ入りを果たすことが出来るのか?注目してみたい。
posted by vantan_career_school_kohiyama |22:56 |
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2006年09月20日
日本柔道の星
パリで行われた柔道のW杯。 日本は女子が3位、男子が5位と惨敗を喫した。 だが日本柔道の将来を担うであろう、有力な若手選手がいた。 女子48キロ級、中村美里17歳。現役の高校生である。 身長156センチの小さな体。 柔道選手の厳つさを全く感じさせないような、あどけなさを残すかわいらしい童顔。 ルックスだけでも、人気者になれる要素がある。 しかし彼女の試合中の表情、柔道はそんな外見のイメージとは違うものである。 試合中の彼女は全く表情を変えない。 勝っても負けてもその場で喜びを表すことは無い。 2回戦、急に場内で歓声が起きても 準決勝、自らに対しブーイングが起きても 彼女はどこ吹く風といった感じで、全く表情を変えないのだ。 それだけ試合に集中してるのか?マイペースなのか? 17歳とは思えない貫禄、ふてぶてしさがあり頼もしく感じられる。 そして彼女は自分から前に出て、相手を崩しに行く柔道。 初戦では開始1分足らずで一本勝ちを収め、準決勝ではアテネ五輪の銀メダリスト、フランスのジョシネに対しても臆することなく前に出て彼女を追いつめた。 こちらは若い選手らしく積極性に満ちている。 だがそんな彼女にとっても今大会は悔しさが残る大会であった。 二回戦は序盤からペースを掴み、有効・効果などのポイントを何個も奪いながら、残り1分50秒で技有りのポイントを取られ、それが響いての逆転負け。 準決勝も序盤から攻め続け、アテネ五輪の銀メダリスト相手にポイントをリードする。しかし残り1分、相手に肩車を決められ逆転での一本負け。 5分間集中し続ける集中力、スタミナという課題が見えてきた。 それだけにまだ若い彼女にとっていい経験になったはずだ。 しかし彼女は課題を残したまま終わる選手ではなかった。 3位決定戦。敗戦の原因を冷静に分析し、それを試合に生かす彼女がいた。 試合当初は相手の動きを冷静に見極め、あまり前に出ない。そして相手が焦って前に出てきた所に小外刈りで技有り、さらに焦る相手から冷静に一本。攻めるだけでなく、しっかり相手を見ながらの冷静な柔道を展開した。 敗戦のショックを引きずっててもおかしくない、同じ日の試合で成長した姿を見せたのだ。 こんなこと誰もが出来ることではない。 なぜそんなことが出来たのか?それには身体能力、柔道センス、若さだけでなく彼女の性格、環境が関係しているようだ。 彼女は男勝りで強気、怖いもの知らず、大の負けず嫌いだということ。大会前一度負けたジョシネについて、「もう一度やれば勝てる」と答えたことからもそんな性格が伺える。どんな環境、どんな相手に対しても臆することが無く、もう負けないようにと努力する強い精神力を持っているという裏づけにもなる。 また週に2度三井住友海上の柔道部に通っている。そこはアテネ五輪70キロ級の金メダリスト上野や52キロ級の銀メダリスト横沢のいる強豪柔道部。そんな中できつい練習に耐え、上野や横沢とも積極的に乱取りをするという。 高校生にして社会人の道場で練習し、スポーツ選手にとって大切なハートを持っている。そして1日の間に課題を修正できるほどの、早い成長を見せている。 谷亮子が長年君臨してきた48キロ級。そこに生まれた新たなエース候補。YAWARA2世と呼ばれる彼女は、元祖YAWARAを越えられるのか?今後の成長が楽しみだ。
posted by vantan_career_school_kohiyama |01:28 |
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2006年09月18日
ロッテの新兵器
今日9月18日、やや曇り空が包む千葉マリンスタジアムのデーゲーム。 千葉ロッテマリーンズ対オリックスバッファローズの一戦。 4位が確定したロッテと、5位か6位かのオリックス。 正直、消化試合といえる試合。 結果は4-0でロッテの勝利に終わる。 ただロッテにとって、来期に向け大きな成果のある試合だったといえる。 その理由はこの日のヒーローの活躍にある。 成瀬善久21歳。高卒3年目の左投手。高校時代は横浜高校で選抜準優勝の経験を持つ。 そんな彼が今日、オリックス打線を散発5安打に抑えての完封勝利。 毎回のように走者を出すが、後続をしっかり抑える危なげのない投球。とても21歳の選手とは思えない貫禄を見せた。清原・中村・北川ら大砲不在のオリックス打線相手ではあったが、十分評価できる投球である。左投手の少ないロッテ投手陣にとって、この日の彼の投球は来期に向け間違いなく明るい材料である。 そんな彼の投球成績を見ると意外なことが分かる。 この日は9回投げて8奪三振。今日現在78回3分の1投げて、83奪三振。奪三振率は9.54。 これは現在パリーグの奪三振王の、ソフトバンク斉藤和巳投手(奪三振率9.00)よりも優れた数字なのだ。当然ロッテのローテーション投手の中ではダントツの数字。(清水7.43、小林宏7.48、久保7.61など) もちろんまだ数字だけで評価できるだけの実績は持っていないが、三振の取れる投手だということに間違いはないだろう。 しかし彼の球速は130キロ台後半。変化球はスクリュー、カーブ、スライダー、チェンジアップなどあるが、空振りを取れるだけの変化がある訳ではない。事実今日の三振のほとんどはストレート。オリックスの打者達のバットは、130キロ台のストレートに何度も空を切った。 そんな彼の特徴はコントロールの良さ。四球を出さないコントロールではなく、コーナーを攻められるコントロールだ。ど真ん中付近ではなく、コーナー付近に球を配しいいカウントを作る。それに変化球でタイミングを狂わし、最後は厳しいコースにズバッと速球を投げ込み三振。球は遅くとも緩急を付け、コントロールされた速球があれば三振も狙えるということなのだ。 140キロに満たない速球で三振を取る、サウスポー成瀬。そんな彼の来期の活躍に是非期待したい。
posted by vantan_career_school_kohiyama |23:56 |
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2006年09月18日
消化試合の楽しみ
9月17日の日曜日。 雨の降る横浜スタジアムで行われた、横浜対巨人の一戦。 今期の優勝は絶望的な両チーム。 こんな時、一番の注目は活きのいい若手選手の活躍だ。 この日先発した2年目21歳、巨人の姜はその期待に応える投球。 6回途中を1失点に抑えた。 この試合の1四球を合わせて、彼は今年39回3分の1イニングで四死球を2つしか与えていない。今日の四球も大粒の雨が落ちる中でのマウンドだった。 彼が今年見せている抜群のコントロールを生かした投球は、来年以降の巨人投手陣にとって大きな戦力になりうるだろう。 だがアピールしているのは若手だけではない。 ベテラン選手にとってこの時期どう過ごすかが、来年の契約に関わってくるからだ。 それはかつての首位打者も例外ではない。 横浜の鈴木尚典、34歳。 97、98年と二年連続首位打者のタイトルを取り、石井豚朗・Rローズ・佐々木主浩らと共に強い横浜の中心選手だった男だ。 そんな彼もここ2シーズン、出場試合数が100を切っている。そして今年も主に代打としての起用が多い。 だが彼はまだ決して“終わった”選手ではない。 1点ビハインドの7回2死2塁の場面。ここまで好投の土肥の代打。彼に負けを付けない為にも、絶対打たなければならない場面。投手は左の林。しかし左対左の構図など彼には関係の無いことだった。 好調時には体の軸が全くぶれないフォームをしていた。この打席もそんな姿を見せる。真ん中低めの変化球にタイミングを外されること無く、体の軸はそのままにしっかりボールを捕える。打球は右翼線へ抜ける二塁打。 二塁ベース上の彼は、いつもの仕事を終えたかのように全く表情を崩すことは無かった。 “消化試合”と呼ばれるゲームが増える残りのプロ野球のゲーム。 将来有望な若手だけではなく、このようなベテランに注目してみるのもいいだろう。
posted by vantan_career_school_kohiyama |01:10 |
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2006年09月15日
覚悟
先日今年の甲子園を沸かせた2人の進路が決まった。 優勝校、早稲田実業のエース斉藤は大学進学。 準優勝校、駒大苫小牧のエース田中はプロである。 この決定は両者にとって最も良い決断だったのではないだろうか? 少なくとも私はそう感じた。 田中はプロ向きだが、斉藤は今プロに行くべきではない。 それはなぜか? それは両者の覚悟の差である。 斉藤は夏の甲子園大会では、他のどの投手よりも輝いていた。 実力は今ドラフトに選ばれるレベルには達している。 しかし彼は迷っていた。 夏の甲子園前の彼は、好投手の一人に過ぎなかった。 彼自身プロを考えて練習を積んでいた訳では無いはずである。 しかし甲子園の投球で本人にも 「ひょっとしたらプロで出来るかも」という思いが生まれたはずだ。 その自信を胸に臨んだアメリカ遠征でKOを喫し 「力不足だと感じた」と語った。 まさに一時の夢から現実に戻された瞬間だった。 そして結局彼は大学に進学する道を選んだ。 対する田中は前年の大会で胴上げ投手になっており しかも最後の一球で150キロを出していた。 彼はその時自分はプロに行くと、はっきり決めたのではないだろうか。 そんな意識で練習を重ねた彼は、秋の明治神宮大会では 150キロのストレートと消える高速スライダーで三振の山を築き 怪物の名を欲しいままにしてきた。 最後の夏は体調不良などの影響もあり、主役の座を斉藤に譲ったが ずっとプロを意識して練習してきたことには変わらなかった。 だからこそ自信を持って「プロしか考えていない」という発言が出来たのだ。 両選手とも能力は十分プロでやっていけるレベルである。 しかしプロというのは、野球で飯を食べていかなければならない世界。 成功するには、どんなことがあっても曲がることのない強い意志が不可欠だ。 今までプロを意識してきて、その考えを貫き通している田中。 今までプロを意識していないが、予想外の結果で迷った斉藤。 両者の覚悟の差を考えると、彼らが出した結論が最も良いだろう。
posted by vantan_career_school_kohiyama |01:55 |
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2006年09月02日
10年前のヒーロー
8月21日、阪神甲子園球場。 37年ぶり決勝戦が延長再試合となった2006年夏の高校野球。 涙を流しながらヒーローインタビューに答える早実の優勝投手斉藤。その時自軍ベンチ前、笑顔で仲間を励ましていたのが駒大苫小牧の投手田中だった。 「名勝負はいい敗者がいるから成立する。」 そう考えるとこれだけの名勝負が生まれたのは、田中の功績もかなり大きなものと言える。 あなたは知っているだろうか? 今からちょうど10年前の1996年の決勝戦。 これにも負けない熱い、名勝負が繰り広げられたことを。 この時の決勝戦、松山商対熊本工の試合は延長11回6-3で松山商の勝利。 だが熊本工は1点ビハインドの9回裏、2死無走者と追い込まれていた。これで勝負あったと誰もが思った中、打席に立った1年生打者が初球をフルスイング。打球はレフトスタンドに吸い込まれ同点。そして延長に入る。 もしこの本塁打が入ってなければ、この試合が名勝負として語り継がれることは無かったかも知れない。いわば10年前の「田中」はこの1年生打者であると言える。 では彼は今どこで何をしているのだろうか? 9月1日、場所は東京ドーム。 社会人都市対抗野球2回戦、日本通運対JR東日本東北。 強豪日本通運のショートのポジションにいる沢村幸明。彼こそその時の1年生打者その人である。当時6番だった打順は2番になり、無死2塁の場面でバントの構えを見せている彼がそこにいた。 10年前1年生だった彼も今は26歳。立派な社会人である。 思い切りよりも、勝つための細かい野球。「大人の野球」を覚える年になっているのだ。 しかし彼が10年前に見せた、思い切りの良さは彼の中にまだ残っていた。 1点を追う6回。先頭打者として登場した彼は、アウトローのストレートを思い切り良くすくい上げ、ホームランにしたのだ。そのスイングはまさにあの時のスイングそのものだった。まだ彼の中には思い切りという武器が残っていたのだ。 また同点で迎えた7回。2死2、3塁のチャンス。彼は追い込まれながらもファウルで粘り、1、2塁間にゴロを転がして見せた。あの時みせた勝負強さもまだ健在。そしてライトがホームへ送球する間、前の塁を陥れようと2塁へ走る。これはアウトになってしまったが、一つでも先の塁を狙うこのプレーに思い切りの良さと狡猾さを見た。 試合は彼の活躍で4-2で日本通運の勝利。 ヒーローインタビューで「チームが勝つために自分の出来ることをしただけです。」という沢村。 彼はチームが勝つために、昔の思い切りの良い自分と、今の細かい野球が出来る自分を使い分けている。 10年という月日は少年をプロフェッショナルに変えたのだ。
posted by vantan_career_school_kohiyama |04:20 |
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