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NYCマラソン:フラナガン、最後のレースで悲願の優勝

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「ニューヨークで優勝するのは幼い頃からの夢だった。春にボストンマラソンを走る予定だったけれど、腰を怪我したため(雪道で滑った影響)欠場。自分にはもう一度チャンスがある、そう思って今回のレースに臨んだ。だから今回の勝利は自分にとって大きな意味がある」

 怪我で苦しんだ日々を思い出したのか、涙が溢れ、言葉に詰まった。  リオ五輪で6位入賞したものの、メダルを逃し、その悔しさからメジャーマラソンでの優勝を次の目標に掲げた。しかし1月の大雪の後に滑って腰を痛め、10週間ほどリハビリに費やした。 「今まで怪我なく走ってきて、レースが終わるごとに次の目標を決めて、それに向かって練習を積んできた。でも怪我でボストンに出られず、ロンドン世界陸上の代表権も逃してしまった。ただ逆にそれで体をしっかり休めてマラソン練習に入れたのかなと思う」

 ハイレベルな練習とこれまでよりも高い場所での高地練習を経て、シューッマッカーコーチ曰く「ハイペースでもスローペースでも対応出来る最高のコンディションだったから安心してみていた」というようにベストな状態でレースに臨んだ。

 ハーフ通過は1時間16分18秒という超スローペースだったが、フラナガンは集団のなかで我慢強く走っていた。

フロントランナーのフラナガンはこれまで自ら引っ張ってペースメーカー的な役割をしてしまい、最後に抜かれるレース展開が多かったが、今回はコーチの「メアリー(ケイタニー)をマークしろ」と言う言葉通り、落ちついていた。

 レースが動いたのは23マイル(37km)。フラナガンは徐々にペースを上げてケイタニーとダスカを引き離す。24マイルでは15秒差、40km地点では25秒差まで開いた。しかしフラナガンは全くスピードを緩めず、最後の2.195kmを7分でカバーする驚異の走りで、後続を1分以上離し、2時間26分53秒で初優勝を果たした。アメリカ選手がNYCマラソンで優勝するのは1977年以来40年ぶりという快挙だった。    レース後にトレーナー、コーチとハグすると涙が溢れ出た。頬を拭っても、涙が止まらない。うれしさとこれまでの様々な気持ちがこみ上げてきた。

 シューマカーコーチはフラナガンの涙の意味をこう表現した。 「五輪、世界クロカンでメダルをとったし、米国記録も作ったけれど、メジャーマラソンでの優勝がシャレーンがほしかったものの一つ。これまで特別な瞬間はたくさん経験してきたけれど、マラソンの優勝をとても強く欲していた。腰を痛めて気持ちが落ちそうになったこともあったが、夏には新しいシャレーンに生まれ変わっていた。選手としてとても特別な瞬間になったと思う」

 トラックで1500m4分5秒、5000m14分44秒80、1万m30分22秒22というスピードランナーで、マラソン転向した際には、2時間20分切りも可能なのでは、と言われたが、思うような記録をなかなか出せなかった。

「距離走が苦手だったので、1レースごとに少しずつ練習量を増やして、年を経ることに距離を踏めるようになった。それが今回の結果につながったと思う」とコーチは話す。 

 フラナガンはこのレースを「ラストレース」すなわち引退レースと話していたように、勝って終わりたい、何としても勝ちたい、そんな気持ちも後押ししたようだ。    世界大会でのメダル経験を含め、フラナガンのキャリアは輝かしいものだ。しかし心がざわつくことも何度かあった。

 北京五輪1万mで銅メダルを獲得したが、のちに2位の選手のドーピングが発覚し、銀メダルを受け取った。並々ならぬ意欲で臨んだ2014年のボストンマラソンはハイペースで飛ばしたものの、結局ペースメーカー的な役割になり7位に終わった。2013年のボストンマラソンでテロを経験し、生まれ育った地元で何としても勝ちたい、ボストンの人々に笑顔をもたらしたい、そう思っていた。2時間22分02秒で自己ベストを出したものの、フラナガンには笑顔はなかった。その後、同レースで優勝したケニアのジェプトーのドーピングが発覚すると、フラナガンは怒りを言葉にした。

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及川彩子(オイカワアヤコ):NY在住ライター。オリンピックスポーツ、野球、サッカー、女子ゴルフなどを取材。雑誌、新聞、ウェブサイトなどに執筆。「月刊陸上」、「スポナビ」、「Number」、「スポルティーバ」、「サッカーダイジェスト」などに寄稿。NYシティマラソンの伴走者を描いた作品で2006年度さいたま市スポーツ文学賞大賞受賞。
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