2008年04月24日

誰が三沢光晴に引導を渡せるだろうか?誰が武藤敬司の息の根を止められるだろうか?

「介錯人~プロレスだからこその引退のかたち~」 BY クレメンタイン


レッスルマニアのフレアー引退の瞬間を目撃しただろうか。私は、あの試合を
通して、フレアーの凄さ以上に、介錯人を買って出たHBKの凄さを再認識さ
せられた。

スウィート・チン・ミュージックを決める瞬間、フォールに行く瞬間、そして、
叩かれる3カウント。WWEでは、たしかに決められたストーリーに則って、
リングは展開する。だが、その残酷な引退ストーリーのなかで、葛藤するHB
Kに、まさにありていの言葉で言えば、漢を見た。

3カウントが決まった瞬間、HBKはフレアーに抱きついた。そして、額にキ
スをする。そして、見せる切なく、やるせない表情と、男として、プロとして
果たす義務。そして、HBKはさっと、静かに、リングから降りていく。その
表情は、とても勝者のものとは思えず、まさに友の介錯を努めたサムライの表
情であった。

HBKといえば、長くアメリカンプロレスのトップに立ってきただけではなく、
本当にプロレスの幅の広い男である。プロレスのうまさだけでなく、そこまで
のストーリーを盛り上げるための方法も本当に心得ている。喜んでケツを出し、
突然ハルク・ホーガンのモノマネを始める。しかも、このモノマネがかなり似
ているのだ。だが、一旦試合が始まれば、名勝負を作りあげる。派手な入場と
は裏腹に、クラシカルな展開を持ち味とし、最後にスウィート・チン・ミュー
ジックへとつなげていく。この一連の流れは、やはり一流プロレスラーだから
こそ出来る芸当である。

そして、フレアーの介錯人を務められたのも、やはりHBKだけであっただろ
う。元々引退といったネガティブな話題展開の苦手なWWEのなかで、確実に
HBKは介錯を務めた。

だが、彼はこんなことやりたくなかっただろう。自分の手で、誰かを引退させ
るなんて、そんなことはしたくないはずだ。いまや引退が、引退でなくなって
いるプロレス界では、このような光景を見ることも少なくなってきたが、その
背景には、引導を渡せるだけの選手がいなくなってきているからではないだろ
うか。

誰が三沢光晴に引導を渡せるだろうか?
誰が武藤敬司の息の根を止められるだろうか?
中途半端な終わりではなく、完全なる介錯が必要なのだ。それが出来なかっ
たからこそ、引退を撤回する選手があらわれる。覚えているだろうか?
長州力の引退。とても引退するような試合ではなかった。あそこで必要だった
のは、誰かが完膚なきまでに叩き潰すことであった。アントニオ猪木は、小川
や藤田に引導を渡してもらう振りをしたが、結局は自分で自分の幕を引いた。


そんななか、偉大なるレスラー、リック・フレアーに引導を渡したときの、シ
ョーン・マイケルズの表情を私は忘れることはないだろう。


posted by クレメンタイン |10:42 | クレメンタイン |
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