2009年10月25日
とりあえず、技を繰り出す際に「ボマイエ!」と叫ぶことからでも始めてみてはどうだろうか。
「必殺技」 / 大鉄
幼稚園の年長組に通うウチの息子が一番好きな遊びは「仮面ライダー
ごっこ」だ。幼稚園ではお友達と一緒に遊んでいるらしいのだが、
休みの日などは家で私が相手を務めることになる。
私の子供時代と違い、今は「ガンバライド」などの影響で、ライダー対
怪人という構図ではなく、ライダー対ライダーという戦いが当たり前に
なっているようだ。
息子にとっては、戦っていること(正確には、戦っているふりをしている
だけだが)自体が楽しいのであって、本気で敵をやっつけようとしている
訳ではないので、なかなか勝負を決めにはこない。かといって、大人の
私が力に物を言わせて勝負を決めるわけにも行かないので、私は軽く反撃
はしつつも、基本的には息子の攻撃を受けてダメージを受ける演技を
し続けることが役回りとなる。
好い加減疲れてきた私が、息子の攻撃を受けて倒れ、負けを宣言すると、
息子は決まってこう言う。「今のはただの技で必殺技じゃないから、まだ
死んじゃ駄目だよ。」
確かに、息子が観ているヒーロー物の番組中では、必殺技をコールすること
が戦いを終わらせる条件になっている。息子が遊びでやりたいのも、本当は
その必殺技の真似なのに、遊びを長く続けるためにそれを出さずに我慢して
いるのだ。その前に遊びを終わらせられては堪らないのだろう。
時には、ライダーが必殺技を出す台詞とポーズを決めた後で「でもこれは
本当の必殺技じゃなくて外れるから、まだ死んじゃ駄目だよ」と断って
から技を出す程だ。ただのキックで倒れるなどというのは、到底認められる
行為ではないのだ。
ワールドプロレスリングで、やっとG1の試合の放送が終わったと思ったら
すぐにIWGP王者決定戦があり、その放送があったころには既に大谷の挑戦
が決定していて、結局中邑の初防衛まで続けて観ることになったのだが、
その一連の流れの中で必殺技としてのステータスを急速に高めたのが
ボマイエだろう。あえて「不自然なほど」とつけたくなる程の急速な認知の
され具合だ。
確かに、戦績だけを見るとボマイエは必殺技として申し分ない。何しろ全て
の試合がこの技で決まっているのだから。G・馬場の16文キックに匹敵する
必殺ぶりだ。しかしながら、記録上はどうあれ、試合の映像を観た限りでは
「必殺技」としての重みが感じれらない。単に「膝蹴りの良いのが入った」
程度にしか見えないのだ。
どの試合を観ても、中邑は試合を通して打撃技を多用している。そこには
勿論膝蹴りも含まれている。普通の膝蹴りと必殺技のボマイエとはどこが
違うのか?結果的にフィニッシュホールドになったらボマイエなのか?
また、対戦相手によっては打撃の応酬となる場面もみられる。その中で
明らかにボマイエより効いていそうな迫力のある打撃が入ったりすらする。
それを上回る説得力がないと、必殺技としては物足りないんじゃないか?
そもそも、必殺技にはそれをめぐる攻防というものが不可欠だ。
中邑は最後にボマイエをきめる為に、そこに繋げる為の戦略を持って試合を
組み立てなければならないし、対戦相手はボマイエを防ぐための作戦を
持って試合に臨まなければならないはずだ。ところが実際の試合を観ると、
お互いにそんなことお構いなしで試合が進められ、最後に唐突にボマイエで
終わるという感じしかしない。
フィニッシュになるという結果以外、実際に試合を行なっているレスラー
からすらも、ボマイエは必殺技としての扱いを受けていないようだ。
これでは観ている方が「必殺技」と感じられなくても無理はない。
だいたい、どうしてただの膝蹴りが急に必殺の威力を持つようになったのか、
全く説明がない。ビッグ・サカに弟子入りしてジャンピング・ニーの奥義
を伝授してもらったとか、アイアン・フィンガー・フロム・ヘルみたいな
凶器を埋め込む手術を受けたとか、何か理由付けがあっても良さそうなもの
だが。
それにしても、やはり致命的な問題なのは、見た目がただの膝蹴りでしか
ないことだ。16文キックだってただの前蹴りではあるが、馬場の前蹴りは
全てが「16文キック」だった。最後の一発だけが違う技だった訳ではない。
昔「リングにかけろ」というボクシング漫画が少年ジャンプに連載されて
いた。そこに登場する少年ボクサー達は、それぞれ必殺ブローを持って
いて、それらが何故必殺の威力を持っているのか、一応の理由付けは
なされていた。ただ、その中の一人である剣崎順というボクサーの必殺
ブローであるギャラクティカ・マグナムは、ある特訓によって開発された
という描写はあったが、他のパンチと比べて何故破壊力があるのかは
全く説明されていなかった。
おそらく、現実のボクシングの試合でギャラクティカ・マグナムが出ても
他のパンチと見分けはつかないだろう。しかし、漫画の中では不思議な
説得力を持っていた。それはなぜかというと、剣崎がギャラクティカ・
マグナムを繰り出すシーンは2ページの見開きで描かれ、背景が宇宙空間
のようになると共に「ギャラクティカ・マグナム!」という剣崎の叫び
(かどうか、漫画からだけでは実際は判別不能だが)が大きな字体で
記されていたからに違いない。
ウチの息子に中邑がボマイエで勝った試合をもし見せたら、きっとこう
言うに違いない。
「今のはただの技だから、まだ負けちゃ駄目だよねえ。」
「必殺技」というからには、小さな子供の目にも確実に「必殺技」に
映るものであって欲しい。
とりあえず、技を繰り出す際に「ボマイエ!」と
叫ぶことからでも始めてみてはどうだろうか。
少しはましになるかも。
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- プロレス
posted by upro |22:45 |
大鉄 |
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