2009年06月19日

泣きたくなかったら、勇気を持て。

「プロレスとは、桃源郷なり」  /  桃太郎

         「ビンタ」


 6月13日、試合中に受けたバックドロップがもとで、三沢光晴さんが亡く
なってしまった。 死因は頸髄離断。 首の骨が折れ、その中の神経までもが
完全に切り離されてしまったのらしい。 頸髄が切れるとすぐに心肺停止状態
になる。 たとえ、リングドクターがいても、AEDがあっても、三沢さんは
助からなかった。 あのリングの上では、もう誰にもどうしようもなかった。
 残酷な言い方だけど、三沢さんはいつかリング上で死ぬことになったのだと
思う。 今回の事故は受け身を取り損なったとか、打ちどころが悪かったとか
ということではないように思う。 きっと三沢さんの首は、長年の激闘で金属
疲労を起こしてしまいボロボロだったのだ。 全日本時代の激しすぎた四天王
プロレス、その後、NOAHを旗揚げしてからも、相手の攻撃を正面から受け
止めるプロレスを貫き通した。 その結果、三沢さんの首は、技を受け止める
だけの強度を失い、いつ折れてもおかしくない状態だったのではなかったか。
あのバックドロップは、最後のピースを指先で弾いただけ。 相手を死なせる
ほど危険な技ではなかった。 斎藤彰俊に罪はない。
 三沢さんを死なせない方法はあった。 それはリングに上げないことだ。
一昨年あたりから、三沢さんのコンディションの悪さは見えていた。 お腹は
ポッコリと出ていたし、試合中でも寝転んでいるときが多かった。 僕たちは、
そのことをもっと厳しく注視するべきだったのだ。 NOAHの選手たちは、
「社長、オレたちに任せてください」と言うべきだった。 それができなかっ
たのは、みんなが三沢さんに甘えていたからだと思う。 三沢さんの指示どお
りにしていれば間違いない、オレたちは三沢さんの後ろをついていきます。
それが正しいと思っていた。 三沢さんは一歩ずつ「死」に近づいていたのに。
 1988年4月22日、沖縄の奥武山体育館で、藤波辰爾はアントニオ猪木
にエースの座を譲るよう要求した。 自らの前髪を切ることで決意を表明し、
猪木の頬をビンタもした。 あのときの猪木は45歳。 藤波の行動に戸惑い、
本当に任せられるのか心配もしたようだったが、自ら主役の座から降りた。
翌年には国会議員になり、無事にプロレスからのセミリタイアを果たした。
 三沢さんも、誰かにビンタされたかったのではなかったか。 誰かが前髪を
切って「社長、オレたちに任せてください」と決起するのを待っていたのでは
なかったのか。 誰かがそうしていれば、悲劇は回避できたのかも知れない。
 全ては結果論である。 それでも残された者は反省し、学習しなくてはなら
ない。 油断していると、悲劇は何度でも繰り返される。
 泣きたくなかったら、勇気を持て。
 最後に、三沢さんが教えてくれたことだ。

posted by upro |23:34 | 桃太郎 | コメント(0) |
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