2008年06月22日

猪木の「ダーッ!!」が、森嶋には必要だった。

「プロレスとは、桃源郷なり」  /  桃太郎

       「ダーッ!!」


 6/14に、横浜文化体育館で行われたGHCヘビー級選手権は、森嶋猛が
杉浦貴を下して初防衛を果たした。 しかし、森嶋は試合内容に納得がいかな
かったらしく、リング上のインタビューで「ふがいない試合をしてすみません
でした」と発言した。 杉浦に対しても「申し訳ない。もう一度、男の勝負を
してください」と言うくらいだから、相当に不本意だったのだろう。 でも、
いったい、何が足りなかったのだろうか。
 思い当たる場面はあった。 フィニッシュのバックドロップの前に、森嶋は
ムーンサルトプレスを出している。 145キロの巨体が宙を舞う姿はド迫力
であった。 惜しかったのは、距離の目測を誤ったことだ。 大きく旋回した
森嶋の体躯は、横たわる杉浦を飛び越えてしまった。 上半身の一部がヒット
しただけの不完全な決まり具合になった。 森嶋はこのムーンサルトをきちん
と決められなかったことが、悔しかったのかも知れない。
 格闘技の世界でも、試合後に「すいませんでした、次は頑張ります」なんて
ことを言う選手がいる。 競技の場合は試合に勝つことが最優先なのだから、
観客にとって退屈な試合になることはあり得る。 それを謝るのは「謝罪」と
いうよりは「挨拶」である。 観客だって、地味な試合だからといって「カネ
返せ」と主張できるわけでもなく、結局は「次は頑張れよ」と拍手を送ること
になる。 お約束のマナーだ。
 プロレスの場合はどうだろうか。 プロレスラーはお客さんと勝負している。
いい試合を見せて、満足してもらって、晴れ晴れとした気持ちで帰ってもらう。
これは、旨い料理を出して満足してもらう料理人と似ている。 森嶋のように
「今日は、味付けの甘い料理を出してすいませんでした」なんてこと言ったら、
「だったら返金しろよ」ってことになる。 森嶋はリングの上であんな発言を
してはいけなかったのだ。
 すいませんは、控え室に戻ってから社長に向かって言えばいい。 リングの
上では、最後までお客さんに満足してもらうことを考えなければならない。
たとえ、不細工で不本意な試合をしてしまってても、元気に「ダーッ!!」と
でもやって、やりきったフリをしなければならなかった。 それがプロレスの
興行におけるメインイベンターの務めなのだ。
 森嶋の課題はムーンサルトじゃない。
 メインイベンターとしての自覚だ。
 猪木の「ダーッ!!」が、森嶋には必要だった。

posted by 桃太郎 |23:35 | 桃太郎 |
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