2008年11月30日
サッカー専用、または陸上競技場といったスタジアム施設は、会場によって観客席規模に万単位での差があるため、ここでは、先月13日にホームズスタジアム神戸で行われたサッカー日本代表の国際親善試合、キリンチャレンジカップ2008をモデルとして、チケッティング戦略を検証してみたいと思います。この試合は、これまで日本サッカー協会が観客動員の目標値としていた4万人よりも既存客席数が少ないスタジアムで行われたこともあり、事業コストのカバー率など、興行的にどの程度のリスクを負って実施されたのか、という点にも興味がありました。
正確な客席数を示す資料が公開されていないので、あくまでも客席配置図面からの推定数値ですが、以下のように、チケット券種別のシーティングを想定してみました。
※プレミアムシートは、座席数規模が少ないため、便宜上、対象から削除します。
・カテゴリー(1) @7,000円 約20% 6,000席
・カテゴリー(2) @5,000円 約25% 7,500席
・カテゴリー(3) @4,000円 約10% 3,000席
・カテゴリー(4) @3,000円 約15% 4,500席
・カテゴリー(5) @2,010円,1,000円,500円 約30% 9,000席
カテゴリー(1)と(2)のメインスタンドとバックスタンドで、完売状態とすれば、約8,000万円。カテゴリー(3)から(5)までの合計は、3,400万円から3,500万円程度となり、全席合計では、約1億1,000円程度の金額になります。過去に、日本代表のゲームは、凡そ1億円がそのイベントコストとされていました。その中には、大会全体、つまり、対戦国も含めた宿泊・移動に関する経費や告知等のマーケティング経費も含まれています。この数値を前提とすると、観客席規模は少なくても、満員想定でコストのリカバーが出来る規模で開催した、ということなのかもしれません。最低観客動員数として4万人を前提とした数値を計算すると、全く同じ比率での入場料金の設定だとして、約1億4,700万円となり、1億円をイベントコストとするならば、約68%の入場料収入がペイラインということになります。観客席規模がカテゴリー(1)と(2)という高額価格帯の所謂良い席が、全体の45%程度ですから、45%で凡そ7割のコストをカバーしていた計算になります。前回のアリーナ施設における検証では、30%のアリーナ席で、50%のコストをリカバーする計算をしましたが、若干の違いはあれ、価格帯の高めの良い席での入場料収入で、その座席規模の占める割合の1.5から1.6倍のパーセンテージ規模のコストをカバーしていることになります。
◇アリーナ施設 → 30%の最良席規模で50%のイベントコストをリカバー
◇スタジアム施設 → 45%の最良席規模で70%のイベントコストをリカバー
今回のシリア戦では、入場者数は25,004人と発表されていましたので、仮に販売可能席数規模を3万席ジャストとすれば、83%の販売率となり、金額にして約1億円丁度。ギリギリのペイラインとなります。もちろん、日本サッカー協会は、キャパシティがいつもよりも少ない会場での実施だったことで、完売を狙っていたでしょうが、83%の販売率は、若干少ない程度ですが、まあまあだったのではないか、と勝手に推測しています。
スタジアム施設の客席の配置構造は、建物自体の規模がマチマチであることと、メインスタンドの上部及びバックスタンドの上部にある座席エリアの規模に大きな違いがあり、一概には言えませんが、2002年に使用したワールドカップ会場の規模を平均化してみると、凡そ次のような比率での配置になります。
・メインスタンド(カテゴリー1の対象): 約21~22%
・バックスタンド(カテゴリー2の対象): 約23~24%
・メインスタンドの上部(カテゴリー3の対象): 約9~10%
・バックスタンドの上部(カテゴリー4の対象): 約15~16%
・ゴール裏のエリア(カテゴリー5の対象): 約30~33%
メインスタンド側に、プレス席や来賓用の席を用意することは、アリーナ施設におけるアリーナ面の座席の利用パターンと同様ですので、高額な設定となる座席の運営的な占有によるリスクは、比較的同じ条件であり、また、テレビ中継で映し出される座席エリアも、スタジアム施設ではバックスタンド、アリーナ施設ではアリーナ面の所謂カメラビジブルサイドのアリーナ席となり、このエリアの効率的なチケット販売が、会場全体の演出効果を高めるカギを握ることも似たような状況にあります。つまり、アリーナ施設では30%。スタジアム施設では45%を占めるエリアの最良席を如何に効率よく、確実に販売するための戦略を持ち、また戦術を構築していくか、ということが、チケッティング戦略のカギとなるように思うのです。
前回のアリーナ施設における検証も、今回のスタジアム施設における検証も、数値的な要素はあくまでも考え方を具体的に示すための土台として使用したに過ぎませんが、イベントコストを如何にリカバーしていくか、という視点に立てば、どの席をどの程度販売することを戦略の柱としてとして戦術を組み立てていけばよいか、という課題を明確にしていくことは重要になると考えます。それは、単なる効率的な面からの考えだけではなく、会場全体のエンタテイメント効果にも大きく影響するものであることは間違いないと思います。
posted by umekichihouse |08:25 |
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2008年11月29日
スポーツイベントにおけるチケッティング、つまり、入場料収入を得るためのチケット販売に関する一連の業務のすべては、単に、売りやすい金額でチケット価格を設定するわけではなく、また、ただ売ればいい、というものではありません。当然のことですが、イベント主催者の思惑と、その結果が全くかけ離れたものになることも珍しくはありません。チケッティングは、製造メーカーが消費財を作って市場で販売していく過程で実践している緻密なマーケティング戦術をも応用して、いまや非常に科学的に計画していかないと、売れるものも売れない時代になっています。
スポーツイベントにおけるチケッティングは、まず、儲けを導き出す、という考えに立脚せず、確実にその運営コストを回収していくレベルを見極めていくことが第一義だと考えます。つまり、イベントの運営の業務に非常に密接してチケッティングを計画していかないと、イベント全体の規模や内容の設計も、単なる“絵に描いたモチ”になりかねません。こうしたことからも、私の経験においても言えることですが、チケッティングの専門家とイベントオペレーションの専門家は、常に同じ目標に対しての同じレベルでの価値観を共有することも重要になると思います。
では、実際に、想定するイベント事例に関して、チケッティングの計画過程をシュミレーションしてみます。
◇イベント内容: インドアスポーツの国際大会(4チーム対抗戦)
◇大会期間: 試合日が4日間で全8日間の日程(1日2試合実施) ※試合間での入替はなし
◇大会会場: 最大4会場(同一会場にて2日間以上の興行を行う場合あり)
◇想定事業コスト: 1億5,000万円
※会場関連費は、仮計上レベルでの想定
※会場運営、競技運営、会場設営・制作、宿泊・輸送、その他運営業務一式
※収入計画: 入場料収入目標 1億円,スポンサーシップ収入目標 5,000万円
上記を過程条件として、チケッティング計画をシュミレーションしていきます。チケッティング計画における最低獲得目標額は、1億円、ということです。では、以下、チケッティング計画を段階別にシュミレーションしていきます。
尚、この前の段階で必要とされる「ターゲット分析」「ファン心理分析」「エリアマーケティング」などの事前検証は、別の機会で検証を試みることにして、ここではある程度の検証が終わった段階での作業を想定します。
<段階:①> チケットの平均販売単価の仮設定
過去の事例やターゲットとする客層を想定し、ある程度の幅でチケットの平均販売単価を設定します。ここでは、日本国内で行われている比較的平均値とみなされる価格規模である2,500円から5,000円の幅で仮設定し、それぞれの設定単価毎に必要とされる試合会場の観客席規模を検証していきます。
<段階:②> 試合会場の観客席規模の検証
試合会場の観客席は、アリーナ施設では、まず、運営関係、つまり、プレス席、来賓席、選手やチーム関係者席、そしてテレビ放送関連で必要とされるスペースなどを、全客席数に対して10%と想定し、つまり、90%を販売可能な観客席として設定します。運営で使用する客席規模の全体に対する割合数値は、会場のキャパシティが3,000席以下の小さなアリーナ施設では15%を超える規模になる場合がありますが、国際大会の実施ということを踏まえて、最低でも6,000席前後を最低規模レベルと想定して10%とします。また、販売可能な座席数である90%の規模に対して、その70%の販売率、つまり30%は売れない場合を想定して、イベントコストである1億円を回収する計画をシュミレーションします。70%という数値は、全客席規模に対して63%という割合になり、その規模は、空席が極端に目立つことなく、イベントとしてのエンタテイメント空間を演出するための最低限の動員規模であると言えます。この数値が50%を切ると、チケットの販売率が50%前後という結果であるということに等しく、その規模ではイベントの興行価値を維持することは難しくなり、スポンサーシップにも影響していくことになります。よって、63%はギリギリ及第点というレベルとも言えます。(もちろん、最低限という意味合いで・・・)
以下、先のチケットの平均販売単価設定毎に、試合会場の必要となる客席規模、販売可能な座席数規模、最低レベルでの販売座席数規模を想定していきます。また、チケットの平均販売単価は、最低レベルでの販売座席数規模における平均値として考えます。(実際に販売時点での平均値として捉えます。)
※A:チケット平均単価、B:全体の客席規模(「D」÷63%)、C:「B」X90%、D:「C」X70%(全体の63%規模)
※100席以下の数値は切捨てて表記します。
1. A:@2,500円 B:64,000席 C:57,000席 D:40,000席
2. A:@3,000円 B:53,000席 C:48,000席 D:34,000席
3. A:@3,500円 B:45,000席 C:40,000席 D:29,000席
4. A:@4,000円 B:39,000席 C:35,000席 D:25,000席
5. A:@4,500円 B:34,000席 C:31,000席 D:22,000席
6. A:@5,000円 B:31,000席 C:28,000席 D:20,000席
チケット価格の設定単価が低く抑えられれば、それだけ買いやすいことは明白ですが、それだけ多くの客席数を持つ会場の確保と、数多くの観客動員が必要となります。チケット単価が高ければ、巨大な客席規模を持つ施設を使用しなくても大丈夫となりますが、チケットが高額の設定となるため、観客動員は、想定するターゲットによっては非常に難しくなります。よって、ここからは、イベントが潜在的に持つ興行価値が、一般のファンの中でどのように評価されるのかを見極めてシュミレーションの対象モデルを選定する必要が出てきます。また、前回も取り上げたように、日本のアリーナ施設の実情に沿って現実的に考えていくと、平均で1万人以上の客席規模を持つアリーナ施設を使用することになると、1億円というイベントコストでは賄えなくなる危険性も出てきます。こうしたこともシュミレーションの前段階で踏まえるべき点ですが、1万人を越える施設の使用料は、1日単価で300万円から500万円以上であることが一般的で、6,000人や7,000人規模の施設の2倍から3倍、施設によっては10倍もの差があります。更に、1万人以上の施設は、ほとんどが多目的アリーナ施設であり、会場設営におけるコストも高くなり、施設の使用料金とともに、イベントコストを圧迫することになります。
ここでは、1億円のイベントコストが、ギリギリ1万人規模のアリーナ施設を使用する場合のコストを吸収できる規模として想定して、シュミレーションを続けます。
上記の一覧から、1万人規模のアリーナ施設を使用する前提に立って適正規模を見てみると、全体の客席規模が40,000席というレベルになり、チケットの平均販売単価が「4,000円」という設定が最も近い目標値となります。
<段階:③> シーティング計画の策定
アリーナ施設では、アリーナ面にある可動席や移動席等の設備を使用して、コートなどのゲームエリア周辺の座席を設置します。固定席として常設で備えられている座席は、そのほとんどは所謂スタンド席です。アリーナ席とスタンド席の割合は、施設の構造によって大きく異なる場合もありますが、国際大会などで使用されている6,000~7,000席規模のアリーナ施設を前提とすると、全客席数規模に対して少なくとも30%~35%程度の規模で、可動席または移動席の設備が備わっています。仮設での対処で増席することもありますが、ここではイベントコストを引き上げない前提で、既存の設備のみで対処できる施設を対象として考えましょう。よって、スタンド席は、全体の65%~70%となります。ここでは、30%のアリーナ席規模、70%のアリーナ席規模という想定で、シーティング計画を検証していきます。
②において対象としたチケットの平均販売単価は、「4,000円」ですから、相応の会場客席規模は、39,000席です。4会場使用する条件に当てはめると、1会場当り9,750席。約1万席です。もし、横浜アリーナを2回使用するとすれば、残りの2会場は、5,500席~6,000席クラスの会場を使用すれば客席規模は確保できる計算となる、ということです。ただし、ここでは、分かりやすくするために、1万席規模のアリーナを4会場使用する、という想定で考えます。すると、先の割合に当てはめると、アリーナ席は、30%で3,000席、スタンド席は7,000席となります。そして、最低レベルでの販売座席数規模は、アリーナ席で、約1,900席、スタンド席で、約4,400席となります。
また、入場料収入の最低目標値である1億円の50%、5,000万円を、アリーナ席の販売によりカバーする、という戦術を取る想定をします。何故ならば、確実に収入を得るためには、より価値の高い、販売効率を求めやすい席種の販売で、より多くの収入を得るための戦術を取ることの方がリスクは回避しやすいからです。
[アリーナ席 全体の63%:1,900席 → 50%:5,000万円/1会場当り1,250万円]
※2種類の席種(指定席)の設定(それぞれの座席規模は 50:50とする)
※1会場当りのシュミレーション
・カテゴリー(1)個席指定 @7,000円 X 950席 = 約670万円
・カテゴリー(2)個席指定 @6,000円 X 950席 = 約570万円
計1,240万円
※対目標額達成率: 99%
[スタンド席 全体の63%:4,400席 → 50%:5,000万円/1会場当り1,250万円]
※全5種類の価格設定により、内2種類は席種別、3種類は対象別として設定
※1会場当りのシュミレーション
・カテゴリー(3)エリア指定 @5,000円 X 880席(20%) = 約440万円
・カテゴリー(4)エリア指定 @4,000円 X 440席(10%) = 約180万円
・カテゴリー(5)自由席・一般 @3,000円
・カテゴリー(6)自由席・高校 @2,000円
・カテゴリー(7)自由席・中小 @1,000円
(5)~(7)の平均単価@2,000円 X 3,080席(70%) = 約620万円
計1,240万円
※対目標額達成率: 99%
◇1会場当りの63%レベルでの入場料収入想定: 2,480万円
◇1会場当りの63%レベルでの観客動員数: 6,300人
◇1人当りの平均入場料単価: 3,937円
◇4会場計: 9,920万円(対目標額達成率: 99%) ※63%販売において
◇90%販売(完売)時の入場料収入総額: 約1億4,200万円
上記シュミレーションでは、チケットの価格帯がほぼ通常の国際大会クラスのスポーツイベントと相応のものになりました。ただし、1回の興業当り、最低で6,300人の観客動員を計画しなければならないという命題も浮き彫りになります。つまり、チケットの価格の設定は理想的であっても、必要な観客数を動員できなければ、興業価値はそれ以下ということになり、チケット価格を上げても、観客動員規模を少なく見積もらないと、イベントコストは回収できない、ということなります。では、チケットの平均販売単価を「5,000円」とした場合のシュミレーションを試みたいと思います。
「5,000円」の場合は上記の5番目の会場規模ですので、31,000席、つまり、1会場当り平均で7,800席規模のアリーナ施設を使用すればよいことになります。その場合のアリーナ席は、63%レベルで、1,480席、スタンド席は同様に3,440席となります。
[アリーナ席 全体の63%:1,480席 → 50%:5,000万円/1会場当り1,250万円]
※2種類の席種(指定席)の設定(それぞれの座席規模は 50:50とする)
※1会場当りのシュミレーション
・カテゴリー(1)個席指定 @9,000円 X 740席 = 約670万円
・カテゴリー(2)個席指定 @8,000円 X 740席 = 約590万円
計1,260万円
※対目標額達成率: 100%
[スタンド席 全体の63%:3,440席 → 50%:5,000万円/1会場当り1,250万円]
※全5種類の価格設定により、内2種類は席種別、3種類は対象別として設定
※1会場当りのシュミレーション
・カテゴリー(3)エリア指定 @6,000円 X 690席(20%) = 約480万円
・カテゴリー(4)エリア指定 @5,000円 X 340席(10%) = 約200万円
・カテゴリー(5)自由席・一般 @3,500円
・カテゴリー(6)自由席・高校 @2,500円
・カテゴリー(7)自由席・中小 @1,000円
(5)~(7)の平均単価@2,400円 X 2,410席(70%) = 約580万円
計1,260万円
※対目標額達成率: 100%
◇1会場当りの63%レベルでの入場料収入想定: 2,520万円
◇1会場当りの63%レベルでの観客動員数: 4,920人
◇1人当りの平均入場料単価: 5,121円
◇4会場計: 1億80万円(対目標額達成率: 100%) ※63%販売において
◇90%販売(完売)時の入場料収入総額: 約1億4,400万円
上記のシュミレーションの結果をまとめると、観客動員規模が、6,300人と4,920人とで約1,400人の差があるだけで、チケットの販売単価の最高額の設定が、2,000円もの差を設けなければ整合性の取れたシーティング計画、つまり、チケット価格設定に伴う席種配置はできない、ということになります。何れの場合も、子供を対象としたチケット価格を無策に引き上げることは本意ではないでしょうから、その辺のバランスを考慮しながら、確実に目標とする入場料収入を確保していくことが計画立案の肝となる気がします。
また、会場の選定においても、日本のスポーツアリーナ施設は、限られた大都市にのみにしか6,000や7,000以上の規模の観客席数を有する施設はありません。もちろん、1万席を越える多目的アリーナ施設も同様です。現在は、仮設での対処なしに1万席以上の観客席を設定できる施設は、さいたまスーパーアリーナと横浜アリーナにほぼ限られます。もちろん、イベントコストという点から、仮設設置が容易な観客席システムを持つ施設は、比較的安価に仮設対策は取れるでしょうが、それでも、その設備の使用に関するコストなどが嵩むため、結果的にはどんなに入場収入が見込めても、コストに食われてしまうため、効率的なイベント財務管理は望めません。
こうした点からも、日本における国際スポーツイベントを行う際に、開催地自治体からの補助や助成を受けざるを得ないケースが必然となる状態は、興業を前提とした利便性の高い大規模アリーナ施設が出来ない限り変わらないでしょう。・・・とは言っても、現状の施設において、如何に入場料収入においてイベントコストをカバーしていくためのチケッティング戦略を構築していき、ターゲットインサイトなどのマーケティング手法を活用しながらの独自の戦術開発を行うことによる科学的なイベントオペレーションは、日本のスポーツレベルを上げていくためにも、また、そのための国際大会の招聘を行っていくためにも、重要なノウハウになっていくと考えます。
posted by umekichihouse |07:08 |
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2008年11月28日
アリーナ施設におけるインドアスポーツの場合、チケッティング戦略を策定する上で、最も大きな検討課題は、客席の配置状況です。端的に言えば、コート周辺のアリーナ面における客席規模が、入場料収入を確実に確保していくためには重要なファクターになります。アリーナ面の客席は、普通の体育館などの施設では、壁面収納型の電動、または手動による引き出し可動式のものか、客席ユニットが倉庫に収納され、使用時に然るべき位置に設置していく移動式のものがありますが、何れにおいても、イベント興行で使用可能な適切な設備を備えているアリーナ施設は、日本国中探しても、意外に少ないのが現実です。
また、インドアスポーツの場合、アリーナ席はイベントの運営の都合ですべての座席を一般観客に開放できとは限りません。プレス席の配置、来賓席の配置、競技を運営するために必要なスペースの確保など、少なくても客席規模の10~15%はイベント運営用として使用されます。よって、それだけにアリーナ席の規模が少ない施設は、イベント興行での使用に対して、収入の確保という点からも使い辛いということになります。何故ならば、コートに近い席が当然のことながらその座席のチケット価格も高めに設定され、それは需要が高い、ということに起因しています。従って、アリーナ面での座席規模を適切に確保できないと、イベント興行の運営のみならず、収入面での確保という点においても非常に苦労することになります。よって、その辺が、会場選定のキーポイントになることは当然なのです。
「無いならば仮設すればいいじゃないか?」、ということになりますが、それではいくら収入は確保できても仮設コストに食われてしまえば、経済的なメリットは低くなります。もちろん、ファンの観戦機会を出来るだけ多くしていくための措置として、プロスポーツ球団が行っている場合は多々あります。しかし、最初から仮設を前提としての会場計画を策定していくのは、あまり計画性のあるものとはいえないと思います。仮設対応の必要性は、会場施設の立地や、複数会場を使用する場合はそれらとの位置関係、また、会場周辺の環境などを総合的な検証した上での対処方法として検討されるべきものでしょう。
更に、いくらアリーナ面での客席規模が大きくても、スタンドレベルの座席規模が小さいと、会場全体の収容能力が低くなる場合もあり、当然のことながらある程度のバランスが必要です。何故ならば、スタンド席のチケット単価は出来るだけ低く設定し、数的な動員規模を増やしていくための受け皿として活用しなければならないからです。スタンド席の座席規模が小さければ、イベント全体のコストを吸収していくために、自ずとそれら座席のチケット単価をコストの合わせた設定にせざるを得なくなります。結果的に子供や家族連れ、そして一般でも気軽にチケットを買えるという価格帯には設定できません。これでは、金銭的には辻褄が合ったとしても、現実的な観客動員は難しくなるでしょう。それこそ、机上の空論に陥ってしまいます。
具体的なシュミレーションに移る前に、日本国内の主なアリーナ施設のいくつかを例に挙げて、それぞれの客席規模と配置状況を検証してみたいと思います。
過去の経験から、必要最低限のレベルのアリーナ面の座席規模は、1,500席前後程度であろうと考えています。そして、このアリーナ席規模の倍程度のスタンド席規模があれば、客の視点から考えたチケットの価格設定バランスは、比較的理に叶ったものとなりやすいと考えます。入場収入の確保できる規模を想定して、アリーナ席からスタンド席までのシーティング計画を策定する場合、安い価格帯の座席エリアには、より多くの客席数があれば、目標収入規模に対しても何ら問題は起こりませんが、客席規模が少ないと、収入確保は無視できないので、結果的に価格を高くしなければなりません。つまり、スタンド席でありながら、座席の位置や観戦環境から考えると、その座席の価値に見合った価格設定はなかなか難しくなるのです。こうしたことから考えていくと、過去の経験からも加味して、スタンド席の規模は、アリーナ面の約2倍前後程度、つまり、アリーナ席とスタンド席の座席規模の比率は、「1:2」に近い比率というところが適性であると考えています。ただし、5,000席以上の施設規模になると、施設の構造上の違いから、「1:1.5」という比率構成になる施設も多々あるようです。
アリーナ席規模を1,500席とすると、スタンド席規模は、3,000席となり、全体では4,500席です。そして、凡そですが、アリーナ席は、全体の客席キャパシティの「30%~35%+α」というレベルが適正規模という想定が考えられます。つまり、イベント興行的に最低限のレベルとしては、全体で「4,000席~5,000席」、ということになります。まずこの規模で、主な施設を具体的に検証してみると、下記のようになります。
◇山形市総合スポーツセンター
全体:4,386席(アリーナ可動席:1,440席、スタンド固定席:2,946席)
◇富山市総合体育館
全体:4,650席(アリーナ可動席:1,332席、スタンド固定席:3,318席)
◇岐阜メモリアルセンター(で愛ドーム)
全体:4,564席(アリーナ可動席:1,680席、スタンド固定席:2,884席)
◇グリーンアリーナ神戸
全体:4,852席(アリーナ可動席:1,814席、スタンド固定席:3,038席)
上記以外に、アリーナ面の座席規模は1,500席を超えるものの、スタンド固定席の規模が小さい施設がいくつかあります。以下の通りです。
◇越谷市総合体育館
全体:4,414席(アリーナ可動席:2,190席、スタンド固定席:2,224席)
※アリーナ席:全体の50%
◇所沢市民体育館
全体:4,272席(アリーナ可動席:1,920席、スタンド固定席:2,352席)
※アリーナ席:全体の45%
◇長崎県立総合体育館(アリーナかぶとがに)
全体:4,066席(アリーナ可動席:1,724席、スタンド固定席:2,342席)
※アリーナ席:全体の42%
越谷市総合体育館は、館内はすべて土足厳禁ということもあり、観客も対象となるため、あまりイベント興行には向いていません。また、上記に挙げなかった主な施設の中に、バレーボールやバスケットボールの国際大会も数多く開催されている浜松アリーナがありますが、この施設の既存のアリーナ席規模は、1,055席です。電動の壁面収納式で、座席の品質も非常に良いものなのですが、試合コートのエンド側に既存の座席設備が無く、仮設での対応を強いられます。その点から、上記には列記しませんでした。(浜松アリーナの客席規模は、4,600席)
では、5,000席を超える規模でのアリーナ施設ではどうか、ということを検証してみると、下記の通りです。
<5,000~6,500席規模>※アリーナ席が全体の30%を超える施設
◇北海道立総合体育センター(きたえーる)
全体:5,872席(アリーナ可動席:1,872席、スタンド固定席:4,000席)
◇青い森アリーナ
全体:5,371席(アリーナ可動席:1,980席、スタンド固定席:3,391席)
◇ぐんまアリーナ
全体:5,433席(アリーナ可動席:2,208席、スタンド固定席:3,225席)
◇松本市総合体育館
全体:5,132席(アリーナ可動席:1,536席、スタンド固定席:3,596席)
◇和歌山ビックホエール
全体:5,033席(アリーナ可動席:2,080席、スタンド固定席:2,952席)
◇神戸ポートアイランドホール(ワールド記念ホール)
全体:5,464席(アリーナ可動席:1,936席、スタンド固定席:3,528席)
◇舞洲アリーナ
全体:5,820席(アリーナ可動席:1,584席、スタンド固定席:4,236席)
<6,500~8,000席規模>※アリーナ席が全体の30%または2,000席を超える施設
◇エコパアリーナ
全体:7,262席(アリーナ可動・移動席:2,400席、スタンド固定席:4,862席)
◇三重県営サンアリーナ
全体:7,160席(アリーナ可動席:2,180席、スタンド固定席:4,980席)
◇日本ガイシホール
全体:7,000席(アリーナ可動席:2,000席、スタンド固定席:5,000席)
◇大阪市中央体育館
全体:7,322席(アリーナ可動席:1,390席、スタンド固定席:5,932席)
※スタンド席内が通路により座席区分がしやすい構造のため条件以下であるものの掲載
◇広島県立総合体育館(広島グリーンアリーナ)
全体:6,738席(アリーナ可動席:2,040席、スタンド固定席:4,698席)
6,000前後の規模を超える座席規模になると、スタンド席エリアが通路により2分されている構造になっている場合が多く、シーティング計画上、通路を挟んで座席のランク分けがしやすくなり、アリーナ席規模が全体の30%以下のレベルであっても、チケッティングにおける価格帯のバランスは取りやすくなります。
イベント興行のタイプによって、動員数の可能性の分析も踏まえ、会場選定を行うことが重要であるのは、イベント主催者側としてのチケッティングの効率と、来場する観客のチケットの買いやすさを追求したシーティングのバランスに、会場施設の要件そのものが大きく影響するからです。ここでは、大規模な仮設を必要とする多目的ホールは対象としませんでしたが、客席規模が大きければ大きいほど、そのことが重要な要件なることは当然です。
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2008年11月27日
プロスポーツリーグにおけるプロ球団の経営にとって、チケット、つまり入場券を売ってその収入を稼ぐことは、経営を維持・発展させていくための根幹となる業務です。そして、そのことは、あらゆるスポーツイベント、更に、スポーツに限らず、あらゆるイベント興行に言えることです。つまり、チケットを売る、という行為は、非常に重要なイベント業務となります。
また、チケットを売る、という行為には、さまざまな知識やノウハウ、そして営業から事務的な作業、更に今日ではITを抜きにしてチケット販売のシステムは構築できません。そこには、商品を販売するという行為以上に、緻密な戦略や戦術も要求されます。最近ではICカードタイプのチケットや、電車やバス、飛行機に乗る時と同じように、携帯など改札機にかざすだけで入場できる仕組みを採用し始めているケースもあります。単なる紙切れであるチケットの意味合いが、観客ひとりひとりの顧客情報の集積や来場パターンの調査・分析などにも応用されるまでになっていることも見逃せません。
では、スポーツイベントにおいて、チケットを売る、という行為の真意はどこにあるのか?。
実は、この真意を掴んでおかないと、チケッティングおける戦略や戦術は、全く絵に描いたモチにもなりかねないのです。その昔、そもそも“チケット=金券”という概念がありました。30年ほど前、私が学生の時代には、チケットはすべて印刷された紙に専用のスタンプ機械によって座席番号や座席の種類などが刻印されていました。1枚1枚手作業で行われていたのです。更に、それらチケットを売る場所も、いまのようにオンラインで買える時代ではありませんでしたので、特定のチケット販売所や販売委託場所にチケット販売を委託して売ってもらい、イベントの主催者のスタッフが、いちいち定期的に残券の状況を確認して回っていました。非常に手間のかかる業務でした。それ故に、チケット1枚1枚は、とても大事に扱われ、“チケット=金券”という考えが当たり前のように思われていたのです。そして、その概念が、チケットをその価格相当の商品として売っている、というチケットを売ることが独立した商売のような考え方を当たり前にしていました。
しかし、ぴあなどの登場によって、オンラインでチケッティングが管理され、しかも、いまではコンビニエンスストアなどで気軽にチケットを発券できるようになりましたし、インターネットを通じて、専用のウェブサイトから自宅にいながら購入できるようにもなりました。昔の印刷されたチケットを知っている人は、「印刷されたチケットの方が有り難味があるね。いまのコンピュータ発券のチケットじゃ、味気ないよね」、ともよく言います。確かに、印刷されたチケットは記念にもなりましたし、大事に取っておく人も多かったのでしょう。サッカー・ワールドカップなどの世界的なビックイベントでは、チケットの購入者の転売を防ぐ目的や、多くの需要に対する公平な販売機会を作るための施策として、1人当りの購入枚数を制限した応募抽選方式が取り入れられたり、チケットの券面に購入者の名前を印字するものもありました。ますます、チケットは、その価格に応じた高価なイメージがもたれるようにもなりました。
イベントに来場するチケット購入者は、そのチケットの価値をそのように大切にしてくれることは、イベントの主催者にとっても、イベントの見えない価値を上げていくことにもなるため、好ましいことです。しかし、イベント興行での収入を確保するための行為としては、チケットを金券、またはそれ自体に価値をもたせていく考えを持つことは、非常に危険なことです。何故ならば、イベント興行の主催者は、チケットを売る、ということが本来の目的ではないからです。彼らの本来の目的は、自ら主催する“イベントを売る”ということなのです。もっと現実的に言えば、イベント会場の座席1席を指定された価格で売っている、ということになります。よって、チケットは、その座席の位置や種類を記載した入場許可証明書であり、指定の座席や指定の座席エリアの内の1席を買った、という新幹線などの座席指定券のようなものなのです。
逆に言うと、“イベントを売る”という考えは、チケットを売る、または売りたい相手(ターゲット)に対して、イベントの価値を理解してもらい、認知してもらい、そしてそれを見たり参加する機会を得たい、という欲望を引き出す行為だと言えるのです。チケットとは、その権利を得たこと、つまり指定の金銭を支払ったという証明書であり、イベント来場時に必要な情報が記載されているものです。
時に、イベント興行の主催者は、最終的には紙切れとして発券されるチケットそのものを売ることに終始し、イベント自体の魅力を買ってもらっている、という考えを忘れがちです。プロスポーツリーグにおいては、ゲームの価値を買ってもらっている、という一方で、チームの魅力や価値を買ってもらっている、という考えも大切です。そのような考えに立脚すれば、チケットを売る、ための戦略や戦術は、商品を売る行為のそれとは全く異なるアプローチの仕方を考えなければならないのは必然となります。チケットが売れない、と嘆くことは、イベントそのものが売れない、もしくは魅力がない、と思われているのと同じなのです。もちろん、売れないからチケット価格を下げてしまえば、必然的にイベントの価値を自ら下げていることになります。
「チケットを売る=イベントを売る」ということがチケッティングという行為の真意であり、如何にイベントを価値ある物として売り込んでいくか、ということが、チケッティング戦略や戦術を構築していく上での根本的な考え方にならなければなりません。必要なのは、イベントそのものを売り込むためのマーケティングなのです。
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2008年11月26日
数万人規模のスタジアム。そこは、2万、3万、4万人という観客で埋め尽くされる。一方、5,000人にも満たないアリーナ。そこは、半分以上が空席の少し寂しい空気が漂っている。この差は何なのか?。
チケット価格はそれほどの差はありません。しかし、万単位のスタジアムのキャパシティの中には、やはり万単位の観客が集まります。少なくとも、1万前後は・・・。それが、インドアスポーツでは、スタジアムのキャパシティの1/10以下のアリーナですら、空席が目立ってしまう。これは、単にスポーツとしてのコンテンツの力の差だけなのでしょうか?。つまり、観客動員の力の差だけなのでしょうか?。私は、ほとんどが後者の立場で仕事をしてきた人間ですので、プロ野球やJリーグのスタジアムの観客席を見て、常に単なる素朴な疑問としてその様子を眺めていました。人気の差、と言えば簡単ですが、本当にそれだけなのかどうか?。
チケットの価格はほぼ同じでも、バスケットボールやバレーボールのトップリーグの試合には、3,000~4,000のキャパシティですら満員になることは稀です。エンタテイメント華やかなバレーボールの国際大会は、テレビパワーという強力な飛び道具があり、これとの比較は些かレベルが違うとは思いますが、この華やかなテレビイベントも、1万人にも満たないアリーナのキャパシティを、連日満員にすることは至難の業です。観客動員力が落ちてきたといわれているサッカーの日本代表の試合でも、最低だった時にでも2万人を切ることはありません。その線を割っていたら大事になっていたことでしょう。それに比べて、バレーボールですら、国際試合でも先の通りに満員でも1万人を割る数字です。アリーナとスタジアムでは収容能力が違うから、というのは正しい考え方なのでしょうか?。
かつて携わっていたNBAの公式戦を開催した際に、1994年までは、来日するチームへのホームゲーム入場料収入の保証額は、2チーム合計で凡そ2億円弱程度でした。それが、1996年には、ある程度の人気チームだったこともあって、大きな入場料収入を稼いでおり、前回の1.5倍の3億円近くの金額になりました。そこで決断したことは、試合会場を東京ドームにすることでした。前回までの横浜アリーナは、約14,000人。それが、約4万人のキャパシティに挑戦しなければならなくなったのです。支出コストの増加に対する収入確保、という観点からの会場変更ですから、是が非でも満員にしなければなりません。しかし、キャパシティにして約3倍弱の規模です。2日間で8万人を動員する。そして、チケット価格の設定は、収入確保という視点からの計算で、巨人戦よりも高い価格帯に設定しなければなりませんでした。安い価格で多くのファンに見てもらう、というキレイ事は通用しなかったのです。巨人戦ではほぼ満員になる状態があるのだから、観客が来ない、という理屈にはならない。では、どうしたら多くの観客に来てもらえるようにできるのか?。結果的には満員になりましたが、大きな要因は、アメリカプロスポーツの公式戦が日本で見られる、という希少価値や、プロリーグとしてバスケットボールでは世界トップの実力が認知されていたことだと解釈しています。つまり、単なるバスケットボールファンを集めたのではなく、プロスポーツとしての魅力を分かっている、また、娯楽としてプロスポーツの観戦の魅力を知っている人たちが、世界的なエンタテイメントを求めてやってきた、ということなのだと思います。エンタテイメントとは、単なる芸術的なものだけを指すのではなく、スポーツのパフォーマンスレベルをも含んだ意味です。
もし、どんなにチケットを買いたい人が潜在的にいたとしても、現実的にアリーナ施設の構造的な限界から、スタジアム施設のようなキャパシティを用意することは不可能です。そこで、NBAなどでは、チケット価格を高く設定しています。これは、単なる儲けを狙った短絡的なものではなく、4万人のスタジアムのキャパシティに対して、2万人のアリーナは、満員に出来る潜在力があれば、倍の価値を持つ、ということです。ダフ屋行為でもありますが、チケットが完売になったイベントでは、間違いなくチケットの裏取引ではその価格が高騰します。まさに、需給原理です。このことから考えると、アリーナが小さいから観客動員数は少ないんだ、という理屈はどこにもなく、逆に、小さいからこそ希少価値がある、というマーケティングが出来なければなりません。しかし、現実は、チケット価格がスタジアムイベントと同じかそれ以下でも満員にならないのです。理由は幾つか考えられますが、コンテンツバリューの程度問題が、その最大の理由だと私は考えます。そして、それは、プロ球団でない限り、経営的な視点で解決できる問題ではありません。つまり、企業スポーツでは解決できない。プロとしての組織の必要性がそこにはある、ということです。もちろん、プロになればすべては解決するわけではなく、プロ球団としての経営手腕が発揮される場が作られる、というビジネスとしての環境の問題です。
プロ野球やJリークも、ただ何もせずにいれば、アリーナ規模の収容人数ですらクリアできないかもしれません。しかし、プロ球団としての経営もあり、そしてプロリーグとしての興行的価値も存在します。人を動かす力が生まれている、ということだと思います。もし、インドアスポーツでもプロとしての経営が取り入られれば、間違いなく可能性は生まれ、やがて現実のものとして実績が生まれてくることになるでしょう。事実、bjリーグには、少なからず兆しはあります。しかし、bjリーグの課題は、プロ野球やJリーグのように、球団の一つ一つも然り、リーグは当然のことながら、本当のプロリーグとしての基盤が出来上がるのには、まだまだ時間が掛かる、ということでしょう。いまは、そのプロセスの真っ只中にある、ということだと思います。その点から考えると、bjリーグには、長い目で成功して欲しいですし、インドアプロスポーツとしての良い日本のモデルにもなって欲しい気がします。
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2008年11月21日
“ホーム・アンド・アウェイ”という方式があるのは、ホームでの戦いに“地の利”があることを認めていることだと思います。ただし、ホームで戦う選手には、大応援によって鼓舞されてより強い力が生まれる一方で、逆に、勝たなければならない、というプレッシャーも生じさせるでしょう。選手個々の性格やコンセントレーションの仕方によって一概には言えませんが、逆に、アウェイの怒号が飛び交う中で、勝つためのプレッシャーから開放されて伸び伸びとプレーできる選手がいるかもしれません。期待というプレッシャーと、精神的に追い詰めようとするプレッシャーは、どちらが勝るのか?。何れにしても、応援するサポーターの立場に立てば、“ホーム・アンド・アウェイ”という方式は、ファンの熱狂を加熱するための格好の装置なのだと思います。そのことからすると、試合を行う選手たちには、ホームアドバンテージという利点はあまり関係なく、お互いのサポーター同士の熱狂する仕掛けとしての楽しみ方、それがサポーターにとってのホームアドバンテージになっている、ということなのかもしれません。
国際大会におけるホームアドバンテージについては、前回も取り上げましたが、ここではイベントそのものを運営する立場から、ホームアドバンテージを検証してみたいと思います。結論から言うと、ホームアドバンテージを作り出すために自国開催を望む場合が多い、ということです。先に述べたように、勝たなければならない、というプレッシャーは、国を代表する選手たちには、通常のリーグ以上のレベルで襲いかかることでしょう。しかし、そのプレッシャー以上の利点が、自国開催の国際試合にはあります。日本でのことではありませんが、アジアの国々で行われる世界への予選の場では、信じられないことが当たり前のように行われるのです。
・ホテルに到着して練習会場を確認すると、車でも1時間以上離れた場所を言われた。
・当日の朝に突然試合のスケジュールが変更された。
・練習スケジュールを予約していたのに、勝手に変更されていた、・・・などなど。
実際に、私が関わった大会の中でも、他の国の人が聞いたら間違いなく怒り出すような不公平がいくつもありました。前回取り上げた女子バスケットボールのアテネ五輪予選では、毎日のように、メインアリーナでの日本チームの練習が朝一番に行われました。こうしたレベルの試合では、大会直前にのみメインアリーナでの公式練習は割り当てられますが、期間中の試合日の当日にメインアリーナでの練習を公に許可するはずがありません。それを知っていても、我々は日本チームのために最善の準備を行います。それが、ホーム開催の強みのひとつでもあります。後で、中国の関係者が気付いてクレームを入れたそうですが、中国でも自国開催の際には平気でやっているのです。ロッカールームを最も設備の整っていて入退場に便利な位置にあるものを日本チームのために割り当てたり、移動用のバスの配車を優先して割り当てたり、チームのスタッフが何か必要なものがあれば直ぐに届けたり、と、大会運営という計画の柱の隣には、日本チームのサポートをすべてにおいて優先する、という別の計画の柱がキチンと設定されているものです。もちろん、運営マニュアルの何処を見てもそんなことは書いていませんが・・・。
オリンピックで、野球の日本代表が選手村に入らず、別のホテルに宿泊していたことに対してJOCの役員の方が意見を言っていたようですが、単一競技による日本での国際大会開催の場合に、日本チームだけを別のホテルに宿泊させることも当たり前のように行います。他国の選手たちとの接触云々というところではなく、食事や選手たちの部屋の割り当てなども、自由に計画できるところに利点があるからです。選手たちは通常はツインルームで2人づつの部屋割りが当然ですが、大会期間が長くなると一人づつの部屋割りの方が選手もリラックスできる場合があります。大会であっても住環境というのはコンディションに大きく影響するからです。選手個々が好きな食べ物を調達しやすいのも、日本開催のメリットですね。
オリンピックの予選などになると、グループ分け等の組み合わせ抽選に、国際連盟も同意の上で、開催国チームに有利になるような操作が行われることは暗黙の内に了解されているものです。もちろん、明らかな不公平はできませんが、対戦国との相性などにより、微妙な操作があります。世界へのキップが限られている場合は、如何に有利な条件で上に勝ち進むかがカギになりますから、ここでもホームとしての利点が発揮されるのです。北京五輪への女子バスケットボール世界最終予選は、当初は日本開催で内定していました。FIBA、国際バスケットボール連盟の視察も行い、後は正式発表を待つばかりでしたが、残念ながら開催を辞退する結果となっています。開催地はスペインのマドリッド。ここでも日本チームは善戦しましたが、最後の1枚のキップに手は届きませんでした。もし、日本で開催していたらどうなっていたか・・・。今頃言っても遅いのですが、それだけ日本開催による利点は間違いなくあるのです。そして残念ついでに、男子バスケットボールは、昨年それを活かせなかった、ということです。
サッカーでは、ヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグなどで、ホーム・アンド・アウェイのアウェイでの得点が2倍になって計算されるシステムが採用されています。ホームで3-1で勝っても、アウェイで0-2で敗れると、勝敗的には1勝1敗ですが、得点計算では3-4となり、逆転勝利という結果になります。アウェイで勝つことの難しさを前提としたハンディキャップ的な意味合いと、“ホーム・アンド・アウェイ”という方式の面白さを得点システムに取り入れたという意味合いがあるのだと思いますが、このことはホームアドバンテージという前提から考えるべき事ではないでしょう。これは、2戦目にも逆転の可能性を残し、試合を盛り上げるための興行的な施策なのだと、私は思います。
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2008年11月20日
ホームアドバンテージ。アメリカのプロスポーツでは、本拠地で戦う時の試合会場は、ほとんどがホームチームの応援で埋まります。しかも、国土が広いアメリカでは、敵地へ乗り込んで試合をする場合、かなりの移動距離を強いられ、コンディショニングという点においても、ホームで戦う場合の方が有利とされます。これは、国境を越えてヨーロッパ全域でリーグ戦を構成しているヨーロッパのプロスポーツにも当てはまるかもしれません。事実、ホームスタジアムやホームアリーナでの応援風景は、ホームチームに対する声援やコールの嵐になっている光景をテレビでもよく目にします。敵の良いプレーには激しいブーイングが起こり、得点シーンなどにはシーンと静まり返る、などは当たり前。こうした試合会場の雰囲気が、選手たちのモチベーションや精神的なプレッシャーに影響を及ぼさないはずがありません。長い時間の移動による肉体的な疲労もあるかもしれませんが、プレー中のちょっとした精神的な動揺など、気持ちの面におけるプレッシャーを与えるということでは、ホームアドバンテージは、少なからずの影響はありそうです。
ホームアドバンテージに関する学術的な研究は、特にアメリカにおいては研究事例があるらしいのですが、日本ではほとんどないそうです。ウェブで検索してみると、古いものかもしれませんが、大阪大学の釘原氏による、日米のプロ野球での比較結果が紹介されていました。
◇日本のホームアドバンテージの程度はアメリカのそれに比べて低い。特にシリーズの差が大である。
◇移動距離や地域がホームアドバンテージに影響することはない。
◇アメリカのみ観衆効果が見出された。
◇米では新本拠地移動直後からホームアドバンテージが見られたが、日本では5年近く要した。
◇裏攻撃はホームアドバンテージに影響する要因ではなかった。
移動距離やホームの地域環境が影響しないことは意外でしたが、観衆効果、つまり、ファンの応援から受ける心理的影響なのだと思いますが、精神面での効果は、アメリカのプロスポーツのように、まさにホームタウン化しているファンの熱烈さがあれば、やはり高まるのでしょう。プロスポーツにおいて、このホームアドバンテージの効果がファンの動向によって左右されるものだとしたら、やはり、ファンの存在は、ホームチームとしての貴重な財産になるのですね。日本でも、少しづつ研究が進めば、地域によっては、おもしろい現象が分かるかもしれません。
さて、プロスポーツの世界でも、ホームで確実に勝ち点を獲得していくことや勝利を得ていくことは、リーグ戦を戦い抜く上で重要な戦略になることは言うまでもありませんが、日本代表という国を代表して世界の舞台を目指している選手たちには、ホームアドバンテージはどの程度の影響力があるのでしょうか?。
先のバンクーバー五輪予選で、女子アイスホッケーは、決勝で惜しくも敗れ、五輪へのキップを逃してしまいました。まさに、ほんの一歩手前まで捉えていたチャンスでした。決勝で日本を破ったのは、この五輪最終予選大会の開催国である中国。世界ランキングは、日本が9位。中国は8位。ほぼ同格です。ナショナルチームで戦う選手たちには、リーグで戦う時との違いを、国を代表しているというプレッシャー、という表現を用いてよく話します。ホームアドバンテージが代表をも勝たせる力に本当になっているのか?。今回の女子アイスホッケーでは、紙一重の差のところで活かされたのかもしれません。逆に、初のアジア制覇を成し遂げた女子バスケットボールのU-18代表。決勝の相手はこれも中国でしたが、接戦を見事に勝ち抜いています。男子同様に中国女子も、近年はアジアチャンピオンの座を不動のものにしているだけに、次の世代の選手たちが、アジアの強敵を破ったのは本当に価値ある勝利でした。しかも、戦いの舞台はインドネシア。完璧なアウェイではなかったものの、中国移民も多い国での勝利は、最近ではなかなか巡り会うことはなかったので、嬉しい限りです。若い世代には、アウェイでのプレッシャーなんか関係ないのでしょうか?。
日本人選手は、精神的なプレッシャーに弱い、と昔からよく言われます。特に、ここ一番という時に本来持つ力を発揮できないらしい。過去にも、そんな悔しい場面がいくつもあったようにも思います。バレーボールは、オリンピックを除けば、ほとんどのFIVB、国際バレーボール連盟主催の主要な大会は、ほとんどが日本で開催されています。特に印象に残るのは、先の北京五輪最終予選での男子バレーによる北京出場決定シーンでしょう。1998年、2006年の世界選手権、そして2010年には女子だけですが、連続して日本で世界選手権が開催されることになっています。五輪最終予選も、アテネの時に引き続き行われており、試合順が常に最終試合であり、日本を盛り上げる演出の過激さは、もう慣れましたが、凄いものがあります。どこが本当の優勝国なのかすら分からなくなるほどです。TBSやフジテレビによるテレビマネーは、FIVBの年間予算の6割を賄っていると聞いたことがありますが、あれほどの国際大会の開催頻度を見ると、それも間違いではないように思えてきます。しかし、バレーボール日本代表にとっては、絶好のホームアドバンテージの環境ですよね。単なる華試合ではなく、キチンとタイトルが掛かった世界に繋がる大会が、毎年のように日本で開催されることは、他のボールゲームの関係者が見ていたら羨ましいの一言かもしれません。それほどに、日本でのバレーボールの国際大会の会場は、日本ありきの運営です。
バスケットボールでも、見事にホームアドバンテージを活かして、力以上の奇跡を起こした試合がありました。アテネ五輪出場を決定した女子バスケットボールのアジア選手権大会でのことです。2003年6月に予定されていた大会は、当時アジア全域で猛威をふるっていたSARSの影響で、2004年1月に延期され、会場は延期前と同じ仙台市体育館で行われました。冬の寒い時期、しかも仙台の風は冷たく、期間中に大雪になったこともあったほどでした。日本チームは、予選ラウンドで4位。チャイニーズタイペイにも後れを取る結果となり、準決勝は予選トップの韓国と戦うことになります。3位でもキップは取れることにはなっていましたが、予選で負けているチャイニーズタイペイとの戦いに期待するわけにいきません。この大会の運営に携わっていた私が、試合前のコート整備を確認していたところ、「私の娘はどこにいるでしょうか?」、と聞いてきた女性の方がいらっしゃいました。ふっ、と見て、話を聞いてみると、その方は、日本代表のエースガード、楠田選手のお母さんでした。しかし、ウォームアップしている選手の中には見当たりません。そして、チームのスタッフに聞いたところ、なんと、ホテルで休んでいる、とのこと。連戦の疲れが出たのか、ダウンしていたのです。冬のアリーナ内は空調のため、想像以上に乾燥しています。そのために風邪をひくケースも選手の中にさえ多々あり、楠田選手もそうだったのかもしれません。
勝利に遠のいている韓国戦、そして司令塔の不在。多くの応援団が会場を埋め尽くしてくれましたが、不安は暗雲のように会場の中をただよっていたようにさえ思えました。日本をオリンピックに送り出すための、アジア予選の日本開催ですから、我々運営の裏方にも、大会の開催趣旨はキチンと理解されていました。大会の中での作為的なエコヒイキをするわけではありません。あくまでも、日本が戦いやすい環境を、できる範囲の中で全力でやる、ということです。朝一番から練習をする日本チームのために、早出をしていたスタッフもいました。暖房が効かない中でのコート整備を黙々とやっていたスタッフもいました。そして、日本チームは、すべての試合で同じロッカールームが割り当てられました。何でもないことでも、ストレスを感じさせないで試合に望める体制をサポートすることだけが、我々にできることだったのです。
結果は、再延長戦の末、見事に勝利。2位でアテネに乗り込むことになりました。試合が終わった後、コートの周辺は収拾がつかない騒ぎになり、ベンチエリアをガードしているフェンスが倒れるのを必死で押さえていたことだけは覚えています。残念なのは、ほとんどの人たちは、ここで大会が終わってしまっていたこと。次の日の決勝なんかは吹っ飛んでいましたね。せっかくのホームアドバンテージを200%活かせたチャンスだったのにもかかわらず、それを中国戦まで持続できなかったことを、いまでも悔やみます。その一戦の影響は、北京へのキップを逃したことに繋がっている気がしてなりません。ホームアドバンテージは、自然に生まれてくるものではなく、ファン、観客、そして運営に関るすべてのスタッフが一体となって選手たちのパフォーマンスを押し上げていくことだと思います。見えない力なんですね。そのことを、この時の仙台で勉強しました。そして、ホームアドバンテージは、選手たちも活かす意識が必要なんだと思いました。恐ろしいほどの集中力を発揮した韓国戦の力を持ってすれば、中国にももっと堂々と戦えたと、いまでも確信しています。2位で満足していた気持ちが、どこかで出てしまっていた精神的な弱さは、日本人だから判る気もしますが・・・。
誤審問題に揺れ、再試合の開催に至ったハンドボール。その原因となったアジア選手権は、日本で開催されています。愛知県豊田市にあるスカイホール豊田が試合会場でした。完成して間もない素晴らしい施設で、国際大会の運営には、恐らく日本でベスト5に入るものだと私は思っています。そこで行われた男子ハンドボールアジア選手権大会は、試合運営そのものをコントロールされ、本来発揮できたはずのホームアドバンテージ効果は無力に終わってしまいました。最も公平であるはずの競技の中核が、アドバンテージ以前の障害になってしまったのです。しかし、1月に行われた再試合の会場は、一部の赤い軍団を除けば、ブルー一色に染まり、まさにホームコートになりました。敗れたのは、現場で見ていて感じただけですが、あまりの応援に選手たちが力みすぎたのか、逆にプレッシャーになってしまったのか、非常に固くなってしまい、ミスが多くなってしまったのが原因のように思いました。堅実で、常に実力通りの力を発揮する韓国に、ホームアドバンテージの見えない力も、及ばなかったようです。
最近、世界レベルの大きな大会をスペインが積極的に招致しようとしているのを目にします。会場施設が建設され、また整備され、何か国策的な勢いを感じます。2010年に男子バスケットボール世界選手権を行うトルコもそうです。日本の経済力やまあまあの施設環境を見ると、もっと頻繁に世界レベルの大会が日本で行われるように期待せざるを得ません。単なる興行という意味合いではなく、ホームアドバンテージの効果を醸成して、日本代表を世界の舞台へ送り出すための戦いの舞台を、ぜひ数多く待ち望みたいと思います。もちろん、アジアレベルの大会も同様です。バスケットボールは、中東勢の台頭により、中国、韓国、そして日本で頻繁に開催されていたアジア選手権レベルの大会が、中東などへ開催機会が移っているように感じます。オイルマネーによる施設環境の整備や、スポーツの強化策に起因するものだとおもいますが、一方で、中東の有力国によるスポーツ競技の政治的支配力も強固になってきているようにも感じます。ハンドボールも然りです。バスケットボールやハンドボールなど、バレーボールのようにテレビマネーの後ろ盾が期待できないスポーツ競技では、とにかく、アジア、そして世界の舞台で戦う日本代表の姿を、ファンの前で見せていくことも、大きなマーケティングチャンスになるでしょう。そして、そこにファンによってホームアドバンテージの力が最大限になるように力を注げば、逃し続けていたチャンスも広がるかもしれません。結果を出したバレーボールが、どんな経緯にしろ、それを実証しているのだと思います。
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2008年11月19日
昨年夏に徳島市で行われた北京五輪への出場権を掛けた男子バスケットボールアジア選手権での惨敗から1年と4ヶ月。その間、ナショナルチームとしての男子バスケットボールのトップチーム、所謂フル代表は、一切の活動を停止しています。代表を招集して参加すべき大会がないこともありましたが、強化という点においても、その活動は全く行われていないのが現状です。しかし、日本バスケットボールリーグが開催されている期間中ということもありますが、代表を招集して参加すべき大会は、実はありました。10月9日-13日間、クウェートで行われた「FIBA ASIAスタンコビッチカップ」です。前FIBA事務総長であり、現在の名誉事務総長のMr. Borislav Stankovićにその大会の名は由来しています。1980年代からFIBAとNBAの協調を行い、マクドナルド選手権を創設するなど、国際バスケットボール連盟、FIBAに多大な功績を残してきたスタンコビッチ氏の栄誉を称える意味で創設された大会なのです。ただし、“スタンコビッチカップ”とは、正確には、“スタンコビッチ・コンチネンタル・チャンピオンズカップ”と2つの大会があります。ここで言及している“スタンコビッチカップ”は、FIBA ASIAの主催で行われる大会で、後者は、世界5つのゾーンの大陸チャンピオンなどが参加して行われるFIBA主催の世界大会です。ちなみに、FIBAスタンコビッチカップは、毎年、中国で開催されているようです。また、大会名称も、当初は前述のようなタイトルでしたが、現在は、「FIBA Borislav Stankovic Cup」となっているため、「FIBA ASIA Stankovic Cup」と間違えやすいのです。
さて、10月に行われた「第2回FIBA ASIAスタンコビッチカップ」ですが、この大会は、来年、中国で行われるアジア選手権への出場権を巡って、大きな意味を持つものだったのです。アジア選手権大会は、FIBA ASIAが統括するアジア地区5つのゾーンから、全16の国または地域の代表チームが参加して行われます。この大会での優勝国は、自動的にアジア選手権への出場権が与えられ、2位から5位の4ヶ国には、その国が所属するゾーンの出場枠が追加されます。つまり、スタンコビッチカップで上位5位以内に入ることは、アジア選手権予選として行われるサブゾーン予選での戦いを楽にする、ということなのです。例えば、日本が所属する東アジアゾーンの例を見ると、5つのゾーンに与えられている味う選手権への出場枠は、それぞれ2つですので、東アジアゾーンも2つは持っています。それに加えて、スタンコビッチカップで上位5位以内に入れば、その数分だけ出場枠は増やされますが、韓国もチャイニーズタイペイも出場していないため、ひとつも追加されません。よって、来年6月に予定されている東アジアサブゾーン予選では、2つの出場枠を巡り、韓国、チャイニーズタイペイと戦い、2位以内に入らないとアジア選手権の本戦に出場すらできない、ということになります。幸いなことに、アジア選手権本戦の開催国が中国であるため、中国は開催国としての出場権を確保していることで、2枠というところでは影響しません。ちなみに、アジア選手権への出場枠は、以下の通りです。
◇開催国: 中国
◇スタンコビッチカップ優勝国: ヨルダン
◇東アジアゾーン: 2
◇東南アジアゾーン: 2
◇中央アジアゾーン: 2+2=4
◇西アジアゾーン: 2
◇湾岸ゾーン: 2+2=4 計16
前回、徳島で行われたアジア選手権の際には、上記の出場条件とは異なり、そのまた前回のアジア選手権での優勝国、そして上位5カ国に、サブゾーン予選からの出場枠追加の割り当てが行われました。これは、2006年に開催予定であったスタンコビッチカップが、開催国シリアの国内情勢不安定の理由から中止されたためです。ちなみに、第1回、タイペイで行われたスタンコビッチカップには、日本チームも出場しており、5位に入っています。また、この大会では、韓国が2位、チャイニーズタイペイが3位になっており、日本を含めて3つの追加枠を確保できたため、既存の出場枠の2つを加えると5となり、サブゾーン予選を開催する必要がなくなったのです。つまり、こうした複雑な経緯が、今回のスタンコビッチカップへの出場の意味合いを薄めた、とも言えるのかもしれません。
今回の第2回スタンコビッチカップは、出場したのは僅かに5カ国。つまり、出場すれば同時にサブゾーンの追加枠は確保できる状態だったのです。開催時期については、第1回開催の際にも論議された経緯があるようです。それを証明するかのように、韓国は、リーグ、学生、軍隊の混成チームだったようですし、フィリピンなどもリーグで活躍するプロ選手は一切参加しなかったということでした。ちなみに、優勝したヨルダン以下の順位は、2位クウェート、3位カザフスタン、4位インド、そして5位カタールです。
生まれ変わった気持ちで新たな船出を求めれる男子バスケットボール日本代表ですが、リーグが終わる来年の4月からたった2ヶ月で、早くも試練の場が待ち受けることになりました。負ければ終わりですが、韓国はもちろん、チャイニーズタイペイにも、昨年の徳島では敗退しています。決して余裕などはありません。ヘッドコーチすら決まっていない現状で、超高速スピードでのチーム構築を、ぜひお願いしたい気持ちで一杯です。
posted by umekichihouse |10:02 |
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2008年11月18日
15日の土曜日に、川崎市とどろきアリーナで行われたJBL、日本バスケットボールリーグの東芝ブレイブサンダースのホームゲーム。対戦相手は、昨日、監督更迭問題に揺れた今シーズンの新加入チーム、リンク栃木ブレックスでした。その前の日に、同じ神奈川県内で行われた試合でも、追加発売が出るほどの盛況で、恐らく田臥選手を見たさの効果も大きく影響したものと推測しました。そして、川崎市とどろきアリーナでの試合は、試合の5日前にはチケット完売のお知らせが、JBL公式サイトにも掲載されるほどの人気。しかし、実際に会場で見てみると、追加の分を含めて仮設設置されたアリーナ面のコートサイド席は埋まっていましたが、スタンド席のあちこちには空席が目立ちました。この状況は、ハーフタイム終了後の第3クォーター開始時点でも変わらず、公式発表による入場者数は、公式記録にも掲載されていませんので、あくまでも目測ですが、約70%~75%程度(塊での空席もありましたが、個席単位での空席はあちこちに見られました)、と言ったところでした。
川崎市とどろきアリーナの観客席規模は、アリーナ面には可動席はなく、そして仮設で設置されたイス席は約300といったところで、スタンドの固定席は、3,000席。つまり、全体で3,300席というシーティングでした。また、当日は、曇り空でしたが、然程寒くは無く、小雨がパラつきましたが来場に支障のある悪天候ではありません。チケット価格は、スタンドの自由席の前売り価格で、一般2,000円、高校生1,500円、中・小学生が1,000円という価格設定になっており、これらを購入したファンが、買ってから来場しないという、そんな無駄をするような金額ではなかったと思います。つまり、なぜ空席が目立つほどに客席が埋まらなかったのか、疑問だらけなのです。アクセスに関しては、最寄り駅から頻繁にバスの運行もあり、また、別の駅からは徒歩で15分あれば歩いて向かうことも出来ます。隣の等々力スタジアムでのJ1・川崎フロンターレの試合が、最近3試合でも2万人前後の観客を集めており、3千人が来場しにくい場所にあるとは思えません。・・・ということで、試合会場の入場口前には、立看板に大きく“チケット完売”の表示もされており、昨年の同会場での東芝戦のガラガラ状況とは比較にならない盛り上がりを期待して会場に入ったのですが・・・。
JBL、日本バスケットボールリーグのレギュラーシーズンの試合運営に関しては、昨シーズンの新生JBLスタート時から、各チームに興行権が保障され、それぞれのホームゲームの試合運営は、ホームチームによる権限により行われることになりました。当然のことながら、その試合の入場料収入、会場内の販売収入は、すべてホームチームのものとなります。しかし、東芝は企業チームであるため、その興行権を、昨年はJBLに返還し、JBLの運営組織が東芝のホームゲームの興行を代行していました。そして、今年からは、地元神奈川県バスケットボール協会が、東芝からその興行権の行使を委託されてホームゲームを開催するに至っているようです。つまり、試合会場の運営はもちろんのこと、チケット販売においても、神奈川県バスケットボール協会がその責を果たしているはずです。
先日の加藤監督更迭問題が起因してファンが来場しなかったとは、全く考えられません。東芝のホームゲームなのですから、一部のエリアにはリンク栃木の応援団も見られましたが、大半は田臥選手の日本のコートへ復帰した姿を見たいファンであったでしょう。企業チームだけのリーグとしての以前のJBLでは、対戦チームへの社員用の応援分として一定程度のチケットは割り振られていたと聞きます。しかし、興行権という設定がなされている現在では、入場収入は、チームが企業チームであっても、試合そのものの運営には必要な財源になります。つまり、試合を主管する神奈川県バスケットボール協会にとっては、きっと完売という結果は非常に喜ばしいことで、売り残す席を敢えて作る必要はないはずです。それだけに、今回の空席は、疑問だらけなのです。そして、スポーツイベントに関わってきた私としては、その理由が知りたい。試合会場での運営を云々ではなく、チケットを買っていながら来場しなかったファンの心理が知りたいのです。
スポーツイベントのチケッティング戦略では、販売可能な席数(全体から運営等に必要とされる座席を除いた販売に回せる座席)に対して、約70%程度の販売で興行コストをカバーできるように、目標を設定するケースが多いようです。60%台に設定してリスクを回避することもありますが、その場合は、チケットの販売単価を高めに設定しないと計画が立てられず、チケット価格が高いために販売率が落ちる、という弊害を生みます。決して机上の計算通りには事は運ばないのがチケッティングの難しさなのです。もちろん、何らかの事故、例えば指定席などの重複販売ミスや、試合当日になって発覚した見切れ席に対応するための処置など、そうした対策用に予備席を確保しておくことは主催者としての責務ですが、その数は空席が目立つほどのレベルには決してなりません。
この試合は、CS放送の「Sky-A Sports+」で録画中継(21日 20:00-22:00)されるので、テレビ中継ではどのように見えるのか、ぜひチェックしてみたいとも思います。
何れにしても、チケット完売という告知は、スポーツイベントにとっては、非常に高いニュースバリューであり、「結構人気があるんだね」とか、「今度行くとしたら早めに前売り券を買わないと・・・」とか、今後の試合への観客動員に大いにプラスになる要素です。それだけに、完売のはずの客席が、あれだけ空席が目立つ様子は、実際に会場で観戦したファンにとってはどのように映ったのか?。プレイオフはともかくとして、また、会場規模が比較的小さいバスケットボールの試合とは言え、完売という言葉を久々に聞いた喜びの裏返しを見てしまった出来事でした。
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2008年11月17日
9日、日本バスケットボールリーグ、JBLに所属する今年加盟の新チーム、リンク栃木ブレックスは、突然、ヘッドコーチである加藤三彦氏の更迭を発表しました。また、11日には、直ぐに新体制を発表し、いすゞ自動車ギガキャッツやWJBLのJOMOサンフラワーズでアソシエイトヘッドコーチを務めていたトーマス・ウィスマン氏を、アソシエイトヘッドコーチに決定。暫くは、GMおよびアシスタントGMとの協業による体制を敷いていくことも発表されました。加藤氏は、アシスタントGMの要請を辞退し、同日付で契約解除による完全辞任という形になったということです。
JBLで2つ目のプロチームとして、期待を背に加藤氏が監督に就任したのは、今年3月。高校バスケットボール界の名門と言われる秋田県の能代工業高校を長年指導し、数多くの全国制覇を成し遂げてきた実績を引っさげて、日本のトップリーグの舞台へ乗り込んできました。加藤氏は、バスケットボールファンなら恐らくほとんどの人がその存在を知っているだろうと思うほどに、高校界の顔の一人でした。そして、いまや、ホームのみならず、アウェイでのゲームですらチケットを完売させるチームの牽引者で、かつての加藤氏の教え子でもある田臥選手にリンク栃木への入団を決意させたのも、加藤氏のヘッドコーチ就任がその一因となったようです。まさに、新プロチームの歴史に残るだろう逸話を作り、チームを始動し始めたリンク栃木プレックスに、何が起こっていたのか?。
球団のGMである山谷氏は、コンサルティング業界から転進ですが、かつてアメリカンフットボール選手としての実績もあり、スポーツチームの経営に関しては、非常に高い知識と理論を持つ人だと私は思っています。その山谷氏と、何故か頭の中で、創設されたばかりのファーストシーズン終了直後に、監督を更迭したプロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの三木谷オーナーの顔を並べて見ていました。当時の楽天には、田尾監督更迭に対するファンからの失望の声や無念の声が数多く浴びせられました。それも、続投宣言していた直ぐ後の更迭発表劇だったのです。当時の新聞報道を見ると、田尾監督と三木谷オーナーとのチーム補強に関する確執があったと書かれていましたが、実際はどうあれ、チーム内にコミュニケーションが不在だったことや、そのミスマッチがあったことは事実でしょう。スポーツチーム、特にプロ球団の経営には、経営の能力、経験、センスも当然必要です。しかし、スポーツというコンテンツで商売をしている限り、そこには感情的なものが必ず理論や理屈を支配することがあり、その点でのコミュニケーションの欠如は、チームをマイナスの方向に向かせるのだと思います。つまり、好き嫌い、阿吽の呼吸などと言った感情的なものが、組織を繋ぐための信頼関係をも崩してしまうケースです。この信頼関係がなくなったら、特にスポーツチームという組織では、統率を取ることは不可能だと思います。
11日にリンク栃木ブレックスによって発表された内容によれば、「チームづくりを進める中、チーム内のコミュニケーションにおける問題が少しずつ表面化し、改善については何度も加藤氏と話し合いを行ってきましたが、シーズンに入ってからその問題が修復困難な状況に陥ってしまいました。球団としては、戦績以上にチームの成長を標榜していたこともあり、前体制では長期的な視点でみてもチームをつくり上げていくことが難しいと判断し、球団の責任のもとチーム体制の変更という苦渋の決断を行いました。なおこの決定に際して戦績不振という理由は一切ございません」、ということです。まさに、信頼関係の崩壊がもたらした監督更迭劇だったのです。
加藤氏は、能代工業高校での監督時代、前加藤廣志監督が作り上げた全試合走り通す“平面バスケット”を、能代の伝統として守り続けてきました。圧倒的な破壊力を持つゾーンプレス・ディフェンスにしても、最後の一歩までボールを追い続ける執着心にしても、そしてボールをキャッチしてからの素早い速攻の連続にしても、すべて前加藤廣志監督が築いてきたスタイルです。だから、チームのメンバーが変わっても、能代のスタイルは残り、そこに、選手ありきの戦術がどれだけあったのか、ということを考えてしまいます。能代工業の走るバスケットの魅力は、バスケットボールファンなら誰でも知っていることだと思います。だから、能代の試合には大勢の観客が集まります。しかし、その伝統という名のスタイルの中で戦ってきた加藤氏が、プロの世界で、選手の個性や能力に応じたチーム作りを求められた時、彼の苦悩は始まっていたようにも思えます。まさに、フリーハンドでのチーム作りですから、あらゆる選手の個性に応じた戦術が彼の引き出しの中に隠されていなければならなかった。新興チームだからこそ、そうした数多くのソフトの蓄積が必要だったと思います。その中でのジレンマが、選手とのコミュニケーション、球団内でのコミュニケーションなど、柔軟な対応や臨機応変というような意識の欠如をもたらし、恐らく、加藤氏は孤立してしまったのではないでしょうか?。
バスケットボールに関する知識も能力もない私が言うのは気が引けますが、このことは、高校バスケットボール界に学校という枠の中だけで選手を指導している育成環境が多い、という裏づけでもあり、そのことにより、指導者の能力が、新しいものを生み出すという想像力に欠けて硬直化してきている、ということも言える気がします。
今回の騒動でひとつ言えるのは、トーマス・ウィスマン氏を“アソシエイト”ヘッドコーチとしたことで、来季に向けての繋ぎ役という位置づけを明確にしたことへの評価です。“アソシエイト”とは、外資系企業でよく見られるタイトルですが、所謂“代理”ですね。代理は代理であって、正式ではありません。そこに、リンク栃木への来季に向けた期待を残しているように思えます。また、チーム内の事情についても真摯に発表していたことも高く評価できると思います。チームの羞じのような部分でも、理解を得ることを優先していますよね。とにかく、頑張れ!リンク栃木!!。
posted by umekichihouse |06:14 |
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2008年11月16日
前回まで、ママさんスポーツについて取り上げましたが、今回は、そのママさんたちの、スポーツイベントにおける活躍についてご紹介したいと思います。
2001年にさいたまスーパーアリーナを舞台に開催された「第3回ヤングメン世界男子バスケットボール選手権」。開催国の日本を含む12カ国が参加して行われました。この大会は、2006年に行われたFIBA世界選手権の開催決定と同時にその開催がFIBA、国際バスケットボール連盟から打診され行われた経緯がありますが、2006年へ向けての前哨戦という意味合いをこめて、大会の運営には相当の時間を掛けていたと記憶しています。そして、12チームが1日6試合行うというハードなスケジュールの中で、大会運営に携わっていた役員の方々やスタッフ、そしてボランティアの人たちも、最後には疲労困憊だったという記憶が鮮明にあります。現在、JBLに復帰した田臥選手など、高校時代にも名を馳せた選手たちが多数いたお蔭で、満員とはいかないまでも、そこそこの観客も集まり、地元埼玉県としても良い大会であったと認めてくれていました。
この大会の裏方として、最も素晴らしい働きをしてくれたのが、埼玉県の家庭婦人バスケットボール連盟のママさんたちなのです。家庭婦人バスケットボールの組織を日本で最初に立ち上げたのは、なんと埼玉県であったということで、埼玉のママさんたちのパワーは本物だったのですね。スポーツイベントでは、競技に直接関わるスタッフや役員の姿のみに目が行きがちですが、その舞台裏では、決してキレイごとだけでは済まされない仕事も多々あります。特に、清掃業務や各諸室などの整備業務は、大変な労働力を強いられるものです。
ヤングメン大会の時、埼玉のママさんたちは、1日6試合ある中での、チームのロッカールームの清掃から、チームベンチへのドリンクやタオルの補給、そしてその配置や整備に至る仕事を、ほぼ専任でやってくれていました。試合の始まる前のチーム入場までに、各ベンチには、500mlのペットボルトに入ったスポーツドリンクとミネラルウォーターを3~4ケース、そしてタオルを12枚運び入れ、ドリンクはドブ漬けの中に氷を補給しながら入れ、タオルは各ベンチのイスに掛けていく。まずはその作業が、1日6回繰り返されます。更に、前の試合が終わってチームがホテルへ戻った後のロッカールームを、次のチームが使用するまでの間、それも僅か20分程度の間にキレイに清掃して必要な備品を再配置しなければなりません。正直言って、女子の大会の場合は、それほどロッカールームが汚れていることはありません。しかし、男子の場合は、時には口では言えないほどの汚れ様なのです。特に、スポーツドリンクを撒き散らしたような時には、ベトツキが激しく、単純にモップで拭いただけではキレイにはなりません。これらをすべて時間通りに仕上げてサッと引き上げていたのが、埼玉のママさんたちでした。更に凄いのは、仕事の要領をつかむと、大会の終盤になって、作業のパターンがシステマティックになっていくのです。だいたい2人1組でひとつのロッカールームに対処するのですが、整備する順番から、汚れ具合に応じて対処の仕方を変えていくなど、さすがに家庭婦人のプロは違う、とただただ感心するばかりでした。
また、チームロッカールームでは、特に国際大会の時は、その辺に無造作に注射針などが放置されているケースもあります。ドーピングをしている分けではなくて、ハーフタイムの時にチームドクターが選手の疲労度をチェックするために、採血したりするのです。それらの医療廃棄物に直接触れることは出来ませんので、その辺の対処についても、メディカル担当の医師やスタッフに確認して、ひとつひとつ対処していく必要も、ママさんたちの仕事には要求されます。恐らく、バスケットボールを知っていて、好きで、更に大会の役に立ちたいという気持ちが、一番嫌がるだろうとされる仕事でも、一生懸命に取り組ませた原動力だと思いますが、スポーツイベントに慣れている専門のスタッフでも、ここまで見事には遂行できないものだと感じました。
バスケットボールに限らず、多くのスポーツの国際大会の現場には、ママさんスタッフも多く見かけられます。日頃、地道に大会の運営を支えていたり、普及活動を行っているママさんたちには、“支える”という観念が純粋に根付いているように感じます。損得抜きなのはもちろんです。1万人を超えるボランティアによって運営されている東京マラソンのボランティアの中にも、多くのママさんジョガーがいるようです。スタート地点から沿道、そしてゴール地点まで、ここでも多くのママさんを見かけます。地方都市で行われる国際競技大会の場では、もぎりや観客案内に至るあらゆる場所で高校生に混じって働いているママさんボランティアを多数見かけます。地域のスポーツ活動に従事しているこうしたママさんパワーは、スポーツイベントの開催においても、貴重な戦力なのです。高校生などのボランティアに対しては、彼らを指導する立場で機能してくれる場合もあります。親子ほどの年齢差であるのは我々と変わりませんが、ママさんの言うことにはキチンと従っている姿を見ると、我々が直接云々言うよりも、遥かに業務効率は上がります。ママさんの力を上手く引き出し、適材適所で活かすことも、スポーツイベントの成功のカギだと自負する一方で、スポーツ普及の原点にもなっているママさんたちの存在を、改めて見直し、注目しなおさなければならない、と感じています。
ヤングメン世界男子バスケットボール選手権が終わって、会場の撤去作業をしている時、使用した大量のタオルをママさんの方々に差し上げました。凄い量だったんですが、「大会や練習で喜んで使わせていただきます」と、いそいそと車に積み込んでくれました。さすがママさんというか、何というか・・・。本当に今でも感謝しています。
posted by umekichihouse |06:02 |
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2008年11月15日
前回、テニスとバレーのママさん大会から、ママさんスポーツがその子供たちに影響が連鎖していく中で、参加機会や楽しさを伝えていくキッカケ作りが出来ることを取り上げましたが、今回は、ママさんバスケットボールを取り上げてみたいと思います。バレーボールやテニスも激しいスポーツですが、バスケットボールは走りっぱなしの競技で、育児が終わってから“さあやろう!”というスポーツではないような気もします。しかし、いまでは、かつての競技経験者のOGママさんを中心に、徐々にその裾野は広がってきているようです。
昨年のデータで、日本バスケットボール協会に登録されている家庭婦人の競技人口は、約5,000人余り。全体の61万人という数字からは、1%にも満たない規模です。日本家庭婦人バスケットボール連盟のホームページを見てみると、28年前に開催された第1回の全国大会への参加チームは、たった13チーム。しかし、その後徐々に参加が拡大し、1997年にようやく連盟組織を立ち上げるまでになります。そして2001年に、正式に日本協会の正式な加盟団体として認められることになりました。ただし、ママさんスポーツ自体に対するお遊び感覚的な偏見もあったようで、理解が得られるのは並大抵のことではなかったようです。認可のキッカケになった大きな要因は、「普及の原点になる」、という意見が出されたことだと言います。先のバレーやテニスのように、ママさんの活動からその子供たちへの連鎖はもちろんのこと、ミニバスケットから中学や高校でプレーする子供たちの大きな支援となっているのは、当然のことながらその親たちであり、ママさんたちの活動は子供たちの取組みに対しても活気付けになるだろう、という判断があったということです。バレーボールの大崎塾を行っている古川工の監督さんの言葉ではありませんが、親がやっている姿に子供も影響を受けないはずはありませんよね。もちろん、すべてとは言いませんが・・・。
家庭婦人バスケットボールの全国大会は、“交換大会”という名称で行われています。ミニバスケットボールの全国大会と同様に、ひとつの優勝チームを決めるための大会ではなく、各ブロック毎の勝者を決めるに留まっているのです。ママさんの場合は特に、経験や体力の差によって大きく試合の結果が左右されるため、チーム編成によっては100-10という試合も珍しくないそうです。つまり、勝ち負けよりも、バスケットボールを楽しみ、友好を深めましょう、という趣旨の大会なのでしょう。
先に述べたように、ママさんバスケットボールが正式に組織化された原点は、普及という効果に対する期待からでしたが、その面ではどうかと見てみると、地域の子供たちのためにバスケット教室を開催するなど、草の根的な活動を徐々に拡大しているようです。しかし、バスケットボールは、体力の違いがそのまま得点差になってしまうスポーツでもあるので、より幅広くママさんたちの参加を促していくためには、公平感のある参加制度、例えばキャリアのレベルに応じたクラス分けや年齢によるクラス分けなどにより、どんな人でも楽しめる環境づくりが課題でもあるようです。その点から考えると、ブームによって一挙に裾野が広がったバレーボールと、これから裾野を広げていこうとするバスケットボールは、全く逆のアプローチをしていることになり、どこかでお互いの経験を活かしあう協働があってもいいように感じます。何れにしても、普及という観点や、子供たちの活動を支援する親という立場に違いはないのですから、将来の日本スポーツ界を担う子供たちを支えてもらうためにも、ママさんたちの頑張りには、どんなスポーツにも限らず、エールを贈りたいと思います。
ちなみに、家庭婦人バスケットボール連盟のホームページに、ひとつ興味を引く情報がありましたのでご紹介させていただきます。韓国での女子バスケットボールの現状に関することです。韓国での受験戦争や学歴社会化に関する話題は有名になっていますが、その影響で、子供たちがスポーツに接する機会が極端に少なくなっている、ということです。特に、女子のバスケットボールに関しては、小学校から大学まで、全部で80チームにも満たない、ということです。日本の1/100というと大袈裟かもしれませんが、ひょっとすると近い規模かもしれません。親の子供への影響は、韓国でも顕著なのですね。子供たちのスポーツへの参加を拡大するためにも、ママさんスポーツが活発になって、どんどん裾野を広げていくことが、少子化が進む時代を迎えますます重要になると思います。
しかし、バレーボールに関して、以前にも取り上げましたが、国体での9人制の廃止ということがクローズアップされています。日本体育協会による決定によるものですが、オリンピックやアジア大会などの総合競技大会で正式種目となっていないことが最大の理由であるようです。国体に参加できる、できない、という論議ではなく、ママさんバレーを筆頭にして、日本のバレーボールブームを牽引し、参加人口の底辺を支えている9人制バレーに対する評価としての理由付けが、スポーツを普及するという目的も国体開催のひとつの意義であるはずのところで、この判断には些か疑問を感じます。以前にも国体については、創設時の理念とは全く異なるスポーツ環境の中でのその開催に、廃止という言葉を使って問題提起してみましたが、言えることは、国体は、“Championships”でも、“Athletics Meet”でもなく、“Sports Festival”である、ということです。つまり、勝ち負けだけを競う競技大会ではなく、お祭りである、ということです。国体での9人制バレーがなくなっても、ママさんバレーボールなどのすべての9人制バレーが廃れることはないでしょう。ただし、国策として国体が開催されているとしたならば、国が9人制バレーを認めていない、ということにも繋がり、バレーボール全体の裾野の拡大を推進しようとしている人たちの努力をも無視することにもなりかねません。“水を差す”・・・とは、こんなことを言うのですよね。お役人さん。
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2008年11月14日
去る7日に大会を終えた「ソニー生命カップ全国レディーステニス決勝大会」。今年で30回という歴史を誇る大会です。予選参加人数は、約1万人。全国47都道府県から勝ち上がった50チーム、300人が今年も熱戦を繰り広げたようです。全国レディーステニスは、各都道府県予選のダブルス上位3組によるチーム編成で参加していますが、年齢は25歳以上。ただし、全日本選手権や全日本学生選手権に出場経験のある人は参加できない、など、本当に一般の所謂“ママさん”たちの大会なのです。また、決勝大会で4位以内に入ると参加資格がなくなる、5~8位に入った選手も2年間出場できない、更に、3回出場した選手は5年間出場できない、などの出場制限もあり、そこからも単なる勝つことだけを求めている大会でないことも覗える、という一方で、テニスの裾野を広げている大会であることも分かります。さまざまな出場制限があっても1万人の大会参加者があるということは、テニスというスポーツが生涯スポーツとして定着している証のひとつかもしれません。事実、この決勝大会への出場選手の年齢を見ると、参加資格は25歳以上ですが、そのほとんどは、30歳代後半から50歳代であり、子育てが一段落した“ママさん”たちがスポーツ参加の場へ戻って来ている様子が見て取れます。
日本の総人口は、今年の推計で、約1億2,766万人。前年より6万人減少しているとのことですが、年齢別人口比を計算すると、下記のようになっています。
◇10-19歳 9.6%
◇20-29歳 11.6%
◇30-39歳 14.6%
◇40-49歳 12.6%
◇50-59歳 14.0%
◇60-69歳 13.1%
まさに、少子高齢化社会を示唆するものになっており、10年、20年と経過していくとこれらの数値は下へスライドしていくことになるので、人口減少は確実に進んでいくことが実感できます。最近、スポーツ競技人口の減少が見られ始めていることもその表れでしょう。特に、小学生や中学生の年代は、学校の統廃合が加速していることからも分かりますが、スポーツでは、大会に参加するためのチーム編成を、複数の学校が共同で行うケースもよく耳にするようになりました。生涯スポーツというものにあまり興味を持つことはなかったのですが、この人口推移を見るだけでも、今後、スポーツの参加率を増加し、底辺層からのスポーツへの盛り上げを推進していくためには、40歳から50歳、60歳代という中・高年齢層の人たちがムーブメントを牽引する環境が必要であることを、数字のデータだけを見ても感じ取ることが出来ました。
1964年の東京オリンピックでそのブームに火がつき、1970年代の高度経済成長時の余暇レジャーの拡大に伴って急増していったバレーボールの参加人口も、中学や高校の競技人口はまだ幾分の減少に留まっているものの、40歳代の競技人口を除けば、他は下降の一途をたどっています。この40歳代での競技人口を支えているのが“ママさん”なのです。ママさんバレーは、1980年に全国家庭婦人バレーボール連盟が設立され、先のテニスのような大会である「全国ママさんバレーボール大会」の他、50歳以上限定の「いそじ大会」、そして60歳以上限定の「ことぶき大会」という大会が開催されており、“いそじ”は今年で20回目、“ことぶき”も13回目を迎えました。全国ママさんバレーは、25歳以上が参加資格ですが、Vリーグ等の大会出場経験者も35歳以上で参加できるようなので、OGと言われる世代になってもバレーボールに参加できる機会は用意されていることになります。35歳と言えば、まだまだ現役と同じくらいの力はあるのでは?、と些か低めのハードルのような気もしますが、何よりもプレーを続けていける環境があることが良いこと、なのだと思うことにします。
去る6月に、産経新聞の特報面に、競技人口の減少を食い止めようとする東北の町での取り組みが紹介されました。場所は、宮城県大崎市。バレーボールファンには、旧古川市と言ったほうが理解しやいかもしれません。ここでは、全国の強豪高校である古川工高のバレー部の監督さんが自らが「大崎バレー塾」というバレーボール教室を行っています。バレー部の部員も手伝って、参加しているのは、子供からママさん、そして社会人の人たちまで、幅広いようです。そして、指導する監督さんは、このようにコメントしていました。
「昔からバレー熱が高い大崎地区でも最近は競技人口が明らかに減少している。バレーを楽しむ環境を作る必要があると思った。・・・・ママさんバレーは、一緒に来る子供も狙っている。興味を持ち始めた子供たちにバレーの楽しさを伝えていきたい」。
テレビCMで、お母さんがバレーボールの試合で活躍している姿を懸命に応援している子供の姿が印象的なボディシャンプーのコマーシャルがありましたが、ママさんスポーツには、その子供にもスポーツの楽しさを伝えたり、一緒にプレーする機会を作ったりする連鎖効果があるのかもしれません。バレーやテニスのブーム世代であったママさんたちが、30代、40代、そして50代になってもプレーし続けている姿から、その子供たちがスポーツの楽しさを感じたり、参加する機会を得ていくことが、スポーツの裾野を広げていくひとつのキッカケになると考えます。
posted by umekichihouse |07:01 |
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2008年11月13日
11月の初め、東京都北区西が丘にある国立スポーツ科学センターで、日本水泳連盟主催の小学生を対象とした合宿が開催されました。参加したのは、5年と6年の約30名。8年後、12年後のオリンピックでのメダリスト候補発掘の意図なのかどうかは分かりませんが、当日は、北島選手や中村礼子選手なども駆けつけ、模範の泳ぎを見せていたようです。この国立スポーツ科学センター(JISS)は、日本のスポーツにおける国際競技力の向上を目的としたスポーツ医学、スポーツ科学、そしてスポーツ情報の中枢機関として、2001年に開所しました。中には、プールや体育館はもちろんのこと、人工的な水流を起こして抵抗などを測定する設備など、スポーツ競技力向上を目的としたあらゆる実験、研究のための設備が満載です。診療やリハビリの設備もあり、トレーニング施設のほか、トップアスリートのサポート体制も万全です。日本でのドーピング対策の総本山、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)もこの中にあります。研究施設という点では、JISSは、まさに日本のスポーツ研究の中枢機関なのです。
そして、今年1月、JISSに併設する形で、日本で初の総合トレーニング施設が開所しました。ナショナルトレーニングセンター(NTC)です。プールやトレーニングルームはもちろんのこと、バレーボール、バドミントン、ハンドボール、バスケットボール、柔道、卓球、ボクシング、レスリング、ウェイトリフティングの9競技の専用競技施設も完備しています。つまり、世界に挑むトップアスリートたち、そして次の世代の世界挑戦者たちが、日常的に、いつでも本格的な競技環境の中でトレーニングできる施設が常設されているのです。また、約250名が宿泊可能なアスリートビレッジも併設されており、寄宿タイプではないものの、各チームが合宿を行う時に、あれこれその都度の手配をせずに可能にできます。今回の北京五輪直前にも、オリンピック参加選手やチームが合宿練習をしている様子が報道されていましたので、その存在は認知されつつあるのではないでしょうか?。NTCの管理運営は、先のJISSを管理運営している独立行政法人日本スポーツ振興センター(NAASH)が行っていますが、NTCに関しては、その主体的運営は、JOC、日本オリンピック委員会が行っています。NTCは、その利用者が、JOCの強化指定選手か各中央競技団体の推薦を受けた選手に限定されていますので、その点から、各競技団体との調整という意味合いもあり、JOCが運営しているものと思います。
しかし、JISSは研究機関としての機能があるので、技術やノウハウのある必要な人材は適切に配置されていますが、NTCは、施設運営という点を除けば、基本的には“ハコ”です。9競技の選手たちがトレーニングする上でも、選任のコーチやトレーナーなどのスタッフは、各競技団体による手配となります。トップアスリートは専任コーチがいますが、次の世代を担う若いアスリートたちの育成や強化という側面では、各競技団体がNTC以外の施設を全国で利用しながら行っている強化策の場合と何ら変わりありません。つまり、NTCは単なる“ハコ”なのです。専任で、一貫したコーチング制度の必要性が、北京五輪直後にも報道などで問われていましたが、その意味では、ソフトのないハード志向の日本のスポーツ政策の欠点が垣間見れる気がします。日本のスポーツ強化にとって、いま一番必要なのは、アスリートを育てるソフト、つまりコーチングにあると思うので、その点では、NTCがどんなに立派な施設であっても、4年後はもちろん、8年、12年後に向けての対策は、何も進まないような気がするのです。
このJISS及び、NTCのモデルになったと言われているのが、オーストラリアのAISです。オーストラリア・スポーツ研究所。名前はJISSと同じニュアンスですが、ここには、海外などから招聘された専任コーチが約80名以上、スタッフも200名以上が働いています。そして、それらコーチやスタッフにより、26もの競技で35のプログラムが運営されていると言います。つまり、AISは、単なるトレーニング施設という性格ではなく、現在、そして未来のスポーツ選手の育成・強化機関なのです。ただし、韓国や中国、かつての東欧共産諸国のように、一部のエリートアスリートやその卵たちをピンポイントで強化するためのものだけではありません。上部組織であり、政府組織のスポーツ観光省のひとつの部門であるオーストラリア・スポーツ・コミッション、ASCは、子供たちの肥満解消から体力の向上、そしてアフタースクールコミュニティの活動まで、AISを中核として、スポーツを利用した幅広い子供たちの育成活動にも着手しています。広大の敷地にある施設の素晴らしさもさることながら、それを活用するソフトの素晴らしさにこそ、AISに世界が注目する理由があるのですね。
ちなみに、日本サッカーのライバルである男女オーストラリア代表メンバーたちも、AISから数多く輩出されています。特に、女子サッカーは、このAISが強化の中核になっているということです。また、あのイアン・ソープ選手も、AISで育てられた選手の一人です。AISを管轄するASCの年間予算は、約200億円。しかも、この予算は、4年サイクルで計画されているということで、長期的な計画が構築できる政策も取れているようです。日本でのスポーツ強化に関する予算は、年間で40億円程度と報道されていましたが、その5倍の予算規模、ということです。
この11月7日に、JISS及びNTC、そして霞ヶ丘や代々木などの国立競技場を管理運営する日本スポーツ振興センターは、これら施設の管理運営に関する一般競争入札に関する概要を発表しました。競技場運営に関しては指定管理者制度が浸透し、より利便性の高い施設運営を実現するためにも非常に前向きな試みだと思いますが、JISSやNTCに関しては、ハードとしての運営はともかく、育成・強化という視点でのソフトの充実を先に論議すべきであるように思います。「スポーツ立国ニッポン」の具現化は、まず、こうしたことから始めないと・・・・・。
posted by umekichihouse |05:40 |
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2008年11月12日
ユーロリーグを検証してくると、そこには育成や強化という視点だけではなく、やはり、興行という本来のプロチームとしての本分があることは間違いありません。興行価値が高いからこそ、ヨーロッパ各国の326クラブは凌ぎを削ってユーロリーグを目指すわけで、そこでのステイタスは、更にファンを呼び込み、収入を増やしていくというビジネス構図を具体化していきます。つまり、“プロ”という現実的な必然性がそこにあります。興行価値が高まれば優秀な選手が集結し、更に競争力が高まり、またまた興行価値を押し上げていく。この構図は、ひとりの選手のプロ化云々を取り上げている日本との次元の差を示すものです。経営という視点からは始まって、育成や強化というところに結び付けていくためにも、プロチームは必要な存在になっていのだと考えます。
企業チームに支えられてきた日本のスポーツ界のトップの現状は、少しづつ変わりつつありますが、まだそれはごく一部に過ぎません。企業の中のスポーツチームから、企業が運営する、またはスポンサーとして支援するスポーツチームとなる。つまりはプロチームが、独自の経営手腕を持ち、独自の収益力を持ってスポーツを支えていく環境が整うことが、もちろん、究極の目標ではあります。しかし、経営という視点で、Jリーグでさえまだまだ全体的には数多くの課題を抱えています。15年、しかしまだ15年ということなのかもしれません。bjリーグが生まれ、私個人的な意見としては、その存在は日本のバスケットボールの在り方に一石を投じたことは間違いないと考えています。bjリーグの在り方や内容のすべてに賛同しているわけではありませんが、少なくとも、プロリーグ、プロチームを作る必要性については共感しています。もちろん、リーグ、そしてチームの経営という点では改善の余地はまだまだあることも、ファンですら理解しているのだと思います。そして、リーグ全体が拡大し続けている姿に期待するのではなく、如何に持続し、個々のチームの中身が大きくなることに、bjリーグの将来を見たいと考えています。つまり、地に足をつけた堅実性に期待しているのです。
Jリーグも、J1が18チーム、J2を22チームに拡大して、計40チームにする構想を目指していると聞きます。しかし、単なるリーグの規模の拡大をリーグ経営の目指す方向のひとつとして掲げていくのは、15年経過した今の時点ではどうなのか、という疑念は拭い切れません。もちろん、プロスポーツの経営も競争社会ですから、いつかは淘汰が始まります。経営を続けられなくなり倒産する球団が出てくることも必然となるかもしれません。40チームに対する分配金を拠出する義務を負っているリーグの収益力にも限界は来るでしょう。特に、J2の中で年間予算が5億円以下の球団は、リーグの分配金が大きなウェイトを占めている、という事実もあります。一方で、bjリーグは、明らかではありませんが、リーグからの分配金がどの程度のものなのでしょうか?。適性と推測される球団運営の規模であるライン(個人的には3~3.5億円規模と推測しています)まで届いている球団は、ほとんどないのではないでしょうか?。聞くところでは、適正規模の半分程度という球団もある、らしいのです。淘汰されるべき、という意見の関係者もいれば、いまは淘汰されるタイミングではない、という人もいます。私は、先に述べたように、安定した持続体制を築く時期だと考えています。飛行機で例えるなら、テイクオフに向けてのランディングを開始したばかりなのが現状のbjリーグであり、テイクオフまでにはまだまだチーム個々の経営という視点での努力が必要であるように思います。もちろん、既に安定に向かっている球団もあるでしょう。しかし、リーグは、特定の一部のチームだけで成り立つものではなく、リーグ全体の中での競争が激しいからこそ、ビジネスとしての力を増してくるものだと思うのです。当然その競争とは、経営的に淘汰されることを示すのではありません。ファンや観客の期待に沿ったスポーツ競技としての魅力を指すものです。
JBLに今年加盟したリンク栃木ブレックスを見ていると、戦績は苦戦していますが、球団経営という点では、田臥選手獲得の影響もあってか、まずまずのスタートを切ったと思います。(監督更迭問題は別として・・・)アメリカで言われるフランチャズビルダーとしての責任を見事に果たしている、と言えるでしょう。もちろん、勝負の世界ですから、勝つことがビジネスを大きくする根源にもなりますし、リーグ全体の興行価値をより引き上げるものにもなるでしょう。ある意味では、田臥選手の存在が、ホームで戦う他の7チームの観客動員にも影響している姿を見ていると、リーグとしてのフランチャイズビルダー的な役割も担っているようにも見えてきます。それが良いことなのかどうかは、ファンの判断に委ねるしかありませんが、経営的には一考の余地があることは間違いありません。田臥選手個人の存在が、リーグとしてのブランドを体現するものではないからです。それを勘違いすると、先はない、と危惧するのは私だけでしょうか?。リンク栃木のプロチームとしての経営は順調だとしても、リーグとしての軸足は、まだまだ曖昧なものだ、ということです。そして、3つ目のプロチームの登場を、いまは期待するばかりです。
ヨーロッパの現状を検証する話とは少しずれましたが、ヨーロッパの実情を垣間見ると、ますます日本の現状の課題の一つ一つが浮き彫りになるように思えます。リーグやチーム、クラブの視点だけでなく、試合会場となる施設の問題にもそれは及びます。NBAの日本でのビジネスにかつて関わった経緯から言っても、NBAは間違いなく世界No.1のリーグです。そして、NBAは、ヨーロッパにもフランチャイズを広げるべく構想を持っていると聞きます。スポーツのマーケット単位がますます広域化していく時代の中で、アジアの“ファーイースト”の中の“島国ニッポン”は、どのような方向に“アクション”していくのか、期待を込めて見続けたいと思います。
posted by umekichihouse |06:05 |
バスケットボール |
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