2008年10月31日
スポーツ振興くじ「toto」の売上が、今年度は史上最高額になりそうです。10月時点で、既に、660億円を越え、最終的には、800億円にも近付く勢いなのです。そして、この「toto」の売上には、総合型地域スポーツクラブを運営している人たちも、かなり注目しています。「toto」の売上は、原則50%が配当金となり、原則15%が経費となります。残り35%がそれぞれ、1/3が国庫に納付され、2/3がスポーツ振興に使われるのですが、その半分は、地方公共団体を通して、地域のスポーツ振興のための財源となるのです。しかし、2003年から一昨年の2006年までは、200億円にも届かない規模までに落ち込んでいました。しかも、2006年は130億円でした。上記の計算からすると、今年の最終売上を700億円とした場合、約100億円が地方の自治体へ還元されます。それに対して、2006年は18億円。これでは、満足にスポーツ振興が活発になるほどの助成は無理です。「toto」は、昨年から一時の隆盛を取り戻し、600億円を超える規模までに復活してきました。今年、過去最高となりましたが、この勢いが持続すれば、目標値に対して停滞していた総合型地域スポーツクラブの育成にも、拍車がかかるかもしれません。
しかし、現在混迷を続ける政治の世界では、税金の無駄遣いをなくそうとする動きの中で、この総合型地域スポーツクラブの育成をはじめとする文部科学省のスポーツ振興基本計画に水を差す出来事がありました。8月4日、自民党の“無駄遣い撲滅プロジェクトチーム”が、文科省の5事業について、「必要性が認められないか、現行の制度や予算規模のままでは継続すべきでない」、としたのです。スポーツに関わってきた人間として言うわけではありませんが、これは、あまりにもスポーツ振興や普及、育成の現場を知らなすぎる話しであり、この結論を導いた政治家は、官僚以上に机上でしか物事を見ていない人たちだ、と言わざるを得ません。確かに、税金の無駄遣いは問題視されるべきものです。しかし、スポーツ振興の、しかも、自主財源による自主運営を目指して育成しようとしている総合型地域スポーツクラブの役割やその効果を全く無視しては、スポーツ行政そのものが崩壊してしまうのではないか、とも考えます。以前に述べたように、スポーツ振興法の改正や「スポーツ立国ニッポン」政策を掲げて活動しているスポーツ議員連盟の方々の動きもありますので、すべてが決定付けられた分けではありませんが、このままでは、北京五輪後に報道されていたスポーツ省(庁)の設立など、夢のまた夢物語に終わってしまいます。
では、総合的地域スポーツクラブの実態は、どのようになっているのか、いくつかの実例を用いて検証してみたいと思います。最近の調査資料ではありませんが、日本体育協会が、2004年に行った各クラブに対する聞き取り調査の結果資料がありましたので、この中から、4例のクラブの実例を抽出してみたいと思います。
※下記の内容は、調査が行われた2004年当時のものであり、名称や数値も現在とは異なります。
◇シンマチスポーツクラブ(群馬県新町)
・会員数: 527名
・財源規模: 約250万円
・クラブハウス: なし(クラブ会員の事務所内に臨時設置)
・事務局: 専任スタッフはいない
◇NPO法人ウェブスポーツクラブ21西国分(福岡県久留米市)
・会員数: 620名
・財源規模: 約800万円
・クラブハウス: あり(所有権は久留米市)
・事務局: 専任スタッフ常駐
◇NPO法人ゆうスポーツクラブ(山口県由宇町)
・会員数: 1,791名
・財源規模: 約1,800万円
・クラブハウス: あり(町文化スポーツセンター内)
・事務局: 専任スタッフ常駐
◇エアーアクションスポーツクラブ(鹿児島県姶良町)
・会員数: 1,703名
・財源規模: 約510万円
・クラブハウス: なし(事務所を教育委員会内に置く)
・事務局: 専任スタッフはなし
前記2団体と後記2団体とでは、会員数に倍の開きがありますが、財源規模を見るとバラバラの状態です。ゆうスポーツクラブの例を挙げてみると、ここは、活動拠点ともなっており、クラブハウスを置く町の文化スポーツセンターの管理運営をクラブが受託していることが、比較的大きな財源となっている理由です。その額は、約1,400万円ですから、維持管理費としての支出も大きくはなりますが、財源全体としても、ほとんどはこの収入が大半を占めている分けです。残りの400万円は、会費収入ですから、この点から考えると、同じ会員数規模のエアーアクションスポーツクラブと比較しても大きな差はありません。(エアーアクションスポーツクラブの財源510万円中、約180万円は、町からの補助金です。)また、ウェブスポーツクラブ21西国分も、多目的ホールの管理を委託されていることから、同じ会員数規模のシンマチスポーツクラブと財源規模に3倍ほどの格差が生まれているわけです。公表されている内容から推測する部分もありますが、地元行政から受託業務収入がある場合とない場合では、クラブの財源に大きく差を生むことがよく分かります。また、NPO法人格を取得することは、こうした受託事業収入を得ていくためにも重要な施策であることも、同時によく理解できます。更に、NPO法人となり、経営的にも、名実供に自主運営を目指していくためには、クラブハウスを持つことや、常駐の事務局員を雇用していくことも必要となります。数字だけ見ても、NPO法人格を取得したクラブとそうでない場合との差は、財源の規模にも現れているように見えます。
前述した「toto」によるスポーツ振興助成も、クラブの経営には大きなインパクトがあるようです。助成金でスポーツ用具を購入したり、また、外部の指導員やゲスト講師に支払う謝礼に当てたり、基本的には、クラブ独自で実施している各種プログラムの実践に使われているケースが大半のようです。この助成の有無が、クラブ経営の根幹を成す活動の具体化に及ぼす影響が、まだまだ大きいようなのです。一方で、既に助成の有無にクラブ経営を左右されないように自衛策を講じているクラブもあります。ゆうスポーツクラブです。原則的に、一切の助成を受けておらず、自前で活動資金を集めているのです。「クラブの目的にかなった経営を、自助努力で行うことに意味があり、将来にわたり継続できるクラブが本来の姿だと考えている」。聞き取り調査結果には、このように明記されていました。ただし、創設期には、ゆうスポーツクラブも、行政からの支援を人的にも資金的にも受けていたようです。しかし、NPO法人化した時点から、職員を自前で採用するなどして、自主運営組織に脱皮してきた、ということです。また、ゆうスポーツクラブの関係者は、クラブの成功している要因を、採用した職員がクラブ経営の職務を十分に遂行できる人たちだった、ということを一番に挙げています。資金的にも、運営の人材に関しても、名実供に自主運営を目指してきたクラブのポリシーがしっかりと具体化されている、素晴らしいケースのように思いました。ちなみに、ゆうスポーツクラブにも問題があり、それは、近隣市町に総合型クラブがないために、町外からの施設利用者や会員が増えてしまい、施設の収容能力との兼ね合いで、適正な会員数規模を図りかねている、ということでした。嬉しい悩みなのかどうなのか?。こんなケースもあるのですね。
一概には言えませんが、クラブ経営の課題として、やはり大きくクローズアップされるのは、収入の確保に関するものでしょう。地域行政からの指定管理者としての受託業務や、スポーツ教室の開催等の事業の請負いなどは、実際の現場でも、かなり重要なポイントになっていることが、前述の聞き取り調査結果においてよく分かりました。会費の料金設定も、それぞれの地域の事情や経営方針によってバラツキがありますが、ひとつ言えるのは、先のゆうスポーツクラブのように、確固たる自主運営に対する意識があり、経営という視点から目を背けない姿勢が大事であるように感じます。行政からの補助や助成は、比較的手続きの問題だけで得られるケースが多々あります。「toto」の補助事業も、売り上げ復活の状況を見ると、今後はその補助金を当てにするクラブも数多く出てくるかもしれません。しかし、それでは、先の自民党の無駄遣い追及の網に、自らが掛かってしまうことにもなりかねません。財源の確保、専任の人材確保と組織作り、そして活動拠点となるクラブハウスの設置は、施設管理や事業運営などの行政からの受託業務を得ていくためにも、クラブに対する評価を得るための必須条件になっているように思えます。クラブの主体となる活動内容は、地域の事情によってさまざまですが、スポーツ少年団の活動を主体としたり、小・中学校の部活動を地域で統合する形で行ったり、住民の健康増進という視点を重視した活動を主体としたりと、地域の実情に沿ったクラブ運営が行われている中で、その運営を支える収入の確保に関しても、クラブ毎に独自の手法や方法論を見出していかなくてはならないのかもしれません。自主運営、ということを前提とする総合型地域スポーツクラブが本当の意味で社会的に認められていくためにも、補助や助成に頼らない経営スタイルを模索していかなければならないのでしょう。先に述べたような国の不穏な動きも合わせて、今後の動向に注目し続けたいと思います。
ちなみに、総合型地域スポーツクラブを支援するNPO法人があることを知りました。福島県福島市に事務局を置く「クラブネッツ」という団体です。総合型地域スポーツクラブの設立はもちろんのこと、NPO法人を取得する際のアドバイスから、クラブ運営に関する助言まで、幅広くサポートすることを謳っています。ただし、会員になるためには、一定の年会費が必要になるようで、ここでも受益者負担は同然のことながらあるようです。金額は、正会員で年間10万円ですから、小規模なクラブ運営の団体には、少し負担があるかもしれません。総合型地域スポーツクラブの育成を推進する役割も担っている日本体育協会にも、こうした団体に勝るとも劣らずというレベルで、より一層のサポートを期待したいものです。
点がやがては面のように広がり、それぞれが自主独立した活動の中でさまざまなノウハウが蓄積され、そして優秀な人材が生まれてくる。そうした総合型地域スポーツクラブの育成のプロセスの中で、企業スポーツ、プロスポーツ、そして大学、高校、小・中学校に至る教育機関などとの連携を強めていくことにより、いままでにない新しいクラブ経営の姿が生まれてくるかもしれません。国がその可能性の芽を摘み取らないように願うばかりです。
posted by umekichihouse |07:16 |
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2008年10月30日
日本全国の市町村、そして、そのまた各地域、つまり、住民が暮らす身近なコミュニティから生まれる総合型地域スポーツクラブを、日本全国に育成することを推進している文部科学省のホームページには、総合型地域スポーツクラブの育成マニュアルなるものが掲載されています。クラブ作りのマスタープランの策定から、クラブ設立準備、そしてクラブの設立からその運営方法に至るまで、どんな形のクラブ運営形式にも対応できる細かな情報が網羅されています。クラブを作ろうとしている人でも、現在クラブを運営している人でも、また、よりクラブを発展させようとしている人にも、基本となる情報がそこにはありますので、クラブ運営に携わる人たちには、非常に良いマニュアルになっているのではないか、と思います。今後は、実際に運営されているさまざまなクラブの実態や、独自の成功例やノウハウなどを、それぞれのクラブが情報共有できるサイトなどが構築されていけば、ますます価値の高いものになっていくのではないか、と考えます。100のクラブがあれば、100通りの運営手法や運営形態があっていいと思います。自主運営には、自由である利点もありますが、そこにはリスクも常にあります。そのリスクをひとつのクラブで回避するのではなく、リスクマネジメントという観点からも、全国の組織でお互いの情報を共有していくことは、重要な取組みに今後なっていくのではないでしょうか?。
今回は、文部科学省のホームページにある総合型地域スポーツクラブの運営面に関する内容にフォーカスして、クラブの特徴などを検証しながら、その自主運営に向けての課題を探り出したいと思います。
まず、クラブの自主運営に関するマニュアル項目には、下記の10項目が記載されています。
1.運営委員会と事務局
2.クラブマネージャーの役割
3.多様な財源の確保
4.魅力的な活動プログラム
5.広報活動
6.活動の記録と報告書の作成
7.クラブハウス(交流の場)
8.指導者・スタッフの育成
9.NPO法人格の取得
10.リスクマネジメント
まず、「1」「2」「7」「8」「9」の5つの項目は、最も重要な、クラブの運営組織体制に関するものです。自主運営とは言っても、クラブを経営していくわけですから、公益組織という観点からも、NPO法人格の取得は、クラブに対する信頼を得ていくためにも必要でしょう。また、クラブ運営の核として、事務局組織もしっかり整えていく必要があります。そこには、単なるボランティアというだけでなく、専門的な知識や経験があり、経営に関してもマネジメント力を備えたクラブマネージャーを筆頭とした人的組織も必要でしょう。当然のことながら、協力機関との関係を緊密にして、人材の確保もしていく必要はありますが、外部に依存していくだけではなく、自らのクラブから人材を育てていくことも念頭に置くべきでしょう。地域から優れたスポーツ選手が生まれていくことと同じように、地域からスポーツビジネスや事業のスペシャリストを生み出していくことも、地域の大きな財産となっていくことは間違いありません。また、事務局の設置やクラブ会員の交流の場として、“クラブハウス”も常設で設ける必要があります。クラブ経営を管理する事務局はもちろんのこと、そこには、クラブ会員が相互に交流できる場がなければ、クラブは単に一方的な参加機会だけに終わってしまいます。会員は、クラブに参加するためだけの存在ではなく、クラブの運営にも積極的に協力してもらえる存在であることが望ましいのです。よって、会議スペースや懇談の場、また、年を重ねることに保管資料も多くなるでしょうから、小さな会社的な機能を備えた事務所、または戸建のハウス的なものが理想となります。総合型地域スポーツクラブは、自主運営を基本としますので、事務局の運営や、ましてやクラブハウス設置などというと、設立資金の面やランニングコストなど、金銭的な不安も生じますが、「クラブハウス整備に関る国の補助制度」もあるようです。公立学校施設の中に設置する場合、地域の屋内スポーツ施設などに設置する場合、そして屋外スポーツ施設に設置する場合など、補助条件等は3通りのケースに分かれていますが、何れも1/3の補助率となっています。長い目で活動の拠点を必要としていく事業ですから、クラブハウスの必要性は、その設置の可能性を地域内で検討し、また、行政の助言を得るなどして、緻密に計画すべきポイントでもあります。
尚、総合型地域スポーツクラブの組織モデルは、育成マニュアルの中にも例として記載があり、主要な組織機能は以下の通りです。
◇総会
◇運営委員会(理事長、理事、幹事または会長、委員など)
◇事務局(クラブマネージャーなど)
・総務部会(運営統括)
・財務部会(財源確保及び会計事務管理)
・広報部会(クラブの広報、会員募集など)
・指導者部会
・研修部会(指導者研修会、会員研修会など研修事業の企画運営)
・企画部会(スポーツ教室、スポーツイベントなどイベント事業の企画運営)
・医科学部会
規模の違いはあれども、その組織機能としては、凡そ、プロスポーツ球団の組織とそれほどの違いはありません。つまり、自主運営とは言えども、経営という観点では、この組織体制は必然と言えるのです。ただし、クラブ会員に、より廉価で質の高いサービスを提供していくためには、会員のボランティアシップに頼らざるを得ないのも現実です。コストが高くなれば、それだけ会員に対する負担も高く強いる結果になるからです。この辺の見極めも、クラブそれぞれの特性に応じて、綿密に競技、検証すべきポイントとなるでしょう。以前、スポーツボランティアについてブログでも取り上げましたが、ボランティアは単なる安い労働力と考えては大きな落とし穴に陥ります。専門性の高い知識やノウハウを導入しつつ、その過程でキチンとボランティアを育てていくことも、クラブの経営を安定させていくためには重要な課題であると言えます。コストだけを考えても運営レベルは高まりませんし、運営レベルが高まらなければ会員に満足のいくサービスは提供できません。非常に難しいところです。
また、「4」「5」「6」の3つの項目は、クラブ運営における実務業務に関するものです。特に、活動プログラムの立案、計画、実践は、クラブの特徴をそのまま現すものであり、より多くの会員に参加してもらうという点でも、クラブ経営の生命線となります。単にスポーツの参加機会を作るだけではなく、スポーツ活動を通して、何を目指すのか、何を目標として行うか、などの目標設定を明確に持つことも必要です。トップ選手を地域から生み出すための育成を主眼に置いたものでもいい、スポーツの普及ということだけでもいい、また、生涯スポーツを謳うならば、お年寄りにも安全に参加できる体制作りも必要になります。それぞれの内容に応じて、クラブとしての広報活動も計画されていくことになりますし、その記録や実績を残すことによって、先に述べた目標設定に対する達成度も図っていくことができます。また、クラブは私益を生むのではなく、公益のためにあるのですから、情報をキチンと的確に公開していくことも広報の役割になっていきます。
最後の、「3」の自主財源の確保と、「10」のリスクマネジメントに関しては、現存の地域密着型のプロスポーツ球団ですら、大きな課題を抱えているポイントです。まさに、クラブ経営の根幹を成す要素でもあります。育成マニュアルには、以下の6つの収入確保方法について示しています。
・会費収入
・事業収入
・寄付金収入
・受託事業収入
・協賛金収入
・助成金
自主運営という観点からは、会員からの会費収入がクラブ運営の基礎を賄うものになります。また、総合型地域スポーツクラブは、「受益者負担」という考え方を基本にして運営される組織ですから、会費の設定においては、会員が参加しやすい、ただし、相応で的確な料金設定が望ましいと言えます。サービスの質をどれだけ高めていけるかが、会費収入を安定して確保していくためのテーマになるとも言えます。プロスポーツ球団の入場料収入施策と、どこか似ている部分もあります。スポーツ教室などのクラブ事業からの収入においても、その内容によって参加者が得られるメリットに応じて、参加費や受講料を徴収していくシステムを構築していくべきでしょう。会費とは、クラブへの参加資格を得るためのものであって、各会員がクラブをどのように活用していくかは、会員それぞれに還元されるメリットですから、その都度参加費を支払うのは当然です。そして、会員が、その“当然”と言えるだけのプログラムを作り、充実させていくための務めがクラブ側にはあります。まさに、受益者負担です。
また、外部から、クラブのノウハウを利用したイベント開催や運営を請け負っていくことも、クラブに安定した収益をもたらすことになります。更に、指定管理者として、スポーツ施設の管理・運営を受注できるように、クラブ体制を整えていくことも収入確保の現実的な手段として必要です。地域のスポーツ施設に活動拠点を置くクラブにとっては、非常に現実的な収入確保に繋がる手段とも言えます。更に、クラブの人材としての指導者などの専門スタッフの派遣事業にも、実現性の高い収入確保手段となるでしょう。
何れにしても、財源確保は、クラブ設立段階からの重要な計画課題として、十分に検証し、安易な方法だけを模索していくのではなく、クラブの持つ企画力や運営力、そして人材に対して、正当な価値を評価してもらえるようにクラブを組成していかなければ、その対価として必要な収入を得ることは出来ません。自由な運営という裏側には自主財源の確保という課題を如何にクリアしていくか、という大きな命題があることを見逃すことはできません。
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2008年10月29日
1993年のJリーグ創設以降の、全国各地でのサッカークラブ創設の動きもそうでしたが、最近の、プロバスケットボールの独立リーグ、bjリーグへの新規加入を目指す各地区のチーム創設の動向の多さは、現状の日本のスポーツの置かれている環境を、雄弁に物語るもののひとつであるように思っています。大都市集中型で企業スポーツチーム中心のスポーツリーグ隆盛の時代から、各地方の都市や地域に根ざしたプロスポーツチームの創設、そして、野球では、地方のエリア毎に独立リーグが複数誕生する時代になりつつある中で、一般の人たちがスポーツを楽しむ機会の創出や子供たちのスポーツを通じた育成や教育、そしてスポーツそのものの普及という活動も、その動きは、いまでは各地方都市や地域から生まれてくるようになっています。
一方で、産業や経済の停滞、人口の大都市圏への流出などにより、大都市と地方都市の格差は広がっていく中で、地方行政は、その財政状況をますます悪化させている傾向にあります。当然のことながら、スポーツは、施設の新規建設が停滞し、現状の施設の改善も進まず、施設利用者からの収入もその運営費すら賄うことができない悪循環の中に置かれ、もはや行政に依存するスポーツの振興策は、年を重ねる毎に停滞してきているようにも見えます。オリンピックでメダルを獲得した選手たちも、自分たちの育ってきた地元の練習環境がなくなっていく様を見て、悲観に駆られるコメントを多く残しています。
こうした中で、地域の住民たちが、自らが運営し、自らが運営資金を調達しながら育てていこうとするスポーツクラブ組織が全国に広がりつつあります。総合型地域スポーツクラブです。スポーツ振興法に基づいて、長期的・総合的な視点から国が目指す21世紀のスポーツ振興の基本的方向を示すために、2000年に文部科学省によって策定された「スポーツ振興基本計画」の具体的な施策によって、いまその育成が進められているのです。
計画期間としている10年、つまり2010年までに、全国の市町村に少なくともひとつは総合型地域スポーツクラブを育成しようとするこの事業は、2008年7月までで、全国1,046市町村に、2,768ものクラブを創設させるまでになっています。育成率は、57.8%。まだ半分強といったところですが、2010年で100%達成は無理としても、その根は着実に伸びているように見て取れます。
総合型地域スポーツクラブとは、具体的にはどのようなものなのか?。
さまざまな資料や、一部のクラブの活動状況をWEB上で確認すると、一言で「多様性」に富んだ組織である、ということが言えます。まず、“総合型”という言葉の裏側にある3つの多様性です。一つ目は、クラブで活動する対象が、特定の年齢や世代に限られることがないこと。つまり、年齢や世代に関係なく、多様な人たちがクラブの活動の主役になっている、またはなれる、ということです。二つ目は、実際の活動で対象とされるスポーツも、その種目に何ら制限はなく、参加したいあらゆるスポーツ種目を体験し、または取り組んでいける、ということです。三つ目は、スポーツに参加する人たちの技術的なレベルも、初心者からトップアスリートまで、参加する条件に一切の制限がない、ということ。つまり、さまざまなスポーツの技術レベルに応じた参加方法や活動システムが備えられる、ということです。三つ目に関しては、クラブ組織の規模や中・長期でのクラブ運営の方針に関わるでしょうから、最初からあらゆる運営システムを備えていくことは無理でしょうが、理念としては、制限を設けない、というポリシーを置いている、ということなのだと思います。また、この3点だけを見ると、非常に内輪だけの活動のみを考えた組織のように思えますが、総合型地域スポーツクラブの最大の特徴は、“公益”を目指した経営意識を有する非営利的な組織である、という点です。つまり、地域社会に開かれた組織でなければ成り立ちません。特に、自主財源による運営を前提としていますので、公営性のある開かれた組織でなければ、運営資金となる会員からの会費収入や、事業企画による事業収入は得られません。行政の補助だけに頼る閉鎖的な組織では決してないのです。経営という観点があることで、非常にビジネスライクな組織運営を求められることも、単なる仲良しクラブ的な私益を前提としたクラブでないことを示しています。
このことは、総合的地域スポーツクラブの設立パターンを検証することでも分かります。代表的な設立例を取り上げてみると、以下のようになります。
◇スポーツイベントの成功を契機として、参加した住民が中心になり生まれてクラブ
◇学校開放の運営組織が核となり生まれてクラブ
◇学校の運動部活動と地域との連携から生まれてクラブ
◇スポーツ少年団が核となり生まれてクラブ
◇既存の地域スポーツクラブの種目を核として多種目的に発展したクラブ
◇既存の地域スポーツクラブが連合して生まれたクラブ
◇公共スポーツ施設の有効活用を図る観点からスタートしたクラブ
◇既存の地域スポーツ振興組織の見直しや再構築を目指して生まれたクラブ
◇地域のスポーツ教室参加者が集まって生まれたクラブ
◇大学の人的資源や物的資源を活用して生まれたクラブ
◇企業チームを母体に地域のスポーツクラブに移行したクラブ などなど・・・。
大学にある“資源”を活用して誕生したクラブとしては、早稲田大学が所沢キャンパスを中心に展開している早稲田クラブ2000という組織が、以前、報道でも取り上げられています。なんと1,200名以上もの会員がいて、13種目のスポーツの活動を行っているとのことです。大学は、単なる教育機関としての性格だけではなく、企業や産業界との連携、そして、社会貢献活動においても重要な役割を担うようになってきています。プロスポーツチームではないですが、地域密着という観点でも、校舎を構えている地元地域との連携や共同事業など、大学はその中心的な役割を求められるようになってきているのです。早稲田クラブ2000の正式名称は、所沢市西地区総合型地域スポーツクラブで、2000年5月に誕生しました。早稲田大学所沢キャンパスや周辺の公共スポーツ施設などの有効活用や、大学の人的資源などをうまく地域住民のスポーツ活動に役立てていくための組織として、幅広く活動しているようです。首都圏の各大学は、都市中心部から郊外への校舎移転が進み、ベットタウンの中に大学校舎がそびえ立つ姿をよく目にしますが、学生のための大学という観点から、地域でのスポーツや文化の活動や交流の場として変革していくことが、ある意味で今後の大学のあり方として求められることなのかもしれません。
企業スポーツとの関わりという点から見てみると、パナソニックの企業チームと地元の総合型地域スポーツクラブとの連携で、将来の日本代表選手を地元から育てよう、という画期的な取り組みもあります。総合型地域スポーツクラブの枚方キングフィッシャーズスポーツクラブと、バレーボールVプレミアリーグの強豪、パナソニックパンサーズとの共催によりパンサーズジュニアバレーボールチームが2006年に誕生したのです。日本のトップリーグのチームにある指導ノウハウや、所属選手やコーチの協力で、未来のトップ選手を育てようとするこの試みは、普及や育成という観点を超えたスポーツ強化に至る範疇まで、総合型地域スポーツクラブはその可能性を見出せることを実証しています。従来は、企業スポーツチームの存在とは、企業の広報や宣伝という側面ばかりに目が行きがちでしたが、先の大学と同じように、企業の社会貢献がスポーツにも活かせることを、地域のスポーツクラブがあるお蔭で具体化できたのだと思います。
一方で、公共スポーツ施設の有効活用を図る観点からスタートしたクラブは、意外に多いのではないでしょうか?。施設の維持管理や運営費に、毎年数千万円から大規模な施設になると何億円もの費用が税金から支出されている中で、指定管理者制度の導入により、施設の運営手法の見直しや収益性を高めるなどの努力が進められているようですが、根本的には、施設の利用率をどのように上げていくかが最大の課題となっています。総合型地域スポーツクラブは、会員からの会費収入やスポーツ教室やスクールの展開による事業収入によって、その自主財源を確保しながら運営することを基本としていますから、公共のスポーツ施設を活動拠点として活動することにより、施設の稼働率も上がり、収益も向上していきます。公共のスポーツ施設は、施設の運営に関して、単なる維持管理という性格が強い体制にあるように見られますので、クラブの活動拠点となることによって、運営という側面からソフト面でのノウハウ蓄積にも一役買うことになっていくのかもしれません。詳細は調査していませんが、クラブが指定管理者となって、直接施設の運営に関るケースも出てくることも望ましいことだと思います。
今年7月現在の総合型地域スポーツクラブは、全国の1,810市町村の内、育成率は57.8%であることは前述しましたが、その数値が、既に100%に達している県もあります。富山県と兵庫県です。富山県は、市町村数が15と、全国的にも少ない部類ですが、兵庫県は41です。しかも、兵庫県のクラブ数は、831にも拡大しています。NPO法人としての法人格取得はまだ進んでいないようですが、全国の37%もの数のクラブが活動しているという実績は、賞賛に値する思います。富山県に関しては、クラブ数は56ですが、NPO法人となっているクラブが18例あり、先に述べた施設の指定管理者になっているケースが、その中の12例もあります。東京のNPO法人数が20ですから、如何に組織の基盤作りが進んでいるかが伺えます。各都道府県は、それぞれの地域の特色により総合型地域スポーツクラブの育成を進めているようです。以下は、育成率の高い都道府県のランキングです。
(順位/都道府県名/育成率/市町村数/設立済クラブ数/法人格取得クラブ数)
1.富山県/100%/15/56/18
1.兵庫県/100%/41/831/2
3.秋田県/92.0%/25/24/2
4.鳥取県/84.2%/19/21/5
5.徳島県/83.3%/24/22/1
5.大分県/83.3%/18/21/2
7.長崎県/82.6%/23/17/2
尚、育成率の低い都道府県は、以下の通りです。
1.奈良県/35.9%/39/14/3
2.長野県/38.3%/81/29/4
3.宮城県/41.7%/36/25/9
ただし、上記は市町村数によって差が出ますので、単なる指標であり、評価の対象とされるものではありません。
posted by umekichihouse |05:34 |
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2008年10月28日
「アジア・ビーチ・ゲーム」と聞いて、“何だそれ?”と思う人が大半だと思いますが、今月18日から、インドネシアのバリで開催されていたOCA、アジアオリンピック評議会が主催する立派なアジア地区総合競技大会が、26日にその幕を閉じました。2005年に開催都市がバリと決定し、アジア・ビーチ・ゲームの第1回大会が、今年開催されたのです。19競技、71種目に、45の国と地域から約6,000人が参加して行われました。冬季オリンピックの約倍の参加規模です。4ヶ所のビーチエリアとその海域を会場として行われたようですが、大会名の通り、ビーチや海で行われるスポーツばかりが19競技もあるというのは、些か驚きでした。バスケットボールやハンドボールの各協会のニュースにおいて、選手派遣の情報がありましたので、少しは気になっていたのですが、まさかこれほどまでの大会とは思いませんでした。今回は、アジア・ビーチ・ゲームがどんなものか、そして、少し興味深い競技種目も検証してみたいと思います。
4年に一度のアジア大会は、以前に広島でも開催されていますし、多くの日本選手が派遣されていますので、ご記憶の人も多いかと思いますが、そのアジア大会は、39競技、423種目で競われます。オリンピックが、北京五輪において28競技、302種目でしたので、参加国・地域数がオリンピックの1/4弱とは言え、相当な規模になります。そのアジア大会と比べると、アジア・ビーチ・ゲームは、競技数では約半分、種目数では1/6程度ですが、それでもかなり大規模な大会と言えるでしょう。以下が、実施競技の一覧です。
◇ビーチ・カバディ
◇ビーチ・プンチャック・シラット(インドネシアの伝統武道)
◇ビーチ・セパタクロー
◇ビーチ・ウォーター・ポロ(水球)
◇ビーチ・レスリング
◇ボディビルディング
◇ドラゴンボートレース
◇ジェットスキー
◇マラソンスイミング
◇パラグライディング
◇セイリング
◇サーフィン
◇ウィンドサーフィン
◇トライアスロン
◇ウッドボール(ゴルフに似ている台湾生まれのスポーツ)
◇ビーチ・バスケットボール
◇ビーチ・ハンドボール
◇ビーチ・バレーボール
◇ビーチ・サッカー
何か南国のビーチでレジャー気分で楽しめるものばかりですが、中には、各競技の国際連盟でキチンとルールが設定されているものもあるのです。ビーチバレーやビーチサッカーは、既にオリンピック競技になっていたり、世界大会も開催されるほどの認知度もありますが、さて、ビーチ・バスケットボールやビーチ・ハンドボールは皆さんご存知でしたでしょうか?。
まず、ビーチ・バスケットボールとは、3on3バスケットボールのことなんです。ビーチとは言っても、砂の上でやるわけではありません。bjリーグやFリーグでも使用しているプラスチック製のスポーツコートを敷いて行います。ゴールも、インドア用のものを大会では使用していたようです。スコアボードもあり、3on3ではありますが、ハーフコートという以外は、ほとんどインドアと同じ仕様になっています。FIBA、国際バスケットボール連盟では、この3on3にも「FIBA33」と銘打って、まだドラフト段階のようですが、キチンとルールを設けているのです。大まかなところをご紹介すると・・・・、
・選手は4名登録で1名は交代要員。他に、コーチ1名、その他1名により、最大6名でチームは構成できる。
・試合時間は、5分ピリオドを3回行う。(ピリオド間のインターバルは1分間)
・ただし、試合終了前にどちらかのチームが33点になった場合は、その時点でそのチームが勝者となる。
・延長は1回2分で、決着がつくまで繰り返される。
・1人のプレイヤーが4回のファウルで退場となる。
・チームファウルは、各ピリオド3回まで、それを超えると罰則が与えられる。(罰則内容は具体的に不明です)
・各チームは14秒以内にシュートしなければならない(ショットクロックがあります)
という内容になっているのですが、私も17~18年前に3on3イベントに携わっていましたので、ルールはほとんど同じもののようなのですが、ショットクロックがキチンとあるところなんかは、FIBAチックですね。当然、タイムキーパーの他に、ショットクロックオペレータもスコアラーテーブルに配置されています。ただし、FIBAが3on3に対して、どのような戦略で展開しようとしているのかは分かりませんが、3on3までFIBAなどの競技団体に縛られてやるものどうかと思います。世界的にルールが統一されて分かりやすくなることはいいことかもしれませんが・・・。
今回、“日本代表”として出場した男女チームは、男子は、いまや高校バスケット界トップクラスの地位を不動のものにしている福岡第一高校の2年生たちが。そして、女子は、これも高校No.1の地位を不動のものにしている桜花学園高校の1年生たちが出場しました。その中で、何と、女子は見事に初代チャンピオンに輝きました。それも、決勝のタイ戦で、33点を先に得点し、余裕の勝利だったようです。1年生カルテットとは言え、アジアで初のタイトルには、さぞ気持ちの良かったことだったでしょう。年末のウインターカップでも、上級生に負けずに頑張ってほしいものです。一方、男子は、8ヶ国中最下位でした。上位3ヶ国は、インド、フィリピン、マレーシアの順だったようですが、国名も見ても、いつもと違う違和感を覚えます。それにしても、ビーチでもアジアでは勝てないのですね。
次に、ビーチ・ハンドボールを見てみると、意外にも、ビーチ・ハンドボールというのは、結構国内でも活動しているチームが多いようです。知らなかったのは私だけなのかどうか分かりませんが、大学にもビーチ・ハンドボール部や同好会のようなチームがいくつもあるようで、何と全日本選手権は、今年で10回目を迎えるほどの歴史があるようです。ビーチ・ハンドボールの日本代表として出場したチームは、男女とも大学の選抜チームだったようです。男子は、8ヶ国中7位。女子は9ヶ国も参加していて、日本は6位に終わっています。このビーチ・ハンドボール、実は、ビーチバレーと同様に砂のコートの上で行われます。実際に見たことがないので、ドリブルの時にどうやっているのかは分かりませんが、ダブルドリブル禁止のルールも国際連盟のルールの中にはありましたので、たぶんドリブルもあるんでしょう。ただし、インドアなどの整地されたコートの上でやるのとは違い、かなりハードな競技であるようです。ビーチバレーでの運動量以上に、ビーチサッカー並みに走るようなので、結構キツそうです。コートは、インドアのコートサイズよりも小さく、27mX12m。ゴールは同じようですが、プレイヤーは3人のフィールドプレイヤーと1人のゴールキーパーの4人で戦います。試合時間は10分間の前後半で、計20分間。ハーフタイムは5分です。ここからが面白いところなんですが、足元は素足で、ビーチバレーと変わりませんが、得点の入り方に演技得点のようなジャッジの要素が加わります。
・ノーマルなシュートは、1点。
・レフェリーが素晴らしいゴールと思った得点には、2点。
・ゴールキーパーによる得点には、2点。
・6mのペナルティスローには、2点。
以上のように規定されています。“spectacular”とあるますから、アクロバティックなシュートフォームからとか、ジャンプの高さが高いシュートが凄いのかどうか・・・、実際に見てみたいですね。バスケットボールのスラムダンクコンテストでのシュートのような演舞に近いシュートモーションが見れるのでしょう。点差が離れてしまったチームは、ほとんどまともなシュートを打っても追いつきませんから、どんどんアクロバティックなシュートを繰り出して追いつこうとするのでしょうか?。結構観客は盛り上がりそうですね。
OCA、アジアオリンピック評議会は、このビーチ・ゲームの他にも、インドア・ゲームなども開催しています。アジア地区は広く、文化や宗教もさまざまですし、経済環境も天と地ほどの差がある国がいくつもあります。その中で、スポーツを通じて交流を図るために、単にオリンピック種目だけで競うだけでは、経済的に豊かな国々にはなかなか対等に対抗できないことから、こうしたアジア特有で、誰もが参加しやすいスポーツ競技で競い合う機会を作っていくことも求められるのだと思います。アジア大会が競技数も種目数が多いのは、そうした理由に基づいているのではないかと想像しているのですが、冬季アジア大会には、出場したくても、南方の多くの国々には、競技に触れる機会すらありません。それならば、こうした南国特有の環境の中で、それに相応しいスポーツで戦うのも、アジア全体の交流をスポーツで図っていくという点では、大きな意義も感じます。第2回大会は、2012年に行われるようですが、アジア大会のように、10回、15回と定着していくようになれば、幾つかのスポーツは、オリンピック種目になるような規模にまで、競技人口が拡大するかもしれませんね。第2回は、ぜひ日本でもニュースで取り上げて欲しいものです。この大会は、勝ち負けよりも、スポーツを楽しむには持って来いの映像が満載であるように思います。
アジア・ビーチ・ゲームで行われている競技の中には、レジャー系のスポーツも数多く含まれていますが、九州の宮崎や鹿児島、また、沖縄や南方の島々などのリゾートなどで、イベントとして、ビーチ・ゲーム方式を取り入れていってはどうでしょうか?。ビーチ・バスケットボール、ビーチ・ハンドボール、そしてビーチ・サッカーやビーチ・バレーボールなど、競技性ある種目をミックスさせていけば、夏の直前や夏の終わり頃の観光客の呼び込み、または参加者としての団体客の呼び込みなど、結構面白いプログラムが組めるような気がします。単なる遊びだけの要素ではないので、スポーツの普及という側面からも、いくつかの競技団体は協力してくれるかもしれません。遊びにも、キチンとルールがあれば真剣に競い合いますし、何よりも、スポーツ競技としての面白さを体験できますよね。
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2008年10月27日
9月30日から10月19日まで行われたFIFAフットサルワールドカップ2008ブラジル大会。日本は、1次リーグで敗退したものの、キューバとソロモン諸島から勝ち点を上げ、次に繋がる結果を残しました。同じグループのブラジルとロシアが最終成績で1位と4位ということからしても、価値ある戦いだったと言えるでしょう。アジアから出場したイランが2次リーグに進出していますので、次は、2次リーグへ駒を進め、ぜひ4強を目指して欲しいと思います。
その日本代表が凱旋して、Fリーグもいよいよ再開されました。ワールドカップ開催のため、約2ヶ月間中断していたFリーグですが、再開初戦は、国立代々木競技場第一体育館。開幕戦と同じ舞台です。Fリーグ創設から2年目を向かえた今年の開幕戦では、昨年の記念すべき最初のオープニングマッチというお祭りムードもなく、入場者数も昨年の7割ほどに減りましたが、ワールドカップでの戦いの余韻を残してのセントラル開催は、過去最大の入場者数を第1日目に記録するなど、熱気に包まれました。しかし、中断前の8月31日(第7節)の各会場の入場者数は、決して多くはありませんでした。
<第7節 8月31日>
浦安 1,658人
名古屋 1,956人
大阪 1,469人
小田原 804人 ※4試合平均 1,471人
4会場平均では、1,471人。まだまだ観客動員に課題を残す結果でした。日本代表クラスの選手たちも、リーグ創設の勢いに乗った昨年の結果よりも、今年どれだけお客さんを呼び込めるかが勝負だ、と報道などではコメントしていましたが、中断を予期して昨年よりも2ヶ月早く開幕した今年のシーズンでの、これまでの動員実績を見ても、またまだ結果を残せる状態にはなっていません。
しかし、ワールドカップでの戦いを受けての期待感がそうさせたのか、また、日本の世界における力の証明がそうさせたのか、何れにしても、今回のセントラル開催は、過去最高の入場者数を記録したのです。初めての1日4試合というファンにはお得なカーディングでもありました。ただし、2日間の日程の中で、課題も見え隠れしたことは間違いありません。
以下は、昨年と今年の国立代々木競技場第一体育館で行われたセントラル開催での観客動員実績です。
<2007-08シーズン>
9月23日(開幕戦) 第1試合 6,639人
第2試合 7,068人
9月24日(開幕戦) 第1試合 5,479人
第2試合 6,157人 ※開幕戦平均 6,335人
1月12日(第16節) 第1試合 3,103人
第2試合 3,597人
1月13日(第16節) 第1試合 2,495人
第2試合 3,103人
2月16日(第21節) 第1試合 2,588人
第2試合 2,952人
2月17日(第21節) 第1試合 3,224人 ※開幕戦を除く8試合平均 3,077人
第2試合 3,557人 ※全12試合平均 4,163人
<2008-09シーズン>
7月12日(開幕戦) 第1試合 3,433人
第2試合 3,750人
7月13日(開幕戦) 第1試合 4,329人
第2試合 4,730人 ※開幕戦平均 4,060人
10月25日(第8節) 第1試合 3,025人
第2試合 4,717人
第3試合 6,127人
第4試合 7,081人
10月26日(第9節) 第1試合 2,514人
第2試合 3,433人
第3試合 4,278人 ※開幕戦を除く8試合平均 4,487人
第4試合 4,728人 ※全12試合平均 4,345人
国立代々木競技場第一体育館で行われた12試合づつの平均値を見ると、その差は300程度ですが、開幕戦だけの比較では、2,300人ものマイナスでした。しかし、開幕戦以外の8試合を見ると、約1,500人もプラスでした。
昨年の開幕戦では、リーグ創設の勢いというか、ご祝儀相場的な上澄みがあったのでしょう。そのことから考えると、今年の4,000人という実績は、ひとつのバロメーターになるように思います。つまり、セントラル開催では、4,000人を安定して動員できるようになれば、リーグ全体の戦績やカーディング次第では、5,000も見えてくるし、また6,000人超えを狙える、ということが言えます。今回のセントラル開催では、1日4試合ということで、第1試合の開始時間が早かったこと、また、4試合の中で、リーグ上位チームの出場が後半2試合だったこともあり、第1試合と第4試合との間に倍近い差が出たことが、1日の平均値を下げていますので、そのことを差し引くと、25日は6,000人前後、26日は4,000人強というところが、動員力としての数値になるように思われます。そのことからすると、ワールドカップ効果なのか、興行価値としては、1,000人から1,500人程度の規模で向上している、とも考えられます。逆に見ると、1,000人から1,500人という動員の上積み分は、コアファンではないが、Fリーグに注目しつつある潜在的なファン層であるとも言えますので、今後、これらの人たちを如何にコアファンとして取り込んでいくかが、Fリーグの課題のひとつとなる気がします。
実際に、観客席を見てみると、親子連れの子供たちや、チームなど団体で来場している小学生や中学生も見受けられましたが、大半は、大人でした。カップルや、友達同士で来ている20代から30代前半くらいの人たちが非常に目に付きました。中には、一人で来場している人もかなり多かったように見受けられました。男女別に見ると、やはり男性の割合は多いものの、女性も3割以上いたと思います。Jリーグでは、観客に対する調査を定期的に行っていますが、新規のファン開拓という意味合いでは、このセントラル開催の場を利用して、こうした来場者の属性を見極めていくことが、コアファン開拓のためにも必要だと考えます。大人の来場が多いということは、今後のファン拡大には期待がもてる、ということでもあると思います。ただし、JリーグファンがFリーグも同時に応援しているのか、フットサルに限ったファンなのか、または、サッカー全般を見るのが好き、という一般的なサッカーファンなのかは、詳しく検証すべきポイントだと思います。
中には、日頃、全くサッカーは見ないが、インドアスポーツとしてフットサルに興味を持っている人たちもいるような気がします。バスケットボールやハンドボールファンにも、全く違和感なくフットサルは楽しめるからです。足を使うか手を使うかの違いを除けば、ゴールやコートラインはハンドボールにそっくりですし、チームファウルがあるところや、レフェリーの動きを見ていると、バスケットボールに共通する部分もあります。コートサイズはフットサルの方が多少大きいサイズですが、今回は設置されていなかったアリーナレベルの客席があれば、より臨場感のある楽しみ方が出来ると思いますし、それは、バスケットボールやハンドボールと全く同じように、テレビジョンサイズのインドアスポーツとして見ることが出来ます。以前、インドアスポーツの協働の可能性について取り上げたことがありましたが、バスケットボールファンやハンドボールファンは、フットサルを見ても、十分に楽しめることは間違いありません。逆に、フットサルファンが、バスケットボールやハンドボールのファンになる可能性は、非常に高いように思います。複数のスポーツを取り入れているJクラブもいくつかありますが、プロスポーツ球団の経営の中で、フットサルチームとバスケットボール、ハンドボールなどのチームが連携して、ファンの獲得や試合会場の活用を協働事業として取り組むようになれば、ひとつのアリーナが、より多様な魅力を生み出す興行機会を作り出せるようにもなるでしょう。ファンと選手の距離が近いこと、だからこそ臨場感が高まりやすいこと、そして、インドア特有のさまざまなエンタテイメント性を盛り込めることなど、共通するイベント要素は、たくさんあるように思います。
Fリーグは、来季から10チームになります。北海道と東京府中の2チームが加入してきます。現在、レギュラーシーズンでの観客動員は、独自のアリーナを持つ名古屋は2,000人を超える時もありますが、1,500人というところが平均値ではないでしょうか?。ただし、この数値も、上位のチームが1,800前後の動員を安定して保っているからで、1,000人強程度の試合もかなり多いようです。プロバスケットボールの独立リーグ、bjリーグのレギュラーシーズンの平均値と比較すると700~800程度の差がありますが、これも3年、4年とリーグが実績を重ねていけば、直ぐに追いつくように思います。先に述べたように、フットサルには、大人のファン層を掴む潜在力があるように思うからです。バスケットボールは、観客層としては、まだまだ中・高校生が多いようです。企業スポーツによるリーグ運営が歴史を作ってきたことが、そのひとつの要因かもしれません。興行的な動員策よりも、地域貢献や福利厚生的な意味合いが強かったからでしょう。その点から言うと、フットサルは、プロまたはクラブチームの参加によるリーグ創設から始まっています。Jリーグのサッカーのプロとしての位置付けが浸透していることもありますので、最初からフットサルを応援するファンの人たちの意識が違っていたのかもしれません。
セントラル開催で獲得した約4,000人規模のファン層を如何に各チームのホームゲームに引き寄せていくか?。そして、セントラル開催で開拓したプラス1,500人規模の新規ファンを、如何に固有のファンとして囲い込んでいくか?。こうした課題の解決策を、中・長期的な視点で見出していくことで、Fリーグは、確実にホームアリーナを満員にしていける潜在力を持つようになると思います。まずは、2年目の今シーズンの年間を通した実績が、どのようなものになっていくのか、注目しながらFリーグの試合も楽しみたいと思います。
posted by umekichihouse |07:45 |
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2008年10月26日
スポーツ振興法は、国体の開催を定め、スポーツの普及と振興を推進することを目指し、そして、スポーツ基本計画を策定することを定め、地域スポーツの活性化とスポーツ参加の促進を目指しています。1946年に始まる国民体育大会は、戦後から日本の全国的なスポーツの普及、促進、強化を牽引する、まさにスポーツの祭典として開催され、60年以上の歴史を刻んできました。いま、その開催についてさまざまな改革が論じられている中で、21世紀を迎え、スポーツは全国的な観点からの普及や育成施策ではなく、地方の都市や地域から、その活動組織の組成に関する取組みが始まっています。総合的地域スポーツクラブがその代表例です。
この歴史的な流れの中で、間違いなく、国体の日本のスポーツ界における存在意義やポジショニングは、確実に変わっていくべき時を迎えていると思います。一方で、地域で根付き始めた総合的地域スポーツクラブを始めとする地方から拡大しているスポーツ組織の活動の輪は、経営的なノウハウはもちろんのこと、指導や普及、そして事業展開に至るさまざまなノウハウや実務経験を持つ人材を求め始めています。単なる仲良しクラブではなく、自主財源による自主運営で活動の拠点を作り、そしてさまざまな事業をも生み出す組織の拡大化は、スポーツを理解し、事業として推進できる人材がいなければ、それは成り立ちません。また、総合的地域スポーツクラブは、単なる地域のコミュニティから派生するだけではなく、企業スポーツから、また、プロスポーツチームの運営から、そしてスポーツイベントの運営組織から生まれる場合など、その派生の仕方は多様なものがあります。やがては、ヨーロッパのスポーツクラブ組織のように、トップチームの活動から一般市民のスポーツ育成に至るまで、幅広いスポーツ事業を司る存在になる可能性を秘めているのです。よって、その組織を支える人材こそ、今後最も育てていかなければならない対象である、と言うことが出来るのです。
そこで、国体開催の運営面で行われている、その開催地内の幅広い人材育成や教育のプロセスこそがフォーカスされるべきだと思います。つまり、国体を、競技選手の育成や強化という観点だけで捉えるのではなく、「スポーツビジネスやイベントオペレーションといった実務経験を伴うノウハウを必要とするスペシャリストを、開催地内の地域単位で育成し教育する機会」、として捉えていくことも必要なのではないか、と考えるのです。それほど国体とは、費用はもちろんのこと、準備に膨大な時間を要し、また、官民問わず多くのスタッフが関わる事業なのです。そして、国体開催を通して生まれたスポーツイベントの人材組織こそ、次の世代の総合型地域スポーツクラブの経営を支えたり、その活動を推進していくための中心的役割を担う存在になっていくことが理想なのではないでしょうか?。国体開催という機会が生み出す新たな事業価値が、この辺に潜んでいるように考えます。
国体の準備に関するマニュアルを見てみると、イベント運営としてのノウハウ的記述には目新しい内容はありませんが、地域から参加する、特に役員、係員、補助員の大規模な人数の人たちに対する教育や指導、そして実践現場での育成に至る過程を見ると、非常に多くの時間を掛けていることが一目で分かります。ほとんどは無償で協力するボランティアとして関わっているのだと思いますが、競技の特性に応じて、また、競技会場の特性に応じて、開催地全域に及ぶ広範囲にその活動の場はあるわけですから、人数だけ考えても大規模になることも必然となります。それら多くの人たちは、国体の終了してしまうと、ほとんどの人たちには、次の活動の場はなかったことでしょう。長い時間を掛けて習得し、実際にイベントの現場で実践した知識やノウハウは、昔のイベント運営現場よりもより高度で複雑なものになっているので、生かせるチャンスさえあれば、貴重な人材となるはずです。
国体の準備マニュアルを見ると、競技そのものの運営を担当する人たち(競技役員および競技補助員)と、競技会場や大会全体の運営を担当する人たち(競技会係員および競技会補助員)にスタッフの役割は区分されており、その中で、競技及び競技会補助員は、競技会場の地域の中・高校生から一般までの住民を起用しているようです。また、その業務内容は、非常に多岐に渡っています。競技補助員は、総務、競技運営、記録、招集、掲示、報道、放送、表彰、得点掲示、記録送受信など。競技会補助員は、総務、式典、案内受付、接待、宿泊、輸送、会場整理、施設管理、警備、会場美化、練習会場、駐車場、入場券販売または整理券配布、プログラム販売など。これらの業務は、地域のスポーツイベントやスポーツ教室等の活動では経験することができないような特殊なものも多く、だからこそ、数年前からの境域が必要となり、プレ大会のような実践研修の場も必要となります。国体の本番期間は、たった10日にも満たない短い期間ですが、ここで得られる体験は、求めれば何時でも体験できるものではありません。スポーツ事業に携わりたい人にとっては、正に、貴重なチャンスなのです。
地域のスポーツ振興を担うのは、各自治体の教育委員会であると、スポーツ振興法にはありますが、その方々は、国体を、その成績による成果評価だけに捉われるのではなく、国体開催の機会を、長期的な視野に立って“活かす知恵”をお考えになったらいかがでしょうか?。スポーツ施設の整備・充実というハード面だけに捉われるものでもなく、それらハードを活かすためのソフト面でのアイディアを生み出したり、アイディアを具体的にしていくための人材育成という視点から、国体というものを見直してはどうでしょうか?。日本体育協会が、国体改革2003を旗印に推進しようとしている競技力を注視した施策を受け入れていくだけでは、何百何十億円という都道府県民の血税が費やされている国体そのものから、地域住民の意識はますます離れていくような気がします。
posted by umekichihouse |08:29 |
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2008年10月25日
国民体育大会は、日本体育協会、国(文部科学省)、開催地都道府県の三者による共同開催で行われます。そして、スポーツ振興法に基づいて、国、つまり文部科学省には、地方スポーツ振興費補助のメニューのひとつとして、国体補助事業があり、毎年、開催地都道府県に対して補助金を拠出している訳です。その文科省の主管セクションは、スポーツ・青少年局競技スポーツ課。ここの資料によると、「国民体育大会とは、各都道府県対抗による我が国最大の総合的な競技大会であり、国民スポーツの祭典である」、と定義された上で、国体を主催する三者は、以下の4点について貢献するものとしています。
◇競技力の向上
◇スポーツ施設の整備・充実
◇スポーツ組織の充実
◇地域の活性化
この4点に関して、現在の実情を踏まえて検証しながら、国体が本当に必要なものなのか、または、国体のあるべき姿が、「国体改革2003」で示されているような方向付けで本当に良いのかどうか、あくまでも私の個人的な考えですが、今回は述べたいと思います。
まず、「競技力の向上」という点についてです。
スポーツ振興法の第4条第1項には、「文部科学大臣はスポーツの振興に関する基本的計画を定める」、として、同じく第3項では「都道府県及び市町村の教育委員会は、第1項の基本的計画を参しやすくして、その地方の実情に即したスポーツの振興に関する計画を定めるものとする」、と定め、国及び各自治体にスポーツ振興基本計画なるものを策定するように規定してあります。その国の定めるスポーツ振興基本計画の中には、その概要として、3つの政策目標と具体的施策が盛り込まれています。
1.地域におけるスポーツ環境の整備充実方策
2.我が国の国際競技力の総合的な向上方策
3.生涯スポーツ・競技スポーツと学校教育との連携推進方策
中でも、「1」の具体的施策として、生涯スポーツ社会の実現と成人の週1回のスポーツ実施率が50%になることを目指して、「総合型地域スポーツクラブ」を全国展開することが明記されており、文科省がスポーツ振興基本計画を策定した2000年以降、全国の市町村にその具体化が進められてきました。今年7月現在では、1,810の市町村の内、57.8%の1,046市町村に既に総合型地域スポーツクラブは創設されています。総合型地域スポーツクラブについては、詳しくは別の機会に取り上げたいと考えていますが、このスポーツクラブの活動は、地域の人々のスポーツ機会を創出することと、年齢世代を超えた一貫した育成や強化というシステムを作り出すことも念頭に置かれているようです。つまり、総合型地域スポーツクラブの存在は、やがては上記施策を具体化するための核としての存在になる、またはしていく、ということなのです。
一方で、地方自治体の定めるスポーツ振興計画の公表されている限りの内容をざっと見てみると、特に都道府県レベルのものは、必ずと言っていいほど、国体での成績、つまり、都道府県単位での順位を上げていくこと、または維持していくことを目標とする内容が盛り込まれているのです。つまり、国体とは、以前にも述べた通り、成果達成基準を図るための大会としての位置付けとして扱われています。また、そこには、スポーツ参加率の向上やスポーツ機会の増加などの目標値はほとんど見られません。オリンピック流に言うと、国体でのメダル獲得数を競うことが目標とされている、と言っても言い過ぎではないでしょう。
国の定めるスポーツ振興基本計画と、各地方自治体が定める基本計画の目指すところが、ある意味では一致していながら、各地方自治体の目標達成度を測る基準が、国体での成績であるとするところに、「国体改革2003」で示されている“競技力の向上”という視点に結びついている気がします。そして、競技力を向上させていくためには、トップアスリートの参加を促すことが早道だ、ということなのではないでしょうか?。しかし、元々の国体の開催意義であるスポーツの普及や地方スポーツの振興という観点からは、かなり逸脱してきているという感は否めません。「時代は変わってきている」、と言われればそれまでですが、それならば、スポーツ振興法そのものから見直して、スポーツの普及や育成という底辺から、国際的な競技力の向上までを、包括してマネジメントしていける体制と組織を作らない限り、現在の体制や組織の中では、どう考えても矛盾だらけの方向に向いてしまうように思います。恐らく、その点を突いたのが、「スポーツ立国ニッポン」を掲げる自民党やスポーツ議員連盟の中の一部組織の動きにつながっているのだとも推測します。
ちなみに、国の定めるスポーツ振興基本計画の中の、国際競技力向上の具体的な目標として掲げられているものは、オリンピックでの夏冬合わせて3.5%のメダル獲得率、ということです。具体的な数値にすると、13~14個のメダル数ということですが、この数値が2000年当時のものだとしても、こんなもんでいいのかどうか・・・。それはそれとして、問題なのは、このメダル数の数値目標設定が、各地方自治体の計画にブレイクダウンされた時、彼らの具体的な数値を何で図ればよいか?、ということから、国体での成績、というものが引っ張り出されたのではないか?、ということです。平たく言うと、国がオリンピックなら、地方自治体は、国体をそれに充てよう、ということのような気がします。もしそれが正解なら、単なる成果を示すだけのために、国体という存在が地方自治体のスポーツ振興行政の中でポジショニングされていることになり、本来、スポーツの普及や育成ということが大前提であるべきものが、大きくその方向性が歪められかねない、という危惧を抱きます。
結論的には、国体開催の理念として掲げる「競技力の向上」とは、勝ち負けの結果を問うことではなく、技術や精度、そして体力や精神力、更にはチームワークなどの、スポーツの中で競い合うレベルを向上させていく、という視点に立ち、国体は、あくまでも強化や育成の成果を披露する場である、と捉えるべきだと思います。そう考えることが、悪戯にトップアスリートの参加やプロ選手云々、または外国人選手云々を言うよりも、現実的であるような気がします。つまり、「国体改革2003」の示す競技力の向上は、単に国体というイベントそのものの興行価値を上げるための施策である、という捉え方に思えるのです。それだけでは、スポーツ振興法やスポーツ振興基本計画が目標として掲げている内容と、矛盾が増すばかりではないか・・・、と私は考えるところです。
次に、「スポーツ施設の整備・充実」ですが、これは、最近の国体では特に顕著になってきている課題です。例えば、競技ルール変更に関連して、国体開催地に対する競技団体からの要請が複雑に、また高度になってきている、という点や、開催地近隣の他の自治体区域にある競技施設の使用、つまり広域開催にせざるを得ない、という点などです。スタジアム施設やアリーナ施設は、プロスポーツチームの本拠地としての活用や、各種国際大会の招致に絡み、設備面の欠陥や不備による興行コストの増加により、開催費そのものの不足に陥る問題が浮上しています。競技ルールの変更により、適正な競技環境を再整備しなければならなかったり、興行という視点からは、観客席の不足や館内諸室の不足などによる運営面での不都合により、仮設工事を施さなければならなかったりすることに起因しているものです。かつては、国体開催の度に、その開催地には新しいスポーツ施設が建設されてきました。その時は、地域の誰もが喜んでいたとしても、国体開催後の利用計画が無計画だったり、現実と即した計画でなかったりした点に起因して、その後の施設の運営費がもたらす財政負担が、地方財政が苦しい現状では、大きな問題にもなっているケースも出てきました。指定管理者制度の導入により、施設の運営施策は、大きく転換しようとはしていますが、まだまだ多くの施設の運営は、そのほとんどが税金頼みです。
一方で、総合型地域スポーツクラブの拡大によって、各地区にある公共のスポーツ施設内にその拠点を置いたり、活動の場としての利用が拡大しているケースを見ると、単なる“待ちの営業”をしていた無策な行政に比べれば、格段に利用率の向上に貢献しているように見受けられます。この様子を見ていると、国体開催を機に作られる、または再整備されるスポーツ施設の活用施策の幅は、以前よりも格段に広がっているように感じます。総合型地域スポーツクラブや地元で活動するプロスポーツ球団との連携、または、企業チームや、やがてはスポーツリーグとの連携を、単発的なものではなく継続した利用環境に関して連携していけば、ますます利用状態は充実したものになるように思われます。そのためには、公共施設としてありがちな頭が堅い規則に縛れた運用ではなく、利用者の立場に立ったサービスを前提とした運営を、所有する行政側も考え直していかなければならないでしょう。体育館を維持するのもお役所の仕事でしょうが、利用してもらってナンボ、ということを知るべきだと思います。
国体開催を契機として、新たなスポーツ施設を建設する動きは、今後ますます停滞していくことは、現状の地方財政の切迫状況を見ても明らかです。恐らく、既存施設の有効活用や、近県の施設の利用を視野に入れた広域開催も、今後ますます論議されることになっていくと思います。特に、自然の中を競技スペースとして使用するボート、カヌー、そして今後正式競技になるであろうトライアスロンなどの競技は、全国津々浦々にその競技環境が整っているわけではありません。ましてや、国体開催毎に、臨時設置するわけにもいきません。そこから考えると、国体の単独権開催というのも、再考すべき時期が来ているようにも感じます。施設や環境の整った大都市を控える一部の都道府県と、多くのインフラ整備を余儀なくされる都道府県とは、開催費用以外の面での財政負担が、まるで異なってきます。2順目に入っていますので、過去に作られた施設の活用は出来ても、先に述べたような競技運営上の不都合から改修や再整備を余儀なくされるケースは、必ず出てきます。“FESTIVAL”ということで言えば、一極集中開催でお祭りの雰囲気を盛り上げることが得策なのかもしれませんが、そこは、国体の性格をどのように位置付けていくかで、得られる効果も大きく異なってくることを、官僚の皆さんも慎重に検証すべきだと、私は個人的に思うのです。
結論的には、「スポーツ施設の整備・充実」という施策は、今後はより広域のエリアでの施設利用を前提としたスポーツ施設計画に改めるべきだと考えます。道州制が問われて久しいですが、現実的な道州制がしかれなくても、近隣の自治体が連携して、相互利用が可能で、しかもそれだけにより充実した興行にも適する施設を建設、または整備していく方策の方が、現実的であるように思います。小さい施設を数多く建設していく発想から、広域利用を前提とした考え方の方が、現在の経済環境や施設の利用状況を鑑みれば、現実的であるように、私は思います。このことにより、国体の開催も、単独都道府県開催から、国体創設時に行っていたような広域開催も選択肢としていくことが、開催地の負担を減らすというよりも、財源を有効に活用する、ということで有効であるように思います。
最後に、「スポーツ組織の充実」と「地域の活性化」という施策についてですが、これらは、一言で言えば、国体開催に関連して考えるならば、既にその役割は終えた、ということのように感じます。課題は、既に次の段階に入っていて、それが、総合型地域スポーツクラブの拡大、拡充なのだと思います。
先日出席した日本スポーツマネジメント学会のセミナーのことは、以前にも取り上げましたが、そのセミナーの中での内容を引用させていただき、この点の問題について、具体的に検証してみたいと思います。
セミナーのテーマは、「日本のスポーツはどこへ向かうのか?」、というものでしたが、北京五輪を総括することもサブテーマとしてありました。その中で、JOCの代表として、北京五輪でのプレスアタッシェを務められた方が講演し、メディアの立場に立って、メダル獲得を目指した日本の強化策について、こんなことを仰っていました。
「中国や他の社会主義国のように、子供の頃から才能ある人材を中央に集めて強化していくことは、一般的なファンの立場に立ってみると日本では受け入れ難いと考える。選手たちは、自分たちが育ったそれぞれの地域から世界の舞台を目指し、そしてその地域の人たちの応援があるからこそ頑張ってこれたのであって、それが選手たちの力にもなっている。日本では、そうしたコミュニティが支える文化が、スポーツにもまだ脈々とある。メディアが、メダリストを紹介する時に、必ず出身地の応援の様子を取材するが、それは、選手たちが育ったバックグラウンドがそこにあるからで、そのことが日本中にもおきなムーブメントを作り出していくのだと思う」。
私は、本当に世界のトップシーンに立てるような強化をしていくならば、世界で戦った経験が薄い競技や、現状の世界基準までに指導力が達していない競技に関しては、所謂ナショナルトレセンでの中央一極強化という環境も必要なことだと思っていました。しかし、この講演を聴いていて、選手たちが子供の頃から育った環境というのは、彼らの才能の基礎を作り出したものだから、その地域、コミュニティにいる人たちの応援というのは、選手の一番の力になっているんだ、ということを認識し直しました。私も小学生の頃、スポーツ少年団でサッカーボールを追いかけていましたが、その活動の場がなければ、スポーツ選手ではなくても、いまこうしてスポーツと関わり続けてはいなかったと思いますし、スポーツの良さや魅力も、いまのように持ち続けてはいなかったと思います。スポーツ少年団の中では、子供の親たちはもちろんですが、学校の関係者や多くの地域の人たちまでが応援団となってくれていたことを、講演を聴いていながら思い出しました。オリンピック選手たちも、恐らくそうした記憶は誰にもあるのだと思います。そして、その記憶が、時には選手の力を少しだけ後押ししているのだと思います。
総合型地域スポーツクラブというものを、実は、私はほとんど知りませんでした。言葉では聞いていたのですが、その活動の実態や背景に至るまでのことは、まるで無知だったのです。しかし、国体のことをもう少し詳しく調べるために、関連の法律や地方行政の体制などを見ていくと、その存在規模は、ものすごく大きくなっていることを知りました。子供の頃にスポーツ少年団という組織で活動していたこともあり、その活動の地域における役割などもなんとなくイメージできましたので、その存在意義の大きさを再認識させていただいた次第です。ただし、総合型地域スポーツクラブいうものは、今後、さまざまな方向性を持ったクラブが登場してくる時代になっていくと思います。JリーグのJ2山形のように、プロサッカーチームの運営組織が、そのベースとなる場合もありますし、今後は企業スポーツのあり方も、総合型地域スポーツクラブの母体となるような形に変化していく可能性も否定できません。事実、いくつかの具体例はあるそうです。もちろん、地域のスポーツ活動の促進を趣旨とするだけのまだ小さな組織もあるようですが、どんな組織でも、それぞれの地域の中で活動を展開していることに変わりありません。組織の育成率が、まだ目標の半分を超えたレベルとはいえ、これが100%になり、そして市町村毎に複数のクラブが創設されるようになっていけば、点は面となり、より大きな活動が可能になるでしょう。
結論的には、国体に関連して、地域スポーツやその組織を考えるならば、総合型地域スポーツクラブが組織的に発展することを前提として、そのクラブから国体チームがつくられて、都道府県、もしくは地域を代表して国体という競技会の場に出場する、というのが、日本でのスポーツの普及や育成を底辺レベルから活性化していくためにも、理に叶っているように思います。オリンピックや世界の舞台で活躍している選手や、トップリーグ、プロリーグで活躍している選手たちの出場を、単なる興行的な価値を上げるためだけに模索していくのではなく、現状育ちつつある底辺での活動に新たな目標を作っていく意味においても、それは非現実的なことではないように考えます。
表題で、「国体不要論」と書きましたが、国体を全くなくそうとする意味ではありません。「国体改革2003」が示す今後の国体の方向性は、単なるイベント性を高めるだけのための施策にも見えますし、国際競技力の向上とは、国体云々の話しとは、全く違う次元のことのようにも思えます。国際性に乏しいから、という理由で、男子新体操や9人制バレーが正式種目から削除されるのは、まさしくイベント性を追及するためだけの施策なのだと思います。人気や競技人口、また動員力を問うだけの国体であるならば、普及でも育成でもなく、単なるスポーツイベント事業です。それならば、現状の国体は、既に寿命が来ている、というか、役割は十分に果たした、という意味で、私は国体不要という言葉を使いました。
隔年開催となる競技も生まれるとの報道がありましたか、トップアスリートが、調整や、競技で使用・着用する用具のテストのために、国体に出場しているという事実も現状の国体の姿であることも、知っておきたいと思います。
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2008年10月24日
スポーツ振興法の第4条、「計画の策定」という条文の中に、「都道府県および市町村の教育委員会は、スポーツの振興に関する計画を定める」として、「その計画を定めるについては、予めスポーツ審議会の意見を聞かなければならない」、とあります。スポーツ審議会とは、スポーツ振興法の第18条にその条項があり、「スポーツの進行に関する重要事項について調査審議し、都道府県および市町村の教育委員会の建議する」、としています。つまり、地方自治体のスポーツ振興に関する計画の立案に関しては、スポーツ審議会なる組織の存在が、クローズアップされる、ということなのです。しかし、一般の人で、このスポーツ審議会の存在を知る人は、ほとんどいないのではないでしょうか?。
各都道府県や一部の市町村のスポーツ審議会の議事録や審議状況は、WEB上に公開されていますが、ざっとその内容を覗いてみると、それぞれ特徴的なスポーツ振興のための組織作りを進めていることも読み取れるのですが、さほど具体的なものはなく、最も目に付く記載内容は、インターハイや国民体育大会での成績に関する報告なのです。「我が県は何位でした」とか、「どんな種目で成績が良かった」、などです。つまり、国体での成績の良し悪しが、スポーツ審議会の役割とされているスポーツの振興計画の指針になっている、とも言えるのです。
私が高校2年の時、地元で国体が開催されました。冬季大会から秋季大会までの完全国体です。中学2年の頃から、国体選手の選抜や強化が始まり、国体開催時に高校3年になる1年先輩の人たちは、夏休みや春休みなどの期間中には、合宿に駆り出されていたことを覚えています。当時は、まだ、「国体選手」というのは、なかなかのステイタスで、田舎では注目を浴びていた存在だったのです。いまから30年以上も前の話しですが、この当時の国体の果たす役割は、都道府県単位でのスポーツ強化が、「国体で勝つ」ことを目標に進められていたことを踏まえると、かなり意義のあることだったのだと思います。全く居住経験もない優秀な選手を、教員などとして採用し、県代表として出場させることなんか、日常茶飯事でした。中には、毎年赴任先を変えて、毎年違う県から選手として出場していた人もいたようです。そこまでして、勝ちたかったのが、国体だったのでしょう。しかし、都道府県民が勝ちたいと考えていたわけではないはずです。勝ちたかったのは、都道府県の教育委員会であり、スポーツ振興に携わっていた一部のお役人だけだったような気がします。
では、国体開催によって、都道府県や市町村は、スポーツ振興などの名目で、国から多額の補助がもらえているのでしょうか?。それならば、お役人らしく、国体への執着もよく分かる気がするのですが、現実は、全く逆の状況なのです。今年7月に、全国知事会が国に出した「施策並びに予算に関する提案・要望(文科省関係)」という文書を見ると、高校施設の耐震化対策や国立大学法人の運営費交付金などと並んで、「国民体育大会のあり方」という項目がありました。内容は、下記の通りです。
「国及び日本体育協会は、開催都道府県の意見を十分反映して国民体育大会の活性化・効率化に向けて継続的に改革を推進するとともに、開催に関わる経費を応分に負担すること」。
先の大分国体では、開催費用の146億円の中の約7%、たった10億円のみが国からの補助金です。残りの136億円は、すべて大分県民や県内市町村民の血税で賄われているのです。この実情を見ると、上記の全国知事会の要望も頷けるものがあります。国体のあり方そのものを問うまでの言及は、こうした財政的な背景があるからなのは一目瞭然です。また、文科省スポーツ・青少年局スポーツ課の資料で、国民体育大会補助事業に関する資料を見ると、下記のような記載があります。
「国民体育大会は、我が国のスポーツの競技力の向上に大きく貢献しており、また、都道府県において国体開催を契機としたスポーツ施設の整備・充実やスポーツ振興体制及び競技団体等のスポーツ組織の充実を図る上で重要であり、したがって、今後とも国体の主催者の一員である国が、一部費用を負担しつつ国民体育大会を継続して実施する必要がある」。
・・・と謳っておきながら、実情は7%負担に留まっているのが現実です。しかも、この補助金の対象経費も明記されていて、「式典及び競技運営に直接必要な経費」となっています。つまり、開会式は盛大にやれ、国から補助金を出す、しかし、競技運営に掛かる経費は、“直接”掛かると判断されるものだけですよ・・・、ということなのです。”直接“必要な経費とは、何を指しているのでしょうか?。ここにも、国体の継続を前提としながらも、理想と現実の見極めも出来ない官僚的な言葉面が並んでいるのは、情けないとしか言えません。国体開催を契機に体育館や競技施設をガンガン造っていた時代を、いまだに懐かしんでいるのでしょうか?。これでは、財政問題に直面している地方自治政策の最前線で戦っている知事さんたちが、前述のような要望を出すのも当然のことです。
以前のブログでも取り上げましたが、いま、自民党や超党派のスポーツ議員連盟の中に、スポーツ省(庁)の設置を目指したスポーツの新しい振興策を実現するための動きがあります。現代の実情に見合わない部分も多くなっているスポーツ振興法を抜本的に見直して、新スポーツ振興法というよりは、スポーツ法なるものを制定して、スポーツにより大きな財源が付けられるような体制作りが急務だと考えられています。その中で、国体のあり方がどのように取り扱われるのか?。今後も見守っていきたいと思います。
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2008年10月23日
2003年3月に策定された「国体改革2003」。その後、この国体改革2003の内容を前提として、「国民体育大会冬季大会のあり方に関する提言」と、「国体の今後のあり方プロジェクト提言骨子」という2つの文書が出されています。2つとも公開されていますが、前者は、その名の通り、冬季大会に関する改革策を具体的にまとめてあり、後者は、国体改革2003の中で公約している5年後、つまり今年までに改革すべき内容を取りまとめるためにプロジェクトが編成され、その中で論議されたことが取りまとめてあります。今回は、この2つの資料の中に書かれてある内容を下に、国体改革2003の内容に関する検証を進めていきたいと思います。
まず、「国民体育大会冬季大会のあり方に関する提言」ですが、冬季大会は、競技の特性から、開催地が限られるため、毎年、その開催地の選定が課題となっています。課題とは、ズバリ、開催費の負担に関する要件です。開催地候補が限られているだけに、開催地となる頻度が高く、その都度、高額な負担が自治体にのしかかるからです。日本体育協会では、冬季種目の競技団体と協力して、開催地の費用負担の軽減を目指し、新たな財源確保を模索しています。提言書の中でも、そのことは、明確に謳われています。
◇開催地の経費負担軽減を図るため、以下の3つについて検討する。
1.マーケティング活動による収入確保
2.参加料の増額
3.参加都道府県分担金の導入
「2」や、ましてや「3」に関しては、非常に安易な方法ですが、ひとつ課題が残るように思われます。冬季種目が強い都道府県は、当然のことながら参加規模は大きく、よって、「3」の都道府県分担金を導入したとすれば、参加料に加えて、ますますその負担は大きくなります。冬季種目にエントリーしたくても選手層が薄く参加規模が小さくなるような都道府県との差を、どのように調整していくのか、金銭的な問題にもなり、課題が残ると思います。もちろん、本大会である夏季や秋季大会にも同じ制度があるとするならば、不公平感は出なくなると思いますが、それはそれで、参加都道府県全体の負担が大きくなるばかりで、現実的ではないでしょう。ただし、そこまで追い詰められている、という冬季大会独自の悩みも汲み取ることはできます。
では、「1」のマーケティング収入ですが、マーチャンダイジングに関しては、大分国体の例を見ても、さほど金銭的なインパクトがあるまでの規模にはなっていませんし、ましてや参加規模の小さい冬季大会では、多くは望めません。結果的には、スポンサーシップということになるのでしょうが、本大会ですら、その大会の興行価値に疑問を呈するほどのメディアバリューしかないところで、冬季大会の興行価値を図るにも、それは到底無理な話しであるように思います。トップアスリートの参加がさけばれてはいますが、どの種目も、ワールドカップなどで転戦している時期でもあり、到底トップ選手の参加に、大きな期待を込めること自体無理な話です。つまり、スポンサーシップに足るマーケティングバリューが見出せないのです。せいぜい、寄付金のような性格の小額協賛を多数集めることくらいしか考えられない気がします。もちろん、日本の冬季スポーツ普及のために、一肌脱ぐ広告代理店などが登場すれば、話しは簡単なのでしょうが・・・。
冬季大会は、提言書にもありますが、スケート、アイスホッケー、スキーと、3競技に分類されて開催地が検討されているようですが、すべてを統一開催地で行う案と、スキーとアイスホッケーを含めたスケート競技を2つの開催地に分散して開催する案、そして、すべてを異なる開催地で行う案が検討されています。ただし、何れも、既存のコースや施設があってのことですので、総合開催に適する開催地は、ますます限定されてしまうことになります。結果的には、3開催地の分散開催が、開催費の面では無難なのでしょうが、競技大会としてのマーケティングバリューを見出すには、全く魅力のないものになるかもしれません。冬季インターハイや中学大会との連携開催等も視野に入れているらしいですが、冬季競技に関しては、総合開催を視野に入れた開催地をある程度固定化を前提に、開催地の利点となる施策を国としてバックアップしていかない限り、抜本的な解決策は見当たらないようにも思えます。
次に、「国体の今後のあり方プロジェクト提言骨子」ですが、この中で、着目したのは、3点です。
[1]国内最大・最高の競技大会、都道府県対抗方式、毎年開催を前提としている点
[2]トップアスリートの参加、都道府県対抗という郷土性など、「見るスポーツ」の対象として国体のブランド的な価値を高揚する、としている点
[3]入場料収入を念頭に置く、また、観戦ツアーの企画、実施について検討する、そしてPR活動の実施という視点での炬火リレーの実施を検討する、という点
項目というよりは、記述内容からランダムに抜粋した内容ですが、[1]に関して言うと、国内最大というのは数値的な規模から言うことなので差し控えても、国内最高というのは、どのような判断基準に基づいて判断されるものなのか、些か疑問です。恐らく、トップアスリートが参加する前提での考えなのだと思いますが、国体のいままでの開催意義を、こうも簡単に大転換させることを、国民が望んでいるのかどうか、非常に疑問に思うのです。各競技団体主催の全国レベルの大会には出場機会がないけれど、国体なら出場するチャンスがあるかもしれない、と、日頃練習に励んでいる一般アスリートも数多くいるのだと思います。だからこそ、国体の存在は生きるのではないでしょうか?。単なるトップクラスの競技会としての性格ならば、それが実現できたとしても、普及や育成という観点は、まったく無視されていくことになるのでしょうか。スポーツへの参加機会をより多く創り出していくことも、国体を中心に据えたスポーツ行政のあり方だと、私は思うのです。また、都道府県対抗という方式を頑として残そうとしていることも、疑問のひとつです。[2]にも謳われていますが、郷土性などという視点での競争意識が、まだあるのかどうかさえ疑問です。天皇杯や皇后杯というステイタスを得て喜んでいるのは、自治体の教育行政に関わる一部の人たちだけのように思えます。もし、国内最高の競技レベルの大会が実現するならば、都道府県対抗という方式がなくても、国体の興行価値は自ずと上がることは間違いありません。もちろん、本当に実現できたら、の話しですが・・・。逆に、何のための都道府県対抗なのか、と冷静に考えると、開催地の自治体が、国体の開催費の負担を拠出しやすい名目であったり、参加する都道府県に関しても、選手派遣などに掛かる費用の負担がしやすいだけ、という気もします。費用の拠出根拠は、明解にあるべきものですが、如何にも官僚的な発想だと思うのは、私だけでしょうか?。
[2]の「見るスポーツ」という言葉を見て、非常に驚いたのですが、この案の策定に関わった方々は、全くスポーツビジネスを理解していない、と言うしかありません。都道府県対抗と謳っておきながら、応援という観点ではなく、一般的な観戦する価値のあるスポーツ競技としての魅力を見出そうとしているわけで、非常に短絡的だと思います。現状の国体の競技の様子を見ても分かりますが、○○県対○○県の試合に、お金を出しても見たい、という魅力を何処に見出せばよいのか、疑問です。トップアスリート、つまり、日頃トップリーグなどで活躍しているチームが参加するならば話しは別なのでしょうが、都道府県対抗にはなりません。トップアスリートの参加を念頭に置いたアイディアでしょうから、堂々巡りになるので、これ以上述べることは差し控えます。
[3]に関しては、「見るスポーツ」という点にも関連しますが、有料入場とするだけの興行価値の見出し方を慎重に検討すべきだと思います。単に、一人頭何千円とか、何百円とか考えているならば、即刻こんな考えは捨てるべきでしょう。もしくは、観客動員の苦心しているプロスポーツ球団の幾つかに教えを請う方が早道です。チケット販売にしても、販売コストはゼロではありませんし、金銭を受け取る、ということは、観客に対してそれなりのサービスを提供する義務を負う、ということでもあります。トップリーグの地方興行などでも、昔はよく見られましたが、観客からお金を徴収する、という感覚自体に、全く責任感がないのです。また、炬火リレーなんていうのは、オリンピックの見すぎです。私には、問題外にしか思えません。
何れにしても、国体の行く末が、ますます分からなくなるような内容でした。国体とは、一体誰のために、何を目標として、どのように実施していくのが、本当にあるべき姿なのか。国体改革2003は、大分国体から具体化作業に入っているようですが、スポーツ省(庁)に関する論議も始まっていますし、6-7年前に論議されていた「観光立国ニッポン」プランを前提とした観光庁が、10月1日に発足しています。時間は掛かれど実現可能な話しであるのですから、ここで立ち止まって再考する余裕を見せることも、国体の改革を進めている関係者の皆様には、必要なことであるように、あくまでも個人的な考えですが、思うところです。
国体改革2003に関して、最後に、筑波大学の先生がまとめられた「国体改革に関する関係機関・団体アンケート結果における総括」という資料についてご紹介しておきたいと思います。これも、WEB上で公開されています。
アンケートの対象は、恐らく、国体開催に関わる自治体や競技団体の関係者だと推測されますが、自由記述もあるということで、中には興味深い回答結果もありました。ただし、ほとんどは、現在の国体にあり方に対してそれ程インパクトのある内容ではなかったので、ここでは、大きくは2つのポイントに絞って検証することにします。
まず第一点は、「各競技団体の定めている参加制限の撤廃について」という項目と、「予選会免除の拡大について」という項目に関する質問回答の内容です。どちらも、トップアスリートの参加に関わるものです。アンケート対象が、競技や国体に直接関わる関係者であると推測するので、肯定的な見解が多数であるのは同然なのですが、自由記述の中には、「国体はエリート中心の大会なのか、普及を重点を置いた大会なのか」と疑問を呈するものや、「トップアスリートの参加はレベルアップに繋がる」としているものの、「トップアスリートが国体に参加する要因は、予選会の有無よりは、開催時期や各協議における国体の位置付けにある」という意見も見られます。マイナー競技である競技団体と、メジャーと言われる競技の関係者の間には、かなりの見解の相違があることも、総括の中には記載されていました。どの意見も、○×で判断できるものではなく、またまだ課題あり、と示唆したものであるということだと思います。
第二点目は、「施設の弾力的運用について」という項目と、「近隣県の競技施設の活用について」という項目に関する質問回答の内容です。「競技団体からの要求が高い」という行政側の立場と思われる意見が目立つようです。元々、競技会場としての体育施設であったかどうか、という問題もそこにはあると思います。ここから派生して、「単独開催というこれまでの国体のあり方そのものを問う」という意見もあるようなので、プロスポーツが浸透してきている中で、興行面も含めた競技施設の内容をどう考えるのか、という課題も、今後、浮き彫りになる気がします。
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2008年10月22日
国民体育大会は、1945年、戦後のスポーツのあり方と、競技団体の組織と事業の確立を模索していく中で、その開催が提案され、1946年に、京都を中心とする京阪神地域を開催地として第1回大会が開催されたのが始まりです。国体は、英文表記では、「NATIONAL SPORTS FESTIVAL」。つまり、日本のスポーツの祭典、ということです。そして、戦後の日本復興の一役を担ってきたことは誰しもが認めるところです。
しかし、21世紀の現代において、国体の役割は如何なるものであるべきか、という議論は、当然のことながら沸き起こりました。特に、2万人を超える参加者数を前提として、160億円もの開催費を必要とするこの事業に対して、90年代前半のバブル崩壊とともに地方経済を圧迫し続けてきた自治体の財政状況などを鑑みると、このままでいいはずはありません。そこで、2003年に、日本体育協会理事会で、「新しい国民体育大会を求めて~国体改革2003~」なるものが策定されました。具体的には、今回の大分国体から具体化されている内容もありますので、前回も取り上げましたが、この内容について、まずはスポーツにかかわる日本のすべての関係者の皆様が、どのようにお考えになっているのか、ぜひお聞きしたいということもあり、まずは以下に内容を列記させていただきます。まずは、国体をめぐる課題について5項目が上げられています。
<国体をめぐる課題>
1.参加人数の拡大による都道府県の負担増
2.競技ルールの変更とそれに対する施設、設備の適合の困難さ
3.トップアスリート参加の困難さ
4.一過的で過剰な強化策
5.判定、得点等に対する不公平感
「1」に関しては、既に前回も取り上げましたので飛ばし、「5」に関しては、競技大会としてあまりにも当たり前すぎるので、それを課題として取り上げなければならない日本のレベルの低さに失笑しつつ、これも飛ばします。「2」と「3」については、ある意味で分かりきったことである、と言うことと、はたまた、国体そのものの存在意義や開催意義を問うことでもあるように思います。つまり、競技大会としての質を向上させるならば、これは当然のことで、各競技においても、その競技性をより公平に、より魅力あるものにするための変更措置であるはずです。しかも、国際性云々を言っていた日本体育協会ですが、競技ルールの変更は、国際連盟による世界的な変更であるはずですから、開催競技としての外しても、ルールは国際基準は無視すると言うのか・・・、ということではありませんか?。逆に、国体だからこそ、全国にその見本としての施設や設備を示す機会とすべきだと思います。また、特に3については、国体の競技大会としての位置付けの問題になりますので、何も語ることはありませんが、中国や旧ソ連、旧東ドイツの全国競技大会のようなイメージで考えていらっしゃるのでしょうか?。英文表記では、「Championship」という言葉は何処にもありません。あるのは、「FESTIVAL」という単語のみです。そのひとつの単語が、現在の国体の位置付けを雄弁に物語っているように、私は考えます。
上記の課題提起に対して、国体改革2003では、次の2つの方向性を、新しい国体のものとして示しています。
<新しい国体の方向性>
1.新しい国体の正確・目的
・より競技性の高いトップレベルの大会として構築し
・ジュニアからトップアスリートまで、幅広い競技者層を対象として
・競技者の発掘、育成の場として、充実、活性化していく
2.時代に適した大会運営のあり方
・財政負担を考慮した大会運営の簡素、効率化の推進
(開催地都道府県および参加都道府県の両方に対して)
一言で言うならば、現実的には、全く矛盾する内容が、2つ併記されている、ということです。「1」の内容を現実化するためには、国体の競技会としてのレベルを上げるために、先にあったような、施設や設備の充実に努めなければならず、また、都道府県対抗という国体特有の競技スタイルは、何の意味も持たないように思われます。いまは、都道府県単位で競うことが競技力の向上に結びつく時代でしょうか?。日本全体が一丸となった取り組み、例えばトレセン計画なんかもそうだと思いますし、ナショナルトレーニングセンターは、そのシンボルたる存在ではないでしょうか?。とにもかくにも、実行するためには、それなりの予算が必要となります。しかし、開催規模の拡大を抑制するために、大会運営を簡素化し効率化を進める、とあります。限られた予算の中で、「1」の内容を少しでも実現するために、何かを犠牲にしていこう。そのためには、全体のレベルが下がっても、とにかく国体を続けられるような規模で運営していこう。・・・という意味でしょうか?。つまり、やろうとしていることは予算がなくて出来ないから、理想だけは掲げたままで、現実的にはやれることだけをやっていく、というように読めるのです。それでは、「1」の内容に何の意味があるのでしょうか?。やりたいができない。では、現実的な予算は変えられないのだから、その範囲の中でできることは何なのか。そして、そこから得られる結果に基づいて、国体のあり方は、このように変えていこう・・・、というのがビジネスの世界では当たり前のアプローチだと思うのです。裏を返すならば、理想通りの国体としようとする人たちが、無理やり予算を取るための建前として掲げたのが、「1」であるとも取れますが、それが真意でしょうか?。
以上の方向性に対して、まず「大会の充実と活性化」という取り組みテーマが掲げられ、以下のような13のアクションプランが提起されています。
<国体改革の具体的な取組み①>~大会の充実・活性化
1.参加資格の見直し
(1)参加制限等の撤廃(トップアスリートの参加を促進するため)
(2)所属都道府県の統一
(3)国内移動選手の制限
(4)外国籍競技者の参加
2.ふるさと選手制度(仮称)の導入 (中学校又は高校卒業時まで在住した都道府県から出場できる)
3.予選免除の拡大 (トップアスリートの参加を促進するため)
4.参加選手の範囲 (競技団体が「プロ競技者」として認定していない者の参加)
5.女子種別の拡充
6.中学3年生の参加競技の拡充
7.種別の年齢区分の見直し (「少年」・「成年」種別の年齢区分の見直し)
8.国体独自の競技方法の見直し
9.ドーピングコントロール検査の導入
10.組合せ抽選会の公開
11.公正な判定の徹底
12.ボールゲームの組合せの改善(1試合も行わずに8位以内に進出する試合形式は行わない。)
13.ボランティアの育成
項目はたくさんありますが、一言で言えるのは、大会の充実や活性化とは、“トップアスリートが参加すること”、と日本体育協会は考えているようです。すべての対象競技の強化関係者を呼んで、カレンダーを作成すれば一目瞭然だと思いますが、もし、国体の開催日程を変えないとしても、オフシーズンを迎える競技や、シーズン突入を控えたまさに準備期間という競技もあります。それらすべての競技のアスリートたちに、万全のコンディションで国体に望め、というのでしょうか?。国際大会のスケジュールもありますし、各年齢別の全国大会を控えているケースもあります。どう考えても、理想を掲げているようにしか思えないのは、私だけでしょうか?。先頃行われた柔道の団体戦や女子レスリングの世界選手権が都内で行われ、テレビ中継もゴールデンで放送されていましたが、誰が見ても世界一決定戦とは思えない布陣でした。オリンピックの直後というスケジュール的な問題だと思います。同じ事を国体でも強いる結果になるのでは?、というのは、私の思い過ごしだけなのでしょうか?。
次に、大会運営の簡素化と効率化について、以下の10のアクションプランが示されています。
<国体改革の具体的な取組み②>~大会運営の簡素・効率化
1.各季別大会の見直し
(1)夏季・秋季大会の会期一本化 (原則として会期は9月中旬~10月中旬までの11日間)
(2)冬季大会のあり方
2.大会規模の適正化 (参加総数を15%[4,500人]程度削減)
3.競技会開始式の廃止
4.公開競技の見直し
5.記録・情報システムの開発
6.施設の弾力的運用
7.近接県の競技施設の活用
8.企業協賛制度の導入
9.開催地選定のあり方 (同一都道府県内での全競技開催にこだわらない)
10.国体ブロック枠の見直し
「1」、「2」、「3」などの項目の内容については、既に大分国体より実施されています。上記内容は、集約すると、人の数を減らすことと、施設や設備の面での新規の設置等に要する費用の発生を防ごうとする、2つのポイントになると考えます。施設や設備面での課題は、国体に限らず日本のスポーツ振興全体に関わるテーマですので、差し置きますが、参加人数の削減に関しては、先のトップアスリートの参加促進ということと併せて、国体という大会の、日本のスポーツの強化という側面からのポジショニングや開催意義のようなものが明解に示されない限り、全く中身が伴わない数字遊びになってしまう危惧を持っています。・・・次回、再び、国体改革2003を取り上げます。
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2008年10月21日
今月の7日、今年も国民体育大会、国体が閉幕しました。開催県は、大分県。大分での国体開催は、1966年の第21回大会から42年振り。ただし、今回からは、2003年に策定された「新しい国民体育大会を求めて~国体改革2003~」を受けて、大会運営の簡素・効率化が具体化されました。夏季と秋季の各大会を統合して開催し、また、参加総数を15%削減するという大会規模の適正化が実行されたのです。国体は、昭和36年(1961年)に制定されたスポーツ振興法に基づき、日本体育協会と、国および開催地の都道府県が共同して開催する、と定められています。つまり、開催地となる都道府県の開催費の拠出は、地方自治体の財政状況が切迫してきている現代の状況の中でも、非常に大きな負担を強いられるものになっているのです。
「広く国民の間にスポーツを普及し、スポーツ精神を高揚して国民の健康増進と体力の向上を図り、併せて地方スポーツの振興と地方文化の発展に寄与するとともに、国民の生活を明るく豊かにする」、ことを目的として、戦後間もない1946年から始まった国民体育大会。60年以上の歳月を経た今でも、その目的には何ら変更の手は加えられてはいません。時代錯誤もはなはだしいと思われるような旧態依然とした言葉の羅列に呆れるばかりですが、開催費負担に関する課題を発端にして、大会規模や開催意図についてもさまざまな論議が続いている国体のあり方に関して、今回から数回に渡り、「国体の開催意義と効果」について述べたいと思います。
国体は、冬季ではスケート、そしてスキー競技が行われ、夏季と秋季の、併せて概ね4つの開催期間に分類されます。冬季大会は、競技が実施できる開催地が限られるため、ある特定の地域や道県に開催地が集中しがちになる課題を抱えています。日本体育協会や冬季種目の競技団体などが、開催費の一部負担をするなどしているようですが、開催地の負担がゼロになるわけでもないようです。一方、夏季と秋季大会は、本大会として、毎年開催地が変わります。上記で述べたように、現在は2順目に入っており、今回の大分で通算63回目を迎えました。ちなみに、今年の冬季大会は、長野県の各地で開催され、スキー、スケート、アイスホッケーの3競技に、約3,600名が参加して行われています。
まず、今年、約2万2千人の選手と役員が参加して行われた大分国体についておさらいしてみます。
テレビ放送は、全国的にはNHK教育テレビなどで、開会式や会期中に毎日1時間程度のダイジェスト放送があったくらいなので、ほとんどの人は開催していること自体知らなかったのではないでしょうか?。開催地である大分での報道の様子を詳しく調べることは出来ませんでしたが、全国的な報道は、競技結果程度のもので、他には、北京五輪直後ということもあり、オリンピック出場選手の登場にフォーカスした報道が多少あった程度でしょう。ソフトボール競技が悪天候のため順延が続き、ついには、8チームが同時優勝という裁定が下されるなど、オリンピックの余韻を引きずった話題は少し面白おかしく報道されましたが、本来の国体の競技報道というものには程遠い内容です。つまり、メディアは、開催地や開催地周辺の地方メディアを除けば、地元選手の話題が取り上げられる程度で、全国的なメディアにおいては、全くと言っていいほど、その報道価値を認めていないように感じます。
開催費に関しては、2005年の岡山国体から昨年の秋田国体までの3大会を平均すると、約160億円ということです。今回は、大会規模の削減と効率化という改革趣旨を実行するために、約3,500人もの選手と役員の数を減らし、また、昨年の秋田国体で使用された備品や未使用品を大量に持ち込んで再利用したことなどで、約14億円の経費節減に成功したそうです。つまり、開催費は、146億円。内、10億円が国から、10億円が大分県内の市町村から、そして残りの126億円が、大分県の負担となっています。126億円という県民の税金が、国体開催に投入されている事実と、その実施効果を、大分県としてどのように総括するのか、ぜひ注目してください。
一方で、大会経費削減と併せて、新たな収入源を模索する動きが、国体にも見られるようになりました。マスコットキャラクターを使用したマーチャンダイジングです。プロスポーツではおなじみですが、国体ではどのような仕組みで実施しているのか?。今回の大分国体のキャラクターは「めじろん」。県鳥のメジロをモデルにしたそうです。“ゆるキャラ”ブームで、多くの自治体がゆるキャラを創り出し、観光PRに活用しているケースが目立ってきましたが、国体の開催を契機に、マスコットが生まれ、そしてそのキャラクターが県のキャラクターとして活かされているケースも最近の“流行”らしいです。初めて登場したのは、1983年の群馬国体の時の「ぐんまちゃん」という馬をデザインしたものだったようです。今回の「めじろん」は、テーマソングやそれに合わせたダンスもあるそうですが、ビジネスとしての成果を見ると、オフィシャルグッズとして2006年から売り出し、その売上総額は7,200万円。国体開催前までに80社近い民間企業が使用ライセンスを購入し、そのライセンス料が500万円ということでした。金額的には、開催費の規模から考えると焼け石に水のように気もしますが、秋田や埼玉で登場したキャラクターは、いまも各方面で活用されていると言うことで、県のマスコットとしての地位は、なかなかのもののようです。ただし、国体そのものの開催効果と、このマスコットによる副次的効果は、あまり結びつけて考えるものどうか、という気がします。マスコットはあくまでマスコットであり、マーチャンダイジングやキャラクタービジネスを国体事業の一端に置くことが、国体開催本来の趣旨と一致しているかどうかと言えば、それはあくまで副産物でしかない、と思うからです。この先の国体開催予定の自治体では、既にキャラクターを発表し、活用しているところもあるようですが、本来の国体開催意図と、そのキャラクター活用の効果とが、計画的に融合されていくように、慎重な活用計画を立てていくことを期待しています。たまに、凄い勘違いをしているお役人さんもいるようなので・・・。
競技では、この大分国体を最後に実施種目から消えてしまうものもありました。国体の肥大化に対する批判を受けて、規模の縮小と効率化の槍玉に上がったのは、男子の新体操と9人制のバレーボールです。日本体育協会が発表している廃止理由とは、「国際性がない」とのこと。競技力の向上や、最近やたらにトップアスリートの参加を叫び続けている日本体育協会の施策として、これは正当な理由になるのかどうか疑問です。先に述べた国体改革2003では、確かに競技力の向上などのテーマは謳われています。しかし、上記の国体の開催趣旨をもう一度見てください。国体とは、国民の競技力の向上や国際舞台での活躍を目指したものではありません。少なくとも、現行のスポーツ振興法の下では、全く意に反するものです。新しいスポーツ振興法の制定を目指す動きがあることは、以前のブログでもご紹介しましたが、それはまだ審議にも至っていません。その中で、早々に、所謂マイナー競技の足切りを断行する姿勢に、非常に疑問を抱くのです。男子の新体操は、確かに競技人口も少なく、マイナー競技の最たるものかもしれません。しかし、最近では、テレビ番組でいくつかの高校の活動が紹介されたり、テレビCMで男子新体操が起用されたりと、少しは話題性があったように記憶しています。一方で、このような種目で、全国規模での大会は、それ程開催機会がなく、もちろん、世界の舞台でも活躍の機会はありません。国際性がない、と言われればその通りなのですが、スポーツの普及と育成という視点から考えると、マイナーでありながら競技として活動が続けられているスポーツを、如何に普及し育成していくか、という命題を背負うことも、国体の役割である(あった)ように思えるのです。9人制バレーボールも然り。日本のバレーボール人気の底辺を支えたママさんバレーは、9人制バレーが担っています。現状の参加人口がどの程度のものか不明ですが、もし参加人口が少なく、国体出場にも事欠くような事態ならば仕方ないでしょう。しかし、国際性がない、という理由は、少なくとも、生涯スポーツや高齢者スポーツの可能性を考えるのも日本体育協会の役割であるならば、それは意に反する決断だと思いませんか?。日本体育協会は、スポーツマスターズ大会も主催しているのですよね。
また、競技について付け加えると、国際ルールや国内の競技団体の規定よりも少ない選手エントリー枠となっている種目が目に付きます。特に、ボールゲーム種目では、各種目とも、カテゴリー別の出場枠も違えば、選手エントリー枠の設定の仕方もマチマチです。ただ言えるのは、この際、効率化とは言いたくはないのですが、規模の縮小の前提において、競技としての特性を無視した悪戯に人数削減しているとしか見えない中身が見えてくることです。これで本当に、競技レベルの向上やトップアスリートの参加促進などとお題目を掲げられるのかが心配です。以下は、主なボールゲーム種目の出場枠と選手エントリー枠に関する内容です。
<バレーボール> 計1,076名
・成年男女(6人制/9人制) 各10チーム 11名(6人制の場合)
・少年男女(6人制) 各24チーム 11名
<バスケットボール> 計1,032名
・成年男子 47チーム(全都道府県) 11名
・成年女子/少年男女 各12チーム 12名
<サッカー> 計920名
・成年男子/女子 各16チーム 15名
・少年男子 24チーム 16名
例えば、サッカーの場合、少年男子で16名のエントリーというのは、非常に少ない気がします。恐らく、選手数が多いために、全体枠を考えた場合、チーム数を多くすると1チームあたりの選手数を制限せざるを得ないために、ギリギリの人数のラインで出場チーム数を決定したような経緯があるように思われます。何れにしても、リザーブに5名しか入れないとすると、リザーブにどのポジションの選手を入れるかなど、インターハイや全国選手権とは違う対応を、監督も求められる、ということです。また、バレーボールでは、今年まで9人制があるため、すべてのチームは11名の選手エントリーとなっており、国際ルールよりも少ない数です。バスケットボールの場合は、4つのカテゴリーの内、何れかが全国フルエントリーとなっているため、このカテゴリーの選手数を制限するために、これも国際ルールよりも少ない11名のエントリー製になっています。連日続く試合で、運動量を要求されるバスケットボールは、特に少年の場合は、全国大会では15名エントリーが通常になっています。単に数の問題でエントリー数を削減しているとしたら、いずれは競技の質の低下に繋がる気もします。これらのエントリー数に関しては、総枠が日本体育協会から各競技団体へ通達され、それに従って、各競技別にエントリーシステムを構築するわけですが、競技団体にとっても、非常に頭の痛い問題というのが、上記の内容でも分かります。競技によって、出場する条件も違えば、選手エントリーのシステムも異なる。これで、得点制により天皇杯や皇后杯を競う、というのですから、必然的に、全種目にエントリー可能な開催地の有利は動かしがたいものになります。全く競技性のない理屈のみで作られた“国体方式”という気がしてなりません。
次回は、「国体改革2003」の中身について、検証してみたいと思います。
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2008年10月20日
15日の水曜日。埼玉スタジアム2002では、FIFAワールドカップアジア最終予選のホームゲーム、対ウズベキスタン戦が行われました。結果は1-1で引き分けましたが、入場者数は、岡田監督が引き継いでから最高の55,142人を記録。6月に行われたバーレーン戦での51,180人を超える動員数となりました。5月のキリンチャレンジカップでのウルグアイ戦では、最低レベルの27,998人になるなど、サッカー日本代表の動員力にかげりが見え始めた、という報道も目にしていましたが、この時と同じ埼玉スタジアム2002で、逆に高い観客動員数を記録した日本代表の動員力は、本物なのでしょうか。サッカーには多少疎い私が、第三者的に、少し検証してみようと思います。
今年の日本代表戦の結果を、まず見てみましょう。
(KC: キリンカップ2008, KCC: キリンチャレンジカップ2008)
◇1/26 KCC チリ戦(国立競技場) 37,261人
◇1/30 KCC ボスニアヘルツェゴビナ戦(同上) 26,971人
◇2/6 W杯予選 タイ戦(埼玉スタジアム2002) 35,130人
◇5/24 KC コートジボアール戦(豊田スタジアム) 40,710人
◇5/27 KC パラグアイ戦(埼玉スタジアム2002) 27,998人
◇6/2 W杯予選 オマーン戦(日産スタジアム) 46,764人
◇6/22 W杯予選 バーレーン戦(埼玉スタジアム2002) 51,180人
◇8/20 KCC ウルグアイ戦(札幌ドーム) 31,133人
◇10/9 KCC UAE戦(東北電力ビッグスワンスタジアム) 31,853人
◇10/15 W杯予選 ウズベキスタン戦(埼玉スタジアム2002) 55,142人
⇒KC&KCC平均: 32,654人(2008年度では32,923人)
⇒W杯予選平均: 47,054人(2008年度では51,028人)
※収容率トップ: 5/24 95%(豊田スタジアム)
※収容率最低: 5/27 44%(埼玉スタジアム2002)
今年3月、日本サッカー協会(JFA)は、2008年度の予算を178億円と発表しました。昨年度比で約13億円の増額です。増額の根拠は、W杯アジア予選の国内開催分のテレビ放映料および入場料収入で10億円というものがそのほとんど、と言うことです。何れにしても、過去最高額です。そして、日韓共催による2002年W杯の年の約100億円の規模から、6年で1.8倍近くもの上昇は、言うまでもなくその大半は、日本代表の国内試合などを始めとする代表関連事業の成功によるものです。国内での代表戦の観客動員数の予算ラインを、JFAでは4万人としている、と言うことですが、2003年には12試合中9試合が、2004年には10試合中8試合が、そして2006年には7試合すべてがそのラインをクリアしています。正に、代表関連事業こそ、JFAの屋台骨を支えている、と言っても過言ではなく、その代表関連事業が生み出す収益により、育成や普及という次の世代のための強化環境が作られていっているのです。しかし、2007年に、その好循環の流れは途絶えました。代表戦は、7試合ありましたが、4万人を突破したのは僅か2試合のみ。1月30日のキリンカップチャレンジ2008では、国立競技場でボスニア・ヘルツェゴビナ代表と対戦し、観客は26,971人と、予算ラインの7割も切る結果でした。
2008年度に入ってからの結果は上記の通りです。W杯アジア予選はここまで3試合ですが、何れも4万人を軽く突破し、5万人を2試合が超えるまでに観客動員レベルは復活してきています。しかし、一方で、長年サッカー日本代表を支援してきているキリングループの協賛により開催されている国際親善試合は、1試合がギリギリ4万人を超えたものの、他の試合は3万人ギリギリラインか、それをも割ってしまう数字しか残せていません。4万人を維持した5月24日のキリンカップも、愛知県での日本代表戦が14年振りということと、土曜日という日程の良さも重なった結果ではないか、と見るサッカージャーナリストもいるようです。つまり、いままでの日本代表の動員力が示された結果では決してない、と見ているのです。
これらの数字だけで検証すると、貴重な勝ち点の獲得が掛かる公式戦の価値と、国際親善試合の価値との間の見極めが、多くのサッカーファン、特に2002年W杯でファンになったようなファン暦の浅い人たちにも、ひとつひとつの試合が持つ価値観の違いとして、分かってきた証拠ではないか、という気がしてなりません。キリンカップやキリンチャレンジカップも、代表強化という視点からは、どれもが重要な試合であり、長い間、その戦いの場があったからこそ、W杯出場も果たせてきた、とも言えます。しかし、目の肥えたファンが多くなり、単なる国際試合だけでは、日本代表を応援しようという機運が高まるまでにはならないファンが増えてきたことも事実だと思います。国際親善試合だからこそ、海外組の召集がない場合もありますし、強化という視点からは、メンバーをいろいろテストするために、時には応援している選手が招集されない場合もあったでしょう。アジア杯も勝ち取りました。W杯にも連続して出場を果たしています。その中で、国際親善試合という位置付けのキリンカップの価値すらも、本物のタイトルが掛かった公式戦との比較においては、ほとんどのサッカーファンにはその存在感が薄れてきつつあるのも仕方がないとも思います。皮肉なもので、日本代表が狙う公式タイトルに近付けば近付くほど、キリンカップの歴史とは反比例するかの如く、ファンの中での価値観は薄められているのではないでしょうか?。つまり、すべてが「日本体表の動員力の低下」、という結論付けは、時期尚早であるように思うのです。
以下に、今年の代表戦のテレビ視聴率を列記します。(数値は、関東地区、世帯視聴率、番組平均です。)
◇1/26 KCC チリ戦(国立競技場) 15.6%
◇1/30 KCC ボスニア・ヘルツェゴビナ戦(同上) 13.0%
◇2/6 W杯予選 タイ戦(埼玉スタジアム2002) 17.7%
◇5/24 KC コートジボアール戦(豊田スタジアム) 12.9%
◇5/27 KC パラグアイ戦(埼玉スタジアム2002) 13.9%
◇6/2 W杯予選 オマーン戦(日産スタジアム) 15.2%
◇6/22 W杯予選 バーレーン戦(埼玉スタジアム2002) 16.4%
◇8/20 KCC ウルグアイ戦(札幌ドーム) 5.7%
◇10/9 KCC UAE戦(東北電力ビッグスワンスタジアム) 10.3%
◇10/15 W杯予選 ウズベキスタン戦(埼玉スタジアム2002) 16.3%
⇒KC&KCC平均: 11.9%
⇒W杯予選平均: 16.4%
8月20日は、北京五輪真っ最中ということもあり、しかも親善試合ということも重なり、いつもの半分以下という結果でしたが、この数値からも言えることですが、先の観客動員のレベルと同様に、W杯予選の数値とキリンカップおよびキリンチャレンジカップの視聴率は、明らかに差があります。5%近い数値の開きは、ドラマで言えば制作現場のため息が聞こえてくるレベルのものなのです。数字だけの判断ですが、残された実績から考えると、明らかに、ファンの目は肥えてきている、ということと、数字上の低下現象は、日本代表の動員力や魅力の低下ではなく、ひとつひとつの試合の価値の意味を、多くのファンが知ってきた証である、ということも言えると思うのです。
JFAでは、日本代表の人気低下の原因を探り、対策を練ることを目的としてプロジェクトを立ち上げた、と、9月頃の新聞報道にはありました。確かに、レプリカユニフォームなどの代表関連グッズ販売の売上が落ちていることや、テレビ視聴率が簡単に20%声を達成できなくなっていることなど、人気低下と言えばそうであるような現象は見られます。しかし、レプリカなどが半永久的に高水準で売上を維持していくことは、非常に稀なことだと思います。また、テレビ視聴率も、どんなヒット番組でさえ、いまは20%を超える数字を取ることは稀になりました。ましてや、スポーツ番組が20%を超えるのは、先の北京五輪でも珍しいほどのものです。観客動員数も、Jリーグの過去最高レベルとなった昨年の平均動員数と比べても、約3倍近くもの実績を、昨日も残しているのです。4万人というある意味でノルマとも言える規模でも、Jリーグ平均からすると倍の数値です。日常的に地域に密着して活動するJリーグと、日本代表の試合を一緒にすることは無理があるのですが、ある種の比較論で示すならば、この比較がわかりやすいと思い、比較してみました。
観客動員規模で約15,000人。テレビ視聴率で約5%。この差をどのように考えるか、ということが、今後の国際親善試合の観客動員や運営に問われる課題である気がします。そして、その差の原因は、日本代表の人気、という側面ではなく、興行価値というか、その試合の持つ価値が、本物の価値観でファンに伝わるかどうか、という点に絞られるように考えるのです。強化という視点からは、仮想○○○と、次の公式戦での対戦相手を想定したテストマッチにする場合もあります。また、スケジュールの都合で、特定の国しか招聘できない場合もあります。しかし、目の肥えたファンにとっては、日本とスペインやドイツ、そしてブラジルやアルゼンチンとの戦いが見たい、と思うのではないでしょうか。国際親善試合だからこそ、ドリームマッチ的な対戦が、時には組まれるような機会があるべきだとも、素人の私からは感じられます。強化としては意味のない試合かもしれません。しかし、ファンが待ち望む対戦があるかもしれないのです。JFAの屋台骨を支える事業としての日本代表の国際試合であるならば、事業面から、ファンの満足度という視点からのマッチメイクが、年に1-2回はあっても良いのではないですか?。
もう10年以上も前になりますが、某外資系スポーツメーカーに在職中に、大阪・長居スタジアムで、ブラジル代表との国際試合のイベントに参加する機会がありました。本社の外人のわがままで、多くの関係者にご迷惑を掛けてしまった苦い思い出のあるイベントだったのですが、観客も満員に近い状態にまで入りましたし、私自身としては、アルバイトで関わったトヨタカップでの鳥肌が立った思いと同じような興奮を感じました。ほぼ最強の布陣に近い形で参加したブラジルを見て、多くの観客は満足してくれたのではないかと、個人的には自負しています。試合では、日本は負けましたが、勝負以上に選手たちが何かを得てくれればいい、とも考えていました。親善試合ですから、勝ち負けには、本来価値はありません。しかし、勝負の世界は、例え親善試合でも、その時の戦った感覚は、体が覚えているものだと聞きます。世界一流から得るものは、やっぱり一流の記憶として選手には残るように思えます。ぜひ、W杯レベルで、ノンタイトルでありながらお互いの威信を掛けたような真剣勝負を、JFAにはマッチメイクして欲しい、と切に願います。そして、日本代表の動員力は決して衰えていない、と私は個人的に感じています。
posted by umekichihouse |06:58 |
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2008年10月19日
1983年に開園し、今年25周年を迎えている東京ディズニーランド。開園当時の入場者は、年間約1,000万人でしたが、2006年には、過去最高の2,581万人を記録。今年も、4月から9月までの半年間で、過去最高記録を更新しています。25年の間に、前年の実績を割ることもしばしばでしたが、2001年のディズニーシーの開園以降は、2,000万人台を突破するなど、不況にも影響されることなく、着実に多くの入場者を獲得している秘訣はどこにあるのか?。去る、14日、テレビ東京系列で放送中のドキュメンタリー番組、「ガイアの夜明け」で、社員研修の現場などの裏側に、初めてテレビカメラが入り、その一端が紹介されていました。その中には、エンタテイメントビジネス以外の、すべてのイベントビジネスに共通して学ぶべき極意が、いくつか紹介されていました。今回は、その極意とは何なのかを検証しながら、スポーツイベントのマネジメントへの生かし方について探ってみたいと思います。
過去にNBAの仕事に従事していた時、NBAのコミッショナー、デビット・スターン氏は、「最大のライバルは、ディズニーだ」、と言っていました。NBAとディズニーが何処につながりがあるのか、最初は分かりませんでした。しかし、客の目線で考えていくと、その趣旨は明解です。今日の夜はショーを見に行こうか?、それとも映画か?。週末はバスケットが見たいね・・・・、とか。ディズニーは、多くのキャラクターで、幅広い客層を魅了する力がありました。単なるマーチャンダイジングの世界の話しだけではなく、それは、ショーや映画など、あらゆるエンタテイメントに広がっています。その人気を支えているのは、リピーターという膨大な数の固定客層だったのです。スターン氏は、ディズニーの表面的な魅力だけではなく、彼らの経営戦略そのものに、ビジネスの競合たる脅威を感じていたのでしょう。リピーターを獲得するための魅力とは、どのように作られるものなのか?。
毎年100億円から最大で200億円以上もの投資を行い、常にその新しい姿を見せ続けているディズニーランド。年間2,500万人以上の入場者を獲得するためには、当然のことながら、その大半がリピーターであることが容易に想像できます。イベントビジネスで最も重要で、最も課題となるのは、リピーターの獲得です。プロスポーツビジネスでは、年間何十試合も行われる中で、1試合当り数千人のアリーナ規模から、数万人のスタジアム規模まで、その数は大きく異なりますが、リピーター、つまり固定ファンを獲得することが至上命題であることに変わりはありません。そして、ほとんどのプロ球団は、この点に最大の悩みを抱えつつ、経営努力を注いでいます。ディズニーランドは、何をして、リピーターの獲得に務めているのか?。
第1のポイントは、一貫した経営の方向性にあると思います。
◇常に変化させること
◇常に新しいものを取り入れていくこと
来場するたびに新しい感動を客に与えていく努力こそ、ディズニーランドの最大の経営努力であるように思います。それは、如何にリピーターの満足度を維持し続けるか、ということでもあります。確かに、1983年の開園当時から、アトラクションの数だけを見ても、32から41へと拡大しています。年間100億から200億円という投資の大半は、ここに集約されているのだと思います。しかし、単なるハード面を変えていくことだけが、リピーターを満足させる極意ではありません。もしそれがすべてなのであったら、他の消えていった数多くのテーマパークは、その衰退を見ることはなかったでしょう。ディズニーランドでは、客の目に出来るものは、常に変化を加える対象と見ているようです。売店で売られているグッズから、華やかなパレードの演出まで、客が入園してから退園するまでの、すべての動線上に、その注意は払われています。そして、何よりも、2万人というスタッフのひとりひとりも、その対象となっているのです。それは、ユニフォームなどの外面的な要素から、接客の意識などの内面的なものにまで及ぶそうです。
そこで、第2のポイントです。それは、接客術という、ディズニーランド独自のホスピタリティノウハウにあります。
ディズニーランドでは、スタッフの教育や育成に、膨大な時間とコストを掛けていると言われています。客に接するスタッフたちこそ、ディズニーランドの魅力を一番に伝えるディズニーランド独自のソフトであるのかもしれません。ディズニーランドでは、スタッフをキャストと呼び、言葉通り、役者としての役割を担わせています。客を夢の世界へ案内するアンバサダーとして演じさせるのです。新入社員として入ったスタッフには、最初に「Tips on Magic(魔法のコツ)」というマニュアルが渡されますが、この中には、接客術を向上させ、客を感動させるための、所謂“コツ”が書かれてあるそうです。
・魔法をつくるのはあなた
・キャストもショーの一部
・すべてのゲストがVIP などなど・・・。
この“コツ”を、実践の場で自分なりに接客術として使えるようにするために、多くの時間をスタッフ同士のシュミレーションに費やします。それは、「親しみやすいおもてなし」が身に付くまで行われるそうです。「親しみやすいおもてなし」とは、笑顔、アイコンタクト、そして挨拶、ということです。如何にも簡単なことのように思えますが、どんな接客商売にでもありますよね。しかし、ディズニーランドには、この先があります。「客を笑顔にする」。どんなに言葉を掛けてもらっても、また、親切にされても、本心からスタッフに対して笑顔を見せる場面は、そうそうあるものではありません。客が笑顔になる、ということは、本心から楽しんでいる、本心からもてなしを感じていなければ、そんなに簡単にそうはなりません。本当に楽しいからこそ、客は笑顔になるのです。その笑顔を、ディズニーランドは、スタッフたち、キャストたちが作り出しているのです。
東京ディズニーランドでは、今年の4月から、新しい取組みを始めました。ファイブスターカード、という制度です。これは、社員が園内を巡回視察しながら、接客に優れたスタッフをチェックし、その都度カードを渡していくものだそうです。5枚集めると特典がもらえるそうです。子供染みた遊びのようですが、スタッフのモチベーションを上げていくために、大いに役立っている、ということです。カードには、5つのチェックポイントが記載されています。
◇相手の立場に立った行動(Service)
◇息の合ったチームワーク(Teamwork)
◇模範的な態度(Attitude)
◇親切丁寧なご案内(Recovery)
◇素晴らしいショーマンシップ(Showmanship)
5番目のショーマンシップはディズニーランドらしいですが、その他の4項目は、どんなイベントにおいても、接客の基本だと思います。ただ黙々と客に対応しているだけでも、何ら問題は起きないでしょう。ただし、その客は、次に来てくれるために、何か感じてもらえたでしょうか?。ディズニーランドだって、数々のアトラクションは楽しいに決まっています。それに乗ったり、入るために、何時間も待つこともあります。それでも客はガマンして待つのですから、各アトラクションそれぞれの持つ魅力は素晴らしいものがあるのです。しかし、待つ間にも、スタッフたちは、常に客の事を気にかけています。待ち時間が長くなって客のストレスが高い状態では、どんなに楽しいアトラクションも、その魅力は半減してしまいます。そのストレスを取り除くのも、スタッフたちのホスピタリティなのです。ゴミが落ちている通路を歩くのは嫌です。汚いトイレは入りたくもありません。食器の片づけが遅いレストランには、変に拒絶感を感じてしまいます。そんなことは・・・、と思いがちですが、テーマパークならずとも、イベント会場ではよくあることです。しかし、そんなイベントやテーマパークには、2度と行かないでしょう。極端な例ですが、客のストレスを最小限にすることが、客を楽しませる近道であり、ショーでもスポーツでも、その中身をより楽しくさせてくれるエッセンスとなるのです。演出や装飾だけをイベントソフトと考えがちですが、人間による接客こそ、重要なイベントソフトであることが、このことからもよく分かります。
個人的な経験で恐縮ですが、私もスポーツイベントや国際大会の運営に関る中で、さまざまな失敗を経験してきました。その多くは、接客に関するものでした。特に、スタッフの教育や指導に関して、もっと事前にやっておくべきことを疎かにしていたり、的確な指導が出来ていなかったり、「何故そうするのか」という行動の意味をキチンと教えていなかったり、紙に書かれたマニュアルの中身だけでは伝わらないことを、フェイス・トゥー・フェイスで教える努力を怠っていたことを、大いに反省したものです。運営する身内の側から見ると、仕方がない、と割り切れても、客の立場からしたら簡単に割り切れないものもあります。客の立場に立ったホスピタリティとはどんなことなのか、客の満足とは何なのか、ということを、具体的な考えられる力が、イベントをマネジメントする立場の人たちには不可欠であることを、過去の経験から学びました。「親しみやすいおもてなし」、笑顔、アイコンタクト、そして挨拶。NBAの日本公式戦の運営をしている中で、入場口で「いらっしゃいませ」とすべての観客に声を掛けることをやりました。出来るだけ笑顔で・・・。アメリカチックでないかもしれませんが、ワクワクしながら会場に訪れた観客に対して、何かしらの感謝の気持ちを伝えたかったのです。売店での売り子も同じです。気さくに客と会話することで、ちょっとしたコミュニケーションが生まれます。少しだけは売上が違うかもしれません。トイレの場所を聞かれて、ただ指を指して教えてあげるだけではダメですよね。席が見つからずに困っている客がいたら、「どうしましたか?」と声を掛けてあげるくらい、誰でも出来ます。ほんのちょっとしたことで、客はホッとするものです。自分が客の立場に立ったらどうか。常に、客の目線で物事を考えることこそ、リピーター獲得の第一歩であるように思います。
東京ディズニーランドは、この10月1日に、ショービジネスへの参入を果たしました。常設劇場のシルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京を約100億円で建設し、10年以上の契約によって、世界最高のサーカスショーのロングラン公演が始まりました。総プロジェクト費、140億円。70人のパフォーマーと、80人のスタッフが来日しています。このプロジェクトのキーポイントも、リピーターの獲得です。東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドが取った秘策は、3枚組みのポストカードタイプのものを、客が退場する際に手渡しで配布することでした。公演が終わって客が帰る時、彼らの感動は最高潮に達しています。「誰かにこの感動を伝えたい、話したい」。それを、配布したポストカードによって、回りの人たちに伝えてもらい、友達や家族を連れて、また来て貰おう、という考えです。ポストカードを貰った人たちは、口々に言っていました。「プレゼントにします」。「友達を誘う時に見せてあげます」。「お土産になります」。言葉で感動を伝えてもらい、そしてまた誰かを誘って見に来てもらうための、単なるツールなのですが、その3枚のポストカードが、今度は3人の客になり、6人の客になるかもしれません。来場した客を媒体にして、リピーターを獲得していくと供に、新規の客も開拓していく。ちょっとしたことですが、良いヒントになるかもしれません。
ポストカードを配布するスタッフたちは、笑顔満面でこう言っていました。「ありがとうございました」。
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2008年10月18日
今回は、F1日本グランプリの話題からは反れますが、大規模イベントでの観客対応のまずさが引き起こした運営失態の事例を、番外編として取り上げます。
問題のイベントは、2000年6月に、2年後のワールドカップ開催を控えて杮落としを迎えた、宮城スタジアムでのキリンカップサッカー2000です。
宮城県利府町に建設された宮城スタジアム。観客席約43,000席を誇る東北最大のスタジアムです。しかし、立地条件の悪さも、ピカ一でした。仙台市内の地下鉄・泉中央駅から徒歩で僅か4分の位置にある仙台スタジアム(現在は、ユアテックスタジアム仙台)とは、雲泥の差なのです。客席数こそ及びませんが、観客の側から見たら、アクセスの要因は、イベント動員にとっても非常に重要なファクターであり、宮城スタジアムの建設が、単なる箱物行政と捉えられても仕方ありません。ワールドカップ後の利用状況を見ても、それは一目瞭然である気がします。
仙台駅から、スムーズに走っても車で30分。イベント開催時には、渋滞もあり、軽く1時間を越えてしまいます。仙台市内からのチームの輸送バスなどの関係車輌の通行は優先されたでしょうから、一般観客の車は、更に渋滞に悩まされること必死です。更に、仙台駅からの有料送迎バスも運行され、渋滞規模に拍車を掛けました。ちなみに、仙台駅からのバス運賃は、なんと往復2,000円とのことでした。また、駐車場も、普段は広いスペースに見えても、観客席数に対して、その駐車スペースの数は、約2割弱。車がなくては生活できない地方都市の環境の中では、あまりにも少なすぎます。臨時駐車場もあるにはありましたが、住宅地を30分以上も掛けて歩いて来なければならず、前回のF1ではないが、雨の場合の悲惨さを考えると、客に来るな!、と言っているようなものです。
では、公共交通機関というと、JRの最寄の駅である利府駅や岩切駅からは、徒歩でなんと1時間。一時的に客が集中すれば、歩道だけでも混雑するでしょうから、その時間は更に延びるでしょう。どんなことをしても、1時間前後の時間を要してスタジアムに向かわなければならない最悪の立地の中で、宮城スタジアムの杮落とし、キリンカップサッカー2000は行われた、という訳です。
人口約5万人の町に、その数と同じだけの観客が押し寄せてくる、という状況の中で、地域住民は、主催者側からは何ら対応の説明も協力の要請もなく、一部の人たちは、独自に交通アクセスの状況などに関して調査したようです。そして、上記で述べたような実態が明らかになると、地域の混乱や余計な事件や事故の発生を避けるために、“鎖国”措置まで持ち出されたそうです。更に、その決意は、インターネットを通じても発信されました。スタジアムを間近に控える地域住民としては、まさに苦渋の決断だったことでしょう。人も入れず、車も入れない。意外なことでしたが、このお願いに、多くのサッカーファンは、耳を傾けてくれたそうです。町内会では、当然“鎖国対策”は本意ではなかったのでしょう。町内会では、少しでも対策を講じるべく、やって来るであろうサッカーファンに対して、アクセス情報や近隣の商店などの情報を、インターネットを利用して流していったとのことです。本来であれば、イベント主催者や宮城県などの施設管理者がやるべきことです。杮落としとは言え、施設の運営計画を全く考えていないハード志向の行政と、現場で苦汁を舐めている県民との間の溝に、地域行政の浅はかさを垣間見たように感じました。ちなみに、この当時の宮城県知事は、あの浅野氏です。
スポーツイベントの開催では、開催会場そのものの施設や設備面の内容に力点が置かれがちですが、アクセスや周辺のホテル、商店などの生活環境も、重要な検証課題となります。どんなに素晴らしい試合会場であっても、宿泊するに適したホテルが、少なくても車で20分前後の圏内になくては、イベント全体の運営に支障が出ますし、真剣勝負の場であればあるほど、選手やチームのパフォーマンスに影響を及ぼしてしまいます。アスリートの最高のパフォーマンスを引き出すことも、スポーツイベントや大会の運営では重要なポイントとなります。部屋が狭くて、しかも食事もまずいようなホテルに宿泊して、ベストを期待する方が間違いです。子供を指導されている先生方からは、「甘えるな!」とお叱りを受けそうですが、選手やチームのパフォーマンスを引き出すことは、イベントや大会の商業的価値を上げるためにやるのである、ということを知って欲しいと思います。甘やかしているのではなく、最低限のイベントサービスという業務としてやることなのです。つまり、そうした環境が整わない立地環境では、イベントの価値さえも落としかねない、ということになります。また、それに対応した運営計画も、輸送計画を含めて綿密に練られなければなりません。特に、会場近隣の住民対策は、事前に調査すべき事項の一つとなるのです。
キリンカップサッカーが終わり、観客が帰った後、近隣の住民たちは、黙々とゴミを片付けたそうです。そして、それまでにも増して、宮城スタジアムに対する怒りがこみ上げた、と、当時のあるブログには書かれていました。世界最高峰の試合が行われた宮城スタジアム。しかし、地域住民からは愛されることもなく、ただひっそりとその存在だけを残している宮城スタジアム。ハードは作っても、その後のソフトをどのように充実させていくのかが大事ははずですが、その観点を見過ごしてしまった宮城県の反省の成果は、ワールドカップが終わって6年以上が経過しても、何も見えて来ていないように思えます。
運営面での具体的な失態内容については書きませんでしたが、F1の事例と比べてみれば、自ずと何が起こったかは想像するに容易いはずです。観客の目線に立ったイベント運営は、一律では図り難い難しいものなのです。
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2008年10月17日
2007年F1日本グランプリ。最悪の天候と、最悪の運営がもたらした結末は、トヨタ本社をも動かし、世界に冠たる“カイゼン”を旗印に多くの改革を成し遂げてきたトヨタの本領が、ついに発揮される時が来ました。そして、2008年3月に富士スピードウェイ(富士SW)が行った今年の開催概要発表の記者会見で示された前年の問題点は、下記の9項目でした。
◇不十分な雨天対策
◇路面の不整備
◇誘導員の配置不足、お客様案内の不備
◇不十分な情報発信
◇仮設トイレや照明設備の不足
◇バスの誘導・運用の不備
◇場外指定駐車場の不整備
◇トイレでの長時間待ち
◇売店が少なく料金が高い・・・・・。
その他にも問題点は細かくあったようですが、まずは、上記の課題に対して対策が講じられることになりました。記者会見で、富士SWは、「2008年は、交通アクセスと観戦環境を整えることを基本方針とし、ご来場していただく皆様が笑顔でお帰りいただけるようにしていきます」、と述べています。まさに、1年遅い弁明でした。
トヨタは、F1事業部を事業本部に格上げし、更にその責任者に、数々の社内改革の陣頭指揮をとってきた高瀬氏を起用。いよいよ、トヨタお得意の“カイゼン”が具体化していきます。
まず、決勝日の観客数を14万人から3万人減らし、11万人としました。フリー走行から決勝までの3日間で、チケット発券数は22万人分となります。全体の運営体制が賄える規模を、安全な運営を前提とした算出した数値でしょう。そして、見えない席として問題となった第1コーナー付近のスタンド席は、設計ミスを認めた上で、再度設計をし直し、しかも、開催前には、社員総出で、全スタンド席からの検証を行ったそうです。
また、最大の課題であった観客の輸送に関しては、駐車場のオペレーションを再検証しても、最大10時間以上もかかる出庫状況を鑑みて、今年も、「チケット&ライド方式」は継続しています。ただし、バスの運行システムを、シャトル方式から全車留置き方式に変え、バスの運行が一方通行になるようにしました。つまり、特に帰りの際には、バスの到着を待つことなく、待機しているバスに乗り込むことが出来、あまり渋滞せずにバスを運行できることになります。雨天時にも雨避け場所になるため、悪天候時の問題も回避できることになりました。しかし、この対策のために、用意するバスは、400台増しの約1,600台。更にツアー専用バスも850台も準備されたとのことです。いくらトヨタでも、このバスの数は凄すぎます。流石というか、何というか・・・!。
また、観客の休憩や雨天時の雨避け場所として、大型テントも4つ常設され、また、さまざまな設置可能な場所にも小型テントが設置されました。晴天時には日避けとなるため、天候に左右されず、快適な観戦環境作りのひとつであると言えます。陥没した道路の舗装も万全に行い、一部は道幅を拡張するなどの改良も加えられました。
運営面で最大のポイントであるスタッフの人員配置に関しては、3,000人から5,000人にスタッフ数を増やし、更に、情報の管理を徹底して、観客の誘導に関する対応をスムーズに行えるような体制作りに主眼が置かれたようです。もちろん、連絡体制も徹底されていたことは言うまでもありません。
こうして迎えた今年のF1日本グランプリ。3日間とも天候にも恵まれ、時には富士山の雄姿も垣間見せるなど、レース内容もさることながら、運営体制のおおむね順調に機能し、素晴らしい結果で締めくくることができたようです。おかしいのは、あまりにも素晴らしい運営だったために、来年の鈴鹿での開催に不安を投げかけるファンもいるようですから、本当に観客を第一に考えたイベントの成果というものは、恐ろしくもあり、また、楽しくもあり、と言ったところではないでしょうか。事前の計画立案からの運営上の視点の置き方ひとつで、ここまで変わるものなのです。
ただし、F1に限らず、スポーツイベントで常に注意すべき運営上の課題が、昨年浮き彫りになったことを見過ごすことは出来ません。今後の課題としても、また、良いケーススタディとしても、記憶しておきたい事柄として、下記に2つの出来事を述べておきたいと思います。
一つ目は、ボランティアスタッフのことです。悪天候の中、時間が経過するごとに、待たされる観客の苛立ちは最高潮に達します。その中で、必死に観客対応していたのは、多くのボランティアスタッフたちでした。彼らの多くは、その状況下で如何に対応すべきかということを、きちんと指導されていなかったようで、しかも、適時正確な指示が得られる連絡体制も取られていなかったようです。非常に厳しい状況に置かれた彼らの心中を察すると、第三者の私でも心苦しい思いになります。気になったのは、一部のスタッフたちが、スタッフウェアを脱ぎ捨てて、職場を放棄してしまったことです。かなり追い詰められていたのは重々分かります。ただし、この行為には、賛否両論あると思います。もちろん、主催者の管理や指導の責任の方が重いでしょう。しかし、現場で、観客の目の前で責任放棄してしまうのは、ボランティアと言えども、少し考えさせられる行為だと、少なからず思いました。
二つ目は、応援フラッグや横断幕の掲出を禁止したことに関する問題です。主催者は、一切の応援フラッグや横断幕の持込みを禁止していました。しかし、徹底した告知が行えずに、一部ファンからは、鈴鹿で禁止されていなかった事情もあり、多少のトラブルは引き起こしたようですが、問題なのは、この禁止事項を、トヨタチームやテレビ放送していたフジテレビが平気で破ってしまっていたことです。フジテレビは冠協賛スポンサーでもありますが、こうした行為は、観客不在というよりは、観客無視の行為ですね。今年の状況がどうだったのか、知りたいものです。
posted by umekichihouse |06:51 |
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