2008年12月04日
「スポーツイベントとチケッティング戦略」その9 ~新しいマーケティングアプローチの応用③
インターネット時代のマーケティングプロセスを示している「AISAS」理論。2004年に電通により提唱され、2005年には商標登録されているこの理論の、最後の「S」である情報共有(Share)こそが、インターネットによる情報社会の中で、重要な機能を秘めていると言われています。最も象徴的なものが、「口コミ」です。つまり、ある特定の情報が、不特定多数の人を介して広がる情報拡散の現象です。それは、インターネットの出現によって、いまや大きな力を持つまでになりました。しかし、この口コミは、情報を介するそれぞれの人の情報に対する理解や認識の違いにより、時には大きく異なる内容に変容されてしまう危険性もあります。コントロールが効かない、ということです。 この「口コミ」を、コミュニケーション手段として、情報拡散の元となる情報を意図的にコントロールしようとする考えが、WOMマーケティングと呼ばれているものです。口コミによる情報の拡散を、仕掛けて起こすのです。“WOM”とは、Word of Mouthの頭文字をとった言葉で、言葉の通り、口コミのことです。そして、このWOMマーケティングは、「AISAS」の“S”を表す情報共有行動の戦略的設計を具体化したもので、情報の拡散元となるインフルエンサー(影響者)と呼ばれるターゲットを見極め設定することから始まります。つまり、情報を拡散する力があり、その情報をある程度の信頼を持って受信してもらえるような発信者でなければ、インフルエンサーにはなり得ません。更に、インフルエンサーが情報を掲載するインターネット上のあらゆる情報ソースがメディアともなります。ブログ、メール、掲示板、ウェブサイト、メールマガジンなどなど・・・。 そして、この情報共有によって拡散された情報は、「AISAS」の新たな「A」、つまり注意喚起の元となり、そして新たな「I」、つまり興味をも作ることに繋がっていきます。情報の連鎖がその輪を広げていくのです。インターネット上で、情報が独り歩きしていく、ということでもあります。しかし、ここにコントロールは効きません。だからこそ、最初の情報の発信者となるインフルエンサーの存在が重要になるのです。意図的な情報(悪意という意味ではなく)をインフルエンサーを通じて流し、新しいコミュニケーションを引き起こす、ということで、インフルエンサーの存在ありきでコミュニケーション計画を設計していくことになります。そして、このインフルエンサーこそが、WOMマーケティングのターゲットとなるのです。 スポーツイベントで言うならば、WOMマーケティングのターゲットは、そのスポーツ競技における情報発信者として信頼があり、日常的に幅広いCGM(Consumer Generated Media)に対して情報を掲載し、また他のCGMに対する影響力を持っている人になるでしょう。しかし、単純にスポーツイベントの主催者となる関係者や出場するチームや選手の関係者、またはその他の直接的な利害関係者ということだけでは、一般的なスポーツファンにまで情報が到達する可能性は低くなります。情報の受信者の感情や感性、または趣味趣向によって、情報を客観的に捉えてもらえない可能性があるからです。特に、幅広い情報の拡散をめさすならば、効果的ではないかもしれません。では、どのようなターゲットが最適となるのか?。 最も重要なことは、情報を客観的に伝えられる、または伝えていると思われている人であることかもしれません。そして、情報の拡散率から考えると、ある程度の著名人であることが望ましいかもしれません。テレビのキャスターであったり、コメンテーターであったり、ジャーナリストやスポーツライターであったり・・・。しかし、すべての人が万人に信頼され愛されているわけでもないので、ターゲットは複数いた方が波及効果は高くなるでしょう。そこに話題性という効果が生まれるからです。マイナーなスポーツとされていたハンドボールでの北京五輪アジア地区予選の再試合の時でも、日本代表の宮崎選手のテレビやメディアへの出演は高い効果があったと思います。しかし、それは、中東の笛という意図的な試合操作が行われていた疑惑に対するスポーツファンの批判的な気持ちが伏線にあったからこそ効果が上がったとも言えるわけで、その伏線の情報を伝えていたのは、先のキャスター、コメンテーター、ジャーナリスト、そしてスポーツライターたちでした。彼らによる試合に対する興味度をくすぐるような言動や記事は、ハンドボールというスポーツの域を超えさせて試合会場へ足を運ばせる効果を生み出したのだと思います。かなり特殊な事例だとは思いますが、効果という面から考えると、人が口々に伝えていく情報の拡散の効果は、伝えていく人たちの存在次第では、計り知れない効果を生む、ということだと思います。 もちろん、一般的なスポーツファンが、その熱烈な思いをインターネットを通じて伝えていき、やがては大きなムーブメントを引き起こすこともあるでしょう。あくまでも、そこには伝えていくに十分な情報の価値や、感情や感性といった伝えていく人の思いも込められています。イベントであれば、そのイベントの本質がキチンとした一定の価値を持つものであることが条件になることは当然です。 「この一戦だけは見逃すべきではない」、とか、「ここに登場する○○○という選手は、将来の日本を背負う逸材だ」、とか、イベントの本質であるそこでしか見られない価値観を、言葉として伝えられ、更に伝える人の信頼性をもって伝えられるならば、その情報の価値は、広告で表現されるものよりも何十倍の効果を発揮することもあるでしょう。スポーツイベントにおいて、新聞や雑誌の記事が観戦のキッカケになったという調査結果をよく目にしますが、広告がそうである割合は非常の低いものです。客観性という視点からも、口コミ効果をうまく戦術として設計できれば、予算の限られたイベントのPR活動も、大きな費用対効果を生むことになるかもしれません。
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posted by umekichihouse |04:39 |
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