2008年10月26日

「国民体育大会のその開催意義と効果」その6 ~地域スポーツ活動を支える人材育成

スポーツ振興法は、国体の開催を定め、スポーツの普及と振興を推進することを目指し、そして、スポーツ基本計画を策定することを定め、地域スポーツの活性化とスポーツ参加の促進を目指しています。1946年に始まる国民体育大会は、戦後から日本の全国的なスポーツの普及、促進、強化を牽引する、まさにスポーツの祭典として開催され、60年以上の歴史を刻んできました。いま、その開催についてさまざまな改革が論じられている中で、21世紀を迎え、スポーツは全国的な観点からの普及や育成施策ではなく、地方の都市や地域から、その活動組織の組成に関する取組みが始まっています。総合的地域スポーツクラブがその代表例です。

この歴史的な流れの中で、間違いなく、国体の日本のスポーツ界における存在意義やポジショニングは、確実に変わっていくべき時を迎えていると思います。一方で、地域で根付き始めた総合的地域スポーツクラブを始めとする地方から拡大しているスポーツ組織の活動の輪は、経営的なノウハウはもちろんのこと、指導や普及、そして事業展開に至るさまざまなノウハウや実務経験を持つ人材を求め始めています。単なる仲良しクラブではなく、自主財源による自主運営で活動の拠点を作り、そしてさまざまな事業をも生み出す組織の拡大化は、スポーツを理解し、事業として推進できる人材がいなければ、それは成り立ちません。また、総合的地域スポーツクラブは、単なる地域のコミュニティから派生するだけではなく、企業スポーツから、また、プロスポーツチームの運営から、そしてスポーツイベントの運営組織から生まれる場合など、その派生の仕方は多様なものがあります。やがては、ヨーロッパのスポーツクラブ組織のように、トップチームの活動から一般市民のスポーツ育成に至るまで、幅広いスポーツ事業を司る存在になる可能性を秘めているのです。よって、その組織を支える人材こそ、今後最も育てていかなければならない対象である、と言うことが出来るのです。

そこで、国体開催の運営面で行われている、その開催地内の幅広い人材育成や教育のプロセスこそがフォーカスされるべきだと思います。つまり、国体を、競技選手の育成や強化という観点だけで捉えるのではなく、「スポーツビジネスやイベントオペレーションといった実務経験を伴うノウハウを必要とするスペシャリストを、開催地内の地域単位で育成し教育する機会」、として捉えていくことも必要なのではないか、と考えるのです。それほど国体とは、費用はもちろんのこと、準備に膨大な時間を要し、また、官民問わず多くのスタッフが関わる事業なのです。そして、国体開催を通して生まれたスポーツイベントの人材組織こそ、次の世代の総合型地域スポーツクラブの経営を支えたり、その活動を推進していくための中心的役割を担う存在になっていくことが理想なのではないでしょうか?。国体開催という機会が生み出す新たな事業価値が、この辺に潜んでいるように考えます。

国体の準備に関するマニュアルを見てみると、イベント運営としてのノウハウ的記述には目新しい内容はありませんが、地域から参加する、特に役員、係員、補助員の大規模な人数の人たちに対する教育や指導、そして実践現場での育成に至る過程を見ると、非常に多くの時間を掛けていることが一目で分かります。ほとんどは無償で協力するボランティアとして関わっているのだと思いますが、競技の特性に応じて、また、競技会場の特性に応じて、開催地全域に及ぶ広範囲にその活動の場はあるわけですから、人数だけ考えても大規模になることも必然となります。それら多くの人たちは、国体の終了してしまうと、ほとんどの人たちには、次の活動の場はなかったことでしょう。長い時間を掛けて習得し、実際にイベントの現場で実践した知識やノウハウは、昔のイベント運営現場よりもより高度で複雑なものになっているので、生かせるチャンスさえあれば、貴重な人材となるはずです。

国体の準備マニュアルを見ると、競技そのものの運営を担当する人たち(競技役員および競技補助員)と、競技会場や大会全体の運営を担当する人たち(競技会係員および競技会補助員)にスタッフの役割は区分されており、その中で、競技及び競技会補助員は、競技会場の地域の中・高校生から一般までの住民を起用しているようです。また、その業務内容は、非常に多岐に渡っています。競技補助員は、総務、競技運営、記録、招集、掲示、報道、放送、表彰、得点掲示、記録送受信など。競技会補助員は、総務、式典、案内受付、接待、宿泊、輸送、会場整理、施設管理、警備、会場美化、練習会場、駐車場、入場券販売または整理券配布、プログラム販売など。これらの業務は、地域のスポーツイベントやスポーツ教室等の活動では経験することができないような特殊なものも多く、だからこそ、数年前からの境域が必要となり、プレ大会のような実践研修の場も必要となります。国体の本番期間は、たった10日にも満たない短い期間ですが、ここで得られる体験は、求めれば何時でも体験できるものではありません。スポーツ事業に携わりたい人にとっては、正に、貴重なチャンスなのです。

地域のスポーツ振興を担うのは、各自治体の教育委員会であると、スポーツ振興法にはありますが、その方々は、国体を、その成績による成果評価だけに捉われるのではなく、国体開催の機会を、長期的な視野に立って“活かす知恵”をお考えになったらいかがでしょうか?。スポーツ施設の整備・充実というハード面だけに捉われるものでもなく、それらハードを活かすためのソフト面でのアイディアを生み出したり、アイディアを具体的にしていくための人材育成という視点から、国体というものを見直してはどうでしょうか?。日本体育協会が、国体改革2003を旗印に推進しようとしている競技力を注視した施策を受け入れていくだけでは、何百何十億円という都道府県民の血税が費やされている国体そのものから、地域住民の意識はますます離れていくような気がします。

posted by umekichihouse |08:29 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
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