2008年10月24日

「国民体育大会のその開催意義と効果」その4 ~開催地自治体の思惑と現実

スポーツ振興法の第4条、「計画の策定」という条文の中に、「都道府県および市町村の教育委員会は、スポーツの振興に関する計画を定める」として、「その計画を定めるについては、予めスポーツ審議会の意見を聞かなければならない」、とあります。スポーツ審議会とは、スポーツ振興法の第18条にその条項があり、「スポーツの進行に関する重要事項について調査審議し、都道府県および市町村の教育委員会の建議する」、としています。つまり、地方自治体のスポーツ振興に関する計画の立案に関しては、スポーツ審議会なる組織の存在が、クローズアップされる、ということなのです。しかし、一般の人で、このスポーツ審議会の存在を知る人は、ほとんどいないのではないでしょうか?。

各都道府県や一部の市町村のスポーツ審議会の議事録や審議状況は、WEB上に公開されていますが、ざっとその内容を覗いてみると、それぞれ特徴的なスポーツ振興のための組織作りを進めていることも読み取れるのですが、さほど具体的なものはなく、最も目に付く記載内容は、インターハイや国民体育大会での成績に関する報告なのです。「我が県は何位でした」とか、「どんな種目で成績が良かった」、などです。つまり、国体での成績の良し悪しが、スポーツ審議会の役割とされているスポーツの振興計画の指針になっている、とも言えるのです。

私が高校2年の時、地元で国体が開催されました。冬季大会から秋季大会までの完全国体です。中学2年の頃から、国体選手の選抜や強化が始まり、国体開催時に高校3年になる1年先輩の人たちは、夏休みや春休みなどの期間中には、合宿に駆り出されていたことを覚えています。当時は、まだ、「国体選手」というのは、なかなかのステイタスで、田舎では注目を浴びていた存在だったのです。いまから30年以上も前の話しですが、この当時の国体の果たす役割は、都道府県単位でのスポーツ強化が、「国体で勝つ」ことを目標に進められていたことを踏まえると、かなり意義のあることだったのだと思います。全く居住経験もない優秀な選手を、教員などとして採用し、県代表として出場させることなんか、日常茶飯事でした。中には、毎年赴任先を変えて、毎年違う県から選手として出場していた人もいたようです。そこまでして、勝ちたかったのが、国体だったのでしょう。しかし、都道府県民が勝ちたいと考えていたわけではないはずです。勝ちたかったのは、都道府県の教育委員会であり、スポーツ振興に携わっていた一部のお役人だけだったような気がします。

では、国体開催によって、都道府県や市町村は、スポーツ振興などの名目で、国から多額の補助がもらえているのでしょうか?。それならば、お役人らしく、国体への執着もよく分かる気がするのですが、現実は、全く逆の状況なのです。今年7月に、全国知事会が国に出した「施策並びに予算に関する提案・要望(文科省関係)」という文書を見ると、高校施設の耐震化対策や国立大学法人の運営費交付金などと並んで、「国民体育大会のあり方」という項目がありました。内容は、下記の通りです。

「国及び日本体育協会は、開催都道府県の意見を十分反映して国民体育大会の活性化・効率化に向けて継続的に改革を推進するとともに、開催に関わる経費を応分に負担すること」。

先の大分国体では、開催費用の146億円の中の約7%、たった10億円のみが国からの補助金です。残りの136億円は、すべて大分県民や県内市町村民の血税で賄われているのです。この実情を見ると、上記の全国知事会の要望も頷けるものがあります。国体のあり方そのものを問うまでの言及は、こうした財政的な背景があるからなのは一目瞭然です。また、文科省スポーツ・青少年局スポーツ課の資料で、国民体育大会補助事業に関する資料を見ると、下記のような記載があります。

「国民体育大会は、我が国のスポーツの競技力の向上に大きく貢献しており、また、都道府県において国体開催を契機としたスポーツ施設の整備・充実やスポーツ振興体制及び競技団体等のスポーツ組織の充実を図る上で重要であり、したがって、今後とも国体の主催者の一員である国が、一部費用を負担しつつ国民体育大会を継続して実施する必要がある」。

・・・と謳っておきながら、実情は7%負担に留まっているのが現実です。しかも、この補助金の対象経費も明記されていて、「式典及び競技運営に直接必要な経費」となっています。つまり、開会式は盛大にやれ、国から補助金を出す、しかし、競技運営に掛かる経費は、“直接”掛かると判断されるものだけですよ・・・、ということなのです。”直接“必要な経費とは、何を指しているのでしょうか?。ここにも、国体の継続を前提としながらも、理想と現実の見極めも出来ない官僚的な言葉面が並んでいるのは、情けないとしか言えません。国体開催を契機に体育館や競技施設をガンガン造っていた時代を、いまだに懐かしんでいるのでしょうか?。これでは、財政問題に直面している地方自治政策の最前線で戦っている知事さんたちが、前述のような要望を出すのも当然のことです。

以前のブログでも取り上げましたが、いま、自民党や超党派のスポーツ議員連盟の中に、スポーツ省(庁)の設置を目指したスポーツの新しい振興策を実現するための動きがあります。現代の実情に見合わない部分も多くなっているスポーツ振興法を抜本的に見直して、新スポーツ振興法というよりは、スポーツ法なるものを制定して、スポーツにより大きな財源が付けられるような体制作りが急務だと考えられています。その中で、国体のあり方がどのように取り扱われるのか?。今後も見守っていきたいと思います。

posted by umekichihouse |06:46 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
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