2008年10月23日

「国民体育大会のその開催意義と効果」その3 ~国体改革2003とは?②

2003年3月に策定された「国体改革2003」。その後、この国体改革2003の内容を前提として、「国民体育大会冬季大会のあり方に関する提言」と、「国体の今後のあり方プロジェクト提言骨子」という2つの文書が出されています。2つとも公開されていますが、前者は、その名の通り、冬季大会に関する改革策を具体的にまとめてあり、後者は、国体改革2003の中で公約している5年後、つまり今年までに改革すべき内容を取りまとめるためにプロジェクトが編成され、その中で論議されたことが取りまとめてあります。今回は、この2つの資料の中に書かれてある内容を下に、国体改革2003の内容に関する検証を進めていきたいと思います。

まず、「国民体育大会冬季大会のあり方に関する提言」ですが、冬季大会は、競技の特性から、開催地が限られるため、毎年、その開催地の選定が課題となっています。課題とは、ズバリ、開催費の負担に関する要件です。開催地候補が限られているだけに、開催地となる頻度が高く、その都度、高額な負担が自治体にのしかかるからです。日本体育協会では、冬季種目の競技団体と協力して、開催地の費用負担の軽減を目指し、新たな財源確保を模索しています。提言書の中でも、そのことは、明確に謳われています。

◇開催地の経費負担軽減を図るため、以下の3つについて検討する。
  1.マーケティング活動による収入確保
  2.参加料の増額
  3.参加都道府県分担金の導入

「2」や、ましてや「3」に関しては、非常に安易な方法ですが、ひとつ課題が残るように思われます。冬季種目が強い都道府県は、当然のことながら参加規模は大きく、よって、「3」の都道府県分担金を導入したとすれば、参加料に加えて、ますますその負担は大きくなります。冬季種目にエントリーしたくても選手層が薄く参加規模が小さくなるような都道府県との差を、どのように調整していくのか、金銭的な問題にもなり、課題が残ると思います。もちろん、本大会である夏季や秋季大会にも同じ制度があるとするならば、不公平感は出なくなると思いますが、それはそれで、参加都道府県全体の負担が大きくなるばかりで、現実的ではないでしょう。ただし、そこまで追い詰められている、という冬季大会独自の悩みも汲み取ることはできます。

では、「1」のマーケティング収入ですが、マーチャンダイジングに関しては、大分国体の例を見ても、さほど金銭的なインパクトがあるまでの規模にはなっていませんし、ましてや参加規模の小さい冬季大会では、多くは望めません。結果的には、スポンサーシップということになるのでしょうが、本大会ですら、その大会の興行価値に疑問を呈するほどのメディアバリューしかないところで、冬季大会の興行価値を図るにも、それは到底無理な話しであるように思います。トップアスリートの参加がさけばれてはいますが、どの種目も、ワールドカップなどで転戦している時期でもあり、到底トップ選手の参加に、大きな期待を込めること自体無理な話です。つまり、スポンサーシップに足るマーケティングバリューが見出せないのです。せいぜい、寄付金のような性格の小額協賛を多数集めることくらいしか考えられない気がします。もちろん、日本の冬季スポーツ普及のために、一肌脱ぐ広告代理店などが登場すれば、話しは簡単なのでしょうが・・・。

冬季大会は、提言書にもありますが、スケート、アイスホッケー、スキーと、3競技に分類されて開催地が検討されているようですが、すべてを統一開催地で行う案と、スキーとアイスホッケーを含めたスケート競技を2つの開催地に分散して開催する案、そして、すべてを異なる開催地で行う案が検討されています。ただし、何れも、既存のコースや施設があってのことですので、総合開催に適する開催地は、ますます限定されてしまうことになります。結果的には、3開催地の分散開催が、開催費の面では無難なのでしょうが、競技大会としてのマーケティングバリューを見出すには、全く魅力のないものになるかもしれません。冬季インターハイや中学大会との連携開催等も視野に入れているらしいですが、冬季競技に関しては、総合開催を視野に入れた開催地をある程度固定化を前提に、開催地の利点となる施策を国としてバックアップしていかない限り、抜本的な解決策は見当たらないようにも思えます。

次に、「国体の今後のあり方プロジェクト提言骨子」ですが、この中で、着目したのは、3点です。
[1]国内最大・最高の競技大会、都道府県対抗方式、毎年開催を前提としている点
[2]トップアスリートの参加、都道府県対抗という郷土性など、「見るスポーツ」の対象として国体のブランド的な価値を高揚する、としている点
[3]入場料収入を念頭に置く、また、観戦ツアーの企画、実施について検討する、そしてPR活動の実施という視点での炬火リレーの実施を検討する、という点

項目というよりは、記述内容からランダムに抜粋した内容ですが、[1]に関して言うと、国内最大というのは数値的な規模から言うことなので差し控えても、国内最高というのは、どのような判断基準に基づいて判断されるものなのか、些か疑問です。恐らく、トップアスリートが参加する前提での考えなのだと思いますが、国体のいままでの開催意義を、こうも簡単に大転換させることを、国民が望んでいるのかどうか、非常に疑問に思うのです。各競技団体主催の全国レベルの大会には出場機会がないけれど、国体なら出場するチャンスがあるかもしれない、と、日頃練習に励んでいる一般アスリートも数多くいるのだと思います。だからこそ、国体の存在は生きるのではないでしょうか?。単なるトップクラスの競技会としての性格ならば、それが実現できたとしても、普及や育成という観点は、まったく無視されていくことになるのでしょうか。スポーツへの参加機会をより多く創り出していくことも、国体を中心に据えたスポーツ行政のあり方だと、私は思うのです。また、都道府県対抗という方式を頑として残そうとしていることも、疑問のひとつです。[2]にも謳われていますが、郷土性などという視点での競争意識が、まだあるのかどうかさえ疑問です。天皇杯や皇后杯というステイタスを得て喜んでいるのは、自治体の教育行政に関わる一部の人たちだけのように思えます。もし、国内最高の競技レベルの大会が実現するならば、都道府県対抗という方式がなくても、国体の興行価値は自ずと上がることは間違いありません。もちろん、本当に実現できたら、の話しですが・・・。逆に、何のための都道府県対抗なのか、と冷静に考えると、開催地の自治体が、国体の開催費の負担を拠出しやすい名目であったり、参加する都道府県に関しても、選手派遣などに掛かる費用の負担がしやすいだけ、という気もします。費用の拠出根拠は、明解にあるべきものですが、如何にも官僚的な発想だと思うのは、私だけでしょうか?。

[2]の「見るスポーツ」という言葉を見て、非常に驚いたのですが、この案の策定に関わった方々は、全くスポーツビジネスを理解していない、と言うしかありません。都道府県対抗と謳っておきながら、応援という観点ではなく、一般的な観戦する価値のあるスポーツ競技としての魅力を見出そうとしているわけで、非常に短絡的だと思います。現状の国体の競技の様子を見ても分かりますが、○○県対○○県の試合に、お金を出しても見たい、という魅力を何処に見出せばよいのか、疑問です。トップアスリート、つまり、日頃トップリーグなどで活躍しているチームが参加するならば話しは別なのでしょうが、都道府県対抗にはなりません。トップアスリートの参加を念頭に置いたアイディアでしょうから、堂々巡りになるので、これ以上述べることは差し控えます。

[3]に関しては、「見るスポーツ」という点にも関連しますが、有料入場とするだけの興行価値の見出し方を慎重に検討すべきだと思います。単に、一人頭何千円とか、何百円とか考えているならば、即刻こんな考えは捨てるべきでしょう。もしくは、観客動員の苦心しているプロスポーツ球団の幾つかに教えを請う方が早道です。チケット販売にしても、販売コストはゼロではありませんし、金銭を受け取る、ということは、観客に対してそれなりのサービスを提供する義務を負う、ということでもあります。トップリーグの地方興行などでも、昔はよく見られましたが、観客からお金を徴収する、という感覚自体に、全く責任感がないのです。また、炬火リレーなんていうのは、オリンピックの見すぎです。私には、問題外にしか思えません。

何れにしても、国体の行く末が、ますます分からなくなるような内容でした。国体とは、一体誰のために、何を目標として、どのように実施していくのが、本当にあるべき姿なのか。国体改革2003は、大分国体から具体化作業に入っているようですが、スポーツ省(庁)に関する論議も始まっていますし、6-7年前に論議されていた「観光立国ニッポン」プランを前提とした観光庁が、10月1日に発足しています。時間は掛かれど実現可能な話しであるのですから、ここで立ち止まって再考する余裕を見せることも、国体の改革を進めている関係者の皆様には、必要なことであるように、あくまでも個人的な考えですが、思うところです。

国体改革2003に関して、最後に、筑波大学の先生がまとめられた「国体改革に関する関係機関・団体アンケート結果における総括」という資料についてご紹介しておきたいと思います。これも、WEB上で公開されています。
アンケートの対象は、恐らく、国体開催に関わる自治体や競技団体の関係者だと推測されますが、自由記述もあるということで、中には興味深い回答結果もありました。ただし、ほとんどは、現在の国体にあり方に対してそれ程インパクトのある内容ではなかったので、ここでは、大きくは2つのポイントに絞って検証することにします。

まず第一点は、「各競技団体の定めている参加制限の撤廃について」という項目と、「予選会免除の拡大について」という項目に関する質問回答の内容です。どちらも、トップアスリートの参加に関わるものです。アンケート対象が、競技や国体に直接関わる関係者であると推測するので、肯定的な見解が多数であるのは同然なのですが、自由記述の中には、「国体はエリート中心の大会なのか、普及を重点を置いた大会なのか」と疑問を呈するものや、「トップアスリートの参加はレベルアップに繋がる」としているものの、「トップアスリートが国体に参加する要因は、予選会の有無よりは、開催時期や各協議における国体の位置付けにある」という意見も見られます。マイナー競技である競技団体と、メジャーと言われる競技の関係者の間には、かなりの見解の相違があることも、総括の中には記載されていました。どの意見も、○×で判断できるものではなく、またまだ課題あり、と示唆したものであるということだと思います。

第二点目は、「施設の弾力的運用について」という項目と、「近隣県の競技施設の活用について」という項目に関する質問回答の内容です。「競技団体からの要求が高い」という行政側の立場と思われる意見が目立つようです。元々、競技会場としての体育施設であったかどうか、という問題もそこにはあると思います。ここから派生して、「単独開催というこれまでの国体のあり方そのものを問う」という意見もあるようなので、プロスポーツが浸透してきている中で、興行面も含めた競技施設の内容をどう考えるのか、という課題も、今後、浮き彫りになる気がします。

posted by umekichihouse |07:02 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
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