2008年10月22日

「国民体育大会のその開催意義と効果」その2 ~国体改革2003とは?①

国民体育大会は、1945年、戦後のスポーツのあり方と、競技団体の組織と事業の確立を模索していく中で、その開催が提案され、1946年に、京都を中心とする京阪神地域を開催地として第1回大会が開催されたのが始まりです。国体は、英文表記では、「NATIONAL SPORTS FESTIVAL」。つまり、日本のスポーツの祭典、ということです。そして、戦後の日本復興の一役を担ってきたことは誰しもが認めるところです。

しかし、21世紀の現代において、国体の役割は如何なるものであるべきか、という議論は、当然のことながら沸き起こりました。特に、2万人を超える参加者数を前提として、160億円もの開催費を必要とするこの事業に対して、90年代前半のバブル崩壊とともに地方経済を圧迫し続けてきた自治体の財政状況などを鑑みると、このままでいいはずはありません。そこで、2003年に、日本体育協会理事会で、「新しい国民体育大会を求めて~国体改革2003~」なるものが策定されました。具体的には、今回の大分国体から具体化されている内容もありますので、前回も取り上げましたが、この内容について、まずはスポーツにかかわる日本のすべての関係者の皆様が、どのようにお考えになっているのか、ぜひお聞きしたいということもあり、まずは以下に内容を列記させていただきます。まずは、国体をめぐる課題について5項目が上げられています。

<国体をめぐる課題>
  1.参加人数の拡大による都道府県の負担増
  2.競技ルールの変更とそれに対する施設、設備の適合の困難さ
  3.トップアスリート参加の困難さ
  4.一過的で過剰な強化策
  5.判定、得点等に対する不公平感

「1」に関しては、既に前回も取り上げましたので飛ばし、「5」に関しては、競技大会としてあまりにも当たり前すぎるので、それを課題として取り上げなければならない日本のレベルの低さに失笑しつつ、これも飛ばします。「2」と「3」については、ある意味で分かりきったことである、と言うことと、はたまた、国体そのものの存在意義や開催意義を問うことでもあるように思います。つまり、競技大会としての質を向上させるならば、これは当然のことで、各競技においても、その競技性をより公平に、より魅力あるものにするための変更措置であるはずです。しかも、国際性云々を言っていた日本体育協会ですが、競技ルールの変更は、国際連盟による世界的な変更であるはずですから、開催競技としての外しても、ルールは国際基準は無視すると言うのか・・・、ということではありませんか?。逆に、国体だからこそ、全国にその見本としての施設や設備を示す機会とすべきだと思います。また、特に3については、国体の競技大会としての位置付けの問題になりますので、何も語ることはありませんが、中国や旧ソ連、旧東ドイツの全国競技大会のようなイメージで考えていらっしゃるのでしょうか?。英文表記では、「Championship」という言葉は何処にもありません。あるのは、「FESTIVAL」という単語のみです。そのひとつの単語が、現在の国体の位置付けを雄弁に物語っているように、私は考えます。

上記の課題提起に対して、国体改革2003では、次の2つの方向性を、新しい国体のものとして示しています。

<新しい国体の方向性>
  1.新しい国体の正確・目的
    ・より競技性の高いトップレベルの大会として構築し
    ・ジュニアからトップアスリートまで、幅広い競技者層を対象として
    ・競技者の発掘、育成の場として、充実、活性化していく
  2.時代に適した大会運営のあり方
    ・財政負担を考慮した大会運営の簡素、効率化の推進
     (開催地都道府県および参加都道府県の両方に対して)
一言で言うならば、現実的には、全く矛盾する内容が、2つ併記されている、ということです。「1」の内容を現実化するためには、国体の競技会としてのレベルを上げるために、先にあったような、施設や設備の充実に努めなければならず、また、都道府県対抗という国体特有の競技スタイルは、何の意味も持たないように思われます。いまは、都道府県単位で競うことが競技力の向上に結びつく時代でしょうか?。日本全体が一丸となった取り組み、例えばトレセン計画なんかもそうだと思いますし、ナショナルトレーニングセンターは、そのシンボルたる存在ではないでしょうか?。とにもかくにも、実行するためには、それなりの予算が必要となります。しかし、開催規模の拡大を抑制するために、大会運営を簡素化し効率化を進める、とあります。限られた予算の中で、「1」の内容を少しでも実現するために、何かを犠牲にしていこう。そのためには、全体のレベルが下がっても、とにかく国体を続けられるような規模で運営していこう。・・・という意味でしょうか?。つまり、やろうとしていることは予算がなくて出来ないから、理想だけは掲げたままで、現実的にはやれることだけをやっていく、というように読めるのです。それでは、「1」の内容に何の意味があるのでしょうか?。やりたいができない。では、現実的な予算は変えられないのだから、その範囲の中でできることは何なのか。そして、そこから得られる結果に基づいて、国体のあり方は、このように変えていこう・・・、というのがビジネスの世界では当たり前のアプローチだと思うのです。裏を返すならば、理想通りの国体としようとする人たちが、無理やり予算を取るための建前として掲げたのが、「1」であるとも取れますが、それが真意でしょうか?。

以上の方向性に対して、まず「大会の充実と活性化」という取り組みテーマが掲げられ、以下のような13のアクションプランが提起されています。
<国体改革の具体的な取組み①>~大会の充実・活性化
1.参加資格の見直し 
(1)参加制限等の撤廃(トップアスリートの参加を促進するため) 
(2)所属都道府県の統一 
(3)国内移動選手の制限 
(4)外国籍競技者の参加 
2.ふるさと選手制度(仮称)の導入 (中学校又は高校卒業時まで在住した都道府県から出場できる) 
3.予選免除の拡大 (トップアスリートの参加を促進するため) 
4.参加選手の範囲 (競技団体が「プロ競技者」として認定していない者の参加) 
5.女子種別の拡充 
6.中学3年生の参加競技の拡充 
7.種別の年齢区分の見直し (「少年」・「成年」種別の年齢区分の見直し) 
8.国体独自の競技方法の見直し 
9.ドーピングコントロール検査の導入 
10.組合せ抽選会の公開 
11.公正な判定の徹底 
12.ボールゲームの組合せの改善(1試合も行わずに8位以内に進出する試合形式は行わない。) 
13.ボランティアの育成 
項目はたくさんありますが、一言で言えるのは、大会の充実や活性化とは、“トップアスリートが参加すること”、と日本体育協会は考えているようです。すべての対象競技の強化関係者を呼んで、カレンダーを作成すれば一目瞭然だと思いますが、もし、国体の開催日程を変えないとしても、オフシーズンを迎える競技や、シーズン突入を控えたまさに準備期間という競技もあります。それらすべての競技のアスリートたちに、万全のコンディションで国体に望め、というのでしょうか?。国際大会のスケジュールもありますし、各年齢別の全国大会を控えているケースもあります。どう考えても、理想を掲げているようにしか思えないのは、私だけでしょうか?。先頃行われた柔道の団体戦や女子レスリングの世界選手権が都内で行われ、テレビ中継もゴールデンで放送されていましたが、誰が見ても世界一決定戦とは思えない布陣でした。オリンピックの直後というスケジュール的な問題だと思います。同じ事を国体でも強いる結果になるのでは?、というのは、私の思い過ごしだけなのでしょうか?。
次に、大会運営の簡素化と効率化について、以下の10のアクションプランが示されています。
<国体改革の具体的な取組み②>~大会運営の簡素・効率化
1.各季別大会の見直し
(1)夏季・秋季大会の会期一本化 (原則として会期は9月中旬~10月中旬までの11日間)
(2)冬季大会のあり方
2.大会規模の適正化 (参加総数を15%[4,500人]程度削減) 
3.競技会開始式の廃止 
4.公開競技の見直し 
5.記録・情報システムの開発 
6.施設の弾力的運用 
7.近接県の競技施設の活用 
8.企業協賛制度の導入 
9.開催地選定のあり方 (同一都道府県内での全競技開催にこだわらない) 
10.国体ブロック枠の見直し

「1」、「2」、「3」などの項目の内容については、既に大分国体より実施されています。上記内容は、集約すると、人の数を減らすことと、施設や設備の面での新規の設置等に要する費用の発生を防ごうとする、2つのポイントになると考えます。施設や設備面での課題は、国体に限らず日本のスポーツ振興全体に関わるテーマですので、差し置きますが、参加人数の削減に関しては、先のトップアスリートの参加促進ということと併せて、国体という大会の、日本のスポーツの強化という側面からのポジショニングや開催意義のようなものが明解に示されない限り、全く中身が伴わない数字遊びになってしまう危惧を持っています。・・・次回、再び、国体改革2003を取り上げます。

posted by umekichihouse |06:02 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
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