2008年10月21日

「国民体育大会のその開催意義と効果」その1 ~まずは大分国体より

今月の7日、今年も国民体育大会、国体が閉幕しました。開催県は、大分県。大分での国体開催は、1966年の第21回大会から42年振り。ただし、今回からは、2003年に策定された「新しい国民体育大会を求めて~国体改革2003~」を受けて、大会運営の簡素・効率化が具体化されました。夏季と秋季の各大会を統合して開催し、また、参加総数を15%削減するという大会規模の適正化が実行されたのです。国体は、昭和36年(1961年)に制定されたスポーツ振興法に基づき、日本体育協会と、国および開催地の都道府県が共同して開催する、と定められています。つまり、開催地となる都道府県の開催費の拠出は、地方自治体の財政状況が切迫してきている現代の状況の中でも、非常に大きな負担を強いられるものになっているのです。

「広く国民の間にスポーツを普及し、スポーツ精神を高揚して国民の健康増進と体力の向上を図り、併せて地方スポーツの振興と地方文化の発展に寄与するとともに、国民の生活を明るく豊かにする」、ことを目的として、戦後間もない1946年から始まった国民体育大会。60年以上の歳月を経た今でも、その目的には何ら変更の手は加えられてはいません。時代錯誤もはなはだしいと思われるような旧態依然とした言葉の羅列に呆れるばかりですが、開催費負担に関する課題を発端にして、大会規模や開催意図についてもさまざまな論議が続いている国体のあり方に関して、今回から数回に渡り、「国体の開催意義と効果」について述べたいと思います。

国体は、冬季ではスケート、そしてスキー競技が行われ、夏季と秋季の、併せて概ね4つの開催期間に分類されます。冬季大会は、競技が実施できる開催地が限られるため、ある特定の地域や道県に開催地が集中しがちになる課題を抱えています。日本体育協会や冬季種目の競技団体などが、開催費の一部負担をするなどしているようですが、開催地の負担がゼロになるわけでもないようです。一方、夏季と秋季大会は、本大会として、毎年開催地が変わります。上記で述べたように、現在は2順目に入っており、今回の大分で通算63回目を迎えました。ちなみに、今年の冬季大会は、長野県の各地で開催され、スキー、スケート、アイスホッケーの3競技に、約3,600名が参加して行われています。

まず、今年、約2万2千人の選手と役員が参加して行われた大分国体についておさらいしてみます。

テレビ放送は、全国的にはNHK教育テレビなどで、開会式や会期中に毎日1時間程度のダイジェスト放送があったくらいなので、ほとんどの人は開催していること自体知らなかったのではないでしょうか?。開催地である大分での報道の様子を詳しく調べることは出来ませんでしたが、全国的な報道は、競技結果程度のもので、他には、北京五輪直後ということもあり、オリンピック出場選手の登場にフォーカスした報道が多少あった程度でしょう。ソフトボール競技が悪天候のため順延が続き、ついには、8チームが同時優勝という裁定が下されるなど、オリンピックの余韻を引きずった話題は少し面白おかしく報道されましたが、本来の国体の競技報道というものには程遠い内容です。つまり、メディアは、開催地や開催地周辺の地方メディアを除けば、地元選手の話題が取り上げられる程度で、全国的なメディアにおいては、全くと言っていいほど、その報道価値を認めていないように感じます。

開催費に関しては、2005年の岡山国体から昨年の秋田国体までの3大会を平均すると、約160億円ということです。今回は、大会規模の削減と効率化という改革趣旨を実行するために、約3,500人もの選手と役員の数を減らし、また、昨年の秋田国体で使用された備品や未使用品を大量に持ち込んで再利用したことなどで、約14億円の経費節減に成功したそうです。つまり、開催費は、146億円。内、10億円が国から、10億円が大分県内の市町村から、そして残りの126億円が、大分県の負担となっています。126億円という県民の税金が、国体開催に投入されている事実と、その実施効果を、大分県としてどのように総括するのか、ぜひ注目してください。

一方で、大会経費削減と併せて、新たな収入源を模索する動きが、国体にも見られるようになりました。マスコットキャラクターを使用したマーチャンダイジングです。プロスポーツではおなじみですが、国体ではどのような仕組みで実施しているのか?。今回の大分国体のキャラクターは「めじろん」。県鳥のメジロをモデルにしたそうです。“ゆるキャラ”ブームで、多くの自治体がゆるキャラを創り出し、観光PRに活用しているケースが目立ってきましたが、国体の開催を契機に、マスコットが生まれ、そしてそのキャラクターが県のキャラクターとして活かされているケースも最近の“流行”らしいです。初めて登場したのは、1983年の群馬国体の時の「ぐんまちゃん」という馬をデザインしたものだったようです。今回の「めじろん」は、テーマソングやそれに合わせたダンスもあるそうですが、ビジネスとしての成果を見ると、オフィシャルグッズとして2006年から売り出し、その売上総額は7,200万円。国体開催前までに80社近い民間企業が使用ライセンスを購入し、そのライセンス料が500万円ということでした。金額的には、開催費の規模から考えると焼け石に水のように気もしますが、秋田や埼玉で登場したキャラクターは、いまも各方面で活用されていると言うことで、県のマスコットとしての地位は、なかなかのもののようです。ただし、国体そのものの開催効果と、このマスコットによる副次的効果は、あまり結びつけて考えるものどうか、という気がします。マスコットはあくまでマスコットであり、マーチャンダイジングやキャラクタービジネスを国体事業の一端に置くことが、国体開催本来の趣旨と一致しているかどうかと言えば、それはあくまで副産物でしかない、と思うからです。この先の国体開催予定の自治体では、既にキャラクターを発表し、活用しているところもあるようですが、本来の国体開催意図と、そのキャラクター活用の効果とが、計画的に融合されていくように、慎重な活用計画を立てていくことを期待しています。たまに、凄い勘違いをしているお役人さんもいるようなので・・・。

競技では、この大分国体を最後に実施種目から消えてしまうものもありました。国体の肥大化に対する批判を受けて、規模の縮小と効率化の槍玉に上がったのは、男子の新体操と9人制のバレーボールです。日本体育協会が発表している廃止理由とは、「国際性がない」とのこと。競技力の向上や、最近やたらにトップアスリートの参加を叫び続けている日本体育協会の施策として、これは正当な理由になるのかどうか疑問です。先に述べた国体改革2003では、確かに競技力の向上などのテーマは謳われています。しかし、上記の国体の開催趣旨をもう一度見てください。国体とは、国民の競技力の向上や国際舞台での活躍を目指したものではありません。少なくとも、現行のスポーツ振興法の下では、全く意に反するものです。新しいスポーツ振興法の制定を目指す動きがあることは、以前のブログでもご紹介しましたが、それはまだ審議にも至っていません。その中で、早々に、所謂マイナー競技の足切りを断行する姿勢に、非常に疑問を抱くのです。男子の新体操は、確かに競技人口も少なく、マイナー競技の最たるものかもしれません。しかし、最近では、テレビ番組でいくつかの高校の活動が紹介されたり、テレビCMで男子新体操が起用されたりと、少しは話題性があったように記憶しています。一方で、このような種目で、全国規模での大会は、それ程開催機会がなく、もちろん、世界の舞台でも活躍の機会はありません。国際性がない、と言われればその通りなのですが、スポーツの普及と育成という視点から考えると、マイナーでありながら競技として活動が続けられているスポーツを、如何に普及し育成していくか、という命題を背負うことも、国体の役割である(あった)ように思えるのです。9人制バレーボールも然り。日本のバレーボール人気の底辺を支えたママさんバレーは、9人制バレーが担っています。現状の参加人口がどの程度のものか不明ですが、もし参加人口が少なく、国体出場にも事欠くような事態ならば仕方ないでしょう。しかし、国際性がない、という理由は、少なくとも、生涯スポーツや高齢者スポーツの可能性を考えるのも日本体育協会の役割であるならば、それは意に反する決断だと思いませんか?。日本体育協会は、スポーツマスターズ大会も主催しているのですよね。

また、競技について付け加えると、国際ルールや国内の競技団体の規定よりも少ない選手エントリー枠となっている種目が目に付きます。特に、ボールゲーム種目では、各種目とも、カテゴリー別の出場枠も違えば、選手エントリー枠の設定の仕方もマチマチです。ただ言えるのは、この際、効率化とは言いたくはないのですが、規模の縮小の前提において、競技としての特性を無視した悪戯に人数削減しているとしか見えない中身が見えてくることです。これで本当に、競技レベルの向上やトップアスリートの参加促進などとお題目を掲げられるのかが心配です。以下は、主なボールゲーム種目の出場枠と選手エントリー枠に関する内容です。

<バレーボール> 計1,076名
  ・成年男女(6人制/9人制) 各10チーム  11名(6人制の場合)
  ・少年男女(6人制) 各24チーム  11名
<バスケットボール> 計1,032名
  ・成年男子  47チーム(全都道府県)  11名
  ・成年女子/少年男女  各12チーム  12名
<サッカー>  計920名
  ・成年男子/女子  各16チーム  15名
  ・少年男子  24チーム  16名

例えば、サッカーの場合、少年男子で16名のエントリーというのは、非常に少ない気がします。恐らく、選手数が多いために、全体枠を考えた場合、チーム数を多くすると1チームあたりの選手数を制限せざるを得ないために、ギリギリの人数のラインで出場チーム数を決定したような経緯があるように思われます。何れにしても、リザーブに5名しか入れないとすると、リザーブにどのポジションの選手を入れるかなど、インターハイや全国選手権とは違う対応を、監督も求められる、ということです。また、バレーボールでは、今年まで9人制があるため、すべてのチームは11名の選手エントリーとなっており、国際ルールよりも少ない数です。バスケットボールの場合は、4つのカテゴリーの内、何れかが全国フルエントリーとなっているため、このカテゴリーの選手数を制限するために、これも国際ルールよりも少ない11名のエントリー製になっています。連日続く試合で、運動量を要求されるバスケットボールは、特に少年の場合は、全国大会では15名エントリーが通常になっています。単に数の問題でエントリー数を削減しているとしたら、いずれは競技の質の低下に繋がる気もします。これらのエントリー数に関しては、総枠が日本体育協会から各競技団体へ通達され、それに従って、各競技別にエントリーシステムを構築するわけですが、競技団体にとっても、非常に頭の痛い問題というのが、上記の内容でも分かります。競技によって、出場する条件も違えば、選手エントリーのシステムも異なる。これで、得点制により天皇杯や皇后杯を競う、というのですから、必然的に、全種目にエントリー可能な開催地の有利は動かしがたいものになります。全く競技性のない理屈のみで作られた“国体方式”という気がしてなりません。

次回は、「国体改革2003」の中身について、検証してみたいと思います。

posted by umekichihouse |07:04 | イベントオペレーション | コメント(1) | トラックバック(0)
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「国民体育大会のその開催意義と効果」その1 ~まずは大分国体より

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いつも楽しく読ませていただいています。いきなりのコメントですみません。開催費がなぜそんなにかかるのかが、その内訳などわかるサイトなどあるでしょうか。教えて頂けると幸いです。国体が出来ると高速道路が出来たり、スポーツとは全く関係ないものや、人件費が全てなのでしょうか。子供時代なにも心配することなく、これだけ恵まれた環境なのに、スポーツ後進国になってしまうのは、環境のせいとは思いたくないけど、愚痴もいいたくなるものです。

posted by 七篠言米 | 2008-10-21 22:22

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