2008年10月20日
サッカー日本代表、その動員力の底力を考える
15日の水曜日。埼玉スタジアム2002では、FIFAワールドカップアジア最終予選のホームゲーム、対ウズベキスタン戦が行われました。結果は1-1で引き分けましたが、入場者数は、岡田監督が引き継いでから最高の55,142人を記録。6月に行われたバーレーン戦での51,180人を超える動員数となりました。5月のキリンチャレンジカップでのウルグアイ戦では、最低レベルの27,998人になるなど、サッカー日本代表の動員力にかげりが見え始めた、という報道も目にしていましたが、この時と同じ埼玉スタジアム2002で、逆に高い観客動員数を記録した日本代表の動員力は、本物なのでしょうか。サッカーには多少疎い私が、第三者的に、少し検証してみようと思います。 今年の日本代表戦の結果を、まず見てみましょう。 (KC: キリンカップ2008, KCC: キリンチャレンジカップ2008) ◇1/26 KCC チリ戦(国立競技場) 37,261人 ◇1/30 KCC ボスニアヘルツェゴビナ戦(同上) 26,971人 ◇2/6 W杯予選 タイ戦(埼玉スタジアム2002) 35,130人 ◇5/24 KC コートジボアール戦(豊田スタジアム) 40,710人 ◇5/27 KC パラグアイ戦(埼玉スタジアム2002) 27,998人 ◇6/2 W杯予選 オマーン戦(日産スタジアム) 46,764人 ◇6/22 W杯予選 バーレーン戦(埼玉スタジアム2002) 51,180人 ◇8/20 KCC ウルグアイ戦(札幌ドーム) 31,133人 ◇10/9 KCC UAE戦(東北電力ビッグスワンスタジアム) 31,853人 ◇10/15 W杯予選 ウズベキスタン戦(埼玉スタジアム2002) 55,142人 ⇒KC&KCC平均: 32,654人(2008年度では32,923人) ⇒W杯予選平均: 47,054人(2008年度では51,028人) ※収容率トップ: 5/24 95%(豊田スタジアム) ※収容率最低: 5/27 44%(埼玉スタジアム2002) 今年3月、日本サッカー協会(JFA)は、2008年度の予算を178億円と発表しました。昨年度比で約13億円の増額です。増額の根拠は、W杯アジア予選の国内開催分のテレビ放映料および入場料収入で10億円というものがそのほとんど、と言うことです。何れにしても、過去最高額です。そして、日韓共催による2002年W杯の年の約100億円の規模から、6年で1.8倍近くもの上昇は、言うまでもなくその大半は、日本代表の国内試合などを始めとする代表関連事業の成功によるものです。国内での代表戦の観客動員数の予算ラインを、JFAでは4万人としている、と言うことですが、2003年には12試合中9試合が、2004年には10試合中8試合が、そして2006年には7試合すべてがそのラインをクリアしています。正に、代表関連事業こそ、JFAの屋台骨を支えている、と言っても過言ではなく、その代表関連事業が生み出す収益により、育成や普及という次の世代のための強化環境が作られていっているのです。しかし、2007年に、その好循環の流れは途絶えました。代表戦は、7試合ありましたが、4万人を突破したのは僅か2試合のみ。1月30日のキリンカップチャレンジ2008では、国立競技場でボスニア・ヘルツェゴビナ代表と対戦し、観客は26,971人と、予算ラインの7割も切る結果でした。 2008年度に入ってからの結果は上記の通りです。W杯アジア予選はここまで3試合ですが、何れも4万人を軽く突破し、5万人を2試合が超えるまでに観客動員レベルは復活してきています。しかし、一方で、長年サッカー日本代表を支援してきているキリングループの協賛により開催されている国際親善試合は、1試合がギリギリ4万人を超えたものの、他の試合は3万人ギリギリラインか、それをも割ってしまう数字しか残せていません。4万人を維持した5月24日のキリンカップも、愛知県での日本代表戦が14年振りということと、土曜日という日程の良さも重なった結果ではないか、と見るサッカージャーナリストもいるようです。つまり、いままでの日本代表の動員力が示された結果では決してない、と見ているのです。 これらの数字だけで検証すると、貴重な勝ち点の獲得が掛かる公式戦の価値と、国際親善試合の価値との間の見極めが、多くのサッカーファン、特に2002年W杯でファンになったようなファン暦の浅い人たちにも、ひとつひとつの試合が持つ価値観の違いとして、分かってきた証拠ではないか、という気がしてなりません。キリンカップやキリンチャレンジカップも、代表強化という視点からは、どれもが重要な試合であり、長い間、その戦いの場があったからこそ、W杯出場も果たせてきた、とも言えます。しかし、目の肥えたファンが多くなり、単なる国際試合だけでは、日本代表を応援しようという機運が高まるまでにはならないファンが増えてきたことも事実だと思います。国際親善試合だからこそ、海外組の召集がない場合もありますし、強化という視点からは、メンバーをいろいろテストするために、時には応援している選手が招集されない場合もあったでしょう。アジア杯も勝ち取りました。W杯にも連続して出場を果たしています。その中で、国際親善試合という位置付けのキリンカップの価値すらも、本物のタイトルが掛かった公式戦との比較においては、ほとんどのサッカーファンにはその存在感が薄れてきつつあるのも仕方がないとも思います。皮肉なもので、日本代表が狙う公式タイトルに近付けば近付くほど、キリンカップの歴史とは反比例するかの如く、ファンの中での価値観は薄められているのではないでしょうか?。つまり、すべてが「日本体表の動員力の低下」、という結論付けは、時期尚早であるように思うのです。 以下に、今年の代表戦のテレビ視聴率を列記します。(数値は、関東地区、世帯視聴率、番組平均です。) ◇1/26 KCC チリ戦(国立競技場) 15.6% ◇1/30 KCC ボスニア・ヘルツェゴビナ戦(同上) 13.0% ◇2/6 W杯予選 タイ戦(埼玉スタジアム2002) 17.7% ◇5/24 KC コートジボアール戦(豊田スタジアム) 12.9% ◇5/27 KC パラグアイ戦(埼玉スタジアム2002) 13.9% ◇6/2 W杯予選 オマーン戦(日産スタジアム) 15.2% ◇6/22 W杯予選 バーレーン戦(埼玉スタジアム2002) 16.4% ◇8/20 KCC ウルグアイ戦(札幌ドーム) 5.7% ◇10/9 KCC UAE戦(東北電力ビッグスワンスタジアム) 10.3% ◇10/15 W杯予選 ウズベキスタン戦(埼玉スタジアム2002) 16.3% ⇒KC&KCC平均: 11.9% ⇒W杯予選平均: 16.4% 8月20日は、北京五輪真っ最中ということもあり、しかも親善試合ということも重なり、いつもの半分以下という結果でしたが、この数値からも言えることですが、先の観客動員のレベルと同様に、W杯予選の数値とキリンカップおよびキリンチャレンジカップの視聴率は、明らかに差があります。5%近い数値の開きは、ドラマで言えば制作現場のため息が聞こえてくるレベルのものなのです。数字だけの判断ですが、残された実績から考えると、明らかに、ファンの目は肥えてきている、ということと、数字上の低下現象は、日本代表の動員力や魅力の低下ではなく、ひとつひとつの試合の価値の意味を、多くのファンが知ってきた証である、ということも言えると思うのです。 JFAでは、日本代表の人気低下の原因を探り、対策を練ることを目的としてプロジェクトを立ち上げた、と、9月頃の新聞報道にはありました。確かに、レプリカユニフォームなどの代表関連グッズ販売の売上が落ちていることや、テレビ視聴率が簡単に20%声を達成できなくなっていることなど、人気低下と言えばそうであるような現象は見られます。しかし、レプリカなどが半永久的に高水準で売上を維持していくことは、非常に稀なことだと思います。また、テレビ視聴率も、どんなヒット番組でさえ、いまは20%を超える数字を取ることは稀になりました。ましてや、スポーツ番組が20%を超えるのは、先の北京五輪でも珍しいほどのものです。観客動員数も、Jリーグの過去最高レベルとなった昨年の平均動員数と比べても、約3倍近くもの実績を、昨日も残しているのです。4万人というある意味でノルマとも言える規模でも、Jリーグ平均からすると倍の数値です。日常的に地域に密着して活動するJリーグと、日本代表の試合を一緒にすることは無理があるのですが、ある種の比較論で示すならば、この比較がわかりやすいと思い、比較してみました。 観客動員規模で約15,000人。テレビ視聴率で約5%。この差をどのように考えるか、ということが、今後の国際親善試合の観客動員や運営に問われる課題である気がします。そして、その差の原因は、日本代表の人気、という側面ではなく、興行価値というか、その試合の持つ価値が、本物の価値観でファンに伝わるかどうか、という点に絞られるように考えるのです。強化という視点からは、仮想○○○と、次の公式戦での対戦相手を想定したテストマッチにする場合もあります。また、スケジュールの都合で、特定の国しか招聘できない場合もあります。しかし、目の肥えたファンにとっては、日本とスペインやドイツ、そしてブラジルやアルゼンチンとの戦いが見たい、と思うのではないでしょうか。国際親善試合だからこそ、ドリームマッチ的な対戦が、時には組まれるような機会があるべきだとも、素人の私からは感じられます。強化としては意味のない試合かもしれません。しかし、ファンが待ち望む対戦があるかもしれないのです。JFAの屋台骨を支える事業としての日本代表の国際試合であるならば、事業面から、ファンの満足度という視点からのマッチメイクが、年に1-2回はあっても良いのではないですか?。 もう10年以上も前になりますが、某外資系スポーツメーカーに在職中に、大阪・長居スタジアムで、ブラジル代表との国際試合のイベントに参加する機会がありました。本社の外人のわがままで、多くの関係者にご迷惑を掛けてしまった苦い思い出のあるイベントだったのですが、観客も満員に近い状態にまで入りましたし、私自身としては、アルバイトで関わったトヨタカップでの鳥肌が立った思いと同じような興奮を感じました。ほぼ最強の布陣に近い形で参加したブラジルを見て、多くの観客は満足してくれたのではないかと、個人的には自負しています。試合では、日本は負けましたが、勝負以上に選手たちが何かを得てくれればいい、とも考えていました。親善試合ですから、勝ち負けには、本来価値はありません。しかし、勝負の世界は、例え親善試合でも、その時の戦った感覚は、体が覚えているものだと聞きます。世界一流から得るものは、やっぱり一流の記憶として選手には残るように思えます。ぜひ、W杯レベルで、ノンタイトルでありながらお互いの威信を掛けたような真剣勝負を、JFAにはマッチメイクして欲しい、と切に願います。そして、日本代表の動員力は決して衰えていない、と私は個人的に感じています。
posted by umekichihouse |06:58 |
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