2008年10月19日

ディズニーランドに学ぶイベントマネジメントの極意

1983年に開園し、今年25周年を迎えている東京ディズニーランド。開園当時の入場者は、年間約1,000万人でしたが、2006年には、過去最高の2,581万人を記録。今年も、4月から9月までの半年間で、過去最高記録を更新しています。25年の間に、前年の実績を割ることもしばしばでしたが、2001年のディズニーシーの開園以降は、2,000万人台を突破するなど、不況にも影響されることなく、着実に多くの入場者を獲得している秘訣はどこにあるのか?。去る、14日、テレビ東京系列で放送中のドキュメンタリー番組、「ガイアの夜明け」で、社員研修の現場などの裏側に、初めてテレビカメラが入り、その一端が紹介されていました。その中には、エンタテイメントビジネス以外の、すべてのイベントビジネスに共通して学ぶべき極意が、いくつか紹介されていました。今回は、その極意とは何なのかを検証しながら、スポーツイベントのマネジメントへの生かし方について探ってみたいと思います。

過去にNBAの仕事に従事していた時、NBAのコミッショナー、デビット・スターン氏は、「最大のライバルは、ディズニーだ」、と言っていました。NBAとディズニーが何処につながりがあるのか、最初は分かりませんでした。しかし、客の目線で考えていくと、その趣旨は明解です。今日の夜はショーを見に行こうか?、それとも映画か?。週末はバスケットが見たいね・・・・、とか。ディズニーは、多くのキャラクターで、幅広い客層を魅了する力がありました。単なるマーチャンダイジングの世界の話しだけではなく、それは、ショーや映画など、あらゆるエンタテイメントに広がっています。その人気を支えているのは、リピーターという膨大な数の固定客層だったのです。スターン氏は、ディズニーの表面的な魅力だけではなく、彼らの経営戦略そのものに、ビジネスの競合たる脅威を感じていたのでしょう。リピーターを獲得するための魅力とは、どのように作られるものなのか?。

毎年100億円から最大で200億円以上もの投資を行い、常にその新しい姿を見せ続けているディズニーランド。年間2,500万人以上の入場者を獲得するためには、当然のことながら、その大半がリピーターであることが容易に想像できます。イベントビジネスで最も重要で、最も課題となるのは、リピーターの獲得です。プロスポーツビジネスでは、年間何十試合も行われる中で、1試合当り数千人のアリーナ規模から、数万人のスタジアム規模まで、その数は大きく異なりますが、リピーター、つまり固定ファンを獲得することが至上命題であることに変わりはありません。そして、ほとんどのプロ球団は、この点に最大の悩みを抱えつつ、経営努力を注いでいます。ディズニーランドは、何をして、リピーターの獲得に務めているのか?。

第1のポイントは、一貫した経営の方向性にあると思います。

◇常に変化させること
◇常に新しいものを取り入れていくこと

来場するたびに新しい感動を客に与えていく努力こそ、ディズニーランドの最大の経営努力であるように思います。それは、如何にリピーターの満足度を維持し続けるか、ということでもあります。確かに、1983年の開園当時から、アトラクションの数だけを見ても、32から41へと拡大しています。年間100億から200億円という投資の大半は、ここに集約されているのだと思います。しかし、単なるハード面を変えていくことだけが、リピーターを満足させる極意ではありません。もしそれがすべてなのであったら、他の消えていった数多くのテーマパークは、その衰退を見ることはなかったでしょう。ディズニーランドでは、客の目に出来るものは、常に変化を加える対象と見ているようです。売店で売られているグッズから、華やかなパレードの演出まで、客が入園してから退園するまでの、すべての動線上に、その注意は払われています。そして、何よりも、2万人というスタッフのひとりひとりも、その対象となっているのです。それは、ユニフォームなどの外面的な要素から、接客の意識などの内面的なものにまで及ぶそうです。
そこで、第2のポイントです。それは、接客術という、ディズニーランド独自のホスピタリティノウハウにあります。
ディズニーランドでは、スタッフの教育や育成に、膨大な時間とコストを掛けていると言われています。客に接するスタッフたちこそ、ディズニーランドの魅力を一番に伝えるディズニーランド独自のソフトであるのかもしれません。ディズニーランドでは、スタッフをキャストと呼び、言葉通り、役者としての役割を担わせています。客を夢の世界へ案内するアンバサダーとして演じさせるのです。新入社員として入ったスタッフには、最初に「Tips on Magic(魔法のコツ)」というマニュアルが渡されますが、この中には、接客術を向上させ、客を感動させるための、所謂“コツ”が書かれてあるそうです。

・魔法をつくるのはあなた
・キャストもショーの一部
・すべてのゲストがVIP   などなど・・・。

この“コツ”を、実践の場で自分なりに接客術として使えるようにするために、多くの時間をスタッフ同士のシュミレーションに費やします。それは、「親しみやすいおもてなし」が身に付くまで行われるそうです。「親しみやすいおもてなし」とは、笑顔、アイコンタクト、そして挨拶、ということです。如何にも簡単なことのように思えますが、どんな接客商売にでもありますよね。しかし、ディズニーランドには、この先があります。「客を笑顔にする」。どんなに言葉を掛けてもらっても、また、親切にされても、本心からスタッフに対して笑顔を見せる場面は、そうそうあるものではありません。客が笑顔になる、ということは、本心から楽しんでいる、本心からもてなしを感じていなければ、そんなに簡単にそうはなりません。本当に楽しいからこそ、客は笑顔になるのです。その笑顔を、ディズニーランドは、スタッフたち、キャストたちが作り出しているのです。

東京ディズニーランドでは、今年の4月から、新しい取組みを始めました。ファイブスターカード、という制度です。これは、社員が園内を巡回視察しながら、接客に優れたスタッフをチェックし、その都度カードを渡していくものだそうです。5枚集めると特典がもらえるそうです。子供染みた遊びのようですが、スタッフのモチベーションを上げていくために、大いに役立っている、ということです。カードには、5つのチェックポイントが記載されています。

◇相手の立場に立った行動(Service)
◇息の合ったチームワーク(Teamwork)
◇模範的な態度(Attitude)
◇親切丁寧なご案内(Recovery)
◇素晴らしいショーマンシップ(Showmanship)

5番目のショーマンシップはディズニーランドらしいですが、その他の4項目は、どんなイベントにおいても、接客の基本だと思います。ただ黙々と客に対応しているだけでも、何ら問題は起きないでしょう。ただし、その客は、次に来てくれるために、何か感じてもらえたでしょうか?。ディズニーランドだって、数々のアトラクションは楽しいに決まっています。それに乗ったり、入るために、何時間も待つこともあります。それでも客はガマンして待つのですから、各アトラクションそれぞれの持つ魅力は素晴らしいものがあるのです。しかし、待つ間にも、スタッフたちは、常に客の事を気にかけています。待ち時間が長くなって客のストレスが高い状態では、どんなに楽しいアトラクションも、その魅力は半減してしまいます。そのストレスを取り除くのも、スタッフたちのホスピタリティなのです。ゴミが落ちている通路を歩くのは嫌です。汚いトイレは入りたくもありません。食器の片づけが遅いレストランには、変に拒絶感を感じてしまいます。そんなことは・・・、と思いがちですが、テーマパークならずとも、イベント会場ではよくあることです。しかし、そんなイベントやテーマパークには、2度と行かないでしょう。極端な例ですが、客のストレスを最小限にすることが、客を楽しませる近道であり、ショーでもスポーツでも、その中身をより楽しくさせてくれるエッセンスとなるのです。演出や装飾だけをイベントソフトと考えがちですが、人間による接客こそ、重要なイベントソフトであることが、このことからもよく分かります。
個人的な経験で恐縮ですが、私もスポーツイベントや国際大会の運営に関る中で、さまざまな失敗を経験してきました。その多くは、接客に関するものでした。特に、スタッフの教育や指導に関して、もっと事前にやっておくべきことを疎かにしていたり、的確な指導が出来ていなかったり、「何故そうするのか」という行動の意味をキチンと教えていなかったり、紙に書かれたマニュアルの中身だけでは伝わらないことを、フェイス・トゥー・フェイスで教える努力を怠っていたことを、大いに反省したものです。運営する身内の側から見ると、仕方がない、と割り切れても、客の立場からしたら簡単に割り切れないものもあります。客の立場に立ったホスピタリティとはどんなことなのか、客の満足とは何なのか、ということを、具体的な考えられる力が、イベントをマネジメントする立場の人たちには不可欠であることを、過去の経験から学びました。「親しみやすいおもてなし」、笑顔、アイコンタクト、そして挨拶。NBAの日本公式戦の運営をしている中で、入場口で「いらっしゃいませ」とすべての観客に声を掛けることをやりました。出来るだけ笑顔で・・・。アメリカチックでないかもしれませんが、ワクワクしながら会場に訪れた観客に対して、何かしらの感謝の気持ちを伝えたかったのです。売店での売り子も同じです。気さくに客と会話することで、ちょっとしたコミュニケーションが生まれます。少しだけは売上が違うかもしれません。トイレの場所を聞かれて、ただ指を指して教えてあげるだけではダメですよね。席が見つからずに困っている客がいたら、「どうしましたか?」と声を掛けてあげるくらい、誰でも出来ます。ほんのちょっとしたことで、客はホッとするものです。自分が客の立場に立ったらどうか。常に、客の目線で物事を考えることこそ、リピーター獲得の第一歩であるように思います。

東京ディズニーランドは、この10月1日に、ショービジネスへの参入を果たしました。常設劇場のシルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京を約100億円で建設し、10年以上の契約によって、世界最高のサーカスショーのロングラン公演が始まりました。総プロジェクト費、140億円。70人のパフォーマーと、80人のスタッフが来日しています。このプロジェクトのキーポイントも、リピーターの獲得です。東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドが取った秘策は、3枚組みのポストカードタイプのものを、客が退場する際に手渡しで配布することでした。公演が終わって客が帰る時、彼らの感動は最高潮に達しています。「誰かにこの感動を伝えたい、話したい」。それを、配布したポストカードによって、回りの人たちに伝えてもらい、友達や家族を連れて、また来て貰おう、という考えです。ポストカードを貰った人たちは、口々に言っていました。「プレゼントにします」。「友達を誘う時に見せてあげます」。「お土産になります」。言葉で感動を伝えてもらい、そしてまた誰かを誘って見に来てもらうための、単なるツールなのですが、その3枚のポストカードが、今度は3人の客になり、6人の客になるかもしれません。来場した客を媒体にして、リピーターを獲得していくと供に、新規の客も開拓していく。ちょっとしたことですが、良いヒントになるかもしれません。

ポストカードを配布するスタッフたちは、笑顔満面でこう言っていました。「ありがとうございました」。

posted by umekichihouse |06:34 | 日頃のあれこれ | コメント(1) | トラックバック(0)
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 こんにちは。

 初めてコメントさせていただきます。ある方の紹介で今さんのブログを知ることになり、今日拝読させていただきました。

 今回、書かれていることはすべてのビジネスに通じるなということを一番に感じました。私は今、ルート営業を主に行っておりますが、通り一遍等の営業ではお客様は満足せず、リピートや新規のご注文をいただくことはできなくなっております。

 私自身の営業活動を見直す、工夫する意味でも大変、参考になりました。明日から実行に移したいと思います。

 過去のブログや、これからのブログも楽しみしております。

posted by タムラノビッチ | 2008-10-19 18:49

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