2008年10月18日
「F1日本GP、運営面での失態からの威信回復」その3 ~他にもある観客不在のイベント運営
今回は、F1日本グランプリの話題からは反れますが、大規模イベントでの観客対応のまずさが引き起こした運営失態の事例を、番外編として取り上げます。 問題のイベントは、2000年6月に、2年後のワールドカップ開催を控えて杮落としを迎えた、宮城スタジアムでのキリンカップサッカー2000です。 宮城県利府町に建設された宮城スタジアム。観客席約43,000席を誇る東北最大のスタジアムです。しかし、立地条件の悪さも、ピカ一でした。仙台市内の地下鉄・泉中央駅から徒歩で僅か4分の位置にある仙台スタジアム(現在は、ユアテックスタジアム仙台)とは、雲泥の差なのです。客席数こそ及びませんが、観客の側から見たら、アクセスの要因は、イベント動員にとっても非常に重要なファクターであり、宮城スタジアムの建設が、単なる箱物行政と捉えられても仕方ありません。ワールドカップ後の利用状況を見ても、それは一目瞭然である気がします。 仙台駅から、スムーズに走っても車で30分。イベント開催時には、渋滞もあり、軽く1時間を越えてしまいます。仙台市内からのチームの輸送バスなどの関係車輌の通行は優先されたでしょうから、一般観客の車は、更に渋滞に悩まされること必死です。更に、仙台駅からの有料送迎バスも運行され、渋滞規模に拍車を掛けました。ちなみに、仙台駅からのバス運賃は、なんと往復2,000円とのことでした。また、駐車場も、普段は広いスペースに見えても、観客席数に対して、その駐車スペースの数は、約2割弱。車がなくては生活できない地方都市の環境の中では、あまりにも少なすぎます。臨時駐車場もあるにはありましたが、住宅地を30分以上も掛けて歩いて来なければならず、前回のF1ではないが、雨の場合の悲惨さを考えると、客に来るな!、と言っているようなものです。 では、公共交通機関というと、JRの最寄の駅である利府駅や岩切駅からは、徒歩でなんと1時間。一時的に客が集中すれば、歩道だけでも混雑するでしょうから、その時間は更に延びるでしょう。どんなことをしても、1時間前後の時間を要してスタジアムに向かわなければならない最悪の立地の中で、宮城スタジアムの杮落とし、キリンカップサッカー2000は行われた、という訳です。 人口約5万人の町に、その数と同じだけの観客が押し寄せてくる、という状況の中で、地域住民は、主催者側からは何ら対応の説明も協力の要請もなく、一部の人たちは、独自に交通アクセスの状況などに関して調査したようです。そして、上記で述べたような実態が明らかになると、地域の混乱や余計な事件や事故の発生を避けるために、“鎖国”措置まで持ち出されたそうです。更に、その決意は、インターネットを通じても発信されました。スタジアムを間近に控える地域住民としては、まさに苦渋の決断だったことでしょう。人も入れず、車も入れない。意外なことでしたが、このお願いに、多くのサッカーファンは、耳を傾けてくれたそうです。町内会では、当然“鎖国対策”は本意ではなかったのでしょう。町内会では、少しでも対策を講じるべく、やって来るであろうサッカーファンに対して、アクセス情報や近隣の商店などの情報を、インターネットを利用して流していったとのことです。本来であれば、イベント主催者や宮城県などの施設管理者がやるべきことです。杮落としとは言え、施設の運営計画を全く考えていないハード志向の行政と、現場で苦汁を舐めている県民との間の溝に、地域行政の浅はかさを垣間見たように感じました。ちなみに、この当時の宮城県知事は、あの浅野氏です。 スポーツイベントの開催では、開催会場そのものの施設や設備面の内容に力点が置かれがちですが、アクセスや周辺のホテル、商店などの生活環境も、重要な検証課題となります。どんなに素晴らしい試合会場であっても、宿泊するに適したホテルが、少なくても車で20分前後の圏内になくては、イベント全体の運営に支障が出ますし、真剣勝負の場であればあるほど、選手やチームのパフォーマンスに影響を及ぼしてしまいます。アスリートの最高のパフォーマンスを引き出すことも、スポーツイベントや大会の運営では重要なポイントとなります。部屋が狭くて、しかも食事もまずいようなホテルに宿泊して、ベストを期待する方が間違いです。子供を指導されている先生方からは、「甘えるな!」とお叱りを受けそうですが、選手やチームのパフォーマンスを引き出すことは、イベントや大会の商業的価値を上げるためにやるのである、ということを知って欲しいと思います。甘やかしているのではなく、最低限のイベントサービスという業務としてやることなのです。つまり、そうした環境が整わない立地環境では、イベントの価値さえも落としかねない、ということになります。また、それに対応した運営計画も、輸送計画を含めて綿密に練られなければなりません。特に、会場近隣の住民対策は、事前に調査すべき事項の一つとなるのです。 キリンカップサッカーが終わり、観客が帰った後、近隣の住民たちは、黙々とゴミを片付けたそうです。そして、それまでにも増して、宮城スタジアムに対する怒りがこみ上げた、と、当時のあるブログには書かれていました。世界最高峰の試合が行われた宮城スタジアム。しかし、地域住民からは愛されることもなく、ただひっそりとその存在だけを残している宮城スタジアム。ハードは作っても、その後のソフトをどのように充実させていくのかが大事ははずですが、その観点を見過ごしてしまった宮城県の反省の成果は、ワールドカップが終わって6年以上が経過しても、何も見えて来ていないように思えます。 運営面での具体的な失態内容については書きませんでしたが、F1の事例と比べてみれば、自ずと何が起こったかは想像するに容易いはずです。観客の目線に立ったイベント運営は、一律では図り難い難しいものなのです。
posted by umekichihouse |06:58 |
イベントオペレーション |
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