2008年10月17日
「F1日本GP、運営面での失態からの威信回復」その2 ~“カイゼン”の本領発揮
2007年F1日本グランプリ。最悪の天候と、最悪の運営がもたらした結末は、トヨタ本社をも動かし、世界に冠たる“カイゼン”を旗印に多くの改革を成し遂げてきたトヨタの本領が、ついに発揮される時が来ました。そして、2008年3月に富士スピードウェイ(富士SW)が行った今年の開催概要発表の記者会見で示された前年の問題点は、下記の9項目でした。 ◇不十分な雨天対策 ◇路面の不整備 ◇誘導員の配置不足、お客様案内の不備 ◇不十分な情報発信 ◇仮設トイレや照明設備の不足 ◇バスの誘導・運用の不備 ◇場外指定駐車場の不整備 ◇トイレでの長時間待ち ◇売店が少なく料金が高い・・・・・。 その他にも問題点は細かくあったようですが、まずは、上記の課題に対して対策が講じられることになりました。記者会見で、富士SWは、「2008年は、交通アクセスと観戦環境を整えることを基本方針とし、ご来場していただく皆様が笑顔でお帰りいただけるようにしていきます」、と述べています。まさに、1年遅い弁明でした。 トヨタは、F1事業部を事業本部に格上げし、更にその責任者に、数々の社内改革の陣頭指揮をとってきた高瀬氏を起用。いよいよ、トヨタお得意の“カイゼン”が具体化していきます。 まず、決勝日の観客数を14万人から3万人減らし、11万人としました。フリー走行から決勝までの3日間で、チケット発券数は22万人分となります。全体の運営体制が賄える規模を、安全な運営を前提とした算出した数値でしょう。そして、見えない席として問題となった第1コーナー付近のスタンド席は、設計ミスを認めた上で、再度設計をし直し、しかも、開催前には、社員総出で、全スタンド席からの検証を行ったそうです。 また、最大の課題であった観客の輸送に関しては、駐車場のオペレーションを再検証しても、最大10時間以上もかかる出庫状況を鑑みて、今年も、「チケット&ライド方式」は継続しています。ただし、バスの運行システムを、シャトル方式から全車留置き方式に変え、バスの運行が一方通行になるようにしました。つまり、特に帰りの際には、バスの到着を待つことなく、待機しているバスに乗り込むことが出来、あまり渋滞せずにバスを運行できることになります。雨天時にも雨避け場所になるため、悪天候時の問題も回避できることになりました。しかし、この対策のために、用意するバスは、400台増しの約1,600台。更にツアー専用バスも850台も準備されたとのことです。いくらトヨタでも、このバスの数は凄すぎます。流石というか、何というか・・・!。 また、観客の休憩や雨天時の雨避け場所として、大型テントも4つ常設され、また、さまざまな設置可能な場所にも小型テントが設置されました。晴天時には日避けとなるため、天候に左右されず、快適な観戦環境作りのひとつであると言えます。陥没した道路の舗装も万全に行い、一部は道幅を拡張するなどの改良も加えられました。 運営面で最大のポイントであるスタッフの人員配置に関しては、3,000人から5,000人にスタッフ数を増やし、更に、情報の管理を徹底して、観客の誘導に関する対応をスムーズに行えるような体制作りに主眼が置かれたようです。もちろん、連絡体制も徹底されていたことは言うまでもありません。 こうして迎えた今年のF1日本グランプリ。3日間とも天候にも恵まれ、時には富士山の雄姿も垣間見せるなど、レース内容もさることながら、運営体制のおおむね順調に機能し、素晴らしい結果で締めくくることができたようです。おかしいのは、あまりにも素晴らしい運営だったために、来年の鈴鹿での開催に不安を投げかけるファンもいるようですから、本当に観客を第一に考えたイベントの成果というものは、恐ろしくもあり、また、楽しくもあり、と言ったところではないでしょうか。事前の計画立案からの運営上の視点の置き方ひとつで、ここまで変わるものなのです。 ただし、F1に限らず、スポーツイベントで常に注意すべき運営上の課題が、昨年浮き彫りになったことを見過ごすことは出来ません。今後の課題としても、また、良いケーススタディとしても、記憶しておきたい事柄として、下記に2つの出来事を述べておきたいと思います。 一つ目は、ボランティアスタッフのことです。悪天候の中、時間が経過するごとに、待たされる観客の苛立ちは最高潮に達します。その中で、必死に観客対応していたのは、多くのボランティアスタッフたちでした。彼らの多くは、その状況下で如何に対応すべきかということを、きちんと指導されていなかったようで、しかも、適時正確な指示が得られる連絡体制も取られていなかったようです。非常に厳しい状況に置かれた彼らの心中を察すると、第三者の私でも心苦しい思いになります。気になったのは、一部のスタッフたちが、スタッフウェアを脱ぎ捨てて、職場を放棄してしまったことです。かなり追い詰められていたのは重々分かります。ただし、この行為には、賛否両論あると思います。もちろん、主催者の管理や指導の責任の方が重いでしょう。しかし、現場で、観客の目の前で責任放棄してしまうのは、ボランティアと言えども、少し考えさせられる行為だと、少なからず思いました。 二つ目は、応援フラッグや横断幕の掲出を禁止したことに関する問題です。主催者は、一切の応援フラッグや横断幕の持込みを禁止していました。しかし、徹底した告知が行えずに、一部ファンからは、鈴鹿で禁止されていなかった事情もあり、多少のトラブルは引き起こしたようですが、問題なのは、この禁止事項を、トヨタチームやテレビ放送していたフジテレビが平気で破ってしまっていたことです。フジテレビは冠協賛スポンサーでもありますが、こうした行為は、観客不在というよりは、観客無視の行為ですね。今年の状況がどうだったのか、知りたいものです。
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posted by umekichihouse |06:51 |
イベントオペレーション |
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