2008年10月10日
JBLの新星「リンク栃木プレックス」の開幕戦テレビ中継より、あれこれ・・・③
JBL新規参入チームのリンク栃木ブレックスの、開幕戦テレビ中継から気付いた点を、最後にもうひとつだけフォーカスしたいと思います。ゲームプレゼンテーション、およびゲームエンタテイメントについてです。 ゲームプレゼンテーションとは、試合開始前から試合終了後まで、試合全体のイメージをどのように作り上げ、どのようにそれらを観客に見せていくか、ということを計画することです。試合中のパフォーマンスや音楽などによる演出とは異なり、試合コートおよびその周辺のデザイン、設営計画から、選手たちの入場や紹介に至る時系列での試合前の進行の構成、そして試合終了後の選手の退場まで、試合全体のイメージを決定付ける要素は、すべてその対象となります。 ゲームプレゼンテーションの要素として、最も重要なのは、選手たちの意識です。試合コートに入場する姿から、試合終了後に試合コートから立ち去る姿まで、ファンの目は選手たちに注がれます。まさに、彼らの一挙手一投足が見られ続けるわけです。だからこそ、選手には、「見られている」という意識を強く持って、自分自身をアピールする力がなければ、試合全体のイメージも作っていけません。プロ意識と言ってしまえば、企業チームの選手たちはどうなるんだ、ということになりますが、観客から入場料を取って試合を行っている限り、それは同じ立場で考えるべきでしょう。しかし、やはり、企業チームの選手たちには、そこまでの意識はありません。プレーは見せられても、コート上のすべてを見せる力量と意識は、ほとんどない、と言っていいでしょう。参考になるのは、やはりNBAの選手たちです。試合コートに入場する前から、選手たちは自分自身を鼓舞しながら試合に入るためのモチベーションを上げ、選手一団となって走ってコートに入ります。そして直ぐにウォームアップを開始します。非常にスピーディな流れで、音楽演出ともマッチして、一気にアリーナ内の緊張感を高めています。選手の一つ一つの動作が、アリーナの中の雰囲気まで作ってしまうのです。JBLの選手なんかでも恥ずかしいのかどうか分かりませんが、その辺の意識から変えていくと、観客席からの選手たちの見え方は、ガラリと変わっていく気がします。 リンク栃木の選手たちは、私が見た中では、選手個々の意識は高いように感じました。移籍した選手たちも何人かいるため、まだ慣れていないのかもしれませんが、全員が一丸となって強い意識が持てるようになれば、選手たちがコートに入るだけで、チームとしての大きなメッセージになっていくと思います。残念なのは、試合後のインタビューの後に、コート上で、ストレッチングを選手全員が揃って始めたことです。昨年、レラカムイ北海道が参入して間もない頃、球団の代表の方がこの姿を見てビックリした、という話しが報道にありました。私も同意見です。選手たちは、プレーしている姿からファンたちに夢を与えている存在でもあるのです。ストレッチングは、選手たちが自分のために行うもので、そのような日常的な姿を試合直後の緊張感の中で見せるべきではありません。選手がコートに残っていることで、なかなか観客が退場せず、運営全体の進行を遅らせてしまうデメリットもあります。もちろん、更衣室や控室が狭かったりする場合もあるでしょうが、こうした「アマチュア」意識が抜けないなら、プロ選手としての意識レベルが低すぎる、と言っても過言ではないでしょう。JBLの選手には失礼ですが、bjリーグの選手たちの方が、そうした意識は高いように感じます。「見せる」ということは、「見られている」ということでもあり、ちょっとした意識の持ち方の違いで、選手たちの見える姿はガラリと変わることを、チームもそうですが、リーグ全体で指導していくべき課題だと思います。薄笑いを浮かべながら、だらだらと歩きながら入場してくる選手に対して、カッコいいと思いますか?。 また、選手たちの意識の点で言うと、会場内のファンに対するサービス態度も大切です。「見られている」という意識の中で、ファンに対しては常に感謝の気持ちを持つべきです。意識の中にきちんとあれば、それは態度に必ず出ます。リンク栃木の選手たちは、試合終了後、コートサイド最前列の一番高い価格の座席の観客たちとハイタッチしながらコートを一周していました。チームからの指示があってのことだとは思いますが、こうした態度が、自然に出るようになれば、ファンはますますチームを好きになるでしょうね。JBLでも選手と握手が出来る、とかいうアトラクションを試合後なんかにやっているケースを見たことがありますが、そんな作られたものではなく、選手が自然にファンに近づいていく姿が日常的になることが、プロスポーツ興行のようなファンビジネスには大切なんだと思います。ただし、試合後コート中央で、チーム全員が観客に対して挨拶する場面がありましたが、ほとんどの選手は、ドリンクを飲んだりタオルをぶらぶらさせたりで、少しみっともなかったように見えました。本当に感謝の気持ちを込めるつもりなら、もっとキチンとやった方がいい。・・・でなければ、やらない方がファンの夢を壊さずに済みます。 一方、ゲームプレゼンテーションの要素で、上記内容の対極にある要素であるのが、試合コートの設営設計です。選手たちが主役ならば、彼らの舞台はコートなのですから、コートがキチンと、観戦する観客のために、そして運営効率を的確に捉えた構成になっていなければなりません。 bjリーグでは、スポーツコートというプラスチック製のパネルを組み合わせた仮設コート素材を使用していますが、カラーリングが自由に表現できるため、チームカラーを旨く表現しているところも多いですね。bjリーグのエンタテイメント性を重視したゲームプレゼンテーションが、このことからもよく分かります。JBLでは、FIBAルールに準拠していることもあり、ウッドフロアの使用が原則です。つまり、専用のフロアパネルを仮設するか、既存のフロアを使用するか、なのです。体育館やアリーナによっては、前回も述べたように、複数のスポーツのコートラインがペイントされているため、それを消すためのマスキングテープの跡が、少し汚らしく見えたりすることがあります。また、リンク栃木の開幕戦でも使用されていましたが、カラーコートというモルテン社などが出しているコート周辺に特殊素材のシートを貼り込むことによって、コートサイズを明確に視認できるようにすることも、試合コートを際立つように見せる効果としては有効です。コスト上の問題かもしれませんが、フリースローレーンまでは施されていなかったのは残念ですが・・・。また、2mと規定されているコートの外周エリアのすべてに、カラーコートが張り込まれていなかったのも残念です。コストが掛かりますし、何回も使い回し出来ませんから、入場収入が増えて、興行原価に余裕が出来ればぜひやってもらいたいですね。12月にオールスターゲームがありますが、その時は、違った姿で、同じ会場を見ることが出来るかもしれません。ちなみに、フリースローレーンを含めて、2mのコート外周のすべてにカラーコートを施すと、定価で約120万円くらいになります。滑らない特殊素材でもあるので、結構高い代物なのです。 また、コート設営設計で、一番気を使うのが、広告看板の配置位置です。スポンサー対策という観点もありますが、コート周辺に置かれる広告看板は、コートを取り囲むように配置されるため、コートそのものに緊張感を感じさせる効果を生みます。囲まれている状態は、何か檻の中の動物のようですが、広告看板は、最近ではバレーボールの国際大会で使用されているLED式の広告看板も登場してきているように、アリーナ全体の演出にも一役買う機能も持つようになって来ています。ひとつひとつの配置がいい加減だと、コート全体に整然としたイメージを持たせることは出来ません。JBLでは、メインのテレビカメラが置かれている側のサイドライン上に、チームスポンサーの広告看板を、そして、テレビカメラに映る側、つまりチームベンチ側がリーグスポンサーの広告看板の配置位置になっているようです。前者をノンTVビジブルサイドと言い、後者をTVビジブルサイドと言います。当然、テレビに映る側の広告看板の価値が高いわけですが、JBLでは少し課題が残ります。Jリーグでは、サイドライン上はリーグスポンサー、ゴールライン上がチームスポンサーとなっていますが、リーグスポンサーからの協賛金は、配分金という形で全チームに配分されるため、チームスポンサーに対する価値観とリーグスポンサーに対する価値観は、明確に区分できている気がします。しかし、JBLの場合、プロ球団であっても、リーグからの配分金はないようです。よって、価値の高い位置にリーグスポンサーの広告看板を配置しても、チームとしては全く何の見返りもありません。それどころか、チームを支援してくれている45社ものスポンサーやサプライヤーに対して、テレビ放送上での広告露出効果という点では、ほとんど何も還元できないのです。リンク栃木の経営という視点でテレビ中継を見ていると、少し気になりました。まあ、何れにしても、コートサイドの広告看板は、その配置や利用方法によって、さまざまなゲームプレゼンテーション効果を生み出せる、ということです。 最後に、ゲームエンタテイメントについてですが、これは詳しく説明するまでもなく、試合の進行に沿って行われる、ゲームアナウンスや音楽、そしてダンスやチアなどのパフォーマンス、更に、観客が参加できるアトラクションなどの要素を示します。試合に付加するエンタテイメントとしての要素、ということです。しかし、これをやりすぎると、試合そのものがエンタテイメントショーに成り下がってしまう危険性があります。ゲームエンタテイメントは、タイミングとサジ加減が重要なのです。際立たせるのは、あくまでもゲームです。そして、それを応援する観客の気持ちを高揚させていくための効果装置でもあります。会場内で一番のゲームエンタテイメントは、なんと言っても、観客の声援なのです。観客の応援する気持ちが高ぶらなければ、スポーツ独特の興行価値は生み出せません。 リンク栃木のゲームエンタテイメントを見ていると、試合の流れに集中できる程良い演出が施されている気がしました。残念ながら、テレビ中継では、タイムアウトやハーフタイムの様子は分かりませんので、オンとオフのアクセントがどの程度メリハリあるものだったのかまでは分かりません。ただし、チームが劣勢に立たされている時の意識的な演出技術は、まだ慣れていない気はしましたが・・・。そして、ぜひオリジナリティあるリンク栃木ブレックス独自のゲームエンタテイメントスタイルを作り上げて欲しいと思います。 以前、NBAの仕事に携わっていた時、よく聞かれたのは、NBAの試合で流されている曲のタイトルを教えてください、というものでした。いまでは、専門のCDなども発売されていますが、結構昔から同じような曲が多用されていますね。しかし、bjリーグでも最近は、チーム毎にオリジナリティある演出スタイルを開発しているように、プロ球団に限らず、そろそろ独自性のあるインドアスポーツの演出技術を考えてもいいのではないか、と個人的には思います。どこの会場でも同じような音楽や、ゲームアナウンスを聞いている気がします。メンバーは違っても、チアやダンスパフォーマンスも、レベルの差こそあれ、それほどオリジナリティある演技を作り上げている気はしません。真似をすることは一番の教科書であることは間違いありませんが、真似だけでは何の進歩もありませんよね。 ここまで、リンク栃木ブレックスの開幕戦のテレビ中継からだけで、多くのことに気付かせてもらいました。やはり、現場から得られる情報は、良くも悪くも、いろいろと参考になる貴重なものばかりです。反面、日本の体育館施設の持つイベント興行に対する貧弱さ、という側面も浮き彫りにしてみました。施設の充実が、プロとかアマとかを問わず、日本におけるスポーツの発展や進歩にとって重要なポイントであることも、改めて感じさせられました。 2点の写真を添付します。これは、地方都市での標準的な規模におけるスポーツアリーナ施設の利用計画イメージです。私の個人的な考えに基づく仮想施設のイメージですが・・・。ちなみに、6,700席レベルです。![]()
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posted by umekichihouse |04:33 |
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