2008年10月02日

「ネーミングライツの功罪」その3 ~スポンサーシップとの違いは?

最近、ネーミングライツという言葉が、メディア報道の中にも見受けられるようになりました。スポーツ施設や文化施設への制度導入に関してではありません。プロスポーツ球団やスポーツリーグがネーミングライツを導入する、または導入した、というものです。

高校時代、日本中のバスケットボールファンを沸かせ、日本人初のNBAプレイヤーとして公式戦のコートに立った田臥選手。その田臥選手が入団した日本バスケットボールリーグ、JBLの新加入チーム「栃木ブレックス」は、去る3月28日に、従来からチームを支援していたリンク・アンド・モチベーション社が、同チームとネーミングライツ契約を締結したと発表しました。新チーム名は、「リンク栃木ブレックス」。以前、プロスポーツ球団がネーミングライツの導入を検討しているというニュースが、プロ野球を賑わした近鉄球団の身売り騒動時にありました。その時は実現には至らなかったようですが、今回のJBLの栃木ブレックスのようなケースも含めて、果たしてネーミングラツと呼べるものなのかどうか、私は少し疑問に思います。リンク社がスポンサードして球団の経営が安定に向かうことは、非常に喜ばしいことなので、とやかく言うことではありません。課題としたいのは、本来のネーミングライツという制度が持つ利点が、少し安易に捉えられてしまう危惧があることです。つまり、スポンサーシップとの違いを明確にして扱わなければ、ネーミングライツは、単なる広告手段のひとつとしてでしか考えられなくなる、ということです。リンク社が球団の大株主である場合や、10年もしくはそれ以上の長期に渡る契約ならば、ネーミングライツ本来の概念に即した効果が、お互いに享受できる環境が築けるかもしれません。しかし、3年という契約期間で、果たしてそこまでの成果が、お互いに得られるものなのか、私は疑問です。もし、4年目に、別の企業名がチーム名に付されるとしたら、ファンの思いはどうなるのでしょうか?。

スポーツイベントにおける冠協賛、つまりタイトルスポンサーシップは、もはや当たり前のように行われています。協賛企業が、イベントや大会の名称の一部として、企業やブランド名をそこに付すことにより、公に企業名やブランド名をPRする機会を得るものです。イベントの名称や大会の名称は、それ自体が公式な名称として扱われることで、イベントや大会の認知度やレベルが高ければ高いほど、その効果は増大します。もちろん、世界的規模のイベントならば、その効果はグローバルのものになっていきます。FIFAクラブワールドカップの前身であるトヨタカップなどは、その代表例でしょう。しかし、トヨタカップの場合は、10年以上もの長期に渡り大会を支援し続けてきたという特殊な事例であって、ほとんどの場合は、単発で終わるケースが多いように思われます。もちろん、トヨタカップのように、長い間、支援を続けているタイトルスポンサー企業は少なくはありません。しかし、全体を見渡せば、決して多いとはいえないでしょう。つまり、スポンサーにとっても、イベントや大会へのタイトルスポンサーシップは、広告やマーケティングという視点から、短期的なその対価や効率を考えればいいのです。そのスポーツ競技全体を支援するものでもなければ、スポーツ競技のパトロンになるわけでもありません。スポンサーが考えることは、その協賛活動によって得られる広告、またはマーケティング的な対価のみなのです。

同じように、球団経営と全く関わりのない第三者が、スポンサーの立場で、チームを広告媒体として企業名などを付す場合は、単なる広告媒体としての価値判断のみが、まずは働くように思います。もちろん、そこにはマーケティングに活用できるさまざまな利点もあるでしょう。しかし、そのどれもが、スポンサーの視点に立って考える広告やマーケティング上の価値判断でしかありません。つまり、球団経営とは全く異なる次元の判断です。そこから考えると、プロスポーツ球団とは言えども、その名称にスポンサー名を付す行為は、チームとしての価値や、球団全体としての価値を高める行為とは決して言えず、逆に、目先のお金で身を滅ぼす危険さえあるものだと思います。

プロ野球やJリーグの一部のチームが、ホームスタジアムのスタンド席の一部にスポンサー名を付ける、というニュースを目にしました。これも、報道ではネーミングライツという言葉が使われていますが、本来は、単なるスポンサーシップですよね。入場ゲートそれぞれにスポンサー名を付けているケースも同じです。ここまで来ると、ネーミングライツは、何でも有りの世界になってしまいます。言葉では確かに意味は通りますが、ネーミングライツという制度が持つ本来の意味や仕組みは、もっと深いところにあるような気がします。そこには、社会的責任とか、文化性とか、公共性のある意味合いがなければ、10年や20年というスパンでプロジェクト効果を考えたり、投資効果を考えたりする支援者は、無くなってしまうような危惧を抱きます。

ネーミングライツという言葉にも、スポンサーシップという言葉にも、明快な言葉で断言できるような意味合いはないでしょう。つまり、どちらも実行する人たちの意思によって、どのようにでも解釈できるのです。しかし、どちらも、安易に捉えられると、本来持つ効果性は、全く期待できないものになるかもしれません。その言葉を受け取る側が、それぞれの真意を読み取らず、より安易な方向へ物事を進めようとするかもしれないからです。

野球の独立リーグのひとつである北信越BCリーグは、BCリーグと名称を変更し、同時に、リーグのネーミングライツパートナーを募集すると発表していました。結果どうなったのかは情報がありませんが、単なるリーグスポンサーを探しているだけにしか思えないのですが・・・。名前を付けるからネーミングライツ、というただのカッコだけの言葉遊びであるならば、スポンサーは見つかるはずもないような気がします。あまりに安易だと思います。

posted by umekichihouse |06:27 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
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