2008年09月10日

「パラリンピックの魅力と現実」その2 ~そして理解しよう!

熱戦を展開する北京パラリンピック。残念なことに、NHK教育テレビの夜のハイライトでしか選手の活躍を見ることは出来ませんが、続々と届くメダル獲得のニュースは、本当に嬉しく感じます。北京パラリンピックは、20競技472種目で争われていますが、実は、この種目数は、前回のアテネ大会よりも、43種目も減っています。これは、パラリンピック独特の競技体制のよるもので、また、その影には、苦渋に満ちた考え方があるのです。

パラリンピックは、障害の種類やその程度によって、各競技ともクラス分けが行われています。男子陸上の100mなどは、13ものクラスに分けられているのです。100mスプリント競技に、13人のチャンピオンが存在する、ということです。スポーツ競技は、常に、戦う者たちは平等な条件の中で、個々の能力を発揮して、その勝敗を決するのが原則です。公平である、ということです。身体障害者の場合、障害の度合いもさまざまです。そして、障害の種類もさまざまです。一律に基準を作ることなんか、元々無理なことです。しかし、競技として成立させる以上、公平の原則は、絶対的に必要となります。そのために、多くの苦労が関係者の中にあるのは、理解できます。ただし、全く違う次元で、その方策が論じられているとしたら、そこに参加する競技者は、何か別の利害に翻弄される立場に立たされかねません。

種目が多いと、ひとつひとつのメダルの価値が下がる、ということは、パラリンピックで長年議論のテーマになってきたことのようです。2001年に、オリンピックとパラリンピックが、同じ組織委員会で運営されることが決定したことをキッカケに、パラリンピックの運営にも一役買うようになった国際オリンピック委員会(IOC)から国際パラリンピック委員会(IPC)が突きつけられた条件に対し、IPCは、クラス分けに合理性という判断を導入し始めたのです。IOCが求めた条件とは、「メダルの価値とは、競技力の質の高さである」、ということです。つまり、競技力の向上を大前提として、パラリンピックは、世界一を決する場のみの存在に、その開催趣旨を変貌させていくことになりました。

障害の程度や種類を細かく分類していくと、中には、出場選手が少なく、競技として成立しない種目も出てきます。だからと言って、競技力の低い選手を出場させては、左記のIOCの考えには合致しないものになります。そこで、出場選手の少ない種目を、他の種目と統合していったのです。その結果が、マイナス43種目です。しかし、柔道やレスリングのように、体重をコントロールすれば出場資格を得られる、という訳には行きません。必然的に、障害の度合いの低いクラスに再エントリーしなければ、出場機会すら得られなくなります。競技力の向上が、パラリンピックをより素晴らしいものに変えていくテーマだとしたら、現実に障害で苦しむ中で、スポーツに生きる術を見つけ、頑張っている選手たちは、パラリンピックの精神にすら適さない存在となるのでしょうか?。これは、オリンピックを開催しようとしている東京も、真剣に考えるべき問題だと思います。確かに、大きな国際総合競技大会を開催する上で、大会運営の効率や効果を考えることは必要な措置です。オリンピックも、参加規模11,500人を上限とすることをIOCも明言しています。しかし、パラリンピックを、メダルの価値や競技力のみで、その大会の価値を図るのは、大きな間違いだと思います。ちなみに、冬季大会は、前回のトリノから、102種目もの種目が削減されています。(276種目から174種目に変更)

パラリンピックには、身体障害者のスポーツ大会という側面から、まだまだ、大きな課題が残されています。ひとつは、ドーピング問題です。世界アンチドーピング機関(WADA)は、世界中の各国アンチドーピング機関はもちろんのこと、各国際連盟やその参加の各国競技団体に至るまで、厳格に禁止薬物を示し、その使用禁止を促しています。その措置を受けるのは、IPCも例外ではありません。しかし、身体に障害を持つパラリンピック選手たちは、治療行為として、時には禁止薬物やその成分が含有された薬物を使用しなければならないケースが多々あります。事実、パラリンピック期間中は、薬物治療が行えず、障害の様子の変化に苦しむ選手もいるとのことです。そこで、IPCでは、Therapeutic Use Exemption(TUE)(治療行為での使用の免除)という方策を導入しています。簡単に言うと、治療目的で、WADAのリストにある禁止薬物を使用しなければならない場合は、事前に指定の方法で申請すれば、免除対象となる、というものです。ただし、ケースバイケースの対処になるので、IPCは、北京パラリンピックに出場する選手に対して、TSUマネジメントに関する情報を流し、理解を求めているようです。時には生死に関わる問題も秘めていますので、パラリンピックが抱える特殊な課題と言えます。

また、義足や車椅子など、単なる運動補助に留まらない、競技力向上を目的とした機具の登場も、大きな課題を秘めています。なぜならば、これらの機具の開発のためには、多額の資金が必要となり、資金がない選手たちにとって、時には、機具の性能によって競技力の優劣に差が生じてしまうからです。経済的に豊かな身体障害者が、どれだけいるのでしょうか?。ほんの一握りの選手たちのみが、こうした恩恵に預かれる環境にあるならば、それは、より厳密なルール体系を構築しなければならないでしょう。身体障害者のための技術進歩が、こうした側面で弊害をもたらすのは、まさに矛盾の極みです。

その他にも、障害を偽装して競技に参加したことがばれたケースなど、モラルに反する問題なども生じています。健常者以上に公平さが求められるパラリンピックでありながら、そのことが、さまざまな弊害をもたらす課題も秘めていることに、パラリンピックという大会の運営に、独特の難しさがあることを学びました。

posted by umekichihouse |04:59 | オリンピック | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL: (表示は許可制となっています)
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/umekichihouse/tb_ping/51
コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」