2008年09月07日

「プロスポーツ球団の経営シュミレーション」その7 ~観客動員

観客動員は、プロスポーツ球団の経営方針や、ホームタウンとしての都市や地域の経済、文化、住民意識などの違いによって、その手法も、課題も、さまざまに想定されていきます。そこには、一切、“正解”というものはありません。極端に言えば、うまく行けばそれが正解になるのです。ホームタウンを知り尽くし、そこから得られるデータによって、誰に対して、どのような内容で、どのようなルートで売っていくか、ということを、さまざまな角度から検討していく必要があります。単に、チケットエージェンシーに委託して、PRや宣伝を行えば売れる、というものでもありません。また、特に重要なのは、年間に20数試合もの興行を、持続的に行わなければなりませんので、単発的な作業ではなく、年間を戸押して活動をしていかなければならない、ということです。

よって、マーケティングにも知識のある専任の営業スタッフを複数名、球団フロントに常勤させることが必要です。人件費やフロント運営コストを考えて、これら経費を出し惜しむのは、自らチケット販売収入を捨てていることと同じ意味になります。組織体制作りの際、また再編成を迫られる際に、この検証も十分に行うことをお勧めします。
以下、観客動員に関する計画策定のアプローチの手段について、いくつかのケースを述べます。

1.ターゲットクラスターの分類策定から考える観客動員検証

あくまでも私個人として考えるターゲットクラスターの分類ですが、基本的には、観客の来場動機にフォーカスしたターゲットグループ区分を考えます。年齢、性別はもちろん、スポーツを実際にやっているかどうか、ということも、分類の対象とはしません。プロスポーツリーグの試合に来場する観客たちは、スポーツを観戦しに来るわけで、その動機は、スポーツに限らず、すべてのエンタテイメントやレジャーの要素を競合相手とするからです。
基本的には、以下の3つの区分に分類します。

   ①CORE(非常に熱心な応援者たち)
   ②FUN(自ら試合を見たいという能動的な動機を持つ人たち)
   ③TRY(誰かに連れられてきた受動的な動機を持つ人たち)

上記の中で、①は確実にリピーターとして獲得しなければなりません。また、②は、リピーターとして取り込むような更なる動機付けを持たせていく対象です。③は“たまたま”①や②と一緒に来場したケースや、複数のグループで“たまたま”観戦の機会を見つけて来場したような観戦初心者ですので、今後のアプローチを継続的に続けていかなければならない対象です。それらの分類を、更に具体的に区分すると、以下のようになります。

   ①CORE  ・チームCORE(チーム全部が好き、チームを応援したい)
           ・プレイヤーCORE(ある特定の選手が好き)
           ・バスケットボールCORE(バスケットボールそのものが好き)

   ②FUN   ・バスケットボールFUN(バスケットをやっている、やっていた)
           ・スポーツFUN(スポーツを見るのが好き)
           ・イベントFUN(イベントなら何でも好き)

   ③TRY   ・デートTRY(彼、彼女と一緒に来た)
           ・家族サービスTRY(子供にせがまれて来た)
           ・友達付き合いTRY(友達に誘われてきた)

①から③に従って、試合観戦の動機は低くなり、比例して継続した観戦の確率は低くなります。よって、プロスポーツ球団としての課題は、②を①に引き上げ、③を②にもっていくアプローチの手段作りです。

①のターゲットの取り込みは、プレシーズンでの球団主催の選手やチームが参加するイベント開催の場を作ることから始めます。彼らの個人情報は、確実にデータベース化して“固定客”として獲得していくと共に、②や③を同伴するようなアプローチを仕掛けていきます。②に対しては、チームの存在や試合の存在を認知させること、そして常に新鮮な動機付けが必要です。例えば、対戦相手が強豪チームであること、相手チームにスーパースター゛いること、シーズンの中で重要な試合であること、・・・などなど。②とは、インターネットを活用した日常的なコミュニケーションの機会を如何に作るかが、キーポイントになります。③に対しては、プロモーションレベルで、カップルを対象とした特典を作るとか、ファミリーを対象とした割引チケットを作るとか、10人以上での来場者に記念品を差し上げるとか、・・・などの仕掛けを通じて、新しい顧客の開発に結び付けていきます。

多くの場合は、特定のスポーツを学校やクラブでやっている、所謂“DO”の人たちをCOREと考えるケースだと思いますが、これでは、プロスポーツ興行において経営課題が残ります。それは、彼らは、観戦を継続させるだけの経済力に乏しいからです。中学生や高校生をファンとして獲得していくことは重要ですが、彼らは、アリーナ席を毎回埋めてくれるような存在にはなりにくいのです。

2.シーズンチケットパッケージの販売計画から考える観客動員検証

収入の最大化を図るために、プロスポーツ球団として、最も課題となる戦略の一つに「シーズンチケット」があります。チケット販売の効率化と、安定した収入確保が可能となり、事前に運転資金が確保できることもあり、NBAなどのアメリカのプロスポーツでは、営業戦略の核として重要視されています。アメリカのプロスポーツでは、アリーナでも15,000から18,000クラスの座席がありますが、なんとその50%をもシーズンチケットで売ってしまうチームもあります。ただし、シーズンチケット販売の場合は、“待ちの営業”では、なかなか成果が上がりません。専任の営業スタッフによる企業や団体への訪問セールス、また、チームのファンイベントの際などの対面販売、更に、ファンクラブ組織の活用など、ほとんどが人的な努力による成果を期待しなければなりません。単価設定によって、また、パッケージングを小さく設定するなどして、買いやすさをアピールするような企画も独自で創出する必要もあります。何れにしても、ホームタウン内の経済環境やチケット購入というものに対する慣れや意識の違いも、キチンと見極める必要があるでしょう。NBAの人気がないチームなどでは、人気のある特定の対戦相手を限定したパッケージの例もあり、工夫次第で、さまざまなパッケージングが可能になります。以下、その一例です。

<フルシーズンパッケージ> 全22試合対象
 アリーナA(@5000) 100/100席   100,000円(-10,000円) 100人セールス
 アリーナB(@4000) 200/1,200席  80,000円(- 8,000円) 200人セールス
 アリーナC(@3500) 100/200席    70,000円(- 7,000円) 100人セールス

<ハーフシーズンパッケージ> 11試合対象
 アリーナB(@4000) 200/1,200席  42,000円(- 2,000円) 400人セールス
 アリーナC(@3500) 100/200席    37,000円(- 1,500円) 200人セールス

<1/3シーズンパッケージ> 7試合対象
 アリーナB(@4000) 200/1,200席  44,000円(定価)      600人セールス

※シーズンチケット3種による販売想定規模
 アリーナA  100/  100席  100%
 アリーナB  600/1,200席   50% (残りは優先および一般販売に回る)
 アリーナC  200/  200席  100% (反対側の200席はアウェイチーム用)
 計        900/1,500席   60% (シーズンチケットにてアリーナ席の60%を販売)

上記のシュミレーションによると、1,600パッケージを売ると、座席規模にして900席を完売させることが出来る、ということになります。現実的かどうかは別にして、目標設定のヒントとしてご覧ください。

◇セールス対象人数は延べ1,600人(購入目標人数)
・ファンクラブ一般会員の獲得目標人数3,000人を対象に優先販売する
・公式WEBサイト上での期間限定販売
・専任営業スタッフによる地域内企業への訪問販売
・球団によるプレシーズンイベント会場での限定販売 など

上記を達成した際の、一般販売での1試合単位での残りの最低販売目標は、アリーナBの残り600席(アリーナ席完売レベル)、およびスタンドA,Bで1,300席(スタンド席全体の56%)となります。これで、最低観客動員数は、アウェイチーム応援用のアリーナCの片側サイドブロックの200席が売れたとすると、3,000人となり、動員率は75%となります。よって、シーズンチケットに重点を置くと、球団の経営基盤は安定し、更に、シーズン中におけるチケッティングの作業量を削減でき、専任スタッフ人件費および経費も、圧縮できることが想定されます。

3.ホームゲーム運営費と選手・コーチ人件費の回収を最低目標に置いた観客動員検証

ホームゲームの運営費と、選手およびコーチの人件費は、レベルの差こそあれ、プロスポーツ球団として絶対的に確保すべき収入規模になります。以下は、それらコスト回収の想定規模から、最低限必要な観客動員数を割り出すためのシュミレーションです。

<ホームゲーム運営費> 1試合150万円と想定(約半分が会場関連費)
    ※興業原価率を50%とした場合 150万円÷50%=300万円①

<選手・コーチ人件費> 年間合計の58%をチケット販売収入にて賄うとして考察
    ※14,000万円÷22試合X58%=370万円②

◇①+②=670万円 ÷ @2,500円(想定チケット単価) = 2,680人/1試合

試合会場の既存座席数およびシーティング計画を考えずに、収入目標の最低額から、必要な観客動員数を割り出す方法です。上記の場合、興行原価、すなわち、試合会場の使用料と設営および運営経費などの合計支出金額が、想定金額レベルを超えた場合は、より多くの観客動員が必要となる、ということです。上記のコスト規模だとすると、会場キャパが3,000人の場合、動員率は89%、4,000人の場合は、動員率67%となります。89%は、かなりハードルが高い設定ですが、無理な数字ではありません。課題は、このレベルをシーズンを通して持続できるかどうかです。ただし、あくまでも、最低限のコスト回収を目指したものですので、やはり、会場キャパは、4,000席前後の規模が理想的だといえます。(残り33%を動員すれば、他の支出のリカバーも計算できる可能性が大いにあるが、残り11%では、その可能性がかなり小さいと言わざるを得ない)

posted by umekichihouse |03:24 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
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