2008年08月27日
スポーツイベントの競技会場におけるブランディング戦略
ブルーを基調カラーに、レッドとイエローのコントラストが、競技会場の中を彩る会場装飾。普段は広告看板が設置される位置にも、それらのカラーリングで統一された看板が競技エリアを彩っていました。北京五輪のテレビ中継で、印象に残っている背景のイメージは、それらのカラーリングのものだったと思います。特に、ホッケー会場の、フィールドのグリーンを取り囲むように配色されていたイエローとレッドの鮮やかさは、素晴らしいと思いました。日本でたまにテレビ中継されているグラウンドの姿は、フィールドの人工芝のグリーは同じでも、その周りは陸上のトラックの茶系の濃い色であるのが普通ですよね。アリーナ施設は、観客席のフェンスも、同一イメージのシートでカバーされ、プレス席のテーブルシートもすべてブルーなので、会場全体の色調が、非常に統一感があって、緊張感あふれるセッティングでした。 スポーツイベント、特に国際大会の競技会場は、そのタイトルの格が高ければ高いほど、会場の装飾的なセッティングは、十分に考慮すべき要素です。単なる飾り付けではありません。ましてや、会場の老朽化を隠すことでも、余計な掲示物をマスキングするためのものでもありません。大会の主役である選手たちに、「この大会は特別なんだ」という気持ちを持たせていくことが、大会運営側としての、最大限の“演出”になるのです。アリーナ施設は、特に、競技スペースはもちろんのこと、観客席に至るまでのアリーナの空間全体の雰囲気やイメージを、真剣勝負の場として、可能な限りのアイディアを追究していかなくてはなりません。「ゾクッ」とする緊張感、とよく言いますが、武者震いさせるほど、会場の空気に緊迫感をもたせるのです。それには、色、配置、色調、そしてそのサイズなど、計算ずくめで会場装飾は計画されるべきものです。 オリンピックでは、こうしたビジュアルプレゼンテーション戦略を、非常に大事にしています。会場内に一切の広告掲出を許していないからでも、汚い会場を良く見せるためでもありません。テレビに映し出される映像は、選手やチームを捉えますが、その背景には、常に統一されたイメージがあり、そこには五輪のマークが必ずあります。普段の広告看板の位置にも、敢えて同じサイズの看板を設置し、イメージデザインを配置しているのも、このテレビ中継を十分に意識したものです。また、競技会場の入口(セキュリティゲート)から、館内の案内看板やサインの一つ一つに至るまで、同一の配色とデザインが施されています。施設内にいる限り、「ここはオリンピックの会場なんだ」、という意識付けが行われているのです。一種の洗脳作戦かもしれません。このことにより、オリンピックが“特別なもの”という意識付けを行い、オリンピックの“ブランド価値”を高めていくのです。 オリンピックが、このようなビジュアルプレゼンテーションにこだわったのは、テレビ放映権やTOPプログラムが本格的に始まった1980年代後半です。その発端は、1984年のロサンゼルス五輪だったそうです。商業主義といわれ、400億円以上の黒字を稼ぎ出したことは、常にスポーツマーケティングの先駆者的な扱いでクローズアップされますが、実は、この大会の各会場は、ほとんどが既存の施設が使用され、そのひとつひとつに、いま話題のネーミングライツが導入されました。競泳会場は、“マクドナルド・スイム・アリーナ”(正確ではありませんが、こんなイメージということで・・・)とか、バスケットボール会場は、“コカ・コーラ・アリーナ”(同様)とかです。それに伴い、会場装飾には、各スポンサーのイメージカラーが配色されたのです。ロサンゼルス五輪以降は、テレビ放映権の販売システムも、スポンサーシッププログラムも、IOCがすべてを主導しましたので、会場のネーミングライツの導入は、その一回だけだったようですが、その後の大会では、この手法を、大会毎のイメージカラーで採用して行ったのです。確かに、映像の背景のイメージカラーやデザインを見ると、どの大会だったのかが分かります。 随分昔ですが、あるスポーツ用品ブランドの広告を作成するために、契約選手の写真をフォトエージェンシーに借りに行った時のことです。ベストショットと思う写真を見つけたのですが、選手の背景には、どの大会かが明確に分かる装飾デザインが施されていました。その時、「大会の主催者側の了解を取るべきかどうかを、確認した方がいい」とアドバイスされました。法的にその写真の広告使用が、肖像権意外で発生するか否かの判断は別にして、写真を見ただけで、どの大会が分かる、というのは、相当特別な大会なんだな?、と思った記憶が残っています。先程のオリンピックの例と兼ね合わせると、それこそが、スポーツイベントのブランディングなんだ、ということに気が付きます。会場の装飾ひとつで、大会そのものの価値が作り出せる、ということになります。 スポーツイベントの大会運営業務の根本には、会場施設の設営と各種セッティング作業があります。この業務が安易に進められると、運営現場で、余計な対応に追われてしまう危険性が多々あります。一方で、ブランディングという見地からの、装飾計画も、すべてのセッティングが終わってから考えるべきものではなくて、競技運営上の必要な機材や備品の配置や仮設物の設置計画プランを策定する段階から、同時に計画されるべきものなのです。特に、計画がアマい場合は、観客席からの視線を遮ったり、通行の障害になったりして、大会のイメージをダウンさせる結果にもなりかねません。また、会場全体を見通す“目”も必要です。デザインは、一目で見た瞬間に、その反応が湧き上がってきます。統一感のない、無駄な配置や配色が多いものなどは、うんざりしますよね。 とかく、設営は設営の専門業者に・・・、という大会主催者が多いと思いますが、設営計画や会場装飾計画は、本来、イベントの価値が一番分かっている主催者が、行うべきものだと思います。![]()
![]()
![]()
posted by umekichihouse |11:32 |
イベントオペレーション |
コメント(0) |
トラックバック(0)



