2009年03月24日

「現役新聞記者の著書から感じたスポーツジャーナリストの姿」その4 ~地方メディア

「スポーツ報道論」の著者、毎日新聞の滝口隆司氏は、本に書かれている経歴によると、現在、高校野球の担当取材班のキャップということですが、春の高校野球、選抜大会は毎日新聞の主催です。また、夏の甲子園、全国高校野球選手権大会は、朝日新聞の主催です。何れも高野連との共催という形ですが、新聞社がスポーツの大会を主催し、その普及や啓蒙に努めてきた歴史は、日本でも古くから見られます。いまや、小学生から高校の大会まで、スポーツ競技大会の主催者や、後援者として新聞社が名を連ねる大会は数多くあり、その一部の大会では、大会運営の中で中心的な立場にいる場合もあります。つまり、メディアが、スポーツ競技大会の運営も担う立場にいるのです。高校野球のみならず、バレーボールでは、フジテレビが春の高校バレーの事業運営もなっているようですし、メディア企業の事業部という存在は、報道機関としてのメディアの顔とは別に、独立した事業体としてスポーツに関わるビジネスを展開していることも、その例は少なくありません。また、世界最高峰の自転車ロードレース、ツール・ド・フランスは、1903年にフランスのスポーツ紙「レ・キップ」が、その販売拡張のために始めた大会ですが、いまや世界中にファンを持つほどの規模に成長しています。このように、単なるスポーツイベントや大会へのスポンサーシップというだけではなく、特に新聞というメディアは、恐らく日本では宅配システムが定着している環境も巧を奏していると思うのですが、イベントや大会を支える立場を通して、新聞の販売拡張を進めるというビジネスの側面と平行して、スポーツの普及ということを推し進めてきた功績があると思います。イベントや大会主催することで、その報道権を独占したり、優先的な立場に置いたりすれば、スポーツの普及とは逆行してしまう。だからこそ、高校野球やその他の新聞社主催によるイベントや大会では、大会を主催する意図と、報道という概念は、中立に保たれてきたのでしょう。前回取り上げたメディアによるスポーツ・スポンサーシップの状況にある権利と対価という概念とは、幾分違うものがそこにはあります。

地方都市で、スポーツイベントやスポーツの国際大会を開催する上で、その地元の新聞社と、事業面で連携することはよくあります。スポンサーシップではありません。イベントや大会の認知や理解を拡大していくために、協力を得るのです。確かに、“ちょうちん記事”のように見える場合もあります。しかし、一方で、シティセールスなど、地方都市のPRや観光促進のための施策を目的に、地方自治体がイベントや大会の開催費の一部を負担して、そのイベントや大会を招致するケースでは、まず、開催地地元の市民に大会開催の意義を理解してもらう必要に迫られます。また、大会開催に際してのさまざまな協力も市民に仰がなくてはなりません。その時、地元の報道機関としての新聞社の存在は、非常に大きなものになります。時には、イベントや大会の開催地の住民意識のモチベーションを鼓舞していくための効果をもたらしたり、それを期待させるものである、ということも言えるでしょう。

私も、地方都市でスポーツイベントや国際大会を開催する際には、常に地元のメディアの力をお借りしてきました。イベントや大会のことをもっと知ってもらうために、そして興味を持ってもらうために、恐らく報道の中立性など無視をして、さまざまな情報を提供していきました。イベントや大会の運営面で必要なボランティアの協力を得るために、その募集に関しての告知などは、地元のメディアだからこその信用もあり、大会主催者からの一方的な情報発信よりも好意的に理解される場合が多々あります。また、イベントや大会の準備が進む過程を逐次情報発信していくことも、地元のメディアならではの切り口により“報道”していただけるため、イベントや大会に対する親近感を醸成していくことにも効果が高いのです。こうした地方メディアの力は、新聞の発行部数を見るだけでも、非常に大きいことがわかります。北海道の例で見ると、・・・・

・北海道新聞  1,216,438部(48.65%)
・第2位の新聞  239,315部(9.61%)

というデータがあり、北海道では、北海道新聞に情報が掲載されなければ、他の全国紙の北海道版にどんなに大きく情報が取り上げられても、その効果は、上記数値のように桁が違うものなのです。また、お隣の青森県では、地元紙の東奥日報が最大の発行部数を誇っており、その数は26万部です。朝日新聞や読売新聞がその1/10程度の発行部数ですから、北海道のように人口が大くない県においても、地方紙の力は絶大なのです。

しかし、地方メディアが、世界的なイベントや大会、もしくは日本トップクラスのスポーツを見れる場としてイベントを開催する場合などにおいて、いかにも良いことばかりにフォーカスを当てているような事実もあることも、決して否定できないことだと思います。前述のように、地方都市や地域における、地方紙の影響力というものは絶大なものがあり、それ故に、メディアとしての使命である中立的見解を持つことや、批評する意識を薄れさせていることも否めないと思うのです。地元住民に支えられている定期購読という財源を失う可能性があるからです。政治的な問題はさておき、スポーツにおいては、大きくなればなるほど、スポーツイベントの招致における市民や県民の血税を投入した、開催費の補助などの行政による財政出動は、その地元のメディアこそ、客観的に監視し、より透明性を求める立場になければならない、と思います。地方メディアは、イベントや大会にスポンサードしているわけではありませんが、イベントや大会の成功には欠かせない存在です。そしてそれは、イベントや大会の開催がもたらす利益や効果とは何なのかを、最も中立に正確に伝える立場にあるからこそ、欠かせない存在に成り得るのです。

posted by umekichihouse |06:06 | メディアとスポーツ | コメント(0) | トラックバック(0)
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