2009年03月19日
「部活が危ない!?・・・日本の若年スポーツ育成現場が抱く危惧」その3 ~部活パワーがターゲット
日本コカ・コーラ社は、新入学シーズンに行うスポーツ飲料“アクエリアス”のキャンペーン・テーマに、部活を取り上げるようです。部活という日本のスポーツの底辺を支えるパワーに、日本独特のスポーツ文化を感じ、部活のチーム単位での応募によって、チームで使えるボールやテーピングキットなどの実用品をプレゼントするなど、今度は、部活を支援することで、日本のスポーツを盛り上げようとしているらしい、ということです。日本を代表するアスリートたちをCMキャラクターとして採用し、CMなどの広告展開を実施してきたアクエリアスのキャンペーンとしては、地味なテーマのように思えますが、それだけ、日本の“部活”の存在は、パワー溢れるものなのです。世界的な不況の中で、明るくフレッシュなイメージを、新入生を迎えて新しい活動を始める部活に求めようとしているのも、新学期の活気溢れる学校の賑わいを想像すると、なんとなく分かる気がします。 ナイキジャパンも、日本市場独自の商品展開として、“部活”をテーマとした戦略を打ち出していました。ブカツ。シューズの商品名にまで登場した部活の存在感は、外国人のマーケッターから見ると、パワー溢れるものに見えるほど、特異なものなのかもしれません。確かに、日本のスポーツ界で、高校スポーツに対する注目度は、多くのスポーツ競技で高く、全国大会の会場は、トップリーグの試合会場よりも多くの観客で溢れかえります。高校野球の甲子園はもちろんのこと、バレーボールの国立代々木競技場第一体育館、バスケットボールの東京体育館など、大会期間中に閑散として客席を見ることは絶対になく、テレビでの中継も、プロスポーツ以上の体制となっています。そして、大学スポーツですら、その集客力にはかないません。事実、先のコカ・コーラも、ナイキも、高校スポーツの大会に協賛することを重視しており、長年に渡る支援活動を継続しています。 全国大会に出場する高校を、その地域住民がこぞって応援する姿は、アメリカのカレッジスポーツを地域の住民が応援している姿とダブっているように見える、とアメリカ系企業のマーケッターは言います。当然そこには、高校生という直接的なターゲットもいるのですが、彼らを応援する裾野が広いことこそが魅力なのです。そして、そうした中にある高校生たちのスポーツに対する純粋でひたむきな姿が、商品の持つ特性やイメージにピッタリでもあり、その効果を、広い裾野に浸透させていく力が、高校スポーツという市場にはあるのです。また、全国の強豪校のユニフォームとそっくりのデザインのユニフォームを、誇らしく着ている同じ地域の中学校がある、なんていうこともよく聞く話ですから、同じスポーツに取り組んでいる後輩層に対する影響力も大きく、高校スポーツの持つ波及力は、本当に高いものだと言えます。 学校の部活を舞台とした青春ドラマも、過去にも、また、最近でも、数多く制作されてきました。私は、“飛び出せ青春”や、“われら青春”の世代なのですが、これらのドラマを見て、ラグビーやサッカーを始めた人も多かったと思います。部活という存在は、学校生活の一部であるのですが、何か独特の思いがあることを、最近年を重ねるごとに感じますし、学校生活で思い出すのは、勉強している教室の様子よりも、やっぱり、部室や部活中のグラウンドや体育館の風景や匂いなんかではないでしょうか?。そんな思いを残せる場だからこそ、部活に、日本人は特別の感情を移入しているように、外国人から見ると感じてしまうのかもしれません。そして、部活は、ビジネスのテーマとしても、十分活用できるほどの訴求力あるもの、ということなのです。 前々回、前回と、部活を巡る些か暗い話題を取り上げましたが、いま部活が抱える課題の元には、一言で言うと、部活を運営を担う先生方の存在、立場の危うさがあります。それは、金銭的な問題を解決すればいいものでもなく、休暇などの勤務条件の保障ということだけの問題でもありません。課外活動を民間企業のような残業代や休日出勤手当てを持って保証するだけでは、休みが取れない過酷な勤務状況を改善するものにはなりませんし、意欲のある若い先生方の希望に沿った赴任状況を保障したとしても、それは全体としての不公平な状況をつくってしまうことにもなります。生徒たちは、部活に熱い思いを傾けますが、それを指導する側の先生方の体制に、まだまだ現実的な打開策を見出すことはできていない、というのが現実です。マーケティング上の戦略的な視点からも、部活は大きなパワーを生み出している存在としてクローズアップされるほど、魅力ある“仕組み”なのです。人が集まり、常に何かが生まれ、そして何年も何年も脈々と受け継がれていき、伝統というもので語られるようになります。毎年毎年顔を変え、毎年毎年新しく生まれ変わります。しかし、その仕組みの骨格であるべき部活担当教員としての先生方の存在や立場が危ういならば、部活は新しいものを生み出す力を失います。 マーケティング上、部活の魅力は、全国各地で、日々絶えることなく継続されていることでもあります。その集大成が、スポーツで言えば全国大会であり、そこに向かうプロセスが、多くの人々の心を引き付けます。企業が高校スポーツなどの部活の存在にビジネスチャンスを見出していることは、そこに活動を支援してくれる資金が投下される、もしくはされる可能性が高い、ということであり、極端に言うと、中学や高校の部活を活性化していくことは、中学や高校におけるスポーツの育成、強化、普及という活動を、より拡大していくことに直結されるのです。もし、部活の衰退が止まらなければ、日本のスポーツの底辺を支えている大きな市場を、中学や高校の教育現場自らが失わせることになる、と言っても過言ではありません。部活のパワー。それは、日本独特のスポーツ強化・育成の源であるのです。そして、部活を衰退させることは、日本のスポーツの将来を衰退させることに繋がりかねません。
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posted by umekichihouse |07:15 |
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