2009年03月18日

「部活が危ない!?・・・日本の若年スポーツ育成現場が抱く危惧」その2 ~指導教員の悩み

前回、公務員としての教員の宿命である異勤によって、部活の指導教員がいなくなってしまい、やがて休廃部に追い込まれる部活の実情について取り上げましたが、今回は、もっと深刻視されている部活担当教員の、過酷な勤務実態による部活運営の疲弊について取り上げたいと思います。子供たちの部活動を支える立場であり、彼らに単なる技術的な指導をするだけではなく、課外で常に子供たちと一緒に行動している先生方は、特に公立では、ほとんどボランティアに近い勤務実態であると、マスコミにも取り上げられています。部活についての報道記事を、過去2~3年に渡って調べてみると、特に家庭を持ち始めたくらいの若い教員が、その実態の真っ只中にいることが多く、土日などの休日も、練習や、遠征試合や大会出場などの時間に当てられ、月に1度の休みがあるかないか、という部活担当教員もいる、ということも、記事の中には切々と語られていました。

また、若い、という理由だけで、特に運動部などの顧問になるケースも多いらしく、更には、全く担当するスポーツの経験がないのに担当させられ、挙句には、試合に負けたからと言って父母から文句を言われ、もっと練習させろ、と言われる始末らしいのです。これでは、子供たちの指導以前に、部活そのものが、本来何のためにあるのかも分からなくなってしまいます。私立の学校は、運動部の成果を学校のPRとして活用するための目的にしているところも多く、そのために、指導経験や実績のある先生や、部活指導専門の職員として人材を雇い入れているケースも多々見受けられます。しかし、公立の学校では、スポーツなどで全国レベルの力があり、例外的に市町村や都道府県の教育委員会の特例措置でもあれば別ですが、定期異勤は、部活動の云々の実態に関係なくやってきますし、そもそも部活は、文部科学省が定める学習指導要領に明確な位置付けがなく、顧問の自主的な活動とされている、ということを知って、驚くより呆れてしまいました。そのような実態の中で、部活が日本のスポーツを支えているとか、日本のスポーツ強化の底辺だ、と言うこと自体が間違っているのですね。ほとんど手当てもなく、場合によったら遠征用のガソリン代を教員自ら負担しているケースもあるということで、待遇面でも、部活の運営体制という組織的な支援の面でも、現状の課題を解決する施策を見出していかなければ、生徒だけではなく、先生すら部活から離れてしまうのではないでしょうか。もちろん、高い志をもって、子供たちの指導に情熱を傾けている先生方の姿を、全国大会の場では良く見かけることができます。しかし、それは、ほんの一握りの例でしかないのです。

私も、小学4年から部活動に勤しみ、サッカー、そしてバスケットボールと、勉強もせずにグラウンドや体育館を走ってばかりいました。そこで得たことや、仲間と一緒にひとつの目標に向かって頑張ってきた経験は、いまだからこそ、本心から貴重なものだったと思っています。しかし、残念ながら、私には本当に心から尊敬できる先生に教えられた、という実感が、あまりありません。社会人になって、仕事で高校生のスポーツ大会の運営等に携わっている時、彼らが全国の舞台で活躍している姿や、ベンチで指揮を取っている颯爽とした監督の先生方を見ていると、“あんな先生に教えて欲しかったなあ・・・”、と切実に思うことがあります。そういう意味では、尊敬できる先生に指導してもらって、自分の力を伸ばせる環境にいる公立の中学生や高校生、もちろん小学生は、全国ではほんの一握りの存在なのかもしれませんが、本当に羨ましい限りです。

一方で、教師自ら、得意なことすら部活で活かせない学校の制度のあり方は、ある意味で、学生時代に夢を持って部活の指導にも立ち向かおうとしていた若い先生たちの芽を、摘み取っているものなのかもしれません。先生がいないのではなく、自分の特技や経験を活かすチャンスが与えられていないのです。新潟県で、地元の大学教授が、数年前に調査した結果では、中学バスケットボール部の指導者90人を対象として競技の経験度を尋ねたところ、なんと31.4%の教員は未経験者だったということでした。新潟県は比較的バスケットボールというスポーツが盛んで、中学や高校でも、全国の上位クラスの実力を持っていると言われています。この約3割の高校でバスケットボールをやっている中学生たちは、果たして、高校生になってもバスケットボールを続けようという気持ちが沸いてくるのでしょうか?。もちろん、未経験が悪いわけではありませんが、スポーツの育成や強化という視点で、中学や高校の部活を語るならば、これは生徒たちにとって好ましい現状ではないことは間違いありません。未経験の先生には、やはり、経験者の先生よりも何倍もの負担が生じる、と実際に未経験ながら部活を担当している先生のコメントもありました。そして、そうした課題の解決策として、学校の外部に指導者の派遣を要請しよう、という動きが始まっているのです。しかし、前回も述べたように、生徒と指導者との信頼関係は、学校という場を前提として考えると、果たしてそれでいいのか?、という疑問も私にはあります。地域に総合型地域スポーツクラブなどの活動組織があるところでは、学校のクラブに代わって、生徒にスポーツ活動の場を見出そうとしているケースもあると聞きます。ただし、部活動の指導に夢を持って教員になる若い先生方の気持ちは複雑です。「部活は生徒と教師の人間関係づくりに欠かせない場所だ」、という声があります。また、「クラブの掲げるスポーツ活動の普及、という理念は分かるが、大会で勝つことを目標にして活動することも当然で、そこから得られる経験は、大会に参加できる立場にある学校の部活にしかありえない」、という声もあります。

もし本当に、“スポーツ立国ニッポン”を掲げるならば、金銭的な待遇改善だけの問題ではなく、組織的な支援体制を、部活の場に構築していくことこそが、まずやらなければならない課題なのかもしれない、と考えるところです。

posted by umekichihouse |05:05 | 日頃のあれこれ | コメント(1) | トラックバック(0)
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「部活が危ない!?・・・日本の若年スポーツ育成現場が抱く危惧」その2 ~指導教員の悩み

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はじめまして!私の知り合いに似た体験をした方がいましたので興味深く記事を拝見させていただきました。
 知り合いは、以前学校の中学校の用務員を2年(契約)間働いていました。その彼が、若いという理由だけで野球部の顧問にさせられ(彼は陸上部出身で野球は、ほとんど素人)大変な思いをしたようです。彼の場合(一年毎の更新の契約社員しかも薄給)いろいろなことを指導している子供たちの親に文句を言われる事は、相当ストレスがたまったようです。この彼は、教員ではありませんでしたが、「地方になればなるほど教員の高齢化がすすみ部活の顧問をやりたがる人は、いない」とともいっていました。
 このような現状が多いと考えられる昨今、今の学校スポーツの支援体制の構築はとても重要な課題ですね。私自身は、公立校教員は部活動の指導などに時間を長時間割かなければならない現状は、なくしてもらいたいと考えています。
記事にある<「部活は生徒と教師の人間関係づくりに欠かせない場所だ」、という声があります。また、「クラブの掲げるスポーツ活動の普及、という理念は分かるが、大会で勝つことを目標にして活動することも当然で、そこから得られる経験は、大会に参加できる立場にある学校の部活にしかありえない」、という声 は、理解できません。

大切なのは、それだけでは、ないでしょう。人間関係作り
に大切なのは部活だけではないと思いますし、多くの時間を割いて(しかもボランティア状態)までやることではないとおもいます。

posted by Alamat | 2009-03-18 19:27

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