2009年03月11日
「猪苗代の真実!?・・・フリースタイルスキー世界選手権大会の現場にて」その3 ~大会運営編
今月2日から8日まで、福島県猪苗代町で開催されたFISフリースタイルスキー世界選手権。モーグルで期待された上村選手の2冠など、日本人選手の期待通りの活躍に、7日には観客のスペースを満員電車並みの観客が埋め尽くし、テレビや新聞の報道も、WBCやJリーグの開幕に引けを取らない扱いでした。大会組織委員会は、大盛況、大成功と、自らの大会運営を自画自賛するのかもしれません。FIS、世界スキー連盟の会長も、地元の新聞報道によれば、大絶賛ということで、世界に誇るフリースタイルスキーのメッカとしての面目も立ったというところです。しかし、実際に現場に行った私の目には、いくつかの疑問もありました。それは、スポーツイベントの現場を多く見てきたから、見えなくてもいいものも見えてしまった、ということかもしれませんが、猪苗代で見た疑問とは、多くの地方開催の国際大会の現場で、例外なく感じられたことでもあり、今回は、大会運営の現場にフォーカスして、その点を検証してみたいと思います。 私の疑問とは、3つの点に集約されます。一つ目は、前々回も取り上げたテーマですが、観客に対する配慮と運営上の体制についてです。二つ目は、競技運営と大会運営という2つの運営機能の連携についてです。三つ目は、大会スポンサーと大会運営機能との連携についてです。 まず、一つ目の観客に対する配慮と運営上の体制についてですが、最も疑問に感じたのは、観客が競技を観戦するためのエリアの設定と、そのエリア内のコンディション整備に関する要件です。雪不足のため、競技コースはもちろんのこと、すべてのエリアには、大量の雪が持ち込まれ、そして人工降雪機による対策も練られたようです。コース周辺にほとんど雪が無かったり、あちこちに地肌が見えていた場所があったことを考えると、大会組織委員会や地元の方々の、コース整備や大会を開催するための準備作業には、大変な努力があったことが容易に想像できました。もし、大会期間中に雨が降ったりしたら、もっと大変な状態になっていたに違いありません。雪はザラメ状で柔らかくなっており、歩くだけでも大変な状態でした。観客が観戦するスペースは、モーグルコースの一部に設置されたスタンド席以外は、すべてフリーのスペース、つまり只の更地であり、しかも、ほとんどは平らではないために、前の人の頭で後ろの人が全く見えない場所もありました。競技の正味時間は、決勝だけでも1時間30分程度あり、雪の柔らかいこともあって、立ちっぱなしでの観戦は、足腰にきついものでした。ひとつ感じたのは、一般の観戦スペースの足元のコンディションを、もう少し整備してくれると、観客の負担はかなり少なくなったのでは?、ということです。競技コースは万全に整備されていました。当然のことです。しかし、大会運営全体で、観客を誘導するスタッフは、見るからにたくさんいたのですが、彼らは立っているだけ。何人かだけでもそうした整備に気を使ったり、観客対応という運営機能がキチンとあれば、準備段階から、そうした配慮は、具体的な対策として計画されていたのかもしれません。 また、物品輸送や人の輸送のため、ウインタースポーツらしく、スノーモービルが大活躍していました。しかし、このスノーモービルの運行コースが、時には観客の動線にも入ってくるため、非常に危ない思いをしました。運転しているスタッフは、恐らく地元の人だと思いますが、スノーモービルを警察車輌の緊急車の如く運転してくるため、歩いている人への配慮がありません。「どけ!」、という感じです。配慮云々というよりは、観客から入場料を取って大会を運営している感覚が、ゼロですね。ADカードを見て、氏名を確認した上で公表しようと思いましたが、それはやめます。しかし、大会スタッフとしての気持ちの高揚がそうさせているのかもしれませんが、私が運営責任者なら、その場でADカードを没収して帰します。 恐らくこうした観客に対する配慮が欠けていた原因は、運営組織の構築に問題があった、と想像します。恐らく、運営という組織を、競技運営とその周辺を管轄するべき大会運営とを、区別していなかったからだと思います。その場合起こりえることは、競技の進行や運営に関る要件のみに大会運営の機能が集約されてしまい、競技が無事終わればOK、という考えになってしまうことです。競技が始まる前の観客に対する配慮、そして帰りの配慮、更には、観客が大勢になった場合に起こりえるトラブルに対する配慮、などなど・・・。観客だけを見て大会運営をコントロールしようとする人や、そのための体制が何も感じられず、見ることが出来ませんでした。“おもてなしコーナー”では無料で豚汁が振舞われていましたが、それは、決して大会運営上の観客サービスとは言いません。 もし悪天候になった場合にどのように対処するのか?。それも、少なくても私の周辺にいたスタッフは、何も指示を受けていなかったようですし、その気配りの態度すらありませんでした。ゲレンデの下にはホテルやレストラン施設もあり、特に、ホテルのロビーは、大会専用利用ではありませんでしたので、午前中の予選から観戦している人にとっては、最高の休憩場所です。もちろんすべての観客が利用するほどのスペースはありませんが、日中のホテル内は閑散としており、どのような対応も取れたように感じました。海外の大会では、大きなテント施設を仮設して対応しているケースも資料で見たことがあります。費用の問題もありますが、もしもの場合の対策が、全く見当たらない大会という印象は拭えませんでした。 さて、二つ目の競技運営と大会運営という2つの運営機能の連携ですが、特に不満に思ったのは、競技の進行に伴い、刻々と変わる競技結果の表示が見られなかった、ということです。実は、競技の結果、つまりリザルトデータは、コースのフィニッシュライン近くに設置された大型映像装置に、テレビ放送で利用するCGとして表示されていたのです。ただし、競技中は、テレビ中継でもお分かりの通り、リザルトの一覧は表示されることはありません。スタッフの方に、電光掲示板かそのような情報が分かり表示はありますか?、と尋ねると、その方は大急ぎで確認してくれました。しかし、結果的には、大型映像装置に映し出される画面でしか確認できないことが分かり、その方はこう言ってくれました。「確かに、誰が1位で2位との差はどのくらい、というのが分からないと見ていても楽しくないですよね。今度係りの者に言っておきます」。今度と言われても大会は終わっているのですが、このスタッフの方の言葉通り、今回の大会は、ほとんど観客の立場に立ったものの見方をしていなかったようです。ちなみに、大型映像装置に関しては、大会開催予算で紛糾していた時期の話題にもなっていましたが、当初は取り付ける予定はなかったようなのです。FIS、国際スキー連盟からの要請で取り付けられた経緯があるようなのです。もし、この大型映像装置がなかったならば、観客は、競技結果を、場内のアナウンスのみで知ることになったのでしょうか?。これでは、本当の意味でのレースの興奮は沸いてきませんよね。テレビで見ていた方がよっぽど分かり易いです。ライブで見るからこそ、そうした運営装置は必要なのです。競技運営上では不必要かもしれません。関係者のPCなどには、リアルタイムでリザルトデータが転送されているからです。しかし、大会運営という観点からは、観客のための情報提供ということからも、絶対に必要なのです。タイムやスコアが分からない試合やレースを見て、本当にライブ感を楽しめるわけがありません。 競技を運営する組織は、観客に対する配慮やサービスという概念を、競技運営上の障害となる危険性のあるもの、と見る競技関係者がいます。ある時には、その考えは重視すべきです。競技運営なくしてイベントは成立しませんから・・・。しかし、競技の成り立つ要素のひとつが、観客であり、彼らの声援である、ということも忘れてはなりません。そこでは、競技運営側の立場で、観客をコントロールする大会運営の立場にアドバンテージを与えることも必要になります。そうした連携が、大会全体を成功に導くのだと思います。たかがスコアボードひとつでも、置き方ひとつで何の役にも立たないこともあります。今回も、せっかくの大型映像装置も、本当にすべての観客から見通せる位置にあったのか、角度は適切だったのか、などということを現場で検証したのかどうか、という点に関しては疑問が残ります。確かに、VIP席であろうポジションに対しては、正確に置かれていました。しかし、観客からは、少し見辛かったのではないですか?。 最後の三つ目、大会スポンサーと大会運営機能との連携ということですが、タイミングとリザルトシステムは、SEIKOが担っていたようです。また、ホストブロードキャスターである福島中央テレビが、独自にリザルトデータ用のCGシステムを構築していたとは思えないので、恐らくこれもSEIKOがやっていたのではないかと推測します。この業務は、競技運営の心臓部であり、機材やシステムの設置に関しても、かなりのコストを要するため、大きな役割を成した存在であったことでしょう。しかし、読売新聞を始め、その他のスポンサーが、大会運営にどのように貢献していたのかは、全く分かりませんでした。オリンピックや他のスポーツ競技における大会スポンサーの位置付けは、単なるお金の成る木としての存在ではないことは当然で、大会運営に必要な機能やサービスをキチンと提供することで、観客としてもその存在を認知することが出来ます。当然、資金的な援助も見込めます。しかし、お金を出す側としては、いまでは、単なる露出効果やイメージ訴求だけで、数十万規模の予算でも簡単には拠出してくれません。今大会においても、2億数千万円の予算がスポンサーシップなどの協賛金で賄われていたように報道されていましたが、大会運営との連携や、観客サービスという視点での協力を要請するなどして、それが具体化されていれば、スポンサーにとってもより効果性は望めたでしょうし、大会組織委員会としても、より有意義な協賛が得られたのではないでしょうか?。コース内の広告看板を見る限り、JAや東洋水産がスポンサードしていましたが、観客のためにカップ麺を安く提供したり、農産物を使って、豚汁以外にも地元の名産を振舞ったりと、競技大会としてというよりも、世界的なイベントとして、もっと観客が楽しめるような施策が、スポンサーの協力によって計画されても良かったのではないか、と感じました。ドリンクメーカーによって、暖かいコーヒーのサービスや、スープ飲料の提供なんかも、ウインタースポーツのイベントではよく見られますが、そうした多様なサービスがほとんどみられなかったことは、今回の大会運営全体を見て、非常に残念に思いました。 余談ではありますが、7日のモーグル種目は、東京都庁で開催していたイベントの会場で、クローズドサーキットとしてライブ中継されていたようです。地元局でも録画中継でしたから、唯一の“生”だったわけです。録画中継を予定していたJスポーツの中継映像の伝送機会を利用して、Jスポーツが協力したのか、はたまた東京都がオリンピック招致イベントとしての経費負担で、独自の回線を確保したのかは分かりませんが、光ファイバーのインフラかあれば、物理的にはどこでも可能になる方法です。これを、猪苗代周辺や、場合によっては、全国のスキー場と提携してクローズドサーキット展開しても面白かったと思います。テレビ中継との影響が懸念されますが、日本テレビ以外での放送は、夕方の4時からでした。ならば、スキー場でしか見られなかった人も多かったはずです。費用の問題があるならば、光ファイバー通信を売り込んでいる通信会社との提携や、テレビ受像機に直接光ファイバーを繋いで番組を視聴するサービスも多様化していますから、その辺のPRも加味した連携も考えられたかもしれません。これもITシステムに関連した大会運営という機能の一部として、活かせたノウハウのひとつだと思います。
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posted by umekichihouse |06:50 |
イベントオペレーション |
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「猪苗代の真実!?・・・フリースタイルスキー世界選手権大会の現場にて」その3 ~大会運営編
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私は毎年W杯を観戦しに出向いているのですが、正直ガッカリしました。ブログに書いておられるように、私も観客側に立った運営がなされていないと感じました。開催することだけで満足してしまって、観る側の視点は二の次にされていたように受け取れてしまいました。
ただ観客席については、例年は足場はおろか、階段すら設置していないので、その点はグレードアップしたのかな、とも思いました。
posted by take | 2009-03-20 00:01
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