2009年03月08日

“選手と観客の距離が近くなった!” ~JBLにおけるスポーツ興行としての変化の兆し

1年前の国立代々木競技場第二体育館。新生JBL、日本バスケットボールリーグのプレイオフ・セミファイナル、そしてファイナルが行われた会場の観客席は、空席が目立ちました。アイシンとトヨタで争われたファイナルでも、例年は立ち見も見られるほどでしたが、些か寂しい感じを受けたものです。そして、2年目の今年も、プレイオフ進出チームが決定し、本日は、いよいよレギュラーシーズンの最終戦となりました。今年は、セミファイナルが札幌市の北海道立総合体育センター(きたえーる)でも開催され、また、ファイナルの第1戦から3戦までは東京体育館での開催です。国立代々木競技場第二体育館は、約3,200人のキャパでしかありませんが、今年はその倍の規模の会場を使用することで、より多くの観客の前で、シーズン最後の戦いを繰り広げてくれることに期待したいと思います。

さて、今シーズンのJBLですが、何か一味違った感じを受けています。特に、昨シーズン6位の成績に甘んじた日立サンロッカーズは、1月の全日本選手権で初の決勝進出を果たしたばかりか、リーグでも確実にプレイオフにコマを進め、試合内容も、チームの特色を活かした見せ場が多く、観客動員も、徐々に伸ばしている傾向が見た目でも明らかです。その要因はどこにあるのか?。

確かに、田臥選手要するリンク栃木ブレックスとの試合では、五十嵐選手との同期対決、ポイントガード対決もあり、JBLの人気を二分するほどの注目度で、どちらのホームゲームも盛況でした。外国人選手の出場制限を設けたオン・ザ・コート・ワンにより、日本期待の大型選手である竹内譲次選手の活躍もより一層際立ち、また、観客に対してキチンと自分たちのバスケットを魅せることを意識し始めているようにも感じます。何よりも、昨年の日立と比べて変わったことは、選手たちが観客に近付いていったことだと思います。その象徴が、シーズン終盤の国立代々木競技場第二体育館でのゲームでした。それまでの日立、もしくはJBLの中でプロチームとして活動する2チームを除く他のチームは、企業チームとしての体質が露骨に見られ、選手たちの中にも観客サービスといった感覚は、なかなか芽生えていなかったように感じます。昨日のゲームでも、試合前の選手入場の際には、前シーズンまでは何かけだるい感じで、恥ずかしいのかどうなのか、ピリッとしたムードはありませんでした。しかし、今シーズンは、そこから選手の顔つきが変わってきているように感じます。そして、試合後の観客に対しての、来場してくれたことへの感謝の態度は、やらされている、という感じではなく、間違いなく、選手が自発的に観客に近付こうとしている意識が見て取れます。恐らく、そうした態度や意識の変化が、ファンに伝わって、結果的に観客動員の増加に繋がっているのだと思います。

確かに、観客を魅了するフレーの一つ一つは、試合をやらされているのではなく、自分たちのゲームを、ブレーを見てくれ!・・・、といったような意識の変化がなければ、それは観客には伝わりません。企業チームであっても、観客を迎えてゲームを開催しているのですから、当然と言えば当然のなのですが、前シーズンまでのJBLには、そこが欠けていたようです。プレーの質や力はともかく、bjリーグとの違いは、プロ選手としての意識の有無。そこに尽きると思います。“俺たちはbjリーグとは違う”。そんな驕りは、ファンには必要ありません。如何に観客を魅了するゲームができるか否か、それが観客を迎えてゲームを開催するチームの義務です。そこに、企業チームもプロチームもありません。

JBLは、興行権というホームチームとしての試合開催権と、それに付随する収入確保の手段が保障されています。しかし、企業チームの本来としては、その興行権は、ほとんど意味を成しません。日立も、その権利を外部の運営組織に譲渡してホームゲームを運営しているのが現実です。それだけに、興行、つまりお金を払って試合を見にきてくれている観客に対するサービス精神は、恐らく何もなかったかもしれません。それが、選手の意識がお金を払って応援に駆けつけてくれる観客、ファンに向いてきた。それが、自分たちのプレーにも表れてきた、というのが先日の試合会場で見せてくれた姿だったのかもしれません。企業チームと言えども、来場する観客からの入場料収入で、試合の開催、運営が支えられていることを、日立のように意識することができれば、チームというのはこれほど変われるのだ、ということを示しているのでしょう。世界的な経済不況の中で、何時、チームが無くなってしまうか誰も保障できません。企業チームという存在であっても、ブレーすることが仕事なのではなく、ゲームを創ることすべてが仕事だ、という意識が持てれば、その存在意義にも、新しい視点が見出せていけるかもしれない、と感じます。JBLプレイオフでは、どのようなゲーム創りを見せてくれるのか・・・、楽しみです。

国際大会では、セキュリティ重視の視点と、大会運営の効率という視点から、選手と観客の距離感は、幾分遠いものとなります。大会を安全に運営することに重きを置いた運営計画の設計になるからです。しかし、NBAを見るまでもなく、リーグはファンあってのもの。選手と観客の距離感は、出来るだけ近いものになるように設計されます。そこでは、選手とファンとの間に信頼関係がある、という前提で、セキュリティや運営効率以上に、ファンサービスという概念が先に立ちます。そして、選手たち自らがファンに近付く意識を持つことで、ファンの満足度は、試合を観戦すること以上に、選手やチームに対する愛着を醸成していく方向に向かっていきます。日立の場合も、いろいろと葛藤はあったことと思いますが、いまは、確実に真のホームゲームを創る術を、身に付けつつあるようです。

posted by umekichihouse |07:06 | バスケットボール | コメント(0) | トラックバック(0)
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