2009年02月10日

「スポーツイベントとスポンサーシップ」その3 ~スポンサーシップパッケージの策定

スポーツイベントにおけるスポンサーシップは、一般的には、次のようなメニューまたはプログラムをパッケージ、つまり組み合わせた形で各企業などへ提案されます。

①「広告露出」(Singnage & Advertising)
  競技エリア周りに設置された広告看板、会場内大型映像装置によるCM放映など
②「名義表示/呼称」(Idetification)
  タイトル看板、メディア資料、公式印刷物などへの社名などの表示
  およびイベントスポンサーとしての公式呼称名義の使用権
③「ホスピタリティ」(Hospitality)
  自社エグゼクティブクラス、来賓等の招待観戦機会の提供
  会場内特設ホスピタリティスペースの利用機会の提供
  イベント公式行事への参加機会の提供
④「プロモーション権」(Promotional Rights)
  会場内での独自のプロモーションスペースの設置機会の提供
  およびその場での各種プロモーション活動の実施
  ※場合によっては、会場外における同等権利の行使
⑤「マーケティング権」(Marketing Rights)
  イベント及び主催組織の公式商標、意匠等の広告利用の許諾
  イベント出場選手、チームなどの一定条件下による肖像、名称等の広告利用の許諾
  ※写真、映像を含む
  チケットの事前優先購入およびチケットの販売促進利用の許諾
⑥「マーチャンダイジング/ライセンシング権」(Merchandising & Licesing Rights)
  一定条件下による⑤を活用したプレミアムグッズの製造の一時的許諾
  一定条件下による⑤を活用した商品パッケージ作成の一時的許諾

すべては、基本的には、グランターであるイベント主催者の許諾により正式に具体化されるものであり、場合によっては、商標などの使用に関する制作見本などの事前承認を条件としています。イベントのイメージや価値を保護する目的と、第三者の権利侵害に至るケースなどを防ぐ目的があります。また、費用負担における点についても、スポンサーによる個別の経費負担を前提とするものと、イベント主催者が独自に賄うものがあり、基本的には、イベントスポンサーとして得られる権利の行使に関する行為に対しては、受益者負担として、スポンサー側が実施経費を負担するのが通例です。最近では、競技スペース周りの広告看板のデザインもデジタル化の影響で複雑になっており、そのための制作費も高騰しています。そのため、一定の条件を超える経費が掛かる場合については、一部をスポンサーに別途負担してもらう契約になっているものもあります。④におけるプロモーション活動については、会場それぞれの規定により、広告掲出料やスペース使用料(プロモーション目的での使用)が発生する場合もあり、その場合は、基本的には、これも受益者負担として、スポンサー側が実施経費を負担するのが通例です。

スポーツイベントは、試合会場における広告掲出や表示が可能であるため、テレビ放送を前提としたメディア効果が、パッケージの価値を決める最大の指標となるケースが多いようですが、スポーツ組織や団体のスポンサーシップの場合は、特定のイベントへのスポンサーシップを定義付けていないため、基本的には、⑤「マーケティング権」(組織が認可できる範囲での肖像、名称等の許諾を含む)を前提として、④「プロモーション権」(実施場所は特定せず)と⑥「マーチャンダイジング/ライセンシング権」を具体化する、という内容のパッケージが基本となるでしょう。つまり、この場合は、スポーツ組織の一般市場での認知や人気の度合いにより、その効果波及のレベルが全く異なるものになるため、例えば、スポーツ組織側が自画自賛して高い価値を自認し、高い価格で販売しようとしても、その効果は全く次元の違うものになってしまうのです。イメージばかりか、信用も失墜してしまいかねません。イベントスポンサーシップの場合もそうですが、スポーツ組織のスポンサーシップについては、特に、自らの価値を慎重に検証して、その上で、法的にも、商業的にも、スポンサー対して許諾できる権利の仕組みを創造していくことが重要です。マークがあるからそれが直ぐに価値あるものだ、と考えるのは、あまりにも軽薄です。最近では、選手強化を前提とした年間スローガンをロゴマーク化したものや、流行のマスコットキャラクターを独自に開発している場合など、スポーツ組織にも独自の取り組みが進みつつあるようです。日本水泳連盟のパチャポは、2001年の世界水泳の時に生み出されたキャラクターですが、その後、日本水連のキャラクターとしても活躍しており、ひとつの例となっています。また、JOCのオフィシャルパートナーシッププログラムの改革によって、2005年以降は、JOCが統一管理していた選手の肖像権が、一旦、所属する競技団体に返還されたため、各競技団体によっては、独自に選手の肖像権使用許諾システムを管理しているところもあり、プロ化が進む日本のスポーツ界でも、商業的に利用価値のあるプロパティの創造、構築、そして整備が、法的にも運用的にも、組織的に進められることが必然となりつつあります。

さて、スポーツイベントに限って、そのスポンサーシッププログラムを構築する場合の留意点とはどんなものがあるか、ということについて検証してみたいと思います。

スポーツイベントのスポンサーシップは、その感動をライブで伝える力を発揮するテレビ放送が、その価値を具体的に形作る上で、最も重要な要素となることは間違いありません。そのために、まず、競技エリア周辺に設置される広告看板のサイズ、設置位置、設置量などを、テレビ放送、つまり、テレビカメラから競技スペースを狙う角度や方向を踏まえて検証していく必要があります。この場合、単にテレビ映りだけを考えていると、観客席の最前列の位置から、広告看板が障害となって、競技エリアが見切れてしまう可能性も出てきますので、その点においても十分な配慮が必要となります。また、それぞれの競技の特性によって、テレビに映し出される場所や位置が、競技の流れの中で変化していきますので、それぞれのポジションには、テレビ露出から見た優劣が付けられます。陸上競技の100mスタート位置の背後には、大き目のメインスポンサーの広告看板が立っています。通常のテレビ中継映像には、このスタート位置背後の看板はあまり目立ちませんが、ゴール位置前方の位置しているテレビカメラが捉える選手正面からの映像には、画面一杯に広告看板が映り込み、スロー再生でリピートされる中継放送の中での効果は、絶大なものがあるでしょう。バスケットボールでは、ゴールを中心とした攻防を主に捉えるため、サイドラインの最もゴールに近い位置の広告看板が露出頻度が高いようですし、バレーボールでは、ネットを中心に捉えるため、ネットに近い位置の広告看板の露出頻度が高いようです。スポーツイベントの現場では、スポンサーシップやマーケティングの担当者が、テレビカメラ設置後に、必ず実際にカメラを除いた状況で広告看板の位置や角度を検証していますが、たかが一枚の看板でも、時には数百万円、数千万円の価値を生み出すものですから、そうした配慮は、当たり前なのです。

一方で、試合会場に広告看板を設置する権利を有するイベントスポンサーと、その試合をテレビ中継する際の番組スポンサーが異なるケースがあります。イベント、つまり事業スポンサーと、テレビスポンサーのセールスが、パッケージされていない、つまり、一体となってセールスされていないケースなどです。業種が異なる場合は問題ありませんが、競合するスポンサー同士であれば、どちらにとっても有益ではありません。そこで、時には、イベントスポンサーのパッケージの中に、テレビ番組提供(スポンサー)のメニューを入れ込んだパッケージとして、セールスする場合もあります。場合によっては、テレビでの中継番組の提供料金が、イベントスポンサーの協賛費よりも高い場合もあり、中には、イベントスポンサーのみを求めるスポンサーもいます。それでは、テレビ中継を成り立たせつつ、イベントのメディア効果を高めようとしているイベント主催者の意図は具体化できないことになります。全体の価値と、確保しなければならないスポンサーシップ収入の金銭的なバランスを確認しながら、適正な価格の設定を行うことは非常に難しい作業ですが、イベント主催者の思惑と、スポンサー側の思惑の最大のズレが、この辺にも見え隠れします。一般的には、テレビでの中継番組の提供料金をベースにして、スポンサーシップ全体の価値を設定していく方法が取られます(テレビ広告の価値が前提になる)が、スポンサー側も、テレビ中継によるイベントのメディア価値の向上は期待するところでもあり、私の経験したところでは、大きな問題になったケースはありませんでした。ちなみに、NBAの日本公式戦の実施の際には、この手法によりスポンサーシップパッケージを策定していますが、テレビ中継に関わるすべての番組提供費用はすべてギャランティした上での“切り売り”でしたので、イベントの価値に見合った料金設定が実現できたと思っています。

世界的な国際大会では、主催する国際競技連盟のグローバルスポンサーが、必然的に大会スポンサーの上位に位置付けられるため、テレビ中継が民放局で行われる場合などは、些か厄介な問題も生じます。グローバルスポンサーが、日本市場で全く影響のない銘柄ならば良いのですが、日本で最も期待できる広告ソースとなる業種の企業が含まれている場合などは、競合企業が広告看板を出しているイベントのテレビ中継を番組提供することに抵抗感もあるでしょうから、なかなか交渉が進まない場合がほとんどのようです。CS放送やBS放送による中継もありますが、やはり、イベント価値をより高めるためには、地上波放送での中継が望ましいところであるのは言うまでもありません。しかし、前述のようなスポンサー競合が生じる恐れのある大会では、なかなか理想通りに事は運びません。ちなみに、バレーボールの国際大会では、テレビ局主導による興行権をも含めた事業体制が実現できているために、テレビ中継番組のスポンサーを前提にスポンサーシップが組み立てられていると思われ、そうした弊害は全くないようです。これも、テレビジョンマネーの力なのです。

オリンピックはもとより、大きなメディア価値を持つ国際大会クラスのスポーツイベントでは、所謂アンブッシュ作戦を平気でやっているケースもたまに見受けられます。スポンサーに対して、さまざまな権利を許諾する、ということは、グランターとして許諾し得るだけの法的根拠と、その権利に対する侵害行為に対する防衛策を、キチンと備えることも必要となります。しかし、単発や年に1回程度の開催頻度のスポーツイベントでは、商標登録などの経費と収益性とのバランスも取れず、スポンサーに対して何の保障もなくセールスが成立しているケースがほとんどです。本来ならば、キチンと体制を固めた上でスポンサーには相対するべきなのですが、まだまだ課題は多いようです。

posted by umekichihouse |06:00 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL: (表示は許可制となっています)
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/umekichihouse/tb_ping/169
コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」