2009年01月28日
「スポーツイベントにおける会場設営と仮設制作」番外編 ~あるステージイベント専用ホールで・・・
現在、bjリーグの一部のチームもホームアリーナとして使用しているように、多目的ホールでのボールゲームの開催も増えてきています。既存の観客席を有しない施設もあり、また、フロアなどの競技環境もすべて仮設で設置、設営しないと開催できないため、コスト的にはかなりの負担になることは当然です。ただし、アリーナ空間を自由に設計でき、また、観客席の配置を臨機応変に設定できるため、観戦する側からしたら、ある意味で面白い体験が出来るかもしれません。問題はコストなのです。bjリーグの新潟が使用する朱鷺メッセも大きなコンベンションホールですが、仮設スタンド席の設営だけで約1,000万円掛かると言われています。週末の2試合を行ったとしても、1日当り500万円ですから、入場料単価を多少とも引き上げないと、試合興行だけでコストをカバーしようとするとなかなか難しい面もあります。 過去には、国際大会レベルのイベントも、多目的ホールで開催されています。古くは、1999年に福岡国際センターで、シドニー五輪予選を兼ねた男子バスケットボールアジア選手権が、また、最近では、徳島市の“アスティとくしま”で、北京五輪予選を兼ねた男子バスケットボールアジア選手権が開催されました。何れも、開催地地元の行政などが開催費の大半を負担するなど、地元の開催に対する熱意は相当なもので、特に、徳島では、大きなスポーツイベント自体あまり開催された実例もなく、各種スポーツリーグやプロレスなどの興行イベントを除けば、ほとんど始めての開催、と言っていいほどの状況だったようです。 以前、このブログで、ホームアドバンテージについて取り上げた際に、2004年の1月に、仙台で開催された女子バスケットボールのアテネ五輪予選を兼ねたアジア選手権の開催について記述しましたが、その時に、先の徳島での男子バスケットボールアジア選手権に関する内容のコメントを頂きました。内容は、仙台の会場の熱気と比べて、徳島では、会場そのものが観戦し辛く、運営面に対しての改善を求めるものでした。批判的なものではなく、日本代表を応援するファンとして、また、バスケットボールファンとしての希望を仰っていたのだと理解しています。今回は、その徳島での男子バスケットボールアジア選手権について、会場施設というハード面を主体とした検証を述べたいと思います。 そもそも、メイン会場となった“アスティとくしま”という施設は、スポーツアリーナではありません。基本的には、コンサートや演劇などのステージイベントを行うために設計された施設です。可動式の客席や昇降式のステージを収納すれば、大きな展示会なども開催できる多目的ホールとなりますが、照明、音響、大型映像装置等の付帯設備のすべては、ステージイベント用に常設または仮設される設計なのです。この中で、以前述べた会場の利用計画や動線計画などの運営に関る基礎計画を策定していくのは、困難を極めたようです。最も象徴的な問題点は、以下の3点でした。 ◇試合コートを取り囲むように一般用の観客席を設置できないこと (ステージ上に一般観客席を設定すると、チームや大会関係者の動線と渾然一体となってしまい、安全の確保はもちろんのこと、運営上の不備を引き起こす可能性が大きい) ◇運営機能の拠点となるバックヤード諸室が一般観客の動線上にあり、運営スタッフやメディア、来賓等の動線を専用に確保できないこと(一般入場口エリア周辺および同じサイドにしか適切な運営諸室を設けられない) ◇チームや運営関連車輌の通行路となる会場周辺道路が狭く、また一般車輌の侵入も可能であり、特にチームの移動に使用する大型バスの運行に支障があったこと(会場の手前で車輌の進入規制を行ったり、チーム用の大型バスの配車などの運用において、その都度、細かな対応を取らざるを得なかった) 簡単に言えば、設営、運営、輸送など、ほとんどの大会運営機能において、各種の課題を抱えていたのです。こうなると、マンパワーによる臨機応変な対応で、その場、その場を凌ぐしかありません。結果的に、観客に対する対応が十分に取れるようになったのは、大会の後半に入って、この会場独特の運営パターンがスタッフの中に浸透してからのことでした。それでも、1試合毎に、普段はやらなくていいような作業を連続して行わなければならず、スタッフの負担は、通常のスポーツアリーナで開催する際の数倍に達していたと思います。 最も懸念されたのは、コートを取り囲むような客席配置は、動線やアクセス規制の問題、そして、ステージ側にテレビカメラを設置することを、国際連盟サイドが既に決定していたことによるテレビ中継設備の設置要件により、全く不可能となっていました。結果的に、ステージイベントのように、観客は一方方向で試合を観戦するスタイルとなり、会場全体を感性が包み込むような熱気は作れません。観客席規模は3千席にも満たなかったのですが、序盤の日本戦はほぼ満員になった日も多く、関係者は、応援に駆けつけてくれたファンには本当に頭が下がる思いだったようです。しかし、普段の応援の雰囲気とは違って、戸惑った観客も多かったと思います。 外見だけではなく、機能として、国際大会の開催にふさわしい会場だったかどうかという判断は、後のファンを維持していく、または新たに開拓していくためには重要だったでしょう。仮設対応でも対処し切れなかった数多くの苦渋の判断を強いられた関係者の気持ちを代弁するわけではありませんが、会場となるハード面の機能性は、時には大会の成否をも左右しかねないのです。試合にも負け、関係者には、無念の記憶だけが残っているようです。
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posted by umekichihouse |07:48 |
イベントオペレーション |
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