2009年01月10日
「高校バスケットの“冬の選手権”、ウインターカップの魅力」その1 ~創造されるタイトルの価値
高校スポーツは、公式には年間2つの全国大会が開催されます。全国高等学校体育連盟が主催するこの大会とは、全国高等学校総合体育大会、通称インターハイと呼ばれている総合競技大会における選手権大会と、ほとんどの競技が毎年3月に各地で開催している選抜大会です。インターハイでは、「全国高等学校総合体育大会(スポーツ競技名)競技大会」というのが正式で、各競技によって、「“兼”全国(スポーツ競技名)選手権」というようになっています。ただし、サッカーの場合、“選手権大会”は、毎年年末に開幕しお正月を挟んで東京近郊各地で開催されている全国高校サッカー選手権大会であり、この大会が名実供に高校サッカー最高峰の大会とされています。では、インターハイではどうかというと、他の競技とは唯一異なり、単に全国高校総体サッカー競技大会となっているのです。他の競技種目のように、選手権大会という位置付けではありません。また、年間2つの全国大会の開催ということから、サッカーには、選抜大会はないのです。 では、インターハイ、つまり全国または全日本選手権(競技によって呼称が異なっているようです)と、選抜大会はどのように違うのか?。簡単に言えば、選抜大会は3月の春休み期間中に開催されているため、新2、3年生、つまり、その時点では1、2年生のみが参加する、言ってみれば新人大会の全国大会ということです。つまり、秋の国体以降、3年生が引退し、新チームになって最初の全国大会が、この選抜大会ということになります。選抜大会は、その名の通り、高校野球などと同様に、全都道府県からの出場が統一されているわけではなく、基本的には各ブロック地区からの推薦という形で出場権が与えられているのが一般的でしょう。つまり、一部の競技を除けば、インターハイでの全国選手権大会のように、全都道府県からの出場はなく、自ずと出場校数は少なくなります。インターハイを目指す新チームのステップアップ大会のようなものなのでしょう。 しかし、バスケットボールとバレーボールは、さまざまな経緯から、選抜大会と言えども、インターハイでの全国選手権並みの規模に、その大会規模は拡大しています。まず、バレーボールの場合は、ご存知のように、フジテレビが全試合を中継放送し、フジサンケイグループが主催者にも名を連ねる、もはやフジテレビの事業としての性格を帯びており、大会が行われる3月下旬の1週間は、“春高バレー”色が満ち溢れます。しかも、かつては、この大会がゴールデンタイムで放送されていたこともあるのです。出場校も、全都府県代表校に加え、東京都は2校、大阪と神奈川は1校追加、北海道は南北地区で各1校づつの計2校が出場権が得られ、更に前回優勝校が加わった男女53校づつの計106校もの参加規模になっています。本来義務化されていない地方予選も、すべての都道府県で実施されており、1月から2月にかけて、インターハイ予選並みの大会が全国各地で繰り広げられているのです。バレーボールは、国際大会も毎年のように国際大会が日本で開催されていますが、高校の大会においても、テレビジョンパワーが、ここまで大会を大きくしているのですね。会場は、東京・原宿にある国立代々木競技場第一体育館。広いアリーナ内には、数多くのテレビカメラや放送施設が立ち並ぶ中で、バボちゃんが悠々と空中で揺れている姿が毎年見られます。 さて、本題のバスケットボールですが、大会名称は、全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会。通称、ウインターカップと呼ばれています。何故“ウインターカップ”なのかということが、この大会のタイトルの価値を指し示す要因のひとつでもあります。 バスケットボールの選抜大会は、第1回大会が1971年、ミュンヘン五輪開催の前年3月に開催されています。出場校は、男女各16校。現在の丁度1/3でした。開催地である東京を含めた11地区からの代表です。出場校が増加したのは、第5回大会の1975年からです。男女各24校になりました。更に出場校が増えたのは、20回という節目を越えた1990年の第21回大会からです。男女各48校。つまり、この大会から、全都道府県からの出場となりました。ちなみに、開催地である東京からは、第5回大会から2校の出場(第15回大会のみ3校)となっています。実は、この2年前の1988年に、大きな転換期を迎えることになっていたのです。1988年は、2回の選抜大会が実施されています。3月には、従来のスケジュールであるものの、開催地は神戸。この年の夏にインターハイが開催される神戸市において、リハーサル大会の意味合いも兼ねての実施となったようです。 ではもう1回とは何なのか?・・・、というと、選抜大会の開催時期が12月末に移行した最初の大会だったのです。開催地時期を移行した最も大きな理由は、当時テレビ放送していたテレビ局の要望が強かった、という話もあります。3月末はテレビ局にとって期末といわれる特別番組編成の時期であり、なかなか中継番組を放送するための枠の確保が難しかったのです。そこで、比較的容易に枠の確保が可能である年末に大会を移動する案が浮上し、この数年前から、高体連、日本協会などの関係者が議論し、さまざまな課題をクリアしていったと聞きます。この時ご尽力された方は、私も仕事で非常にお世話になったバスケットボールに対する情熱溢れる方でしたが、いろいろとご苦労されたお話しも聞きました。高校スポーツは、夏、冬、春という長期の休み期間にしか1週間という大会日程を確保できませんから、選択肢としては、冬休み期間中しかない。しかし、受験シーズン直前に、大会を開催しても、3年生は出場できても受験を犠牲にすることが高校スポーツとして相応しいことなのか?・・・、などなど、立ちはだかる課題は少なくなかったと言います。一方で、秋の国体以降、引退する3年生の中には、その後、大学や実業団でプレーすることが決まっている有力選手も数多くいました。しかし、秋以降、大会もなく、新チームに切り替わって練習もままならない環境の中で、迎え入れる大学や実業団からの改善を求める声もあったようです。12月に全国大会が開催されるということは、こうした面からは、有力選手たちにとって、大きなチャンスが生まれたとも言えます。 当時テレビ中継していたのは、テレビ朝日。男女各決勝戦を、深夜に録画中継し、またニュースやダイジェスト番組なども時折放送していました。夢として語られていた全試合中継は、バレーボールのように実現には至らなかったようですが、ウインターカップという愛称も生まれ、大会の歴史と供に、大会のタイトルの意義というものが、まだまだ小さいものでしたが、膨らみつつある時代でした。ただし、バレーボールのように、都道府県単位での予選大会を一律で開催するまでには、まだまだ到底そこに至るものではなかったようです。 ウインターカップが、次に大きく変革し始めたのは、1998年、第29回大会です。この頃、1995年から大会3連覇を成し遂げ、4連覇を賭けて、第1回大会から唯一連続出場を成し遂げていた能代工業高校が、圧倒的な強さを見せていました。中でも、1年からレギュラーとして、同学年の若月選手や菊地選手とともに出場していた田臥選手の人気もうなぎ上りとなり、この大会期間中に、ついに初の入場制限という事態にもなりました。スポーツ新聞のみならず、全国紙にも連日写真入で大会の様子が報道され、テレビのニュースにも数多く取り上げられるまでになっていました。そして、この大会から、ウインターカップの名を付した新しい大会ロゴが生まれ、会場内の装飾も様変わりしていきました。スタッフの着用するウェアもカラフルになり、大会最後の3日間に1面となる試合コートのゴール裏にもスタンド席が設置されるなど、見た目では、全国No.1を決する試合の舞台が仕上がりつつありました。大会に初めて公式ミュージックが導入されたのもこの大会からです。(現在は行っていません。)小さいことですが、関係者や選手などが携帯するADカードという首から提げている身分証も、初めてカラーで識別分類されたのもこの大会からです。 そして、この大会から、新たに大会スポンサーが加わりました。現在も協賛活動を続けているナイキジャパンとスポーツドリンクのゲータレードです。実は、当時、私はナイキジャパンでイベント業務の責任者をしていた関係で、まさにこの小さな変革の真っ只中にいました。前年に、大会の様子を見学させていただき、何よりも、選手たち、そしてチームの仕上がり具合に驚きました。バスケットボールを担当していた同僚に聞くと、この時には既にウインターカップは選手たちの間でもぜひ取りたいタイトルのひとつに数えられるようになっており、年間最後の大会となるウインターカップに標準を合わせて練習してきているチームが増えている、ということでした。中には、1、2年生中心のチームで臨む学校の少なくありませんでしたが、12月開催という3年生最後のチャンスとなる舞台であるこの大会の存在意義が、徐々に浸透してきているのを実感したものです。そして、「なんとかこの大会に協賛し、大会をもっと盛り上げていくことは出来ないか!・・・」と考え始めました。「この大会は大化けするかもしれない!!」。ダメモトで主催者に交渉を開始しました。「全国の高校生が、1年間最後のタイトルを賭けて目指す大会にしたい。そのためにぜひ協力したい」と・・・。当時、ナイキジャパンは、高校サッカー選手権も協賛し始めた頃で、“冬の選手権”と言われる高校サッカーの大会規模の凄さは十分に認識していましたし、開催時期も前後していた関係で、絶対にもっと注目される大会になることを実感できていました。当時の私の上司は、アメリカの有名大学のアクレティックディレクターも経験されたスポーツ界で名の知れた一人であり、この人の下で働きたかった、という人物で、こんなことを言ってくれました。「アメリカではカレッジスポーツがスポーツビジネスの底辺を支えている。日本ではハイスクールがそれに相当するんじゃないか?。チャンスかもしれない」。私は、主催者に、スポンサーとしての得られる権利を交渉すると同時に、一緒になって大会運営そのものの改善に協力していきました。凡そ、スポンサーとしての仕事を逸脱していたと思います。チケットをもっと買ってもらうために、窓口を増やしたり、告知ポスターやチラシのデザインまで口を出してしまいました。スポーツショップでのキャンペーンまでやってしまったのは、この時が初めてだったと思います。スポーツドリンクの協賛を実現させたのも、実は私でした。NBA公式戦の時以来お世話になっていた関係で、無理を聞いてもらいました。とにかく、多くの人に注目してもらいたかった、というのが本音です。ちなみに、この時ご尽力いただいた関係者の皆さんには、本当にご迷惑をおかけしてしまいました。ただ、少し熱意が伝わり、スポンサーという泥臭い存在だけではなく、協力者として我々を認めてくれたことに本当に感謝しています。 単に会場を飾り立てたり、見た目だけの豪華さを狙ったものではなく、出場選手が日本一を目指すに相応しい大会にする。それが選手たちの力を引き出し、観戦している人たちをひきつけ、大会の価値は高まっていくのだと思います。「あのコートに立ちたい」。全国のバスケットボールをやっている高校生の、ひとつの目標とする大会として、出場する選手たちにも、残念ながら出場できなかった選手たちにも、高校生活の中で一番価値ある大会にしたい。それは、現在も大会を運営している東京都高体連の先生方やその生徒さんたち、そしてスポンサー各社の皆さんも、持ち続けていらっしゃる気持ちだと思います。それらが一体となって、ウインターカップという大会のタイトルの価値が創造されていっているのだと思います。 大会のタイトルの価値とは、歴史の積み重ねで自然に生まれてくるものもあると思いますが、それを支えている人たちの泥臭い努力によって、創られることもあるのだと、この大会に関わって初めて知りました。
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posted by umekichihouse |07:28 |
バスケットボール |
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