2008年11月30日

「スポーツイベントとチケッティング戦略」その5 ~スタジアム施設におけるシュミレーション

サッカー専用、または陸上競技場といったスタジアム施設は、会場によって観客席規模に万単位での差があるため、ここでは、先月13日にホームズスタジアム神戸で行われたサッカー日本代表の国際親善試合、キリンチャレンジカップ2008をモデルとして、チケッティング戦略を検証してみたいと思います。この試合は、これまで日本サッカー協会が観客動員の目標値としていた4万人よりも既存客席数が少ないスタジアムで行われたこともあり、事業コストのカバー率など、興行的にどの程度のリスクを負って実施されたのか、という点にも興味がありました。

正確な客席数を示す資料が公開されていないので、あくまでも客席配置図面からの推定数値ですが、以下のように、チケット券種別のシーティングを想定してみました。
※プレミアムシートは、座席数規模が少ないため、便宜上、対象から削除します。

  ・カテゴリー(1) @7,000円  約20% 6,000席
  ・カテゴリー(2) @5,000円  約25% 7,500席
  ・カテゴリー(3) @4,000円  約10% 3,000席
  ・カテゴリー(4) @3,000円  約15% 4,500席
  ・カテゴリー(5) @2,010円,1,000円,500円  約30% 9,000席

カテゴリー(1)と(2)のメインスタンドとバックスタンドで、完売状態とすれば、約8,000万円。カテゴリー(3)から(5)までの合計は、3,400万円から3,500万円程度となり、全席合計では、約1億1,000円程度の金額になります。過去に、日本代表のゲームは、凡そ1億円がそのイベントコストとされていました。その中には、大会全体、つまり、対戦国も含めた宿泊・移動に関する経費や告知等のマーケティング経費も含まれています。この数値を前提とすると、観客席規模は少なくても、満員想定でコストのリカバーが出来る規模で開催した、ということなのかもしれません。最低観客動員数として4万人を前提とした数値を計算すると、全く同じ比率での入場料金の設定だとして、約1億4,700万円となり、1億円をイベントコストとするならば、約68%の入場料収入がペイラインということになります。観客席規模がカテゴリー(1)と(2)という高額価格帯の所謂良い席が、全体の45%程度ですから、45%で凡そ7割のコストをカバーしていた計算になります。前回のアリーナ施設における検証では、30%のアリーナ席で、50%のコストをリカバーする計算をしましたが、若干の違いはあれ、価格帯の高めの良い席での入場料収入で、その座席規模の占める割合の1.5から1.6倍のパーセンテージ規模のコストをカバーしていることになります。

◇アリーナ施設 → 30%の最良席規模で50%のイベントコストをリカバー
◇スタジアム施設 → 45%の最良席規模で70%のイベントコストをリカバー

今回のシリア戦では、入場者数は25,004人と発表されていましたので、仮に販売可能席数規模を3万席ジャストとすれば、83%の販売率となり、金額にして約1億円丁度。ギリギリのペイラインとなります。もちろん、日本サッカー協会は、キャパシティがいつもよりも少ない会場での実施だったことで、完売を狙っていたでしょうが、83%の販売率は、若干少ない程度ですが、まあまあだったのではないか、と勝手に推測しています。

スタジアム施設の客席の配置構造は、建物自体の規模がマチマチであることと、メインスタンドの上部及びバックスタンドの上部にある座席エリアの規模に大きな違いがあり、一概には言えませんが、2002年に使用したワールドカップ会場の規模を平均化してみると、凡そ次のような比率での配置になります。

  ・メインスタンド(カテゴリー1の対象): 約21~22%
  ・バックスタンド(カテゴリー2の対象): 約23~24%
  ・メインスタンドの上部(カテゴリー3の対象): 約9~10%
  ・バックスタンドの上部(カテゴリー4の対象): 約15~16%
  ・ゴール裏のエリア(カテゴリー5の対象): 約30~33%

メインスタンド側に、プレス席や来賓用の席を用意することは、アリーナ施設におけるアリーナ面の座席の利用パターンと同様ですので、高額な設定となる座席の運営的な占有によるリスクは、比較的同じ条件であり、また、テレビ中継で映し出される座席エリアも、スタジアム施設ではバックスタンド、アリーナ施設ではアリーナ面の所謂カメラビジブルサイドのアリーナ席となり、このエリアの効率的なチケット販売が、会場全体の演出効果を高めるカギを握ることも似たような状況にあります。つまり、アリーナ施設では30%。スタジアム施設では45%を占めるエリアの最良席を如何に効率よく、確実に販売するための戦略を持ち、また戦術を構築していくか、ということが、チケッティング戦略のカギとなるように思うのです。

前回のアリーナ施設における検証も、今回のスタジアム施設における検証も、数値的な要素はあくまでも考え方を具体的に示すための土台として使用したに過ぎませんが、イベントコストを如何にリカバーしていくか、という視点に立てば、どの席をどの程度販売することを戦略の柱としてとして戦術を組み立てていけばよいか、という課題を明確にしていくことは重要になると考えます。それは、単なる効率的な面からの考えだけではなく、会場全体のエンタテイメント効果にも大きく影響するものであることは間違いないと思います。

posted by umekichihouse |08:25 | イベントオペレーション | コメント(0) | トラックバック(0)
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